診療報酬改定を医薬品メーカー・卸の視点で深掘りする|長期収載品の今後の在り方③ 継続・承継・販売移管・供給終了をどう判断するか
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目次
※本記事の作成・構成整理にはAIツールを使用しています。本記事は公的情報をもとにした一般的な情報提供を目的としており、制度対応の最終判断にあたっては、厚生労働省をはじめとする公的機関の最新情報をご確認ください。
令和8年度診療報酬改定では、長期収載品の選定療養における患者負担の水準が見直されました。また、令和8年度薬価制度改革では、後発医薬品の上市後5年を経過した長期収載品について、原則として後発医薬品への置換え率にかかわらずG1を適用し、後発医薬品の加重平均薬価を基準に薬価を段階的に引き下げる仕組みへ変更されました。
長期収載品とは、後発医薬品が市場で販売された後も、引き続き薬価基準に収載されている先発医薬品です。
患者負担と薬価の両面で見直しが行われたことで、長期収載品では、需要や収益性の変化を従来より早い段階から製品方針へ反映することが重要になります。
医薬品メーカーが長期収載品の今後を検討する際には、販売数量や採算性だけでなく、医療上の必要性、代替薬の有無、剤形・規格、製造体制、原材料、後発医薬品側の供給能力などを品目ごとに評価する必要があります。
医薬品卸にも、メーカーの製品方針を早期に把握し、仕入れ、在庫、発注、納入先への案内、代替品の供給対応へ反映する役割があります。
本記事では、長期収載品について、継続供給、剤形・規格の整理、製造販売承認の承継、販売移管、供給縮小・終了をどのような観点で判断するかを取り上げます。あわせて、方針の決定から移行準備、関係者への情報共有、実施後の確認までの流れを解説します。
制度見直しを長期収載品の製品方針へどうつなげるか

令和8年度診療報酬改定による選定療養の見直しは、患者が長期収載品を継続するか、後発医薬品へ切り替えるかという選択に関係します。
一方、令和8年度薬価制度改革によるG1の見直しは、長期収載品の薬価が段階的に引き下げられる時期を早め、医薬品メーカーの収益性や、医薬品卸の仕入れ・販売条件、在庫、粗利にも関係します。
こうした需要と収益性の変化は、製品方針を検討するきっかけとなります。ただし、長期収載品の今後は、売上や利益の大小だけで決めるものではありません。
同一成分の後発医薬品が複数販売されている品目と、特定の剤形・規格が治療上必要とされている品目では、適切な方針が異なります。また、代替となる後発医薬品が存在していても、需要の増加に対応できる生産能力、原材料、在庫、出荷体制が整うまでには一定の準備期間が必要です。
厚生労働省の令和8年度薬価制度改革資料では、G1に該当する長期収載品について、後発医薬品上市5年後の6月末に先発医薬品メーカーが撤退の可否を判断し、後発医薬品メーカーの増産後に撤退する考え方が示されています。G1の適用開始は、薬価引下げの時期であるだけでなく、継続供給、承継、販売移管、供給終了などの製品方針を具体化する時期にも関係します。
医薬品メーカーには、個別品目の採算だけでなく、長期収載品にどの程度の経営資源を維持し、新薬や成長領域へどの程度移すのかという製品ポートフォリオ全体の視点も求められます。
製品方針を判断するための共通の評価項目
長期収載品の方針を検討する際は、医療上の必要性、需要、収益性、代替可能性、製造・供給体制を組み合わせて確認します。
| 評価する視点 | 主な確認内容 | 方針判断への反映 |
| 医療上の必要性 | 効能・効果、剤形、規格、用法・用量、使用される患者層、治療上の位置づけ | 継続供給や承継を優先して検討する品目を特定する |
| 需要 | 販売数量、採用施設数、継続使用されている患者、地域差、需要の変化 | 継続する数量や移行に必要な期間を検討する |
| 収益性 | 薬価、実売単価、製造原価、品質管理費、物流費、販売管理費 | 現行体制での継続、体制見直し、承継などを比較する |
| 代替可能性 | 同一成分・剤形・規格の後発医薬品、他の治療選択肢、使用上の違い | 規格整理や供給終了による医療現場への影響を評価する |
| 製造体制 | 原材料、包装資材、製造所、委託先、最低生産数量、製造期間 | 中長期的に供給を維持できる体制かを確認する |
| 供給体制 | 在庫、出荷状況、後発医薬品の生産可能数量、増産に必要な期間 | 需要移行に対応する準備期間を設定する |
| 流通・取引先への影響 | 卸の在庫、商品コード、発注先、返品条件、採用施設 | 卸、医療機関、薬局への案内内容と実施時期を決める |
例えば、販売数量が少ない品目でも、特定の患者層で必要とされ、同等の剤形・規格を持つ代替薬が少ない場合は、継続供給や製造販売承認の承継を優先して検討します。
一方、代替となる後発医薬品が複数あり、需要の移行が進み、製造・物流体制の維持に必要な費用が増加している品目では、剤形・規格の整理、販売移管、供給終了などを比較します。
重要なのは、長期収載品全体を一律に扱うのではなく、成分、剤形、規格ごとに条件を確認することです。
継続・承継・販売移管・供給終了をどう判断するか
長期収載品の主な選択肢と、判断の中心となる事項を整理すると、次のようになります。
| 方針 | 判断の中心 | 主に確認する事項 |
| 継続供給 | 現在の製造・供給体制を維持できるか | 医療上の必要性、需要、採算性、製造体制 |
| 剤形・規格の整理 | 一部の剤形・規格に集約できるか | 患者層、治療場面、代替性、需要集中 |
| 製造販売承認の承継 | 他社による製造販売で供給を継続できるか | 承継先、薬事・品質情報、供給計画、流通変更 |
| 販売移管 | 製造販売業者を変えずに販売体制を見直せるか | 販売元、発注先、取引条件、問い合わせ窓口 |
| 供給縮小・終了 | 医療への影響を抑えて供給を終了できるか | 代替品、代替供給能力、移行期間、公的手続き |
継続供給
医療上の必要性が高く、一定の需要があり、中長期的な製造・供給体制を維持できる品目では、継続供給が中心的な選択肢になります。
継続を選ぶ場合も、従来と同じ体制をそのまま維持できるとは限りません。販売数量の変化や今後の薬価改定を踏まえ、次の点を確認します。
- 最低生産数量と製造頻度
- 原材料・包装資材の調達
- 製造所や委託先の継続性
- 品質管理や安全管理に必要な体制
- 中長期的な供給継続可能期間
- 情報提供や問い合わせ対応の体制
販売数量が減少すると、最低生産数量との関係で、1製品当たりの製造原価が上昇することがあります。現在の採算性だけでなく、将来の薬価、販売数量、原価の変化を踏まえ、中長期的に供給を維持できるかを判断します。
剤形・規格の整理
同一成分に複数の剤形・規格がある場合は、すべてを同じ方針で扱うのではなく、剤形・規格ごとに必要性を確認します。
主な確認項目は次のとおりです。
- 剤形・規格ごとの販売数量
- 使用している患者層や治療場面
- 代替となる剤形・規格
- 後発医薬品に同等の剤形・規格があるか
- 医療機関・薬局の採用状況
- 規格整理による他製品への需要集中
- 承認内容や使用実態を踏まえ、安全に代替できるか
販売数量が少ない規格であっても、特定の患者層や治療場面で継続して使用されている場合があります。
剤形・規格を整理する際は、売上順位だけで判断せず、医療上の必要性を確認したうえで、対象品目、実施時期、代替候補、切替期間を設定します。
製造販売承認の承継
製造販売承認の承継とは、製品の製造販売に関する承認上の地位を、別の製造販売業者へ引き継ぐことです。
自社での製造販売継続が難しい場合でも、承継によって製品を市場に残し、供給を継続できる場合があります。
承継にあたっては、次の項目を確認します。
- 承継元と承継先
- 対象となる剤形・規格
- 承継日
- 製造所と製造方法
- 品質管理・安全管理体制
- 製品名や包装の変更
- 商品コード
- 販売元と発注先
- 旧製品在庫の取扱い
- 返品先と問い合わせ窓口
- 医薬品卸、医療機関、薬局への案内
承継では、製品の成分や効能・効果が同じ場合でも、製造販売業者、商品コード、発注先、問い合わせ窓口などが変わることがあります。
承継元と承継先は、薬事・品質情報、供給計画、在庫、流通上の変更内容を共有し、卸や医療現場が変更内容を確認できる状態を整える必要があります。
販売移管
本記事では、製造販売業者を変更せず、販売、流通、営業、情報提供などの一部または全部を別の会社が担う形態を「販売移管」として整理します。
販売移管では、製品そのものや製造販売業者が変わらなくても、次の項目が変更される場合があります。
- 販売元
- 発注先
- 仕入れ・販売条件
- 返品先
- 問い合わせ窓口
- 営業・情報提供の担当会社
製造販売承認の承継と販売移管では、変更される範囲が異なります。
医薬品卸、医療機関、薬局への案内では、「製造販売業者が変わるのか」「販売業務のみが変わるのか」を明確にし、変更日、発注方法、返品方法、問い合わせ先を示します。
供給縮小・供給終了
供給縮小や供給終了を検討する際は、採算性だけでなく、医療上の必要性と代替先の供給体制を具体的に確認します。
主な確認項目は次のとおりです。
- 代替となる後発医薬品や他の治療選択肢
- 代替品の剤形・規格や使用上の違い
- 代替品の生産可能数量
- 原材料や包装資材の調達状況
- 代替品の在庫と出荷状況
- 医療機関・薬局の採用状況
- 継続して使用している患者への影響
- 必要な移行期間
- 最終製造・出荷時期
- 市場在庫と返品の取扱い
- 医療関係者への案内方法
後発医薬品メーカーは、長期収載品からの需要増加を想定し、生産能力、原材料、在庫、製造・出荷に必要な期間を確認します。先発医薬品メーカーの製品方針と、後発医薬品側の増産・供給計画をあわせて確認することで、需要の移行に対応できる供給体制の準備につなげます。
また、薬価基準に収載されている医療用医薬品は、製造販売業者が社内で供給終了を決定しただけで、直ちに供給を停止できるものではありません。供給停止や薬価削除を希望する場合には、厚生労働省の通知に基づき、代替供給への配慮、医療機関・薬局への情報提供、供給停止事前報告や薬価削除等の手続きを見込んで計画を進める必要があります。厚生労働省が薬価削除に係る経過措置への移行手続きを行うまでは、供給を継続できる体制を維持することとされています。
供給停止・薬価削除の取扱いは、一般的な供給停止品目、G1品目、承継に伴う薬価削除品目などで異なります。具体的な提出書類や社内フローまで本記事では扱いませんが、供給終了の方針を検討する段階から、薬事、品質、製造、供給、営業などの関係部門が、最新の公的手続きと社内ルールを確認し、必要な期間を計画へ組み込むことが重要です。
製品方針の判断から実施後の確認まで
製品方針は、判断した時点で完了するものではありません。移行準備、情報共有、実施後の確認までを一つの流れとして計画します。
| 段階 | 主な対応 |
| 1.対象品目の抽出 | G1適用品目、需要や収益性、製造条件の変化が大きい品目を抽出する |
| 2.品目ごとの評価 | 医療上の必要性、代替可能性、需要、収益性、原材料、製造・供給体制を確認する |
| 3.方針の決定 | 継続、剤形・規格の整理、承継、販売移管、供給縮小・終了から方針を選択する |
| 4.移行準備 | 製造・出荷計画、代替供給能力、卸の在庫、実施時期、公的手続きの要否を確認する |
| 5.情報共有 | 卸、医療機関、薬局へ対象品目、変更内容、実施日、発注先、返品方法等を案内する |
| 6.実施後の確認 | 受注、出荷、在庫、欠品、問い合わせ、代替品への需要集中を確認する |
判断段階
製品方針を決める際は、成分全体や製品名だけでなく、剤形・規格単位で条件を確認します。
一部の規格のみを整理し、医療上必要な剤形・規格を維持することで、供給上の役割を保ちながら、製造・供給体制を見直せる場合があります。
準備段階
製品方針を決定した後は、実施日から逆算して、製造、供給、流通、案内、公的手続きに必要な期間を確認します。
長期収載品の供給を縮小・終了する場合は、対応する後発医薬品メーカーが需要を引き受けられる時期と、医薬品卸や医療機関・薬局が在庫や採用品目を切り替えるために必要な期間を確認します。
情報共有段階
医薬品卸、医療機関、薬局へ案内する際は、変更内容を具体的に示します。
- 対象となる製品名、剤形、規格
- 継続、承継、販売移管、供給終了の区分
- 実施日
- 最終出荷日
- 新旧の商品コード
- 発注先
- 返品条件
- 代替候補
- 問い合わせ窓口
承継や販売移管では、変更前後の会社名と担当範囲を示すことで、発注、請求、返品、問い合わせの混乱を抑えやすくなります。
実施後の確認
実施後は、計画どおりに需要と供給が移行しているかを確認します。
長期収載品と代替品の受注・出荷、欠品、返品、問い合わせなどに想定外の変化が生じた場合は、メーカーの出荷計画、卸の在庫配置、医療機関・薬局への案内内容を見直します。
ここでは、確認すべき業務の流れまでを整理しています。品目、取引先、担当者、期限、進捗をどのような項目で管理し、CRM・SFA・BIツールへ反映するかは、次の記事で具体的に取り上げます。
先発医薬品メーカー・後発医薬品メーカー・卸の役割
長期収載品から後発医薬品への移行には、先発医薬品メーカーだけでなく、後発医薬品メーカーと医薬品卸の連携が必要です。
| 関係者 | 主な役割 |
| 先発医薬品メーカー | 医療上の必要性と継続可能性を評価し、品目ごとの方針、実施時期、移行条件を決める |
| 後発医薬品メーカー | 需要増加を見込み、生産能力、原材料、在庫、製造・出荷期間、供給開始時期を確認する |
| 医薬品卸 | メーカーの方針を把握し、仕入れ、在庫、発注、返品、納入先への案内へ反映する |
| メーカー・卸共通 | 品目・地域・取引先別の需要変化と供給状況を共有し、計画と実績の差を確認する |
先発医薬品メーカーは、医療上の必要性と製品の継続可能性を評価し、方針と実施時期を明確にします。
後発医薬品メーカーは、長期収載品から自社製品へ移行する可能性のある需要を見込み、生産、原材料、在庫、出荷の準備へ反映します。
医薬品卸は、医療現場に近い受注・在庫情報を把握できる立場から、特定地域への注文集中、代替品の供給状況、取引先の切替状況をメーカーへ共有します。
三者が同じ品目、剤形、規格、実施時期を基準に情報を共有することで、製品方針と実際の供給対応を連動させやすくなります。
まとめ
令和8年度診療報酬改定による選定療養の見直しと、令和8年度薬価制度改革によるG1の見直しは、長期収載品の需要、薬価、収益性、製品ライフサイクルに関係します。
医薬品メーカーは、需要や採算性だけでなく、医療上の必要性、代替可能性、剤形・規格、原材料、製造体制、後発医薬品側の供給能力を確認し、品目ごとの方針を決定する必要があります。
主な選択肢は、次のとおりです。
- 継続供給
- 剤形・規格の整理
- 製造販売承認の承継
- 販売移管
- 供給縮小・供給終了
供給終了を選択する場合も、社内で方針を決めるだけでは完了しません。代替供給への影響や医療現場への周知に加え、対象品目に応じた供給停止・薬価削除・経過措置等の公的手続きを見込んで計画する必要があります。
方針を決定した後は、移行準備、医薬品卸・医療機関・薬局への情報共有、実施後の需要・供給状況の確認までを一連の計画として進めます。
後発医薬品への需要移行を伴う場合は、先発医薬品メーカーの製品方針と、後発医薬品メーカーの生産能力、在庫、出荷計画をあわせて確認します。医薬品卸は、取引先や地域ごとの注文変化をメーカーへ共有し、在庫配置と供給対応へ反映します。
次の記事では、ここで決定した継続、承継、販売移管、供給終了などの方針を、品目、取引先、担当者、期限、進捗として管理する方法を取り上げます。製品マスタ、販売実績、在庫、供給情報、医療機関情報をどのように紐づけ、CRM・SFA・BIツール、ダッシュボード、アラートへ反映するかを具体的に解説します。
※本記事は公表資料をもとに制度と実務上の論点をまとめたものです。個別製品の製造販売承認の承継、販売移管、供給停止、薬価削除等については、各製造販売業者の社内手順、公式情報および関係する公的機関の最新情報をご確認ください。
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参考資料・URL
● 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
● 厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」
● 厚生労働省「令和8年度薬価制度改革について」
● 厚生労働省「令和8年度薬価基準改定の概要」
● 中央社会保険医療協議会「令和8年度薬価制度改革の骨子」
● 厚生労働省「医療用医薬品の供給停止及び薬価削除について」
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