オペレーショナルエクセレンスとは?スタートアップに不可欠な成長戦略
目次
スタートアップが持続的な競合優位性を持つには、オペレーショナルエクセレンスの概念が重要です。オペレーショナルエクセレンスは、プロセスを標準化する取り組みになります。
本記事では、オペレーショナルエクセレンスとは何か?スタートアップの成長戦略に不可欠な要素として取り上げました。
競合に差をつけることを目的とするスタートアップ経営層は、ぜひ参考にしてみてください。
オペレーショナルエクセレンスとは
オペレーショナルエクセレンスとは、企業の事業活動において効果を引き出し標準化することです。
業務効率を見直して競争優位性を構築する企業価値創造のために必要な取り組みになります。
企業には、さまざまなオペレーションがあります。オペレーションは、システム化して社内バリューチェーンとして価値連鎖を浸透させることが大事です。
実は、多くの企業は既に気づいているオペレーションのシステム化は、昨今のオンライン需要やDXの推進以前から必要とされていました。
ただし、オペレーションを必要としていたのは企業の表面的な部分です。
オペレーションの標準化に対して、絶対的な重要性を持つ企業は、数えるくらいの状況でした。オペレーショナルエクセレンスを企業の概念として取り入れていくには、「単なる業務効率化ではない」という理解が必要です。
オペレーショナルエクセレンスは、品質を重視した効率化により、競合他社がマネできない状態を目指します。
具体的には、自社ビジネスの次のような部分を磨き上げる競合優位性です。
3つの部分を軸にして、業務を標準化することがオペレーショナルエクセレンスへの取り組みになります。
たとえば、「今よりもっとよいオペレーションがあるのではないか?」と、オペレーションの可能性を追求することもオペレーショナルエクセレンスの特徴です。
大きな成長を続けることを目的とするスタートアップにとって、相性のよい取り組みではないでしょうか。
オペレーショナルエクセレンスは、企業において現場の末端社員まで浸透させる考え方です。継続的なオペレーションの進化を標準とする仕組みがオペレーショナルエクセレンスになります。
スタートアップが成長するために不可欠な3つの理由
スタートアップが成長するには、オペレーショナルエクセレンスが不可欠です。オペレーショナルエクセレンスは、企業の業務責任者のリスクを回避できます。
オペレーショナルエクセレンスは、データ起点で業務を実行するため、業務管理や工程の改革を客観的に判断できます。具体的なオペレーショナルエクセレンスの必要性について、解説しましょう。
業務の属人化を防げる
オペレーショナルエクセレンスは、業務の属人化を防ぐ役割があります。
属人化する業務は、担当者に依存してしまうため、プロジェクトの規模拡大ができない要因になるでしょう。属人的な業務を放置したままだと、コストの見直しができません。
属人化している業務を見直すには、オペレーショナルエクセレンスの考え方により、業務の標準化と効率化を進めて属人的な業務をなくす必要があります。
業務の見直しができて陳腐化を防げる
オペレーショナルエクセレンスは、業務が最新状態に更新されていないと陳腐化が考えられるでしょう。
オペレーションの効率を上げるツールは日々進化しています。そのため業務も最新状態に更新しなければ、現状から成果を出し続けられません。
企業は、業務に対して改善の余地を追求しなければ陳腐化してしまうのです。オペレーショナルエクセレンスは、常に持続的な競合優位性を追求しているため、陳腐化する要素のない概念になります。スタートアップの特徴をそのまま取り組んでいる経営戦略ではないでしょうか。
業務が可視化されて連携がとれる
業務が可視化されて、社内や社外関係者との連携がとりやすくなることも、オペレーショナルエクセレンスが必要な理由です。
可視化される部分は、業務フローだけではなく、業務フローの改善をしたプロセス自体がマニュアルとなります。
オペレーショナルエクセレンスでは、改善を重ねたマニュアルが可視化されて、現場との連携が迅速になることが大きな成果となるでしょう。
オペレーショナルエクセレンスの事例
オペレーショナルエクセレンスは、すでに実行して成果を出している事例があります。ここでは、2社の事例を紹介しましょう。
トヨタ自動車「かんばん方式」
大手自動車メーカーのトヨタでは、独自の生産管理システム「かんばん方式」を実践しています。
かんばん方式は、明確なコンセプト(トヨタウェイ)と指針を持ち、技術ではなく人材に焦点を置いた考え方です。
かんばん方式は、次の2つを軸にした概念となります。
自動化:機械化と別の理論・問題があれば人間が改善していく考え方
ジャストインタイム:必要なモノを必要なときに必要なだけ手に入れること
トヨタ自動車のかんばん方式は、自動化とジャストインタイムにより、できる限り在庫をもたないで作業工程や機械操作などを標準化していく取り組みです。
トヨタでは、他社による技術のコピーを否定していません。「技術をマネしたとしても、本質部分までマネできない」という自信の表れではないでしょうか。トヨタは、本当の差別化要因を技術ではなく人材に置いています。それが、「テクノロジーはマネできても、ミッション・ビジョン・バリューはマネできない」というメッセージです。
ミッション・ビジョン・バリューとは、企業の目指す方針を言語化して、組織を1つにするための概念をあらわします。トヨタは、かんばん方式を標準化して、ミッション・ビジョン・バリューを明確に打ち出したことが競合優位性となるオペレーショナルエクセレンスです。
良品計画の標準化・マニュアル化
オペレーショナルエクセレンスをシステム化した企業では、無印良品をブランドとする良品計画があげられます。
良品計画は、「マニュアル化できないことはない」と徹底した「標準化」と「マニュアル化」に取り組んでいます。良品計画のマニュアル化は次のとおりです。
01:売り場に立前に
02:レジ業務・経理
03:店内業務(承り)
04:配送・自転車
05:売り場作り
06:商品管理
07:後方業務
08:労務管理
09:危機管理
10:出店準備
11:店舗マネジメント
12:ファイリング
販売スタッフTS
など、マニュアルを取り扱う担当者が変わっても、同じパフォーマンスを出せるように標準化が徹底されています。良品計画は、あえて口頭で伝えられるような些細な仕組みまで言語化している点に標準化への信念がうかがえます。「いかに現場で同じクォリティのサービスを提供できるか?」の部分に重要性を持っているオペレーショナルエクセレンスの事例です。
まとめ
本記事では、企業における業務の標準化に必要なオペレーショナルエクセレンスの概念を解説してきました。
オペレーショナルエクセレンスが必要となる理由や、導入により競合他社との差別化を着々と進めている企業事例を紹介してきました。
業務の標準化は、単なる効率化だけではありません。持続可能な競合と差別できる標準化です。
競合他社と差別できる優位性を向上させるには、オペレーションの進化が必要になります。常にバージョンアップをくり返していく標準化を目指すことがスタートアップの条件ではないでしょうか?