Salesforceデータを守る!確実なバックアップ方法と復元のポイント
目次
- 1. なぜSalesforceのバックアップが重要なのか
- 1.1 見落とされがちなSalesforceのデータ損失リスク
- 2. Salesforceデータの特徴を理解する
- 2.1 データとメタデータの関係性を理解する
- 2.2 バックアップすべき対象を特定する
- 2.3 データの関連性を把握する
- 2.4 バックアップの優先順位を決める
- 3. 実践的なバックアップと復元の手順
- 3.1 バックアップの準備
- 3.2 データバックアップの実践手順
- 3.3 データ復元の手順
- 3.4 トラブルシューティング
- 3.5 バックアップ運用のベストプラクティス
- 4. まとめ:明日からできるバックアップ対策
- 4.1 まず始めるべき3つのこと
- 4.2 見落としがちな注意点
- 4.3 これからのバックアップ対策
「先日、大量のリードデータを一括更新しようとしたら、誤って古いデータを上書きしてしまって…」 「システム管理者の退職に伴って、重要な設定が削除されているのに気づいて焦りました」
このような経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
Salesforceは日々の営業活動や顧客管理に欠かせないシステムであり、蓄積されたデータは企業にとってかけがえのない資産です。しかし、そのデータを失うリスクは、私たちが考えている以上に身近に存在しています。
なぜSalesforceのバックアップが重要なのか
見落とされがちなSalesforceのデータ損失リスク
Salesforceユーザーの多くは、「クラウドサービスだから安全」という認識を持っています。確かにSalesforceは、地理的に離れた複数のデータセンター間でデータを同期し、システム障害に強い構成を採用しています。
しかし、2020年7月にSalesforceが自社のバックアップサービスを終了して以降、データ保護の責任は私たち利用企業側に移っています。ここで注目すべきは、実際のデータ損失の大半がシステム障害ではなく、むしろ私たちの身近なところで起きているという事実です。
現場で起きている3つのデータ損失パターン
- データインポート時の予期せぬ上書き
- 設定変更による意図しない影響
- 権限設定の複雑さによる事故
ある製造業の企業では、四半期ごとの実績データの一括更新時に、誤って過去の商談データを上書きしてしまいました。気づいた時には既にゴミ箱の保持期限を過ぎており、過去半年分の商談履歴を失ってしまったのです。
金融サービス企業では、営業プロセスの改善に伴うワークフロールールの変更時に、既存の重要な自動化設定が削除されてしまいました。この発覚までに1週間かかり、その間に多くの取引先データが正しく更新されない状態となっていました。
医療機器メーカーでは、システム管理者の異動に伴う引継ぎ時に、一部のカスタム項目が誤って削除されました。これらの項目には長年蓄積された重要なデータが含まれており、復元に多大な時間と労力を要することになりました。
なぜ通常のバックアップでは不十分なのか
Salesforceのデータ構造は、一般的なシステムとは大きく異なります。単純にデータベースをバックアップするだけでは、以下のような要素を適切に保護することができません。
- オブジェクト間の関連性
- メタデータによる設定情報
- データへのアクセス権限
● 取引先と取引先責任者の紐付け
● 商談と商品の関連付け
● カスタムオブジェクト間の参照関係
● 項目の設定や入力規則
● ワークフローやプロセスビルダーの定義
● カスタム開発された機能やコード
● ユーザーやプロファイルの設定
● 共有ルールや階層による制御
● レコードタイプごとの表示制御
このような複雑な構造を持つSalesforceでは、データのバックアップと復元には専門的な知識と計画的なアプローチが必要となります。次章では、具体的にどのデータをバックアップすべきか、その範囲と優先順位について詳しく見ていきましょう。
Salesforceデータの特徴を理解する
「データのバックアップは必要だとわかりました。でも具体的に何をバックアップすればいいのでしょうか?」
このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。効果的なバックアップ計画を立てるには、まずSalesforceのデータ構造を理解する必要があります。
データとメタデータの関係性を理解する
Salesforceのデータ構造は、本棚に例えると分かりやすいでしょう。
本棚に並ぶ「本」が実際の営業データや顧客情報にあたります。これが「データ」です。取引先の情報、商談の記録、活動履歴など、日々の営業活動で蓄積される情報すべてが該当します。
一方、本棚自体の設計図にあたるのが「メタデータ」です。本棚の大きさ、棚板の数、本を分類するための仕切りなど、データを管理するための設定すべてが含まれます。具体的には以下のような要素です。
- カスタム項目の設定
- 画面レイアウトの配置
- 業務プロセスの自動化ルール
- システムの動作を制御するプログラム
バックアップすべき対象を特定する
基本データ
まず優先すべきは、日常的に更新される基幹データです。
- 取引先・取引先責任者の情報
- 商談やリードの記録
- 活動履歴やタスク
- 商品やサービスの情報
これらは企業の営業活動の根幹をなすデータであり、損失した場合の影響が最も大きいものです。
カスタマイズ設定
次に重要なのは、組織固有のカスタマイズ設定です。
- カスタム項目や入力規則
- ページレイアウトやレコードタイプ
- 承認プロセスやワークフロー
- レポートやダッシュボード
これらの設定は、長期間かけて最適化されてきた業務プロセスを形にしたものです。再構築には多大な時間と労力が必要となります。
開発要素
最後に、システムの動作を制御する開発要素があります。
- Apexクラスやトリガー
- Visualforceページ
- Lightning コンポーネント
- カスタムメタデータ型
これらは、組織特有の業務要件を実現するために開発された重要な資産です。
データの関連性を把握する
Salesforceの大きな特徴は、データ同士の密接な関連性にあります。
例えば、
- 取引先と取引先責任者の親子関係
- 商談と商品の関連付け
- カスタムオブジェクト間の参照関係
これらの関連性は、バックアップとリストアの際に特に注意が必要です。データを復元する際は、これらの関連性を正しく維持できるよう、適切な順序で作業を行う必要があります。
バックアップの優先順位を決める
限られた時間とリソースの中で効果的なバックアップを行うために、以下の観点で優先順位を検討しましょう。
- 更新頻度
- 業務影響度
- データ量
● 毎日更新されるデータ(高頻度)
● 週次・月次で更新されるデータ(中頻度)
● めったに更新されないマスタデータ(低頻度)
● 損失すると業務が停止するデータ(重大)
● 一時的な代替が可能なデータ(中程度)
● 再作成が容易なデータ(軽微)
● 大量データの一括バックアップに要する時間
● ストレージの使用量と保管コスト
● リストア時の処理負荷
これらの要素を考慮し、組織に適したバックアップ計画を立てることが重要です。次章では、これらの知識を踏まえた上で、具体的なバックアップとリストアの手順について解説していきます。
実践的なバックアップと復元の手順
ここまで、Salesforceのバックアップの重要性とデータの特徴について見てきました。この章では、実際のバックアップ作業と、いざという時のデータ復元について、具体的な手順を解説します。
バックアップの準備
バックアップを始める前に、まず以下の準備作業を行います。
データの棚卸し
まず、自社のSalesforce環境で管理している以下のデータを確認します。
- 標準オブジェクトの利用状況
- カスタムオブジェクトの数と用途
- 添付ファイルやドキュメントの容量
- カスタマイズ設定の範囲
バックアップスケジュールの検討
データの特性に応じて、バックアップの頻度を決めます。
- 日次バックアップ: 取引先、商談、活動履歴など、日常的に更 新される重要データ
- 週次バックアップ: 商品マスタ、価格表など、更新頻度が比較 的低いデータ
- 月次バックアップ: レポート定義、ダッシュボード設定など、設定系のデータ
データバックアップの実践手順
1. 週次データエクスポートの設定
最も基本的なバックアップ方法は、Salesforceの週次データエクスポート機能を利用することです。以下の手順で設定します。
- 設定画面から「データのエクスポート」を開く
- エクスポートスケジュールを選択(週次/月次)
- バックアップ対象のオブジェクトを指定
- エクスポート通知を受け取るメールアドレスを設定
ここで注意したいのは、エクスポートされたデータは48時間以内にダウンロードする必要があることです。自動でダウンロードする仕組みを整えておくと安心です。
2. メタデータのバックアップ
メタデータのバックアップには、主に以下の2つの方法があります。
Visual Studio Codeを使用する方法
- Salesforce CLI拡張機能をインストール
- 組織に接続するための認証設定
- メタデータの取得コマンドを実行
- 取得したメタデータをバージョン管理システムで保存
変更セットを活用する方法
- Sandbox環境を準備
- バックアップ対象のコンポーネントを変更セットに追加
- 変更セットをSandboxに展開
- 定期的にSandboxを更新
データ復元の手順
いざという時のために、データ復元の手順もあらかじめ確認しておきましょう。
1. 復元前の確認事項
データを復元する前に、以下の点を必ず確認します。
- 自動化プロセスの一時停止
- 関連システムとの連携状況
- ユーザーアクセスの制御
● ワークフロールール
● プロセスビルダー
● Apexトリガー
● 外部システムとの同期設定
● API連携の稼働状況
● 一般ユーザーのアクセス制限
● システム管理者の作業用プロファイル準備
2. データの復元手順
- 復元対象データの確認
- テスト環境での復元確認
- 本番環境での復元作業
● バックアップファイルの内容確認
● 必要なデータの特定
● データ間の依存関係の確認
● Sandbox環境での動作確認
● データの整合性チェック
● 関連データとの連携テスト
● リストア手順の実行
● データの検証
● ユーザーへの影響確認
トラブルシューティング
データ復元時によくある問題とその対処方法をまとめました。
外部IDを活用した関連データの復元
関連するデータを復元する際は、外部IDを活用すると効率的です。
- 主となるオブジェクトに外部ID項目を作成
- バックアップ時のIDを外部IDとして保存
- 従となるオブジェクトから外部IDを参照して復元
データ量が多い場合の対処
大量データを復元する際は、以下の点に注意します。
- データを適切なサイズに分割
- APIの制限に注意
- バッチ処理の活用
バックアップ運用のベストプラクティス
最後に、日々のバックアップ運用のポイントをまとめます。
- バックアップの自動化
- 定期的な復元テスト
- ドキュメント管理
● スクリプトによる自動実行
● 結果の自動通知
● エラー時の警告設定
● 四半期に1回程度の復元確認
● 手順書の見直しと更新
● 担当者の教育と訓練
● バックアップ設定の記録
● 復元手順の文書化
● 実行結果のログ保管
このように、バックアップと復元の作業は計画的に進める必要があります。次のまとめでは、本記事の重要ポイントを振り返り、さらなる改善のためのヒントをご紹介します。
まとめ:明日からできるバックアップ対策
ここまで、Salesforceのバックアップについて詳しく見てきました。「バックアップは大切だとわかったけれど、どこから始めればいいのだろう」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで最後に、すぐに始められる具体的なステップをご紹介します。
まず始めるべき3つのこと
1. 現状把握のための棚卸し
来週から始められる具体的なアクション:
- 現在利用しているオブジェクトの一覧を作成する
- 日次・週次で更新されるデータを特定する
- カスタマイズ設定の範囲を確認する
2. シンプルなバックアップからスタート
今すぐ設定できる基本的な対策:
- 週次データエクスポートの有効化
- 重要な設定変更時のスクリーンショット保存
- Sandbox環境への定期的な設定コピー
3. チーム内での意識共有
データを守るための第一歩:
- システム管理者間での作業ルール確認
- データ更新時の事前承認フロー整備
- バックアップの実行状況の定期確認
見落としがちな注意点
バックアップ対策を進める中で、特に注意が必要なポイントをもう一度確認しておきましょう。
- Salesforceのゴミ箱には制限があります
- データの関連性を意識する
- バックアップデータの管理
● 保持期間は15日間まで
● 容量制限を超えると古いデータから削除
● メタデータは保存されない
● 主従関係のあるデータは順序を考慮
● 外部システム連携の影響を確認
● カスタム項目の依存関係を把握
● セキュアな保存場所の確保
● アクセス権限の適切な設定
● 定期的なバックアップ確認
これからのバックアップ対策
組織の成長に合わせて、段階的にバックアップ対策を強化していくことをお勧めします。
短期的な対策(1-3ヶ月)
- 週次バックアップの開始
- バックアップ担当者の明確化
- 基本的な手順書の作成
中期的な対策(3-6ヶ月)
- 自動バックアップの仕組み構築
- リストア手順の整備と訓練
- バックアップ範囲の最適化
長期的な対策(6ヶ月以降)
- バックアップ戦略の定期的な見直し
- 復元訓練の定例化
- バックアップ体制の組織的な整備
Salesforceのバックアップは、「面倒な作業」や「余計なコスト」ではありません。それは、企業の重要な資産を守るための必要不可欠な「保険」です。
小さな一歩から始めて、確実に実施できる範囲から対策を進めていくことが、持続可能なバックアップ体制の構築につながります。この記事が、みなさまのデータ保護対策の一助となれば幸いです。
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