ブログ

精神保健福祉資料とは オープンデータの特徴や活用方法を解説

今回は「精神保健福祉資料」を活用したオープンデータの特徴や活用方法を、H27・28年度のデータを基に解説します。

精神保健福祉資料とは

精神保健福祉資料とは、630調査の内容をまとめた資料のことです。
630調査とは、以下の機関における精神保健医療福祉の現状を調査し、まとめたものになります。

  • 各自治体
  • 精神科を標榜しているクリニック
  • 精神科を標榜している病院
  • 精神保健福祉資料の主な内容

    精神保健福祉資料の主な内容は以下の通りです。

    【医療機能一覧表】
    各都道府県の地域における精神疾患ごとの医療提供体制の一覧を示したものです。

    【医療機関診療実績】
    アウトカムの目安として以下のものを示した内容になります。

  • 年齢、所在地、時期ごとの入院患者数
  • 退院した(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)後の再入院率
  • 平均在院日数
  • 入院した(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)後の退院率
  • 【その他の630集計結果】
    集計結果として、以下の内容をまとめた内容になります。

  • 認知症治療病棟の状況
  • 精神科病院在院患者の状況
  • 都道府県ごとの精神科病院の状況
  • 精神科病院在院患者 の状況
  • 全国の精神科病院の状況
  • 精神保健福祉資料の詳細

    全国の統合失調症・うつ、そううつ等の状況

     主に以下の精神疾患ごとに病院数をまとめた内容になります。

    ①統合失調症
    ②うつ・躁うつ病
    ③児童・思春期精神疾患
    ④発達障害
    ⑤身体合併症
    ⑥自殺対策
    ⑦災害精神医療

    一般病院における発達障害の受け入れが大きく変化していることが分かります。医療機関数は年々増加傾向となっています。

    精神病床における新規入院患者の平均在院日数・再入院率、退院率

    いずれの項目においても増加傾向になります。精神疾患患者の増加に伴い、医療機関の体制が追いついていないことが考察されます。

    アウトカム指標としての入院率、退院率・65歳以上/未満の施設所在地や患者所在地

    精神病床における入院後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月後時点の入院率・退院率を示しています。
    また精神患者における急性期や慢性期、回復期における入院患者数の推移を示しています。
    65歳以上の長期入院患者数が全体の半数以上を占めていることが分かります。

    地域精神医療資源分析データベース『ReMHRAD』を活用したデータ

    患者の住所ベースや病院の所在地ベースで、精神科病棟の入院者状況を表示することができます。細かい自治体ごとの表示ができますので、全国のあらゆる情報を網羅的に把握することが可能です。

    医療計画の策定状況モニタリング

    統合失調症やうつ、そううつ病のみならず、アルコール依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症などの特有な疾患患者の状況をモニタリングすることが可能です。

    精神保健福祉資料の活用方法

    医療過疎地域における医療機関拡充

    地域精神医療資源分析データベース『ReMHRAD』を活用することにより、全国の各地域における精神科病棟の入院患者状況が把握できます。これを活用し、医療過疎地域を特定することで医療機関の拡充すべき地域を設定することが可能です。医療体制を偏りなく、かつ満遍なく供給していくことが急務である日本において、当該データベースを活用することは非常に有意義なのです。
     

    医療過疎地域における患者のへの適切な医療提供

    精神疾患ごとに、アウトカム指標として精神疾患患者の入院率、退院率が明確化されています。これを活用することにより、医療過疎地域と医療受給者の相関関係を把握することができます。医療過疎地域が必ずしも、医療受給者数の増加を招いているわけではありません。であれば、その原因は何なのかを追求していく必要があります。医療過疎問題の本質を突き止めるための重要な要素になり得るのです。

    精神疾患病対策事項の施策立案

    精神疾患ごとの病院数や患者数が明確化されていることによって、どの精神疾患患者が多く存在しているのかを把握することができます。であれば、その疾患患者に対する医療体制の拡充を推進することで、より多く精神疾患患者を救うことに寄与できます。精神疾患患者の入院率が下がり、かつ退院率が上がることをアウトカムとして、最も多くの人々が苦しむ精神疾患病を優先的に治療するスタンスをいち早く確立することが求められているのです。医療体制が拡充されることによって、医療過疎になっている地域へのアプローチが満遍なく普及される結果に繋がります。

    630調査の問題点把握から見える日本の精神医療問題の本質を理解する

    630調査を行うことによって、様々な課題点が見えてきます。課題点は以下の内容になります。

  • 調査の意図が分からず、医療機関側として回答の仕方が分からなかった。
  • 回答のためのマニュアルが多岐に渡っていたことで収拾がつかなくなり、医療機関側が正しく情報を収集できていなかった。
  • 精神病床の医療機関スタッフにおいて、複数の病棟にまたがって勤務しているスタッフのカウント方法が困難であった。
  • このことを踏まえて、精神医療の問題点が多く浮き彫りになっています。1つは正しい情報が正確に伝達されていないということです。有象無象に存在する精神疾患患者の属性を正確に把握することは困難を極めることなのです。加えて、クリニックと病院を掛け持ちするスタッフのカウントが極めて困難であるということです。

    以上のことから患者属性を正確に把握することと、数多くの病院をまたがり、勤務するスタッフに対し、行き届いた医療情報の伝達をいかに効率的に提供していくかが鍵となるのです。

    解決のために、精神医療リテラシーを向上させることを目的としたオンライン教育サービスの拡充が急務であると考えます。まずは精神医療を支えるスタッフの精神医療リテラシーを向上させることによって、正しい知識・経験を携えたスタッフの確立を目指します。
    その結果、確かな知識・技術を持ったスタッフの医療を、多くの患者が受けることによって、医療過疎問題が緩和できるでしょう。このように630調査によって、日本の精神医療問題の本質を見極めることが可能なのです。

    まとめ

    精神保健福祉資料のオープンデータは、厚労省が公開している信憑性の高いデータです。
    医療過疎になっている地域に対して、どのように医療体制を効率的に拡充していくかの方針を立てる際に非常に有用な資料になります。
    加えて、現代の精神病床が抱える問題が浮き彫りになります。どの疾患患者の入院率・退院率が良好であり、芳しくないのかが一目瞭然で分かるのです。

    また、医療過疎地域が果たして本当に医療供給が破綻しているのか否かを明確化させることにも寄与できる資料となっています。日本の精神医療の質を向上させていくための施策展開にも今後ますます活用されていく資料となるでしょう。

    加えて、精神医療問題を解決させるために、スタッフへの精神医療リテラシー向上を目的としたオンラインサービスの拡充が急務であることの裏付けをすることができます。スタッフの精神医療リテラシー向上が精神疾患への適切な医療提供、すなわち医療過疎地域削減へと繋げることができるからです。

    有象無象に存在する精神疾患患者と、その患者を支えるスタッフ達。この2軸をしっかり捉え、精神医療の質向上を図るために何ができるかを絶えず考え抜くことが私達に求められています。
    ぜひ精神保健福祉資料のオープンデータを活用し、あなたも現代精神医療の問題を的確に把握し、精神医療の拡充に貢献できる人材となってください。

    投稿者プロフィール

    根本美咲
    根本美咲
    医療業界に特化した営業支援、顧客管理(SFA/CRM)のコンサルティングを提供するフロッグウェル株式会社のシニアコンサルタント。オープンデータに詳しく、弊社提供の病院マスタ等の作成に携わる。ほかにもデータ活用サポート、CRM Analyticsの導入など、多岐にわたるサポートを経験。

    CONTACT
    お問い合わせ

    ご相談やご依頼、病院マスタなどについてのお問い合わせはこちらのお問い合わせフォームから。

    サービスなどについてのお問い合わせ 病院マスタについてのお問い合わせ

    メールお問い合わせ