Agentforce Vibesの衝撃 – AIがコードを書くだけでなくデプロイまで
#AI #Agentforce #Agentforce Vibes
目次
Agentforce Vibesとは
2025年10月、Salesforceが発表したAgentforce Vibesは、開発者体験を根本から変える可能性を秘めています。
これまでの生成AIツールは「コードを提案する」段階で止まっていましたが、Vibesはさらに一歩踏み込み、環境を理解しコード生成からデプロイ実行までを支援してくれます。
「作りたい機能」を伝えるとVibesは要件を整理し、必要なオブジェクトやApexを提案。
さらにユーザが承認しながら進めることで、実際にメタデータを作成しデプロイまで導いてくれる。
単なるアシスタントではなく、共に設計し実装を進める“AIペアプログラマ” というのが、Vibes最大のインパクトでしょう。
本記事では、2025/10/4時点の発表内容および試用環境で確認できた動作をもとに、
Agentforce Vibesの特徴と可能性を整理します。
仕様や機能は今後変更される可能性があります。
【Agentforce Vibesのポイント】
- ステップごとにユーザが承認しながらデプロイまでAIが担ってくれる
- Salesforce組織を接続しておくと、組織を解析しながら提案と実装をしてくれる
- Salesforce環境特有のメタデータ構成に現時点では完全には対応していないように見えるが、何度かエラー修正をすることでデプロイまで実現が可能
Vibe codingとは
生成AIを用いて必要な機能や要件を記述するだけで自然言語をコードに変換するアプローチです。
Agentforce for Developersとの違い
従来からSalesforceで用意されているAgentforce for Developersでは、デプロイするためのコマンド、例えばデプロイする際には下記のようなマニフェストファイルのデプロイコマンドを提案してくれますが、このコマンドを実際に実行するのはユーザの仕事でした。
sf project deploy start –target-org dev1org –manifest manifest/package.xml –test-level NoTestRun
今回発表されたAgentforce Vibesでは「デプロイしたい」旨を伝えると、AI自身がコマンドを生成し実際のSalesforce環境までデプロイ自体の実行してくれるようです。ただしステップごとに次に進むかユーザで判断が出来るため、気づいたら意図しないデプロイが走っていた、ということは無いように出来るようです。AIがデプロイ用のコマンド生成や実行の提案を行い、ユーザ承認の元で実行を進められるというイメージですね。
【VS Code上でのAgentforce Vibesの見え方】
新しい自律型AIエージェント「Vibe Codey」とチャットすることで、Agentforce Vibesを使用することが出来ます。
Agentforce Vibesの「Plan」と「Act」
Agentforce Vibesには、「Planモード」と「Actモード」の2つの動作モードがあります。
「Planモード」と「Actモード」の違い
- Planモードでは、アイデアや要件を入力すると、Vibesが設計方針や必要な構成を提案します。
- Actモードでは、実際にSalesforce組織やプロジェクトに接続してVibesが、コードや設定を自動生成・実行します。
特にSalesforce組織に接続した状態では、既存のオブジェクトやメタデータを読み取り、それらを踏まえて最適な提案をしてくれる点が特徴です。つまり「今ある環境を理解したうえで考えてくれるAIアシスタント」といえます。
MCPサーバー
VibesはAIがMCP (Model Context Protocol)を介してSalesforce 組織の構成情報を取得し、ユーザ承認のもとで実装やデプロイを支援する仕組みを備えています。直接的に組織データへアクセスするのではなく、MCPサーバーを経由して安全なやり取りが行われる点が特徴です。
MCPサーバーをON にすることで、AIはSalesforce環境のメタデータ構成を参照できるようになります。これにより、実際の組織設定を考慮した提案やコード生成が可能になります。
Planモードを使ってみる
例:在庫管理の仕組みを作りたい
在庫管理の仕組みを作っていきたいがどういった観点を検討すべきか、をVibe Codeyに聞いてみます。一般的にどの機能が必要かをVibe Codeyが一緒に考えてくれます。実際に機能を試してみましょう。
【Agentforce Vibesへの指示①】
―――――
Salesforceで在庫管理の仕組みを作りたい
―――――
【Agentforce Vibesからの回答】
細かい指示をしない場合、下記のような回答となりました。
質問に答えていくことでよりフィットした結論にたどり着くことが出来そうです。
【Agentforce Vibesからの回答全文】
―――――
Salesforceの在庫管理システムを構築するための計画を立てます。まず、いくつかの重要な質問があります。
## 現在のプロジェクト構造について
現在のプロジェクトには以下の主要なディレクトリが含まれています:
– `force-app/main/default/objects/` – オブジェクト定義用
– `force-app/main/default/classes/` – Apexクラス用
– `force-app/main/default/triggers/` – トリガー用
– `force-app/main/default/lwc/` – Lightning Web Components用
– `force-app/main/default/layouts/` – レイアウト用
## 在庫管理システムの要件について
在庫管理システムを構築するにあたって、以下の点について確認したいです。
1. __在庫管理の対象オブジェクト__:商品(Product)や在庫(Inventory)などのカスタムオブジェクトが必要ですか?それとも既存のオブジェクト(例:Product)を使用しますか?
2. __基本機能要件__:
– 在庫数量の追加・減少
– 在庫警告(在庫が少ないときに通知)
– 在庫移動履歴の記録
– 在庫のリアルタイム表示
3. __UI要件__:
– Lightning Web Component(LWC)での表示
– Lightning Pageでの表示
– または、従来のAuraコンポーネントを使用?
4. __ビジネスロジック__:
– 在庫の変更時に自動的に在庫履歴を記録
– 在庫が0になる場合の処理
– 在庫の同時更新時の競合回避
これらの情報をもとに、適切な設計と実装計画を立てます。
―――――
次の指示をしてみます。
【Agentforce Vibesへの指示②】
―――――
カスタムオブジェクトを作ることを考えている
―――――
【Agentforce Vibesからの回答】
カスタムオブジェクトの構成案と一般的に必要となる項目、更にApexなど含めたビジネスロジックについても提案してくれました。会話を続けていくことで現実的な構築案をまとめることが出来そうです。
【Agentforce Vibesからの回答全文】
―――――
では、カスタムオブジェクトを使った在庫管理システムの設計を進めます。さらにいくつかの詳細を確認させてください。
## 在庫管理システムの詳細設計
### 1. カスタムオブジェクト設計
__在庫オブジェクト(Inventory__c)__
– 商品名(Product_Name__c)- テキスト
– 在庫数量(Quantity__c)- 数値(整数)
– 在庫警告レベル(Low_Stock_Threshold__c)- 数値
– 在庫状態(Status__c)- 選択リスト(In Stock, Low Stock, Out of Stock)
– 商品(Product__c)- マスターリレーション(Productオブジェクトへの参照)
__在庫履歴オブジェクト(Inventory_History__c)__
– 在庫(Inventory__c)- マスターリレーション
– 変更タイプ(Change_Type__c)- 選択リスト(Add, Remove, Adjust)
– 変更数量(Quantity_Changed__c)- 数値
– 在庫残量(Remaining_Quantity__c)- 数値
– 変更日時(Change_Date__c)- 日付時刻
– 操作者(Changed_By__c)- ユーザー
### 2. ビジネスロジック
__トリガー処理__:
– 在庫数量が変更されたとき、在庫履歴を自動作成
– 在庫数量が警告レベルを下回った場合、通知メールを送信(実装予定)
– 在庫数量が0になった場合、在庫状態を「Out of Stock」に変更
__Apexクラス__:
– 在庫操作用の共通ロジック
– 在庫更新処理
– 在庫警告チェック
### 3. UIコンポーネント
– 在庫管理用のLightning Web Component
– 在庫一覧ページ
– 在庫編集ページ
この設計方針に賛成いただけますか?それとも別のアプローチをご希望でしょうか?
―――――
Actモードを使ってみる
次にMCPサーバーも活用して売上管理の仕組みを検討します。
Vibe Codeyと進めてみましょう。
Salesforce環境の既存設定を元に売上管理の検討を進める
上述の「MCPサーバー」をONにしておくことでSalesforce環境にすでに作成済みの「売上オブジェクト」を判断に加味してくれます。その上で、あえて売上管理をしたい旨で進めてみます。
【Agentforce Vibesへの指示①】
―――――
売上管理をしたい
―――――
【Agentforce Vibesからの回答全文】
下記の回答となりました。
特筆すべき点はすでにSalesforce環境に「(Sales__c、salesDetail__c)」オブジェクトがあることを認識し、既存のオブジェクトを拡張するか、別途新たに仕組みを作るのかを確認してくれた部分です。
【Agentforce Vibesからの回答全文】
―――――
売上管理機能を実装するためには、Salesforceで販売関連のオブジェクトを設計・開発する必要があります。現在のプロジェクト構造を見ると、既にいくつかの販売関連のオブジェクト(Sales__c、salesDetail__c)が存在しているようです。
売上管理システムを構築するための計画を立てます。
1. 現在のオブジェクト構造を確認
2. 売上管理に必要な新しいオブジェクトやフィールドの設計
3. ビジネスロジックの実装(TriggerやApexクラス)
4. ユーザーインターフェースの作成(レコードタイプ、レイアウト、フローなど)
売上管理に必要な主な要素は:
– 売上ヘッダー(Sales__c)と明細(salesDetail__c)
– 取引先(Account)との関連
– 商品(Product2)との関連
– 売上金額の計算と集計
– 売上履歴の表示
どの部分から着手しますか?以下のように選択できます。
– 現在のオブジェクト構造を詳しく確認
– 新しい売上管理オブジェクトの作成
– 既存の売上関連オブジェクトの拡張
―――――
次に「新しい売上管理オブジェクト」を作成する方針を伝えてみます。
【Agentforce Vibesへの指示②】
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新しい売上管理オブジェクトの作成
―――――
【Agentforce Vibesからの回答】
新しい売上オブジェクトを作成するために、設計の検討を進めてくれます。
【Agentforce Vibesからの回答全文】
―――――
新しい売上管理オブジェクトを作成するための詳細計画を立てます。
## 新しい売上管理オブジェクトの設計
### 1. オブジェクト名の決定
– 売上管理用の新しいカスタムオブジェクトを作成
– 推奨名:`Sales__c`(既に存在するので、別の名前を検討)
– または、`Revenue__c` などの他の適切な名前
### 2. 必要なフィールドの設計
– 売上番号(自動採番)
– 売上日
– 取引先(Account)
– 売上金額(合計)
– 売上ステータス
– 説明
– 関連する商品明細
### 3. 拡張性の考慮
– レコードタイプの設定
– レイアウトの作成
– パーミッションセットの設定
– TriggerやApexクラスの作成
### 4. 既存オブジェクトとの統合
– 既存の `Sales__c` と `salesDetail__c` との関係性を確認
– 必要に応じて関連付けを行う
## 実装手順
1. 新しいカスタムオブジェクトの作成
2. 必要なフィールドの追加
3. レコードタイプとレイアウトの作成
4. Triggerの作成(売上金額の自動計算など)
5. Apexクラスの作成(ビジネスロジック)
6. ユーザーインターフェースの設定
どの部分から始めますか?具体的には:
– 新しいオブジェクト名の決定
– 作成するフィールドの詳細設計
– 既存のオブジェクトとの関係性の確認
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会話を進め、まずは売上オブジェクトと最低限の項目をリリースすることになりました。
実装内容が決まると必要なメタデータファイルを自動で生成してくれます。
ユーザ自身は生成されたメタデータを確認し、記載が問題無ければ「Save」ボタンを押すことでファイルが自動保存されます。
会話を進めることでオブジェクトと項目のメタデータが自動で作成されました。
更に「デプロイまで進めたい」旨を伝えると、
自動でデプロイのためのコマンドを生成してくれました。
「Run Command」ボタンを押すことでリリースを実行できます。
デプロイエラーとなったので「エラー原因と対応策」と入力すると、
対応策を提案してくれました。
何度かエラー修正をすることで、リリースを完了することができました。
AIがエラー修正の提案や実行の提案を行い、ユーザ承認のもとで実行を進められる形ですね。
まとめ
Agentforce Vibesはまだ発展途上のため、まだ一発でエラーなくリリースできるほどには成熟していません。エラー修正や調整は依然として必要です。ですがAIが環境を理解しながら設計からデプロイまで伴走してくれる体験は、これまでの開発支援ツールとは一線を画します。
「AIをどう使うか」から「AIとどう開発するか」へ。
その第一歩を示したのが、Agentforce Vibesなのかもしれません。Dreamforce 2025での続報が楽しみです。
※本記事は2025年10月時点の公開情報・試用環境に基づいて作成しています。
仕様や機能は今後変更される可能性があります。
<Salesforce>
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