医療オープンデータとは? 地方自治体の活用事例や取得方法を分かりやすく解説
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目次
- 1. 医療オープンデータとは
- 2. 政府が地方自治体のオープンデータ公開を後押しする背景
- 3. 医療オープンデータの具体的な活用事例
- 3.1 医療機関における活用事例
- 3.2 新規開業や診療科増設のエリア分析
- 3.3 地域連携の強化
- 3.4 民間企業における活用事例
- 3.5 自社サービスやアプリへの機能追加
- 3.6 ターゲットを絞ったマーケティング
- 4. オープンデータをビジネスに活かすためのポイント
- 4.1 他のデータとの掛け合わせを行う
- 4.2 まずはスモールスタートで検証する
- 5. 医療オープンデータを利用する際の注意点
- 6. 医療オープンデータの具体的な取得・検索方法
- 6.1 e-Statや自治体ポータルを活用する
- 6.2 機械判読可能な形式を選ぶ
- 6.3 横断検索サイトを利用する
- 7. 自治体の取り組みを推奨する「自治体標準オープンデータセット」
- 7.1 受診可能な病院検索「医療機関一覧」
- 7.2 心肺停止時に活用「AED設置箇所一覧」
- 8. 地方自治体の医療オープンデータ取組状況
- 8.1 【横浜市】医療施設に関する詳細情報を網羅
- 8.2 【京都市】ブラウザ上の見やすさも工夫された医療情報
- 8.3 【大阪市】グラフやマップへ可視化された医療情報
- 8.4 【大分県・大分市】BODIK ODCSへの参加でデータ数が急増化
- 8.5 【福岡市】起業家や民間企業の活用が期待されたデータ集
- 8.6 【札幌市】札幌市ICT活用戦略に基づいた事業推進
- 9. まとめ|広がる地方自治体の医療オープンデータへの取り組み
国や地方自治体が保有するデータを、国民誰もが二次利用できるように加工し公開されたオープンデータ。その中でも医療に関するオープンデータは、患者が病院を選ぶ上での判断材料や医療の質向上のための施策策定など、様々な場面で活用されています。
政府を筆頭に医療オープンデータ公開への取り組みは、地方自治体にも着実に広がっています。令和8年2月時点で、地方自治体のオープンデータへの取組率は全国約87.5%に達しました。これほど高い取組率を実現した背景には、政府が推進する「自治体クラウド」や、複数の自治体でシステムを共同利用するデータカタログサイト(BODIK ODCSなど)の普及があります。インフラの整備が進んだことで、小規模な市町村でもデータ公開のハードルが大きく下がったのです。
この記事では、医療オープンデータの活用を考えている企業担当者や病院担当者に向けて、地方自治体の医療オープンデータ事業への取組状況を解説します。最後まで読むことで、各自治体の医療オープンデータの公開状況や実際のデータの中身を理解できます。
医療オープンデータとは

医療オープンデータとは、インターネットを通じて公開された医療分野に関する国民の膨大なデータのことです。医療オープンデータは、誰でも二次利用が可能なので、申請や審査を必要としません。厚生労働省がホームページで公開している医療オープンデータの代表例として、以下が挙げられます。
- 患者調査
- 人口動態統計
- 国民生活基礎調査
- 病床機能報告
- NDB
- DPCデータ
- 診断群分類データ
その中でも、医療オープンデータとして最大規模を誇る「NDBオープンデータ」は、2021年時点で年間約44万回のアクセスを記録し、数々の利活用事例が報告されています。医療オープンデータに含まれている情報の例は、以下のとおりです(図1)。

図1:医療オープンデータに含まれている情報
政府が地方自治体のオープンデータ公開を後押しする背景
政府は、2015年に「地方公共団体オープンデータ推進ガイドラインと手引書」を公開し、2016年に「官民データ活用推進基本法」を策定しました。同法により、規模の大小に関わらずすべての地方公共団体に『オープンデータの公開』が義務付けられました。一方で、『データ活用推進計画の策定』については市区町村は努力義務とされています。
- 現代社会の諸課題の解決
- 経済の活性化
- 行政の高度化や効率化
地域の諸問題を解決するためには、国民や民間企業とも連携を取り合い、地域の目標として掲げることが重要です。地方自治体が公開したオープンデータを積極的に民間企業が事業に活用することによって、新たな価値が創出され、経済の活性化も見込めます。
また、オープンデータ事業への取り組みは、必ずしも行政の負荷を増大させるものではありません。中長期の視点でみると、電子化が促進されることによって、繋がることが期待されています。
医療オープンデータの具体的な活用事例
公開されている医療オープンデータを活用することで、医療機関や民間企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、それぞれの視点に立った具体的な活用事例をご紹介します。
医療機関における活用事例
医療機関がオープンデータを活用する最大のメリットは、地域の医療ニーズを客観的なデータに基づいて把握できる点です。
新規開業や診療科増設のエリア分析
自治体が公開する「人口動態データ」と「医療機関一覧」を掛け合わせることで、特定の地域において不足している診療科を可視化できます。これにより、競合が少なく、地域住民から求められているエリアでの開業や増設の判断が可能になります。
地域連携の強化
「在宅医療と介護に関する資源リスト」などのデータを活用し、近隣の訪問看護ステーションや介護施設との連携体制を構築しやすくなります。
民間企業における活用事例
ヘルスケア領域に参入している、あるいは参入を検討している民間企業にとっても、オープンデータは新規事業の種となります。
自社サービスやアプリへの機能追加
自治体が公開する「AED設置箇所一覧」や「医療機関一覧」のデータを自社のヘルスケアアプリや病院検索サイトに連携させ、マップ上で最寄りの施設を探せる機能として提供できます。
ターゲットを絞ったマーケティング
「生活習慣病の状況」などのデータを分析し、高血圧や糖尿病のリスクが高いエリアを特定することで、健康食品やフィットネスサービスの広告配信、店舗展開のターゲット選定に活用できます。
オープンデータをビジネスに活かすためのポイント
医療オープンデータを単なる情報収集で終わらせず、実際のビジネスや業務改善に繋げるためには、以下のポイントを意識することが重要です。
他のデータとの掛け合わせを行う
医療オープンデータ単体で分析するだけでなく、国勢調査などの「人口データ」や、地図上の「地理空間情報(GIS)」などと組み合わせることで、より立体的で深い分析が可能になります。
まずはスモールスタートで検証する
最初から高額なシステムを導入するのではなく、まずはExcelや無料のBIツール(データをグラフなどで可視化するツール)にデータを読み込ませ、仮説が正しいかどうかの小さな検証から始めるのがおすすめです。
医療オープンデータを利用する際の注意点
オープンデータは誰でも無料で使える一方で、利用にあたって気をつけるべき「落とし穴」も存在します。初級者がつまずきやすい3つの注意点を解説します。
- データフォーマットの不統一: 多くの自治体でデータの公開が進んでいますが、自治体ごとにファイル形式(Excel、CSV、PDFなど)や項目の並び順が異なるケースがよくあります。複数の自治体のデータを統合して使う場合、手作業やツールを使ってデータを整える「データクレンジング」の作業が発生することを想定しておきましょう。
- 更新頻度と最新性の確認: データによっては、過去に一度公開されたきり更新が止まっているものもあります。古いデータをもとに重要な意思決定をしてしまうリスクを防ぐため、ダウンロードする前に必ず「最終更新日」を確認してください。
- 利用規約(ライセンス)の確認: オープンデータの多くは「CC-BY(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)」という、出典元を明記すれば自由に二次利用できるルールで公開されています。しかし、データによっては商用利用に制限がある場合もあるため、利用前に各自治体やサイトの利用規約に目を通すことが必須です。
医療オープンデータの具体的な取得・検索方法
実際にデータを探して取得するための基本的な手順をご紹介します。
e-Statや自治体ポータルを活用する
国のデータであれば政府統計の総合窓口「e-Stat」、自治体のデータであれば各自治体の公式ホームページにある「オープンデータポータルサイト」から検索するのが基本です。
機械判読可能な形式を選ぶ
データをダウンロードする際は、二次利用が難しいPDF形式は避け、Excelやシステムに取り込みやすい「CSV形式」のファイルを選ぶようにしてください。
横断検索サイトを利用する
複数の自治体のデータをまとめて探したい場合は、この記事の後半でも紹介する「BODIK ODCS」のような、広域のオープンデータを横断的に検索できるカタログサイトの活用が大変便利です。
自治体の取り組みを推奨する「自治体標準オープンデータセット」

地方自治体が独自に公開したオープンデータには、「欲しいデータが見つからない」「データの形式がバラバラでまとめられない」などの課題がありました。
政府はそれらを解決するべく、地方自治体に公開を推奨するデータや、そのデータを公開するにあたり参考にすべきルールやデータフォーマットを定めたのが「自治体標準オープンデータセット」です。
実際にニーズの高い分野から選定された、公開が推奨されている医療分野に関するオープンデータを2つご紹介します。
受診可能な病院検索「医療機関一覧」
病院や診療所の施設に関する情報を一覧化したオープンデータです。厚生労働省は、医療機能情報提供制度によって、医療機能に関する情報の提供を全国の医療機関に求めています。その医療機能の更新のタイミングで、「医療機関一覧」も更新するよう想定しています。
医療機関一覧をオープンデータとして公開し、診療科情報や位置情報、移動手段などを組み合わせることで、受診可能な医療機関がスムーズに検索可能です。
心肺停止時に活用「AED設置箇所一覧」
心肺停止した方と遭遇した場合、迅速にAEDによる電気的除細動を行う必要があります。AEDは学校や駅などの公共施設に設置されていますが、見つけるのが少しでも遅れてしまうと、命を落としてしまう事態になりかねません。
「AED設置箇所一覧」はAEDごとに設置場所を一覧化したオープンデータです。AEDの新規設置・撤去・場所の変更が発生したタイミングで更新することが求められます。
AEDの設置箇所をオープンデータとして公開し一元管理することで、アプリ上で近くにあるAEDをマップからすぐに検索することができます。
地方自治体の医療オープンデータ取組状況

令和8年2月時点で全国の地方自治体のオープンデータへの取組率は、1,564/1,788自治体の約87.5%です。地方自治体が公開した医療オープンデータを民間企業や医療機関で活用することにより、企業内部での成長戦略や、医療ニーズの分析などに活用できます。
それでは、地方自治体が医療オープンデータに関してどのような取り組みを行っているのか、オープンデータ事業が盛んな都市を抜粋してご紹介します。
【横浜市】医療施設に関する詳細情報を網羅

横浜市のオープンデータは「横浜市オープンデータポータル」で公開されています。横浜市が公開している医療オープンデータは次の通りです。
| データセット名 | 内容 |
| 医療施設の病床数 | 各区における病床種別(精神・感染症・一般など)ごとの病床数集計データ |
| 横浜市内の病院・一般診療所・歯科診療所名簿 | 医療機関の名称、所在地、診療科目などの基本情報 |
| 横浜市内の薬局、医薬品販売業者等の名簿 | 薬局や医療品販売業者などの名称、所在地、有効期間などの基本情報 |
【京都市】ブラウザ上の見やすさも工夫された医療情報
京都市では、政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPI機能を活⽤し、ブラウザ上で各区町村のデータをグラフや表の形式で表⽰するアプリを公開しています。
さらに、京都市が保有する統計情報、観光関連情報などの公共データを、市民が二次利用しやすい形で公開することで、地域の活性化を目指します。

京都市のオープンデータは、京都市オープンデータポータルサイト「KYOTO OPEN DATA」で公開されています。京都市が公開している医療オープンデータは次の通りです。
| データセット名 | 内容 |
| 医薬品医療機器等法に基づく許可施設の一覧 | 薬局や製造業者などの名称、所在地、許可期間などの情報 |
| 病院・診療所・助産所・歯科技工所の一覧 | 患者が医療機関を選択する際に役立つ基本情報および歯科技工所のリスト |
【大阪市】グラフやマップへ可視化された医療情報
最先端ICT都市を目指して積極的にオープンデータを公開している大阪市は、オープンデータだけでなく、民間企業の活用事例も掲載しています。公開されるオープンデータは、機械判読性の高いデータに限定されているので、二次利用のしやすさに重きを置いている自治体と言えるでしょう。

大阪市は、オープンデータ専用サイト「大阪市オープンデータポータルサイト」を開設しています。グラフやマップを用いることで、視覚情報から地域の実態を把握できます。大阪市が公開している医療オープンデータは次の通りです。
| データセット名 | 内容 |
| 生活習慣病の状況 | 特定健診の受診者数や、生活習慣病(高血圧症など)の有病者数に関する統計 |
| 歯科技工所一覧 | 開設届等を行っている歯科技工所の基本情報(名称、住所など) |
| 救急安心センター年報 | 救急医療に関する相談件数や案内数などの統計データ |
【大分県・大分市】BODIK ODCSへの参加でデータ数が急増化
大分県内のオープンデータ事業への取組率は、2023年2月の調査によって100%(18/18自治体)であることが分かりました。大分市では、次の3つの目的を持って、2018年に各種公共データをオープンデータとして公開しています。
- 透明性・信頼性を向上させる
- 市民協働を推進する
- 経済を活性化する

そして大分市は、オープンデータ掲載等の専用サイト「BODIK ODCS」に参加し、「大分市オープンデータカタログサイト」の運用を開始しました。大分市オープンデータカタログサイトでは、全1,500件以上もの膨大なデータを公開しています。大分市が公開している医療オープンデータは次の通りです。
| データセット名 | 内容 |
| 後期高齢者医療制度医療給付状況 | 被保険者数や療養費などの給付に関する統計 |
| 在宅医療と介護に関する資源リスト | 訪問看護や居宅介護支援など、在宅医療や介護に対応している施設の情報 |
【福岡市】起業家や民間企業の活用が期待されたデータ集
福岡県が運営しているオープンデータサイトのデータセット数は、1,886件にも上ります。参加自治体の中でも、アプリ開発・サイト構築を行う企業や起業家が活用しやすいデータ提供を目的に、オープンデータを公開しているのが、福岡市です。

福岡市は、独自のオープンデータ専用サイト「福岡市オープンデータ」を開設しています。医療機関が検索できるアプリや感染症の流行警告アプリなど、活用事例も掲載されているのが特徴です。福岡市が公開している医療オープンデータは次の通りです。
| データセット名 | 内容 |
| 福岡市 医療機関数 | 日常生活圏域別、診療科別に医療機関数を集計したデータ |
| 福岡市 歯科技工所一覧 | 営業中の歯科技工所の名称、所在地などの基本情報 |
| 保険外サービス情報提供サイト『ケアインフォ』登録事業所情報 | 「ケアインフォ」に登録された保険外サービス提供事業所の情報(提供サービス内容など) |
【札幌市】札幌市ICT活用戦略に基づいた事業推進

さらに、2018年には札幌市民が気軽にデータに触れられるよう、プラットフォームを活用できる場として、「DATASMART CITY SAPPORO」を開設し、オープンデータを公開しています。札幌市が公開している医療オープンデータは次の通りです。
| データセット名 | 内容 |
| 性感染症定点把握の感染症 | 各区における性感染症患者の報告数データ |
| 国民健康保険状況 | 加入者数や医療給付件数・給付額などの統計 |
| 札幌市内の医療機関一覧 | 医療機関の名称、所在地、緯度経度、診療科目などの基本情報 |
まとめ|広がる地方自治体の医療オープンデータへの取り組み
全国の地方自治体における医療オープンデータの取組率は年々、上昇傾向にあります。さらに近年は、国と地方自治体が連携することにより、オープンデータの公開サイトを一元化するなどの取り組みが行われています。これによって、国民や民間企業は医療オープンデータの検索がしやすくなり、二次利用がより広がっていくことが期待されます。
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