10分で着くはずが100分。自動運転タクシーWaymoでイベント会場へ向かったら、目的地目前で降りられず「市内観光」が始まった話
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サンフランシスコで、普通なら車で10分ほどの場所へ移動しようとしました。
選んだのは、自動運転タクシーのWaymo。
ところが、実際に車を降りることができたのは約100分後でした。
途中で目的地のすぐ近くまで来たのに止まれず、再び遠回り。大渋滞にはまり、周囲の人たちに道を空けてもらい、サポートに連絡し……。結果として、サンフランシスコの街中をかなり長い時間眺めることになりました。
自動運転そのものは驚くほど自然で、体験としてはとても面白かったです。一方で、「移動の主導権をシステムに預ける」とはどういうことなのかも、少しだけ実感する出来事になりました。
Dreamforceへ向かうため、Waymoに乗ってみた

今回向かっていたのは、サンフランシスコで開催される「Dreamforce」の会場です。
DreamforceはSalesforceが開催する大規模なカンファレンスで、開催中は多くの参加者が市内に集まります。この日も会場周辺はかなり混雑しており、道路には車が詰まり、場所によってはほとんど動かないような状態になっていました。
そんな中、「せっかくサンフランシスコにいるのだから、自動運転タクシーに乗ってみよう」とWaymoを選びました。
目的地までは、通常なら10分ちょっと。ちょっとした移動のつもりでした。
気づいたら、到着まで30分になっていた
乗ってすぐは、特に違和感を持っていませんでした。
ところがしばらく走っているうちに、「あれ、思っていたルートを走っていないな」と気づきます。
そこでWaymoの画面を確認してみると、表示されていた到着予定時間は約30分。
もともとは10分ほどで着く距離です。
ただ、Waymoは道路状況などによって人間が運転するときとは違うルートを走り、遠回りすることがあると聞いていました。そのため、この時点ではそこまで心配していませんでした。
むしろ窓の外にはサンフランシスコらしい坂道や街並みが広がっています。
「観光タクシーみたいで、むしろいいかも」
そんなことを話しながら、景色を楽しんでいました。自動運転そのものもかなりスムーズで、信号や周囲の車、歩行者に合わせてごく自然に走っていきます。

目的地目前。なのに、止まらない
しばらく走り、ようやく会場付近まで来ました。
「やっと着いた」と思ったところで、車内の画面には「停車できる場所を探しています」という表示。
Dreamforceの影響で周囲は大混雑していたので、最初は「安全に停められる場所を探しているんだろう」と思っていました。
ところが、1分、2分と経っても止まりません。
そのまま走り続け、気づけば5分以上。さっきまで目の前だったはずの目的地から、どんどん離れていきます。
ここから少しずつ不安になってきました。

降車地点を変えたら、また「あと30分」
「指定されている降車地点が悪いのかもしれない」と考え、降車地点を変更してみました。
すると、画面に表示されたのは、到着まで約30分。
ついさっき会場のすぐ近くまで来ていたはずなのに、また30分です。
サポートにはすぐ連絡できる。でも、英語が話せない
Waymoには、車内からサポートへ連絡できる仕組みがあります。つまり、困った時点ですぐに相談すること自体はできました。
ただ、ここで別の問題がありました。
乗っていた2人とも、英語にまったく自信がありません。
「オペレーターにつながったとして、状況をちゃんと説明できるのか」
その不安があり、連絡できる状態なのに、なかなか連絡する決心がつきませんでした。
とはいえ、Waymoは走り続けています。最終的には覚悟を決めてサポートへ連絡し、状況を伝えました。
サポートからは、Waymoは通行制限のある道路や難しいエリア、混雑した場所などを避けながら自動運転車に適したルートを選ぶため、人間が運転する場合とは異なる経路になることがある、という説明を受けました。
なるほど。確かにこの日の交通状況は、普通ではありませんでした。

Dreamforceの大渋滞と、自動運転の難しさ
会場周辺では大規模な渋滞が起きていました。
道路が詰まり、車が止まり、臨時の交通整理も入る。人間同士ならアイコンタクトやジェスチャー、その場の空気で「先に行って」「ここを通って」と調整するような場面がたくさんあります。
今回の出来事を、単純に「Waymoがダメだった」とまとめるのは違うと思っています。
人間が運転していても大変なほどの混雑でしたし、こうした例外だらけの状況こそ、自動運転にとって難易度が高い場面なのだと思います。
普段の道路を安全に走ることと、大型イベント開催時の混沌とした交通状況を臨機応変に抜けることは、また別の難しさがある。今回、その境界を体験できたように感じました。
2回目の会場付近。今度は渋滞の列に入れない
遠回りの末、Waymoは再び会場の近くまで戻ってきました。
つまり、これが2回目の「もうすぐ着くはず」というタイミングです。
ところが、会場目前で再び渋滞にはまりました。
Waymoは渋滞の列へ入ろうとするのですが、前後の車との距離が近く、なかなか進むことができません。
そこで起きたのが、今回の中でも特に印象に残っている光景です。
周囲にいた現地の人たちが、Waymoが通れるように車や周囲を誘導し、道を空けてくれました。
そして、その人たちはなぜかWaymoに普通に話しかけています。
もちろん、運転席には誰もいません。
それでも、人間のドライバーに声をかけるように、無人のWaymoに向かって「行けるよ」とでも言うように話しかけている。
自動運転車が街の日常に入り込んでいるサンフランシスコだからこそ見られる、不思議で面白い光景でした。

「また止まれないかも」と思い、途中で降りることにした
ただ、この光景を見ながら、こちらには別の不安がありました。
「このまま会場前まで行っても、また停車場所が見つからず、もう一度走り出すのではないか」
一度それを経験しているので、さすがにもう一周する勇気はありません。
そこで、今回は会場の目の前まで行くことを諦め、途中で降りるための「Pull over」の操作を選びました。
Waymoが停車できる場所で止まったところで降車。
そこからカンファレンス会場までは、歩いて5分ほどでした。

乗る前は10分程度の移動だと思っていたのに、Waymoを降りた時点で約100分。
最後の5分は、自分の足で会場へ向かいました。
「AIに移動を預ける」という、ちょっとした恐怖体験
もう一つ、今回強く印象に残ったことがあります。
それは、「自分では車を直接どうすることもできない」という感覚です。
人間が運転するタクシーなら、「このあたりで降ります」とドライバーに伝えられます。自分で運転しているなら、自分の判断で停車できます。
Waymoには途中停車を求める「Pull over」の機能もありますが、実際に安全な場所へ停車して降車できる状態になるまでは、システムの判断を待つことになります。
目的地が目の前にあるのに止まらず、そのまま離れていく。
後部座席に座りながら見ていると、ほんの少しだけ「AIに閉じ込められたような」感覚がありました。
もちろん、安全のために停車場所を慎重に選んでいるからこその挙動でもあります。ただ、普段AIに文章や作業を任せるのとは違い、自分自身の物理的な移動をAIに任せると、主導権を預けている感覚が一気にリアルになります。
これも、実際に乗ってみなければ分からなかった経験でした。
サポート対応で返金+10ドルのクレジット

乗車時間が1時間を超えたところで、サポートには「すでにかなり長い時間乗っており、予定にも影響が出ている」と伝えました。
最終的には今回の乗車料金を返金してもらい、さらに10ドル分のWaymoクレジットも受け取ることになりました。遠回りによる追加料金は発生しない、という説明もありました。

サポートの対応自体は丁寧でした。
ただし、サポートとやり取りしている間も、こちらはまだWaymoの中です。
それでも、自動運転は面白かった

ここまで読むと、「Waymoはもうこりごりなのでは?」と思われるかもしれません。
でも、自動運転そのものの体験はかなり良かったです。
人間のドライバーがいない車が、サンフランシスコの市街地を当たり前のように走っている。その未来感はやはり面白いですし、通常走行のスムーズさにも驚きました。
今回のトラブルも含めて、一度体験できたこと自体にはかなり満足しています。
一方で、サポートからもらった10ドル分のクレジットを使って、すぐにもう一度乗りたいかと言われると……。
今のところ、そのクレジットは使わなくてもいいかもしれません。
少なくとも今回、ひとつ確実に学んだことがあります。
自動運転タクシーを使うときは、時間には余裕を持っておいたほうがいい。
10分で着くつもりでも、100分になることがあるので。

