OTC類似薬の保険外しとは|保険給付見直しで変わる患者負担とメーカー・卸・薬局への影響
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目次
- 1. OTCとOTC類似薬の違い
- 2. 「保険外し」と呼ばれる背景と現在の方向性
- 2.1 長期収載品の選定療養との違い
- 3. 対象になりやすい薬と最新リストの傾向
- 4. 同じ成分でも患者負担が変わる?「除外要件」と「配慮対象」
- 5. 対象になることで生じるメリットとデメリット(影響マトリクス)
- 6. 医薬品メーカーへの影響と取るべき戦略
- 6.1 ① 医療用からOTCへの「需要還流シミュレーション」の実施
- 6.2 ② 需要減に備えた「生産・在庫調整」と供給不全リスクの回避
- 7. 医薬品卸への影響と流通リスクへの備え
- 7.1 ① 返品増加と過剰在庫のダブルパンチ
- 7.2 ② セルフメディケーション推進と流通コスト管理
- 8. 薬局への影響と現場での説明・判断実務
- 8.1 ① 窓口における患者説明の負担増
- 8.2 ② 会計・調剤システム(DX)への対応と在庫調整
- 8.3 ③ 「ピンチをチャンスに変える」セルフメディケーション提案
- 9. 制度開始前に確認しておきたい実務対応
- 9.1 ① 対象成分・対象品目の確認
- 9.2 ② 患者説明・問い合わせ対応の準備
- 10. まとめ
- 11. 参考資料
- 12. 関連記事
※本記事の作成・構成整理にはAIツールを使用しています。本記事は公的情報をもとにした一般的な情報提供を目的としており、制度対応の最終判断にあたっては、厚生労働省をはじめとする公的機関の最新情報をご確認ください。
令和9年3月に、OTC(一般用医薬品)との代替性が特に高い医療用医薬品について、薬剤費の一部を患者が別途負担する「一部保険外療養」の施行が想定されています。2026年8月27日に公開された第213回社会保障審議会医療保険部会資料(資料1「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」)では、対象範囲は77成分・1,042品目、特別の料金(患者の追加負担)は対象薬剤の薬剤費の4分の1と示されています。
当初は全面的な保険適用除外を含む政策議論だったため、「OTC類似薬の保険外し」という言葉が広く浸透しました。その後、患者負担の急増、地域でのOTCへのアクセス格差、こどもや難病患者などへの影響、さらには初期の重症疾患の見逃しといった様々な懸念が各方面から示されました。こうした議論を踏まえ、現在の制度設計では、全面的な保険適用除外ではなく、保険給付の枠組みを残した上で、対象となる薬剤費の一部を患者が別途負担する仕組みとして整理されています。
また、同部会では、OTC類似薬の保険給付の見直しに関するヒアリングとして、全国がん患者団体連合会および日本難病・疾病団体協議会の提出資料も示されました。これらの資料では、配慮対象の範囲、長期使用の判定、医療機関・薬局ごとの判断のばらつき、患者説明の難しさなどが論点として挙げられています。
今回の見直しは、患者の窓口負担が変わるだけでなく、処方薬の需要動向、店頭でのOTC販売、医薬品卸の在庫・物流、さらには薬局現場での説明・指導業務にまで大きな影響を及ぼします。本記事では、医薬品メーカー・卸・薬局それぞれのターゲットに向け、制度の全体像と具体的な影響、現場で想定される実務上の論点を整理します。なお、2026年度の診療報酬改定の全体像や基本的な方向性については、関連記事『2026年度診療報酬改定の全体像|薬局・メーカー・卸が押さえておきたいポイント)』もあわせてご参照ください。
OTCとOTC類似薬の違い

まずは基礎知識として、OTCとOTC類似薬の違いを整理します。
OTCとは「Over The Counter」の略で、医師の処方箋なしに薬局やドラッグストアなどで購入できる医薬品を指します。一般的には市販薬、一般用医薬品、要指導医薬品がこれに該当します。代表的な例としては、風邪薬、解熱鎮痛薬、鼻炎薬、胃腸薬、湿布、皮膚薬(保湿剤など)が挙げられます。
一方、OTC類似薬とは、医療機関で医師によって処方される医療用医薬品のうち、OTC(市販薬)と成分や投与経路が同一、または非常に近く、市販薬でも対応可能な軽症の症状に使用される薬のことです。いわば「市販薬で代用できる処方薬」といえます。
| 区分 | 入手方法 | 今回の見直しとの関係 |
| OTC(一般用医薬品) | 薬局・ドラッグストア等で処方箋なしに購入 | 患者が全額自己負担(10割負担)で、原則としてセルフケアのために購入する。 |
| OTC類似薬 | 医療機関で医師が処方し、薬局で調剤 | 医療機関で処方される際、OTCで代替可能な使い方については、窓口で薬剤費の一部(4分の1)を別途負担する方向 |
今回の改革の焦点は、OTCそのもののルール変更ではなく、「これまで通常の保険適用(1〜3割負担)で処方されていたOTC類似薬について、処方時に新たな患者負担を上乗せする(4分の1の特別料金)」という点にあります。
「保険外し」と呼ばれる背景と現在の方向性
「OTC類似薬の保険外し」という言葉が大きく取り沙汰された背景には、医療財政の逼迫があります。日本の公的医療保険制度の持続可能性を確保するため、国は「OTCでセルフメディケーションが可能な軽度な不調については、公的保険の給付を制限し、自己負担を増やすべきだ」という議論を重ねてきました。
しかし、一律に保険給付から完全に除外(10割負担化)することに対しては、医療関係団体等から強い懸念の声が上がりました。具体的には、
- 患者の経済的理由による受診控え・治療中断が発生し、かえって重症化を招くリスク
- 成長期のこどもや、継続治療が必要な慢性疾患・難病患者への不利益
- 豪雪地帯や過疎地など、近くにドラッグストアがなくOTCを入手しにくい地域での医療アクセス格差
- 医師の診察を経ないことによる、重篤な疾患の初期症状の見逃し
などが指摘されました。
これらの議論を反映し、政府は「全面的な保険外し」ではなく、保険給付の枠組みの中に留め置いた上で、OTC代替性が特に高い一部の薬剤・使い方について、患者に一定の自己負担を追加で求める「一部保険外療養」の仕組みを着地点としました。
長期収載品の選定療養との違い
現在、医療現場ではすでに2024年10月から「長期収載品(先発医薬品)の選定療養」が導入されており、2026年6月にはその「特別の料金」が差額の4分の1から2分の1へと引き上げられています。長期収載品の選定療養の見直しと需要への具体的な影響については、関連記事『長期収載品の今後の在り方① 選定療養の見直しと需要への影響(※4)』で詳しく解説しています。
医療従事者や流通関係者が混乱しやすいこの2つの制度ですが、その設計思想と計算方法は明確に異なります。以下の比較表でその違いを押さえておきましょう。
| 項目 | 長期収載品の選定療養 | OTC類似薬の一部保険外療養(想定) |
| 対象となる医薬品 | 後発医薬品(ジェネリック)が発売されて一定期間が経過した先発医薬品 | OTC(市販薬)との代替性が特に高い特定の医療用医薬品(77成分・1,042品目) |
| 自己負担の計算方法 | 「先発品薬価と後発品最高薬価の価格差」の2分の1+通常の一部負担金 | 「対象薬剤の薬剤費の4分の1(特別の料金)」+通常の一部負担金 |
| 開始・施行時期 | 2024年10月1日導入(2026年6月1日より負担2分の1へ引上げ済み) | 2027年(令和9年)3月施行想定 |
| 制度の目的 | 後発医薬品の使用をさらに促進し、イノベーション創出と保険財政安定を図る | 医療用医薬品の処方を受ける患者とOTC医薬品で対応している患者との公平性を確保し、保険料負担上昇の抑制を図る |
長期収載品は「後発医薬品との差額」を基準に計算されるため、後発品との薬価差がない(または小さい)品目では患者負担は増えません。しかし、OTC類似薬の見直しは「薬剤費の4分の1」がダイレクトに特別の料金として上乗せされるため、薬価そのものが高い品目ほど、患者の窓口負担額が大きく増加する特徴があります。
対象になりやすい薬と最新リストの傾向
厚生労働省の第213回社会保障審議会医療保険部会資料1によれば、本制度の対象となる薬剤は、「OTCと成分・投与経路が同一で、医療用医薬品の一日最大用量がOTCと異ならないもの」を基本原則として選定されています。
2026年8月27日公開資料では、対象範囲は77成分・1,042品目(品目数は令和8年8月1日時点)と示されています。主な対応症状と代表的な成分例は以下の通りです。
| 領域・症状 | 主な成分例 | 実務上の見方と影響度 |
| 解熱・鎮痛 | イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物 など | 邪や一時的な頭痛など、短期処方を中心にOTC(市販薬)への移行が非常に起こりやすい領域 |
| アレルギー(鼻炎など) | フェキソフェナジン塩酸塩、ロラタジン、エピナスチン塩酸塩 など | 花粉症シーズンを中心に大きな需要があり、処方継続とドラッグストアでのOTC購入へ二極化しやすい |
| 胃腸・便秘 | 酸化マグネシウム、ピコスルファートナトリウム水和物 など | 高齢者を中心に長期処方が多い。医学管理が必要な慢性便秘患者と、軽症の一時的便秘患者の区別が実務上重要となる |
| 外用鎮痛・消炎(湿布等) | インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、フェルビナク など | 整形外科処方での湿布薬の処方枚数制限に続き、さらなる処方抑制要因となる。OTC側の在庫管理が重要 |
| 皮膚・抗真菌(保湿等) | ヘパリン類似物質、クロトリマゾール、アシクロビル など | 皮膚科での処方量が多い保湿剤は、治療目的によって患者負担の有無が分かれ、現場説明が複雑化しやすい |
なお、この対象成分リストは一度決まれば固定されるわけではなく、OTCの新規発売や薬価収載品目の入れ替え、臨床実態などを踏まえて見直される可能性があります。8月27日公開資料では、令和7年12月25日に提示された成分一覧から「ポリエンホスファチジルコリン」が削除され、「ラメルテオン」が追加されたことも示されています。メーカーや卸、薬局は、常に最新の告示リストを確認しておく必要があります。
同じ成分でも患者負担が変わる?「除外要件」と「配慮対象」

OTC類似薬の一部保険外療養において、実務上最も複雑なのが、「同じ成分の薬であっても、患者の状況や治療目的によって、追加負担(特別の料金)が発生するかどうかが分かれる」という点です。
厚生労働省の資料1および中間とりまとめでは、医療アクセスや必要不可欠な治療を守るため、以下の患者や処方ケースについては、今回の負担増(一部保険外療養)の対象外、すなわち従来の保険給付(通常の窓口負担のみ)のまま据え置く「配慮措置」が検討されています。
- こども:必要な医療へのアクセスを妨げないよう配慮が必要な患者への処方
- がん患者・難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱える方:疾患や治療に関連して対象医薬品を使用する場合
- 低所得者:経済的理由によって必要な医療から脱落するのを防ぐ必要がある層
- 入院患者や処置等の一環でOTC類似薬の処方が必要な患者
- 医師が医学的観点から「長期使用・継続治療が必要」と判断したケース
この除外判定を行うため、医療機関および薬局の現場では、単に「対象成分の薬が出ているから自動的に一律4分の1負担を追加する」という単純な処理はできません。具体的には、次のような確認が必要になります。
- 処方箋の発行元医師が「医学的に保険給付が必要(別途負担の除外対象)」と指示しているか
- 患者が助成金受給者や難病患者、特定の公費対象者であるか
- 該当する効能・効果(適応症)での使用か
8月27日に示された患者団体のヒアリング資料では、がん患者や難病患者について、治療との関連性や長期使用の必要性を処方時点で判断しにくいケースがあることも指摘されています。
そのため、制度開始後は、対象成分かどうかだけでなく、患者背景、処方目的、医療上の必要性をどのように確認するかが、医療機関・薬局双方の実務上の課題になります。これが「現場の説明・判断負担の増加」を招く大きなリスク要因です。
対象になることで生じるメリットとデメリット(影響マトリクス)
OTC類似薬の見直しは、医療現場を取り巻くステークホルダー全員に連鎖的な影響を及ぼします。それぞれの立場から見たプラスの可能性とリスクとなる点を整理した「影響マトリクス」は以下の通りです。
| 立場 | プラスに働く可能性(メリット) | リスクとなる点(デメリット・課題) |
| 保険者・社会全体 | 国の医療財政(保険給付)の負担抑制。セルフメディケーションの定着による医療資源の効率化 | 必要な受診まで控えることによる患者の重症化リスク。初期がんや重篤感染症の見逃し |
| 患者(受診者) | 軽症であればドラッグストアで手軽にセルフケアができる選択肢の定着 待ち時間の削減 |
処方継続を望む場合の窓口支払い額の増加。医療費の家計負担増 |
| 医薬品メーカー | 自社に同成分のOTCブランドがある場合、店頭販売の需要増加。セルフケア市場の活性化 | 医療用医薬品としての処方数量の減少 自社OTCではなく、他社低価格ブランドやPBへの流出 |
| 医薬品卸 | OTC流通量の拡大と、ドラッグストア等の新たな販路拡大の機会。セルフメディケーション関連の新規商材提案 | 医療用医薬品の急激な在庫滞留。OTC側の急激な注文集中による欠品、配送コストの上昇、返品の増加 |
| 薬局(調剤薬局) | OTC販売の拡大と相談対応・受診勧奨の役割強化 地域密着の健康相談拠点としての存在感確立 |
会計・処方監査時における対象/除外の判断・監査負担。「なぜ負担が増えたのか」に対する患者説明業務の急増 |
このように、本制度は単なる「患者の負担増」という一面的なものではなく、医療用医薬品、OTC、薬局実務、医薬品流通の需給構造に広く影響し得る制度として捉える必要があります。
医薬品メーカーへの影響と取るべき戦略
医療用医薬品(処方薬)を主軸とするメーカーにとって、本制度の導入は対象品目の処方数量減少に直結します。患者の選択は大きく「追加負担を受け入れて処方を続けるケース」「受診を控え、ドラッグストア等でOTCを直接購入するケース」「受診や治療自体を止めてしまうケース」の3つに分岐します。
この際、メーカーが取るべき戦略と確認すべきリスクは以下の通りです。
① 医療用からOTCへの「需要還流シミュレーション」の実施
自社グループ内に、医療用と同成分のOTC製品(スイッチOTC等)を保有している場合、医療用で失うシェアをいかに自社のOTC製品に還流(スイッチ)させられるかが勝負となります。
しかし、患者が医療用からOTCへ切り替える際、必ずしも自社のOTC製品を選んでくれるとは限りません。価格が安価な他社製ジェネリックOTCや、大手ドラッグストアのプライベートブランド(PB)製品、あるいは店舗の薬剤師・登録販売者が推奨する製品に流れるリスクが高いからです。
そのため、医療用とOTCの両販売データを成分軸で統合して分析し、どの製品へ需要が流出しているのかを早期に検知できる体制を構築する必要があります。
② 需要減に備えた「生産・在庫調整」と供給不全リスクの回避
最も大きなリスクは、「需要の移行速度を読み違えること」です。
制度施行と同時に処方量が激減したにもかかわらず、過去の処方実績ベースで製造を続けると、過剰在庫を抱えることになり、使用期限切れに伴う大量廃棄や返品リスクに直面します。
逆に、OTC側の需要急増を甘く見て、OTCの生産体制や原材料(包装資材など)の調達を軽視していると、店頭で欠品を発生させ、競合他社に市場を奪われる結果を招きます。
これを防ぐため、メーカーは対象品目の「効能・効果」「適用患者層」「長期処方の割合」を分析し、どの程度の処方が保険内に留まり、どの程度がOTCに移行するかの高精度なシミュレーションモデルを設計しなければなりません。
医薬品卸への影響と流通リスクへの備え

医薬品卸は、メーカーのように中長期的な製造計画を組むのとは異なり、日々発生する医療現場からの注文に遅滞なく対応する「ラストワンマイルの安定供給」を担っています。それだけに、制度移行に伴う需給の混乱は、卸の物流と経営を直撃します。
卸が特に警戒すべきリスクは、「医療用在庫の滞留」と「OTC在庫の欠品」が、同じ成分の薬で同時に発生するミスマッチ現象です。
① 返品増加と過剰在庫のダブルパンチ
薬局や医療機関が「患者負担増による処方減少」を警戒し、医療用のOTC類似薬の在庫を急速に絞り込んだり、あるいは不動在庫化した品目を卸へ返品したりする動きが活発化します。
特に、季節性アレルギー(花粉症)治療薬や、処方量の多い「湿布薬(経皮吸収消炎鎮痛剤)」や「ヘパリン類似物質等の外用保湿剤」などは流通量が大きいため、需要予測を少し外しただけでも、支店単位で過剰在庫や返品リスクが顕在化する可能性があります。
② セルフメディケーション推進と流通コスト管理
日本医薬品卸売業連合会の「OTC医薬品卸協議会」は、持続可能な医薬品流通や返品削減、セルフメディケーションの推進を掲げています。今回の見直しでも、医療用医薬品とOTCの双方を扱う流通現場では、返品削減や安定供給、セルフメディケーションへの対応が重要な論点になります。
卸の強みは、地域別の販売実績(実消化データ)を最も早く把握できる点にあります。
「特定の地域や診療科周辺の薬局で、急激に医療用の処方が減り、ドラッグストアでのOTC受注が増えている」といった兆候を、成分別・店舗別・エリア別に検知し、安全在庫の基準(発注点)を機動的に見直すことで、返品の極小化と欠品ゼロを両立する「高度な在庫流通コントロール」が求められます。
薬局への影響と現場での説明・判断実務
患者と直接対峙する調剤薬局の現場は、本制度の影響を最もリアルに、かつ負担の大きい形で受けることになります。
① 窓口における患者説明の負担増
患者が処方箋を薬局に持参した際、これまでと同じ薬であるにもかかわらず「今回の処方は一部保険外療養に該当するため、薬剤費の4分の1が別途、特別の料金として上乗せされます」と説明しなければなりません。
患者側からすれば、「なぜ同じ薬なのに、今回はこんなに高いのか」「同じ薬でも上乗せされていない人がいるのはなぜか」といった疑問や不満を抱く可能性があります。その説明の多くを、薬局の受付や薬剤師が担うことになります。
一人ひとりの会計時にこれらを手作業で説明し、納得してもらうためには、通常の調剤・服薬指導に加えて時間が必要となり、窓口の混雑や業務遅延につながる可能性があります。
② 会計・調剤システム(DX)への対応と在庫調整
レセコンや電子薬歴、レセプト送信システムが「77成分・1,042品目」の対象マスタを保持し、患者の年齢(こども)、公費負担、処方医による除外指示、長期使用等の医療上の必要性を判定して「特別の料金」を正確に算出できるシステム構築が必要です。
これに失敗すれば、窓口での会計ミスが多発するだけでなく、レセプトの返戻(審査機関からの差し戻し)によるキャッシュフロー悪化リスクも生じます。
③ 「ピンチをチャンスに変える」セルフメディケーション提案
一方で、今回の見直しは薬局にとって、「物販(OTC販売)を最大化し、地域住民の健康相談拠点として価値を示すチャンス」でもあります。
「処方薬に特別料金を払って調剤するよりも、同等成分のこちらのOTCをご自身で購入された方が安くなりますよ。効果や副作用の注意点も、ここで詳しくご説明します」というように、専門的知識に基づいたOTCの選択支援や、適切な受診勧奨を行う「かかりつけ薬局」としての対人業務を発揮することで、調剤報酬の算定要件(地域支援体制加算など)を支える店舗のファン作りに繋げることができます。
制度開始前に確認しておきたい実務対応
今回の見直しでは、対象成分に該当するかどうかだけでなく、患者の状態や処方目的によって、別途負担の対象となるかが変わる可能性があります。制度開始前には、対象薬の確認と、患者説明・問い合わせ対応の準備を進めておくことが重要です。
① 対象成分・対象品目の確認
対象となる77成分・1,042品目について、自社製品や取扱品、薬局での採用品目に該当するものがないかを確認しておく必要があります。特に、同じ成分でも規格や剤形、効能・効果によって扱いが変わる可能性があるため、対象リストと実際の取扱品目を照合しておくことが重要です。
② 患者説明・問い合わせ対応の準備
制度開始後は、患者から「なぜ追加負担が発生するのか」「OTCに切り替えた方がよいのか」「自分は配慮対象に該当するのか」といった問い合わせが増える可能性があります。薬局では説明用の資料や確認手順を整え、医療機関・卸・メーカー側でも、対象薬や制度内容に関する問い合わせに対応できるよう準備しておくことが求められます。
まとめ
「OTC類似薬の保険外し(一部保険外療養)」は、これまでの単なる薬価改定や診療報酬の点数変更とは一線を画す、大きな制度改革です。同じ成分の薬剤でありながら、「患者の背景」や「治療の目的」によって窓口での支払い金額が変わり、医療用からセルフメディケーションへの需要の急激なシフトを誘発します。
この変化の中で、医薬品メーカー、医薬品卸、そして薬局には、対象薬の範囲、患者負担の扱い、配慮対象、OTCへの切り替え可能性を早めに確認し、現場での説明や問い合わせに備えることが求められます。
制度が施行される令和9年3月に向けて、対象品目の整理、在庫・供給への影響確認、患者説明の準備を進めることが重要です。制度内容は今後も告示や通知で具体化される可能性があるため、厚生労働省資料や関係団体の情報を確認しながら、過不足のない対応を行う必要があります。
参考資料
[1] 厚生労働省「第213回社会保障審議会医療保険部会(ペーパーレス)資料」(2026年8月27日)
URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75815.html
[2] 厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(第213回社会保障審議会医療保険部会 資料1、2026年8月27日)
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742888.pdf
[3] 全国がん患者団体連合会提出資料(第213回社会保障審議会医療保険部会 資料2-1、2026年8月27日)
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742889.pdf
[4] 日本難病・疾病団体協議会提出資料(第213回社会保障審議会医療保険部会 資料2-2、2026年8月27日)
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742890.pdf
[5] 厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」(2026年8月6日)
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001742892.pdf
[6] 日本医師会「OTC類似薬の保険適用除外は見送りに」
URL: https://www.med.or.jp/nichiionline/article/012566.html
[7] 日本薬剤師会「令和8年度予算に関する要望事項」
URL: https://www.nichiyaku.or.jp/files/co/about/r8yosannyoubou.pdf
[8] 日本医薬品卸売業連合会 OTC医薬品卸協議会「セルフメディケーション推進ビジョン」
URL: https://jpwa.or.jp/jpwa/wp-content/uploads/2024/06/OTC.pdf
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