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SalesforceのThe Modelで形成される標準化とオペレーショナルエクセレンス

SaaS業界の業務標準化は、どのような構図になるのでしょうか?

SaaS業界を代表する営業支援ツールのSalesforceでは、自社の営業プロセスを標準化しています。Salesforceの業務を標準化する概念「The Model」は、SaaS業界のオペレーショナルエクセレンスによる成功例です。

この記事では、標準化された営業プロセスが営業効率を最大化する仕組みについて解説します。

Salesforceの優れた標準化「The Model」とは

セールスフォースドットコム社で活用してきた営業プロセスモデルのことをThe Modelといいます。The Model は、SaaS企業のサブスクリプション型ビジネスで採用される持続的競合優位性を持つ標準化です。

The Modelの特徴

The Modelの特徴は、次の2つがあげられます。

  • 営業プロセスの段階的な数値化
  • 部署間の組織的な連携
  • The Modelでは、営業プロセスを段階ごとに区切り、段階ごとの顧客行動を数値化します。数値化により末端の従業員まで伝わる可視化の実現となるでしょう。

    また、それぞれの営業プロセス段階ごとに、部署の異なる担当者が連携できることも特徴の1つです。The Modelは、数値化により顧客の状態を明確にできます。明確なプロセスは、組織内の連携により迅速な対応が可能です。結果的に、The Modelの導入は顧客満足度を向上させて、売上増しにつながる取り組みになるでしょう。

    カスタマーサクセスを追求できる営業プロセスモデル

    営業プロセスを明確にできるThe Modelは、カスタマーサクセス(顧客の成功体験)を追求する営業プロセスモデルとしても効果が期待できます。サブスクリプション型ビジネスでは、顧客との長期的に関係性構築することが大事です。顧客との関係性を構築するためには、顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)を最大化することが重要な要素になります。

    顧客との関係性を継続するためには、ニーズを捉えた情報の提供やきめ細かなサポートが必要です。カスタマーサポートでは、興味関心の高い情報でつなぎ留めながら、クロスセルやアップセルの機会を創出できます。

    The Model導入のポイント


    スタートアップがThe Modelを導入するには、ポイントをおさえておくことが必要です。

    組織営業モデルの構図

    The Modelには、組織営業モデルの構図があります。The Modelが活用されるまでは、マーケティングや営業業務を属人的な感覚で判断する傾向がありました。

    Salesforceの登場により、マーケティングや営業を科学的な見解で判断するようになりました。組織営業モデルの構図は、プロセス段階ごとに数値化する仕組みです。営業もマーケティング部門も組織的な共通認識と連携が可能になるでしょう。

    Salesforceの組織営業モデルは4段階に分けて数値化します。4段階の要素は次のとおりです。

    マーケティング:潜在層の獲得
    インサイドセールス:見込み客の育成案件発掘
    外勤営業:商談管理受注
    カスタマーサクセス:活用支援契約継続

    企業の営業プロセスモデルは、4つの段階で分けられ、関係性を維持するカスタマーサクセスまで一気通貫で管理する仕組みになります。4つのプロセス段階ごとに数値化する算出方法は、次のとおりです。

    マーケティング:来訪者数×獲得率=見込み客数
    インサイドセールス:見込み客数×案件化数=案件数
    外勤営業:案件数×受注率=受注数
    カスタマーサクセス:受注数×更新率=継続数

    分業による効率化→KPIの徹底的な追跡→全行程の稼働を記録

    プロセス段階ごとの数値化には、特徴があります。それぞれの段階ごとに「母数」×「成功率」=「ゴール」の形式で算出される仕組みです。また、プロセスモデルの算出方法の特徴は、プロセスの「ゴール」が次の段階のプロセスの「母数」になり、「ゴール」を引き継いでいる点になります。

    プロセスの段階ごとにゴール達成しなければ、次のプロセスが始まらない仕組みです。つまり、連携できないことを意味します。Salesforceでは、組織営業モデルの全工程において、確実に段階の数値をクリアしなければ次の段階へ進めないため、成果獲得の確実性のある要素を持ちます。

    データ参照:https://www.salesforce.com/jp/hub/sales/the-model/

    標準化はプロダクトマーケットフィットの後

    The Modelの導入による標準化は、プロダクトマーケットフィットの後に実行することがポイントです。プロダクトマーケットフィット(PMF)とは、自社製品やサービスが顧客の課題解決につながる市場で受け入れられている状態を指します。

    スタートアップ企業は、プロダクトマーケットフィットの状態に行きついていなければ、オペレーショナルエクセレンスの導入を意識する必要がありません。その理由は、スタートアップが自社の価値を訴求できる市場の確立ができていなければ、標準化しても効果を得られないからです。PMF前に事業を拡大してしまうと、投入したコストがムダになるでしょう。

    PMF前のポイントは“泥臭さ”

    スタートアップが、PMF前に実行するポイントは、“泥臭さ”です。経営層が実行する泥臭さでは、次の2つの実行があげられます。

  • 現場での徹底した顧客インタビューの実施
  • インタビューから顧客の本音(インサイト)を聞き出す
  • スタートアップの経営層は、自社製品やサービスの価値がもっとも高くなる市場を見つけ出すため、泥臭く顧客ひとり1人から聞き取りをすることと、本音を聞き出す泥臭さが必要です。

    スケールフェーズの大きな課題


    企業が泥臭い取り組みを経てPMFを確立した場合は、逆に泥臭い取り組みが営業プロセスモデルの段階フェーズの拡大の問題要因になります。この問題は、スタートアップのスケールフェーズの成長を妨げる要因です。具体的には、次の2つがあげられます。

  • 業務の属人化
  • ブラックボックス化
  • 業務の属人化とブラックボックス化

    業務の属人化は、企業が少数精鋭による業務状況で機能します。ただし、PMF後に独自の市場でビジネスを拡大する場合は、属人的な業務が効率を下げ、費用対効果を下げる要因になるでしょう。

    また、属人的な業務のまま進めた結果、システムのブラックボックス化が要因となり、標準化できないことも考えられます。具体的なフェーズごとに発生する業務上の課題は次のとおりです。

    PMF前

  • 経営者依存の経営
  • PMF後~スケールフェーズ

  • 業務の属人化
  • 組織ルール不足
  • 業務過多
  • 不文律
  • 競合優位性が確立できない
  • マネジメントが未熟であり業務硬直
  • スケールフェーズ拡大

  • 上場に向けたガバナンスシステムの確立
  • マネジメント進化課題
  • PMFは、業務の属人化とブラックボックス化を課題に変える分岐点になります。PMF前の企業は、オペレーショナルエクセレンスにとって進化を妨げる状況になるでしょう。

    まとめ

    今回は、SaaS業界のオペレーショナルエクセレンスを確立した、Salesforceの営業プロセスモデル「The Model」について解説してきました。従来ならば、営業部門やマーケティング部門は、担当者の業務経験や知識による部分が大きいと思われがちです。しかし、Salesforceは、自社のビジネスモデルから製品の機能においても、プロセスを数値化することに成功しています。

    数値化されたプロセスは、明確になり組織全体で共有できる標準化オペレーションとなります。ただし、標準化オペレーションは、持続的競合優位性を持つことが必要です。持続的競合優位性を持つには、常に現状の仕組みに対して、進化を追求する姿勢が不可欠になります。

    今回は、オペレーショナルエクセレンスの概念がSaaS製品にも通じていることを紹介してきました。参考にしてみてください。

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