社会医療診療行為別統計とは オープンデータの特徴や活用方法を解説
目次
- 1. 社会医療診療行為別統計とは
- 2. 社会医療診療行為別統計の集計対象
- 3. 社会医療診療行為別統計の集計項目
- 3.1 診療行為の状況/調剤行為の状況
- 3.2 一般医療―後期医療・年齢階級別にみた診療行為の状況/調剤行為の状況
- 3.3 病院―診療所別にみた診療行為の状況
- 3.4 DPC/PDPSに係る明細書―DPC/PDPSに係る明細書以外別にみた診療行為の状況
- 3.5 院外処方率
- 3.6 薬剤点数の状況
- 3.7 薬剤種類数の状況
- 3.8 薬効分類別にみた薬剤の使用状況
- 3.9 後発医薬品の使用状況
- 3.10 薬剤料の比率
- 4. 社会医療診療行為別統計の活用方法
- 4.1 医療系システムの有用性を示す材料に活用する
- 5. まとめ
全国の保険医療機関又は保険薬局は、毎月の患者情報を診療報酬明細書(レセプト)として審査支払機関に提出しています。全国から集まった診療報酬明細書に含まれている患者に係る診療行為や調剤行為等の情報を集計したのが「社会医療診療行為別統計」です。
今回は「社会医療診療行為別統計」に関するオープンデータの特徴や活用方法を解説します。
1億5千万以上の膨大なレセプトデータの活用を検討している企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
社会医療診療行為別統計とは
医療保険行政に必要な資料を得ることを目的として、厚生労働省が医療保険制度における医療の給付の受給者に係る診療行為の内容、傷病の状況、調剤行為の内容、薬剤の使用状況等を集計したのが「社会医療診療行為別統計」です。調査は毎年実施されています。
社会医療診療行為別統計の始まりは、昭和30年から実施されていた「社会医療調査」にまで遡ります。その後、「社会医療診療行為別調査」に改称し、調査対象も拡大して調査されてきました。
当調査は「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」に蓄積された情報を集計対象に変更した平成27年に、大きな転換点を迎えました。調査名称も現在の「社会医療診療行為別統計」に改称されています。
社会医療診療行為別統計の集計対象
平成27年からの社会医療診療行為別統計の集計対象は、下記条件に合致する医療保険制度における診療報酬明細書及び調剤報酬明細書です。
- 全国の保険医療機関及び保険薬局から社会保険診療報酬支払基金支部及び国民健康保険団体連合会に提出された
- 6月審査分として審査が決定された
- レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に蓄積されているもの全て
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)には、電子化されたレセプト情報(診療報酬明細書)と特定健診・特定保健指導情報の2種類が格納されています。診療報酬明細書は、医療機関が保険者(健康保険組合)に医療費を請求するために行った処置や使用した薬剤等を記載した明細書です。
図:医療報酬明細書とNDB、各種機関の相関図
各明細書に記載された患者情報のうち、以下の項目が社会医療診療行為別統計で使用されます。
診療報酬明細書 | 年齢、傷病、診療実日数、診療行為別点数・回数及び薬剤の使用状況等 |
調剤報酬明細書 | 年齢、処方箋受付回数、調剤行為別点数・回数及び薬剤の使用状況等 |
社会医療診療行為別統計の集計項目
社会医療診療行為別統計の、現在における集計項目は下記のとおりです。
大分類 | 小分類 | 集計事項 |
診療行為・調剤行為の状況 | 医科診療 | 診療行為の状況 一般医療-後期医療・年齢階級別にみた診療行為の状況 病院-診療所別にみた診療行為の状況 DPC/PDPSに係る明細書-DPC/PDPSに係る明細書以外別にみた診療行為の状況 |
院外処方 | 院外処方率 | |
歯科診療 | 診療行為の状況 一般医療-後期医療・年齢階級別にみた診療行為の状況 |
|
薬局調剤 | 調剤行為の状況 一般医療-後期医療・年齢階級別にみた調剤行為の状況 |
|
薬剤の使用状況 | 医科診療及び薬局調剤 | 薬剤点数の状況 薬剤種類数の状況 薬効分類別にみた薬剤の使用状況 後発医薬品の使用状況 薬剤料の比率 |
診療行為の状況/調剤行為の状況
医科及び歯科
各診療行為の「1件当たりの点数」「1日当たりの点数」「1件当たりの日数」を表形式で集計し、前年の結果と比較しています。また、「1日当たりの点数」については、各診療行為が占める構成割合も示しています。
医科については、入院・入院外別に集計しています。
薬局
各調剤行為の「1件当たりの点数」「受付1回当たりの点数」「1件当たりの受付回数」を表形式で集計し、前年の結果と比較しています。受付回数とは、調剤年月中に保険薬局で処方箋を受け付けた回数のことです。また、「受付1回当たりの点数」については、各調剤行為が占める構成割合も示しています。
一般医療―後期医療・年齢階級別にみた診療行為の状況/調剤行為の状況
医科及び歯科
各診療行為の「1件当たりの点数」「1日当たりの点数」「1件当たりの日数」を、一般医療と後期医療・年齢階級別に集計しています。また、「1日当たりの点数」については、各診療行為が占める構成割合も示しています。
医科については、入院・入院外別に集計しています。
薬局
各調剤行為の「1件当たりの点数」「受付1回当たりの点数」「1件当たりの受付回数」を、一般医療と後期医療・年齢階級別に集計しています。また、「受付1回当たりの点数」については、各調剤行為が占める構成割合も示しています。
「一般医療」と「後期医療」の定義は、以下のとおりです。
一般医療 | 0歳〜74歳の者が保険医療機関又は保険薬局で受けた、療養の給付並びに入院時食事療養費及び入院時生活療養費の支給 |
後期医療 | 後期高齢者医療制度の被保険者が保険医療機関又は保険薬局で受けた、療養の給付並びに入院時食事療養費及び入院時生活療養費の支給 |
病院―診療所別にみた診療行為の状況
入院・入院外別で各診療行為の「1件当たりの点数」「1日当たりの点数」「1件当たりの日数」を、病院、診療所別に集計しています。病院の分類は以下のとおりです。
病院分類 | 定義 |
精神科病院 | 精神病床のみを有している病院 |
特定機能病院 | 下記条件を満たし、厚生労働大臣の承認を受けた病院 ・高度の医療を提供できる ・高度の医療技術を開発・評価できる ・高度の医療に関する研修を実施できる ・適切な人員配置、構造設備等を有する |
療養病床を有する病院 | 長期療養を要する患者を入院させる病床を有している病院 |
一般病院 | 上記以外の病院 |
また、「1日当たりの点数」については、療養病床を有する病院・一般病院の各診療行為が占める構成割合も示しています。
DPC/PDPSに係る明細書―DPC/PDPSに係る明細書以外別にみた診療行為の状況
入院患者の各診療行為の「1件当たりの点数」「1日当たりの点数」「1件当たりの日数」をDPC/PDPSに係る明細書・DPC/PDPSに係る明細書以外で集計しています。
院外処方率
病院・診療所の院外処方率(年次推移、直近5年分)を示しています。
院外処方率は、以下の計算式で導き出しています。
院外処方率(%)
= 処方箋料の算定回数 ÷(処方料の算定回数+処方箋料の算定回数)× 100
薬剤点数の状況
院内処方・院外処方別に一般医療・後期医療ごとの診療報酬明細書及び調剤報酬明細書の件数を使用薬剤の薬剤点数階級別に集計しています。また、明細書の件数については、使用薬剤の薬剤点数階級が占める構成割合を年齢階級別に示しています。
薬剤種類数の状況
診療報酬明細書及び調剤報酬明細書1件当たりの薬剤種類数を、院内処方・院外処方/一般医療・後期医療別に集計しています。また、院内処方・院外処方別に一般医療・後期医療の明細書の件数については、薬剤種類数階級が占める構成割合を示しています。
薬効分類別にみた薬剤の使用状況
使用薬剤の薬剤点数について、入院・院内処方・院外処方別に薬効分類別の構成割合を示しています。
後発医薬品の使用状況
薬剤点数に占める後発医薬品(ジェネリック医薬品)の点数の割合を、入院・院内処方・院外処方別に一般医療と後期医療・病院と診療所に分けて集計しています。薬剤種類数に占める後発医薬品の種類数の割合も集計しています。
また、入院-院内処方-院外処方別にみた後発医薬品の主な薬効分類別の薬剤点数の構成割合を示しています。
薬剤料の比率
入院・ 入院外別の医科・薬局調剤(医科分)の薬剤料の比率(年次推移、直近5年分)を示しています。
社会医療診療行為別統計の活用方法
医科及び歯科の診療行為・調剤行為の状況、薬剤の使用状況の結果を回数・点数別等で可視化した社会医療診療行為別統計は、2年に一度行われる診療報酬改定の影響度合いを測る指標として活用できます。
医療系システムの有用性を示す材料に活用する
例えば、令和4年度における社会医療診療行為別統計の結果の概要によると、令和4年における診療行為別で判断する入院の1日当たり点数の構成割合が最も多いのは「入院料等」です(全体の4割を占めている)。
令和4年度診療報酬改定において、データ提出加算に係る届出を行っていることを要件とする入院料について、地域一般基本料、専門病院入院基本料(13対1)、障害者施設等入院基本料、特殊疾患入院医療管理料、特殊疾患病棟入院料、緩和ケア病棟入院料に拡大されました。
つまり、許可病床数が 200床未満の病院にあっては経過措置期間中である令和6年3月31日までにデータ提出加算に係る届出を行っていないと、入院基本料が算定できなくなり、病院の収益が下がってしまう可能性があるのです。診療行為別に見ても入院料等が全体の大部分の点数を占めているわけですから、この話題は病院の収益を大きく左右する非常に重要な問題と言えるでしょう。
データ提出加算に係る届出を行うためには、医事会計システムなどで規定のファイルを作成し、提出する必要があります。現状、既存の医事会計システムなどでデータ提出加算を取ろうとしている施設が多く見られる一方で、システムに疎い病院では対策が未だにされていません。
許可病床数が200床以上の病院にあっては、令和5年3月31日までしか経過措置が取られず、それ以降は要件ルールに則って点数算定がされます。
→執筆当時の上記内容は、2023年10月現在、既に施行されました。
医事会計システムを取り扱っているメーカーが、データ提出加算に係る届出を行っていない病院に対して、「入院料等」が最も点数化されているという客観的な事実を社会医療診療行為別統計の結果に基づいて示すことで、売上成績の向上が見込まれます。時流に沿った提案をすることで、社会医療診療行為別統計の情報価値を高めることができるのです。
まとめ
社会医療診療行為別統計のオープンデータは、医療の給付を受けた患者に関する診療行為の内容、傷病の状況、調剤行為の内容、薬剤の使用状況等を集計したものです。
社会医療診療行為別統計のオープンデータを活用し、自社サービスの展開に役立ててみてください。
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