診療報酬改定を医療機器メーカー・販売業の視点で深掘りする|在宅医療の重要性が高まる背景とは?令和8年度改定と今後の方向性
投稿日:
更新日:
目次
※本記事の作成・構成整理にはAIツールを使用しています。本記事は公的情報をもとにした一般的な情報提供を目的としており、制度対応や診療報酬の算定にあたっては、厚生労働省等の最新の告示・通知・疑義解釈をご確認ください。
2026年6月に施行された令和8年度診療報酬改定では、「質の高い在宅医療の推進」がテーマの一つとして位置付けられ、在宅療養を支える医療機関の体制や医療機関同士の連携、腹膜透析の管理、オンライン診療など、在宅医療に関連する複数の見直しが行われています。厚生労働省の改定説明資料でも、「質の高い在宅医療の推進」が独立した項目として整理されています。
さらに、2040年頃を見据えた医療提供体制についても、入院医療に加えて外来・在宅医療、介護との連携、人材確保まで含めて地域全体で考える方向が示されています。新たな地域医療構想では、在宅医療を提供し地域の生活を支える機能も重要な医療機関機能の一つとして位置付けられています。
こうした動きから、在宅医療は診療報酬上の個別の評価にとどまらず、今後の地域医療を支える重要な領域として位置付けられていることが分かります。
医療機器メーカー・販売業にとっても、在宅人工呼吸器、在宅酸素療法、在宅透析関連機器といった従来の在宅医療機器に加え、遠隔モニタリング、通信機能、データ連携など、医療提供体制の変化と製品・サービスとの接点を幅広く捉えることが重要になります。
本記事では、在宅医療の重要性が高まっている背景と令和8年度診療報酬改定での見直しを整理したうえで、今後の政策の方向性と、医療機器メーカー・販売業が製品・サービスや医療機関への提案を検討する際の着眼点を解説します。
なぜ在宅医療の重要性が高まっているのか

在宅医療が重視されている背景の一つに、今後の人口構造と医療需要の変化があります。
厚生労働省では、2040年頃に向けて85歳以上の高齢者が増加し、在宅医療の需要も増加すると見込んでいます。一方で、地域によって人口構造や医療資源には差があり、限られた医療従事者で必要な医療を提供していくことも大きな課題となっています。
そのため、今後の在宅医療では、単に訪問診療の件数を増やすのではなく、地域の病院・診療所・訪問看護・薬局などが役割を分担しながら、必要な患者を継続して支えられる体制を構築することが重要になります。
厚生労働省の「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」でも、在宅医療の提供体制の整備について継続的な検討が行われ、2026年2月には第8次医療計画の後期に向けた「意見及び対応の方向性」が取りまとめられています。
令和8年度診療報酬改定と、2040年を見据えた医療提供体制の検討は、こうした共通の背景の上に進められていると考えると、在宅医療に関する制度の動きを把握しやすくなります。
令和8年度診療報酬改定で重視された在宅医療
令和8年度診療報酬改定では、「質の高い在宅医療の推進」として、在宅医療を支える体制や医療機関間の連携などについて複数の見直しが行われました。
医療機器メーカー・販売業の視点から整理すると、主に次のような論点があります。
| 主なテーマ | 改定・政策上の方向性 | 医療機器メーカー・販売業の着眼点 |
| 在宅医療提供体制 | 地域の医療機関が連携して患者を支える | 在宅医療を担う施設とその役割 |
| 24時間対応・診療継続 | 急変時や災害時を含めた体制整備 | 電源、代替機、保守、消耗品供給 |
| 医療機関間連携 | 専門医療機関と地域の医療機関の役割分担 | 機器・情報・データを複数施設で活用する仕組み |
| 腹膜透析 | 医療機関間連携による指導管理を評価 | 在宅透析機器、関連資材、データ管理 |
| オンライン診療 | D to P with Nなどの評価・算定方法を明確化 | 通信機器、遠隔支援、患者情報の活用 |
ここで重要なのは、在宅医療を「患者宅で使用する医療機器」という視点だけで捉えないことです。
どの医療機関が在宅医療を担い、どのような機能を持ち、周囲の医療機関や事業者とどのように連携するのか。
こうした医療提供体制まで見ることで、自社製品やサービスがどこで必要になるのかを具体化しやすくなります。
24時間対応・診療継続から考える在宅医療機器の役割

在宅医療では、患者が医療機関の外で療養を続けるため、日常的な機器利用だけでなく、夜間・休日、機器トラブル、停電、災害などを含めた継続的な支援が重要です。
例えば在宅人工呼吸器であれば、バッテリーの稼働時間、停電時の対応、代替機の手配、故障時の交換、消耗品の供給などが考えられます。
在宅酸素療法でも、酸素濃縮装置や酸素ボンベといった機器に加え、定期点検や供給、緊急時の対応を含めて療養を継続できる仕組みが必要になります。
医療機器メーカー・販売業にとっては、ここに一つの差別化のポイントがあります。
機器の性能や価格に加えて、「その製品・サービスによって、医療機関が在宅患者を継続して支える体制のどの部分を補えるか」という視点です。
機器本体、保守、消耗品供給、代替機、問い合わせ対応などを一体として整理することで、医療機関側が構築しようとしている在宅医療提供体制に沿った提案を検討しやすくなります。
腹膜透析の見直しから見る「医療機関間の連携」
令和8年度改定で、医療機器メーカー・販売業との関係を具体的に考えやすい例の一つが腹膜透析です。
今回の改定では、在宅自己腹膜灌流指導管理料2(1,500点)が新設されました。
厚生労働省は、腹膜透析を管理する医療機関が少ない二次医療圏が多いことを踏まえ、腹膜透析を導入する基幹病院とかかりつけ医が連携することで、患者の医療アクセスを確保しながら質の高い管理を提供できるよう評価を見直しています。
ここから見えてくるのは、専門的な治療や管理を一つの医療機関で完結させるのではなく、専門性を持つ医療機関と地域の医療機関が連携して患者を支える考え方です。
医療機器メーカー・販売業でも、
専門的な治療を担う医療機関
→ 地域で継続管理を担う医療機関
→ 患者宅
という一連の流れを見ることで、必要になる機器やサービスを考えやすくなります。
腹膜透析装置や関連資材に加え、治療記録の管理、遠隔モニタリング、医療機関側でのデータ確認なども、医療機関間の連携を支える要素として検討できます。
在宅医療を支える遠隔モニタリング・オンライン診療

在宅医療では、患者宅への訪問に加えて、ICTを活用して患者の状態や治療状況を把握する仕組みも選択肢となっています。
令和8年度診療報酬改定では、D to P with Nによるオンライン診療について評価が整理されました。
具体的には、患者のもとに看護師等が訪問し、医師が情報通信機器を用いて診療を行う場合について、新たに「訪問看護遠隔診療補助料」が設けられたほか、訪問看護との併算定などの取扱いも明確化されています。
また、在宅酸素療法については、遠隔モニタリング加算に関する施設基準も設けられており、在宅医療と遠隔での患者情報の把握にはすでに診療報酬上の接点があります。
こうした制度の動きを踏まえると、医療機器メーカー・販売業では、
- 遠隔モニタリング機器
- バイタルセンサー
- ウェアラブルデバイス
- 通信機能を備えた在宅医療機器
- 患者情報を確認・管理するシステム
などについて、在宅医療との接点を検討できます。
製品・サービスを考える際には、「データを取得できる」という機能から一歩進めて、
誰が情報を確認するのか
どの情報を診療に利用するのか
経時的な変化をどのように把握するのか
医療機関や訪問看護等との連携にどう活用するのか
まで想定することがポイントになります。
遠隔モニタリングやオンライン診療は、在宅医療をすべて置き換えるものとしてではなく、限られた医療資源の中で、訪問や対面診療と組み合わせながら患者を支える手段の一つとして捉えると、今後の製品・サービスとの関係を整理しやすくなります。
2040年を見据えた医療提供体制の変化
在宅医療の今後を考えるうえで、令和8年度診療報酬改定とあわせて確認しておきたいのが「新たな地域医療構想」です。
従来の地域医療構想は病床機能を中心としていましたが、新たな地域医療構想では2040年頃を見据え、病床に加えて外来・在宅医療、介護との連携、人材確保などを含めた医療提供体制全体を対象とする方向が示されています。
その中では、病床機能だけでなく、医療機関が地域でどのような機能を担うのかにも着目しています。
特に在宅医療については、地域の在宅医療需要や医療資源には差があることから、地域ごとの状況に応じて、病院や診療所などが担う役割を検討していく考え方が示されています。
スケジュールでは、2026年度に都道府県で地域の医療提供体制全体の方向性や必要病床数等を検討し、2027年度から新たな地域医療構想に関する取組を順次開始する方向が示されています。その後、医療機関機能に着目した地域での協議を進める想定です。
つまり、在宅医療についても、
どの医療機関が在宅医療を担うのか
どこが急変時を支えるのか
どの範囲で連携するのか
限られた人材をどのように補完するのか
といった体制づくりが、地域ごとにより具体化していくことが考えられます。
医療機器メーカー・販売業にとっても、将来の市場を患者数や高齢化率だけから見るのではなく、地域で形成される医療機関の役割や連携体制まで見ることが重要になります。
医療機器メーカー・販売業が押さえたい3つの視点

こうした診療報酬改定と在宅医療政策の方向性を踏まえると、医療機器メーカー・販売業では、製品・サービスや医療機関への提案を検討する際に大きく3つの視点が考えられます。
① 自社製品が在宅医療の「どの機能」を支えるか
まず、自社製品・取扱製品について、「病院向け」「在宅向け」といった分類に加えて、在宅医療提供体制のどの部分を支えるものなのかを整理します。
例えば在宅人工呼吸器であれば、在宅での治療継続だけでなく、24時間の療養支援、停電・災害時の継続、遠隔での情報確認などとの関係が考えられます。
在宅酸素療法であれば、機器本体だけでなく、酸素供給、保守、代替機、緊急時対応なども含まれます。
診療報酬や政策で示される医療機能と自社製品との接点を整理することで、製品企画やサービス設計、医療機関への提案内容を検討しやすくなります。
② 提案先を「施設種別」だけでなく「担う機能」から見る
在宅医療に関わるニーズは、すべての病院・診療所で同じではありません。
在宅療養を積極的に担う診療所、専門的な治療を支援する病院、在宅患者の急変時に対応する医療機関など、地域の中で担う役割によって必要となる機器やサービスは異なります。
新たな地域医療構想でも医療機関機能に着目した医療提供体制が重視されているため、メーカー・販売業でも、施設種別や診療科だけでなく、地域の中でその医療機関がどのような役割を担っているかを見ることが、提案先を考える一つの視点になります。
③ 「遠隔・連携・継続」を製品・サービスの検討軸に加える
今後の在宅医療では、患者宅で使用できることに加えて、地域の医療提供体制の中でどのように活用できるかという視点も重要になります。
例えば、遠隔から情報を確認できること、複数の医療従事者が必要な情報を確認できること、機器トラブルや災害時にも療養を継続できること、保守・消耗品供給を安定して行えることなどです。
すべての機能を一つの製品で備えるという意味ではありません。
機器、システム、保守、物流など、自社がどの部分を担い、医療機関や他の事業者と組み合わせながら在宅医療をどう支えられるか。
この視点を持つことで、自社製品の役割や、今後検討すべきサービスの方向性をより具体的に整理できます。
まとめ|在宅医療の重要性を制度と今後の医療提供体制から捉える
令和8年度診療報酬改定では、「質の高い在宅医療の推進」が一つのテーマとなり、医療機関間の連携、腹膜透析の管理、オンライン診療など、在宅医療に関する複数の見直しが行われました。
さらに、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想では、病床だけでなく外来・在宅医療を含む医療提供体制全体を対象とし、地域の医療機関が担う機能や連携を整理していく方向が示されています。
医療機器メーカー・販売業にとっては、在宅医療を単に「在宅向け医療機器の市場」として見るのではなく、
診療報酬では、どのような在宅医療や連携が評価されているか
→ 今後、地域ではどのような医療提供体制が形成されていくのか
→ その中で、自社の製品・サービスがどの機能を支えられるか
という流れで捉えることが重要です。
在宅人工呼吸器、在宅酸素療法、在宅透析関連機器、遠隔モニタリング機器、バイタルセンサーなどについても、機器そのものに加えて、医療機関の役割、地域内の連携、遠隔での情報活用、診療継続まで視野を広げることで、製品・サービスや医療機関への提案を考える際の新たな着眼点が見えてきます。
令和8年度改定で示された評価と、2040年を見据えて進む医療提供体制の検討をあわせて確認することが、これからの在宅医療と医療機器の接点を考えるうえで重要になるでしょう。
関連記事
フロッグウェル株式会社
「診療報酬改定を医療機器メーカー・販売業の視点で読む|材料価格・保険適用・データ活用のポイント」
URL:https://frogwell.co.jp/blogs/salesbusiness/
フロッグウェル株式会社
「診療報酬改定を医療機器メーカー・販売業の視点で深掘りする|医療DX・AI活用はどう変わる?令和8年度改定とSaMDの評価」
URL:https://frogwell.co.jp/blogs/healthcaredx-ai/
参考資料・URL
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
厚生労働省「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63344.html
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 医療機関間連携による腹膜透析管理の推進」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666320.pdf
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 D to P with Nのオンライン診療の評価の明確化」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001669887.pdf
厚生労働省「新たな地域医療構想等に関する検討会」関連資料・議事録
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000161127_00077.html

