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Salesforce Winter’24で実現する分かりやすいエラーメッセージ ~フローのカスタムエラー要素活用ガイド~

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Salesforce管理者の皆さんは、こんな経験をお持ちではないでしょうか。
フローで作成した自動化処理がエラーになり、ユーザーから「エラーの意味が分からない」という問い合わせが届く。確認してみると、エラーメッセージが技術的すぎて、一般のユーザーには理解しづらい内容だった。

このような課題に対応するため、Salesforce Winter’24では待望の新機能「カスタムエラー要素」がレコードトリガーフローに追加されました。この機能を使えば、ユーザーにとって分かりやすいエラーメッセージを表示できるようになります。

フローのエラーメッセージが抱える課題


フローによる自動化は、日々の業務効率を大きく向上させる重要な機能です。取引先の新規作成時の重複チェックや、商談の金額計算の自動処理など、様々な場面で活用されています。
しかし、これまでのフローには大きな課題がありました。エラーが発生した際に表示されるメッセージをカスタマイズできないのです。たとえば、取引先の重複チェックでエラーが発生した場合、システムは「フロー実行時にエラーが発生しました」といった一般的なメッセージを表示します。このメッセージからは、なぜエラーが起きたのか、どうすれば解決できるのかが分かりません。

ユーザーはエラーの原因が分からず、次のような状況に陥ることがよくありました。
「保存ボタンを押したら、何かエラーが出てしまいました。システム管理者に問い合わせてください、と表示されていますが、締切が近いのに…」
このような状況は、ユーザーの作業を中断させるだけでなく、システム管理者の負担も増やしてしまいます。エラーの調査と対応に時間がかかり、結果として業務効率の低下を招いていたのです。

特に影響が大きいのは、データの整合性チェックや重複チェックといった、バックグラウンドで実行される処理です。ユーザーからは処理の詳細が見えないため、エラーの原因を特定することが難しく、解決に時間がかかってしまいます。
また、エラーメッセージの表示場所も固定されていたため、ユーザーの目に留まりにくいという問題もありました。フォーム上部に表示されるエラーメッセージを見落とし、同じ操作を何度も繰り返してしまうケースも少なくありません。
こうした課題に対して、Winter’24で追加されたカスタムエラー要素は、次のような解決策を提供します。

  1. エラーメッセージの内容をカスタマイズできる
  2. メッセージの表示場所を選択できる
  3. 複数のエラーメッセージを組み合わせて表示できる

 
この機能により、「同じ取引先名が既に登録されています。取引先名を変更してください」といった、具体的で分かりやすいメッセージを表示できるようになりました。エラーの原因と対処方法が明確になり、ユーザーは自己解決できるようになります。
次章では、このカスタムエラー要素の具体的な機能と特徴について詳しく見ていきましょう。

カスタムエラー要素の基礎知識


フローのカスタムエラー要素は、単なるメッセージ表示の機能ではありません。ユーザーの作業状況に応じて、適切なタイミングで、適切な場所に、必要な情報を表示する機能です。まずは、この要素の基本的な特徴から見ていきましょう。

メッセージの表示場所を選べる

カスタムエラー要素では、エラーメッセージをどこに表示するかを選択できます。主な表示場所には次の3つがあります。

  1. レコードページのウィンドウ ページ下部にトースト形式で表示されるメッセージです。レコード全体に関わるエラーを通知する際に適しています。たとえば、取引先の重複チェックでエラーが見つかった場合などに使います。
  2. 項目のインラインエラー 特定の入力項目の直下に表示されるメッセージです。その項目に関する具体的な問題を指摘する際に使います。商談金額が設定可能な範囲を超えている場合など、項目単位のエラーを示すのに効果的です。
  3. データ読み込みの結果ファイル 一括データ登録時のエラーメッセージとして出力されます。データインポートウィザードなどを使用した際のエラー内容を、結果ファイルに記録します。

複数のメッセージを組み合わせる

1つのカスタムエラー要素で、複数のメッセージを設定できます。これにより、エラーの内容をより詳しく、段階的に説明することが可能です。
たとえば、取引先の登録時に次のような組み合わせが考えられます。
まず、ウィンドウ表示で「取引先情報の登録ができませんでした」と全体的な状況を伝え、続いて取引先名の入力欄の下に「同じ名前の取引先が既に存在します」というインラインエラーを表示する。このように、ユーザーの視線の流れに沿って情報を提供できます。

メッセージの内容設計のポイント

カスタムエラー要素を効果的に活用するには、メッセージの内容を慎重に設計する必要があります。

  1. 問題の内容 何が起きているのかを具体的に説明します。「エラーが発生しました」ではなく、「同じ名前の取引先が既に登録されています」のように、具体的な状況を伝えます。
  2. 発生理由 なぜその問題が起きたのかを説明します。「データの整合性を保つため」「売上目標の範囲を超えているため」など、業務上の理由を示します。
  3. 対処方法 ユーザーが次に取るべき行動を明確に示します。「取引先名を変更してください」「営業管理者に確認してください」など、具体的な指示を含めます。

入力規則との使い分け

カスタムエラー要素は、入力規則と似た役割を果たすように見えますが、使い分けのポイントがあります。
入力規則は、単一項目の値チェックや、関連する項目間の整合性チェックに適しています。一方、カスタムエラー要素は、複数レコード間の関係性チェックや、より複雑な業務ルールの検証に向いています。
たとえば、商談金額の上限チェックは入力規則で、取引先の重複チェックはカスタムエラー要素で実装する、といった使い分けを検討しましょう。
次章では、これらの知識を踏まえて、実際の実装手順を見ていきます。

実践!カスタムエラー要素の実装手順


それでは、具体的な実装手順を見ていきましょう。今回は、取引先の重複チェックを行うフローを例に、カスタムエラー要素の実装方法を説明します。

準備:開発環境の用意

まず、Winter’24の機能を試すための環境を用意します。
本番環境への影響を避けるため、以下のいずれかの方法で検証環境を準備しましょう。

フローの基本設定

フローを作成する前に、実現したい処理の流れを整理しましょう。今回のケースでは、

  1. 取引先レコードが作成されたときに処理を開始
  2. 同じ名前の取引先が存在するかチェック
  3. 重複がある場合はエラーメッセージを表示

 
この流れに沿って、フローを作成していきます。
まず、設定画面から「フロービルダー」に移動し、新しいフローを作成します。フロータイプは「レコードトリガーフロー」を選択します。

重複チェックの実装

フローの開始要素で、取引先オブジェクトの「レコードを作成」をトリガーとして設定します。
次に、既存の取引先を検索するための「レコードを取得」要素を配置します。検索条件として、

を設定します。これにより、作成しようとしている取引先と同じ名前のレコードを検索できます。

カスタムエラー要素の設定

重複チェックの結果に基づいて、カスタムエラー要素を設定します。「決定」要素を配置し、取得したレコードが存在する場合のパスを作成します。
このパスに、カスタムエラー要素を追加します。ここでのポイントは、エラーメッセージの段階的な表示です。

1つ目のメッセージ:
表示場所:レコードページのウィンドウ
メッセージ:「取引先情報を登録できませんでした。」

2つ目のメッセージ:
表示場所:項目のインラインエラー
対象項目:取引先名
メッセージ:「『{!$Record.Name}』は既に登録されています。別の取引先名を入力してください。」

動作確認とテスト

フローの実装が完了したら、次のような手順でテストを行います。

  1. 新規の取引先レコードを作成
  2. 既存の取引先と同じ名前を入力
  3. 保存ボタンをクリック
  4. エラーメッセージの表示を確認

 

一括データ登録時の動作確認として、データインポートウィザードを使用して、重複する取引先名を含むCSVファイルをインポートしてみましょう。結果ファイルに、設定したエラーメッセージが正しく出力されることを確認します。

[データインポート結果画面] [一括登録時のエラー表示を確認するため] [データインポートの結果ファイル。カスタマイズされたエラーメッセージが出力されている画面]
テスト時は、次の点に注意して確認します。

  • エラーメッセージは分かりやすい場所に表示されているか
  • メッセージの内容は業務ユーザーが理解できる表現になっているか
  • 対処方法が明確に示されているか

以上が、カスタムエラー要素の基本的な実装手順です。次の「まとめ」で、実装時の注意点と活用のポイントを整理しましょう。

まとめ:カスタムエラー要素を活用したユーザー体験の向上

カスタムエラー要素は、単なるエラー通知の機能ではありません。これまでの説明を通じて、この機能がユーザーとシステムのコミュニケーションを円滑にする重要な役割を果たすことが分かったのではないでしょうか。

実装時の重要なポイント

フローにカスタムエラー要素を実装する際は、次の点に注意を払うことで、より効果的な活用が可能です。
まず、エラーメッセージの内容です。ユーザーの立場に立って考えると、単に「エラーが発生しました」という通知ではなく、「なぜエラーになったのか」「どうすれば解決できるのか」という情報が必要です。たとえば取引先の重複チェックであれば、「この取引先名は既に登録されています。取引先名を変更するか、登録済みの取引先を利用してください」といった具体的な案内が効果的です。
次に、表示場所の選択です。エラーの性質に応じて、適切な表示場所を選びましょう。データの整合性に関わる重要なエラーは画面全体に表示し、項目個別の問題は該当項目の近くに表示するなど、ユーザーの目線の動きを考慮した設計が大切です。

今後の展望と活用シーン

カスタムエラー要素の登場により、フローを使った業務改善の可能性が広がりました。例えば、

  1. 商談管理における与信チェック 取引先の与信限度額を超える商談が登録された際に、具体的な超過額と承認申請の手順を案内できます。
  2. 在庫管理システムとの連携 在庫数を超える受注が入力された場合に、現在の在庫数と入荷予定日を表示し、適切な対応を促すことができます。
  3. 予算管理における事前チェック 部門予算を超える経費申請があった場合に、予算残高と申請ルートの変更を具体的に案内できます。

今後の課題

カスタムエラー要素は非常に有用な機能ですが、いくつかの制約があることも覚えておく必要があります。現時点では、レコードトリガーフローでのみ使用可能であり、画面フローなど他のフロータイプでは利用できません。また、エラーメッセージの多言語対応など、より柔軟な設定オプションへのニーズもあるでしょう。
しかし、これらの制約があっても、カスタムエラー要素の導入はユーザー体験を大きく改善する可能性を秘めています。エラーメッセージを通じて適切なガイダンスを提供することで、ユーザーの自己解決力が高まり、システム管理者の負担軽減にもつながります。

Salesforceの自動化機能は、今後もフローを中心に発展していくことが予想されます。カスタムエラー要素の活用は、その中でも特に重要な位置を占めるでしょう。ユーザーにとって使いやすく、かつ業務の質を高めるシステムを実現するため、この機能を効果的に活用していきましょう。

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