在宅医療にかかる地域別データ集とは オープンデータの特徴や活用方法を解説
今回は「在宅医療にかかる地域別データ集」を活用したオープンデータの特徴や活用方法を解説します。
在宅医療にかかる地域別データ集とは
在宅医療に関連する統計調査等のデータについて、1,741の基礎自治体別に再集計し、集約したデータ集です。都道府県別でかつ市町村ごとにデータが収集できますので、あらゆる地方の情報を効率的に収集することができます。
在宅医療にかかる地域別データ集の主な内容
在宅医療にかかる地域別データ集の主な内容は以下の通りです。
在宅医療にかかる地域別データ集の活用方法
訪問診療を実施する診療所数のデータを活用し、ターゲット施設を選定する
都道府県別、かつ各地方自治体ごとに訪問診療を実施している診療所数が分かりますので、数多くの訪問診療を行っている地方自治体がどこなのかが一目瞭然です。訪問診療向けの商材を販売しているメーカーであれば、どの地方自治体に向けて販売を強化すべきか、ターゲットエリアを選ぶ際に有効な情報です。
ターゲットエリアの診療所に対し、訪問診療向けの商材を提案する
訪問診療している数の多い地方自治体に向けて訪問診療向けの商材を提案すると良いでしょう。
例えば訪問診療向けのエコーが挙げられます。エコーはあらゆる診療科の診療所で使用されるケースの多い医療機器です。特に現在は、訪問診療時に持ち運びのしやすいエコーが重宝されるケースが多いため、一定の需要があります。
特に腹部の臓器に関する機能を診断するための腹部エコーが検査できるエコーは訪問診療時に必要なケースが多いため、訪問診療をやっている医師に上手く提案できるとヒットします。
それ以外にも心電計やパルスオキシメーター、体温計、血圧計、血糖測定器などを訪問診療時に活用したい医師、看護師は多数いますので、提案商材としては狙い目です。
ターゲットエリアにおいて、訪問看護ステーション向けの商材を提案する
訪問看護ステーションが多い地方自治体を中心に、訪問看護ステーション向けの商材を提案すると良いでしょう。
例えば医療介護ネットワークシステムが挙げられます。よく訪問診療や訪問看護を行っている施設がお困りごととして抱えているのが「スタッフや患者のリアルタイム情報が分からない」という点にあります。訪問看護に行っている看護師が現在何をしているか、患者が血圧測定をしたかなど、各人のリアルタイムの情報が分からない場合、チームで連携して効率的に医療を進めることは難しいです。
そこで活躍するのが医療介護ネットワークシステムです。患者が血圧などのバイタル情報を収集した段階でリアルタイムにデータがクラウドサーバに飛びます。同時に誰がいつ看護をしたのか、診察したのかが分かるようになっていますので、例えば看護師が訪問診療後に診療所に戻り、看護記録として患者のバイタル情報を転記・報告する必要がなくなります。
これにより、大幅な業務効率改善が見込まれるのです。従来行っていた訪問診療時の「二重転記」がなくなるだけで、スタッフの業務負荷軽減に繋がり、1人の患者をより待たせることなく迅速対応ができるようになるのです。
在宅療養支援病院へアプローチする
訪問診療を行っている診療所は、大元の在宅療養支援病院が母体となって経営しているケースも少なくありません。よって、在宅療養支援病院が多い地方自治体をターゲットに営業を掛けていけば、効率的に大元からアプローチができ、ひいては訪問診療を行っている診療所と取引ができる可能性が出てきます。
特に在宅療養支援病院は、訪問診療を行っている複数の診療所の大元であるケースもあるため、1つの在宅療養支援病院と取引ができるようになれば、場合によっては芋づる式で各診療所まで取引を拡大できる可能性もあるのです。在宅医療において、病診連携は正に1つのキーワードとなっていますので、注力する価値は十分にあります。
訪問診療実施数が少ない地方自治体で開業支援に注力する
高齢化が進んでいる現代において、高齢者の割合はますます増え続けると言われています。同時に、自宅で看取られたいと願う高齢者の増加があります。その背景には、高齢者の「住み慣れた自宅で最後を迎えたい」と願ったり「家族との交流を多く取りたい」と願うニーズがあります。
このことを踏まえ、今後ますます訪問診療のニーズは増え続けることが予想されていますが、訪問診療ができる診療所や医師の数が不足している事実もあります。
そのため、今後訪問診療を目的とした診療所の開業要望が増えてくることが考察できます。
従って、開業を考えている医師のための開業支援は一定の需要があるでしょう。また、訪問診療がしたい医師と、訪問診療先をうまくマッチングできるサービスが展開できるとビジネスチャンスがさらに広がります。特に訪問診療実施数が少ない地方自治体においても潜在ニーズは必ずありますので、常にアンテナを張って情報収集し、うまく事業として展開できるような仕組みづくりが大切です。
在宅医療実施施設へヒアリングを行う
在宅医療ビジネスを行う上で最も大事なことは、在宅医療施設が何に困っているのかを正確に把握することです。従って在宅医療実施施設へ実際に訪問して経営層にヒアリングを行ったり、ホームページなどで検索をかけ、情報を集めることが最優先事項として挙げられます。
実際に調べて見ると、様々なことが見えてくるはずです。例えば「人手が足りず、満足に訪問診療できていない」とか「訪問診療するにあたって適した医療機器がなく、診療に差し支えが出ている」などといった声が聞こえてくるケースがあります。そういった声を丁寧に拾い上げ、開発部門や技術部門に掛け合い、業務効率や診療支援の商材を作り上げることが重要です。最終的にはユーザーの方々にそれらの価値を提供することが求められています。
医療機関のスタッフの方々は日々、多くの業務に追われています。業務上で発生する不満を抱えながらも、患者様と向き合っているため、なかなかメーカーにアウトプットする機会が無いのです。そういった現状を踏まえ、メーカー自身が医療機関のスタッフの方々に寄り添い、積極的に情報収集することが非常に重要なのです。
まとめ
高齢者人口が増え続けている現代において、訪問診療数は軒並み増えてきています。今まで通常診療しかしてこなかった診療所も、時代の流れを読み、在宅診療へシフトしてきているのです。この医療情勢にはビジネスチャンスが多く潜んでいるのも事実です。
患者とかかりつけ医や家族間で、患者の終末期医療についての話し合いがされていない場合が多い中、在宅医療を望む患者のニーズや、診療所側のニーズを上手く拾い上げ、お困りごとが解決できるビジネス展開が今後求められます。ぜひ、現状の医療体制を鑑み、1人1人が在宅医療に貢献できる仕組み作りを行っていきましょう。
投稿者プロフィール

- 医療業界に特化した営業支援、顧客管理(SFA/CRM)のコンサルティングを提供するフロッグウェル株式会社のシニアコンサルタント。オープンデータに詳しく、弊社提供の病院マスタ等の作成に携わる。ほかにもデータ活用サポート、CRM Analyticsの導入など、多岐にわたるサポートを経験。
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