DPCレセプトとは DPCデータとの違いや記載要領を分かりやすく解説
目次
私たちが診療を受けると、医療機関は診療内容や医療費の詳細を記録した「診療報酬明細書(レセプト)」を作成します。
DPCレセプトとは、DPC制度に基づいて算定された入院患者のレセプトです。
DPC制度を導入している急性期医療機関では、DPCレセプトが医療機関経営の分析や国の医療政策の評価に用いられる重要なデータの一つとなっています。
特に、DPCレセプトを基にしたNDBオープンデータは、医療オープンデータの中でも活用価値が高いデータとして注目されています。
本記事では、医療ビッグデータを収益改善に活かしたい医療機関の担当者向けに、DPCレセプトの基礎知識を解説します。具体的には、DPCデータとの違いや、DPCレセプトの記載要領、具体的な活用事例、運用上の注意点を網羅的にまとめました。
DPCレセプトとは

急性期医療の診療報酬明細書
診療報酬とは何か
医療機関に支払われる「診療報酬」とは、診察、検査、処方といった医療行為の対価として支払われる費用のことです。
通常、窓口で患者が支払う自己負担額(1〜3割)と、保険者が負担する残りの金額を合わせた総額が、医療機関の収益となります。この報酬の計算には、大きく分けて「出来高払い方式」と「DPC方式(包括評価方式)」の2種類が存在します。
DPC方式の仕組みと対象範囲
DPC方式とは、病名や治療内容に基づいた「診断群分類」ごとに、1日あたりの定額で医療費を算定する仕組みです。
正式には「DPC/PDPS(診断群分類別包括評価制度)」と呼ばれ、現在は日本の急性期病院における入院医療の標準的な算定方法として広く採用されています。この方式は、医療の標準化や効率化を目的として導入されました。
DPCレセプトの定義
このDPC方式を採用している医療機関が、入院患者ごとに算定内容を記録し、保険者(保険証の発行元)へ提出する診療報酬明細書のことを「DPCレセプト」と呼びます。
つまり、DPCレセプトとは「DPC方式で計算された入院費用の請求書」と言い換えることができます。算定方式について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
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◆DPC制度(DPC/PDPS)とは何かをわかりやすくご紹介します!
DPCデータとの違い:提出目的とデータ項目の詳細さ
DPC方式で算定された情報を扱うものには、DPCレセプトのほかに「DPCデータ」があります。
いずれもDPC方式に基づいた患者情報を記録したものですが、作成の目的やデータの構成項目が大きく異なります。実務上も混同されやすいポイントであるため、ここからはそれぞれの定義と違いについて詳しく見ていきましょう。
| DPCデータ | DPCレセプト | |
| 提出目的 | ・DPC導入の影響評価 ・今後のDPC制度の見直し ・医療機関別係数の評価 |
医療費における患者負担分以外の保険者負担分を保険者に請求する |
| 提出先 | 厚生労働省 | 審査支払機関 ・社会保険診療報酬支払基金 ・国民健康保険団体連合会 |
| 提出頻度 | 毎年 | 毎月 |
| 内容 | 「患者住所の郵便番号」「入退院の経路」などの詳細な情報 | 審査・支払に必要な最低限の情報 |
DPCレセプトは、審査支払機関に提出されるデータであり、診療報酬の請求を主な目的としています。請求に必要な情報に特化しているため、DPCデータに比べて項目数が少ないのが特徴です。
一方、DPCデータは、患者の病態や治療経過、重症度に関するより詳細な情報を含んでおり、医療の質の評価や、政策・制度改善に向けた分析に活用されます。
このように、DPCレセプトとDPCデータでは、データの作成目的が根本的に異なることを理解しておく必要があります。
DPCレセプトの記載要領の記載要領とデータ構成、DPCコードの考え方
医療機関では、レセプトコンピューター(レセコン)に診療情報を入力し、電子レセプトを作成しています。その作成時に不可欠な公式ルールが「記載要領」です。
厚生労働省は、レセプトの記載方法を定めた「診療報酬請求書等の記載要領」を公開しており、明細書の各欄の書き方や訂正方法などが具体的に示されています。これらの記載要領は、2年ごとに行われる診療報酬改定に伴い必要に応じて見直されるのが特徴です。
ここでは、最新の令和6年(2024年)6月版の記載要領および関連仕様に基づき、DPCレセプトのデータ構成と、その中核となる「DPCコード」の考え方について解説します(※1)。
DPCレセプトを構成する「レコード」の仕組み
電子レセプトは、情報の種類ごとに「識別情報(レコード名)」で区切られた階層構造になっています。
DPCレセプトでは、記載要領および記録条件仕様により、情報の記録順序や役割が定められており、主に以下のようなブロック構成は以下の通りです。
※以下は、DPCレセプトを構成する主要なレコードを抜粋して示したものです。
| ブロック | レコード名 | 名称 | 役割と主な記録内容 | |
| 基本情報 | RE | レセプト共通 | 患者氏名、生年月日など、レセプト全体の基本となる情報 | |
| SN | 資格確認 | マイナ保険証等による資格確認状況 | ||
| DPC核心部 | BU | 診断群分類 | 14桁のDPCコードを記録する、DPCレセプトの中核となるレコード。 | |
| SB | 傷病 | 医療資源を最も投入した傷病名および副傷病名 | ||
| SK | 診療関連 | 手術名や処置内容など、DPC区分(BU)決定の根拠となる情報 | ||
| 包括評価 | HH | 包括評価 | 包括評価(定額制)に基づく1日あたりの点数 | |
| 出来高・詳細 | SI / IY / TO | 診療行為等 | 手術や高額薬剤など、包括評価に含まれない出来高算定項目 | |
| CO | コメント | 審査支払機関に伝える補足説明を、コードまたは文章で記録 | ||
| ⅭⅮ | コーディングデータ | 分析・集計を目的とした詳細データ |
DPCコード(14桁)の構成と他レコードとの関係
ここで重要なのは、「レコード構成(ファイルの枠組み)」と「DPCコード(具体的な請求番号)」の関係性を理解することです。
DPCコードは単独で意味を持つ番号ではなく、レセプト内に記録された傷病名や手術内容などの診療情報をもとに、定められたルールに従って決定される請求用のコードです。
DPCレセプトでは、前述のBUレコードに、DPC制度の中核となる「14桁のDPCコード」が記録されます。この14桁は、SBレコード(傷病名)やSKレコード(診療関連情報)、KKレコード(患者基礎情報)など、他のレコードに記録された内容を組み合わせることで決定される仕組みになっています。
以下は、DPCコード14桁の構成要素と、それぞれの桁がどのレコード情報を根拠としているかを整理したものです。
DPCコード(14桁)の構成
| 桁数 | 構成要素 | 内容 | 根拠となる関連レコード |
| 1〜6桁目 | 診断群分類 | 最も医療資源を投入した病気の種類を示す。 | SBレコード(病名) |
| 7桁目 | 入院目的区分 | 通常の入院か、特定の目的による入院かを区分する。 | KKレコード(患者基礎) |
| 8〜10桁目 | 手術の有無 | 実施された手術の種類を示す。 | SKレコード(診療関連) |
| 11桁目 | 手術・処置等2 | 輸血や特定の処置の有無を示す。 | SKレコード |
| 12桁目 | 副傷病の有無 | 重大な合併症や併存疾患の有無を示す。 | SBレコード(副傷病) |
| 13桁目 | 重症度 | 患者の状態や重症度を示す指標。 | KKレコード(重症度) |
| 14桁目 | 予備 | 現在は主に「0」が記録される。 | ― |
このように、SBレコードやSKレコードなどの各レコードは、請求内容を裏付ける診療情報の「根拠」となり、それらの情報をもとに、BUレコード内に14桁のDPCコードが確定します。
これらすべてのレコード間で内容の整合性が取れていることが、適切なDPCレセプト作成の絶対条件です。
DPCレセプトを含むNDBオープンデータの取得方法

第 10 回 NDBオープンデータ 【解説編】,厚生労働省(令和7年5月)
DPCレセプトの実データには個人情報が含まれているため、一般公開はされていません。しかし、レセプト情報の一部が匿名化・集計された「NDBオープンデータ」は、厚生労働省の公式ウェブサイトを通じて公開されており、自由に入手可能です。
ここではNDBオープンデータについて詳しく解説します。
NDBオープンデータについて
NDBオープンデータの基になっているのは、医療費適正化計画の作成・実施・評価のために構築されている、レセプトデータと特定健診・保健指導データを含んだデータベース(NDB)です。
NDBには機密性の高い情報も含まれているため、データの取得は関係省庁や公益法人、研究機関などが中心であり、公募・審査を経た団体に限られています。
そこで厚生労働省は、多くの国民がNDBを利用できるよう、NDBから抽出した基礎的な集計表「NDBオープンデータ」を公開しています。公開頻度は1~2年に一度で、全国規模のDPCレセプト集計データが含まれています。直近のNDBデータは、令和7年5月公開の第10回(令和5年度診療分)です。

(画像1)第10回NDBオープンデータ、厚生労働省(令和7年5月)
なお、厚生労働省では、NDBオープンデータとして静的な集計表を公開しているほか、集計結果をブラウザ上で動的に表示・分析できる「NDBオープンデータ分析サイト」(画像2)も提供しています。
このサイトを利用することで、データ分析の専門知識がなくても、地域別や性年齢別の傾向を視覚的に把握できるため、活用を始める組織の担当者にとって有力なツールとなります。

(画像2)NDBオープンデータ分析サイト第9回 医科診療行為 性年齢別 算定回数,厚生労働省
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◆NDBオープンデータとは?考察・分析・改善策・戦略を考えたい方へ
DPCレセプトを含むNDBオープンデータ活用のための重要ポイント
NDBオープンデータ活用にあたり、特に重要な3つのポイントについて解説します。
病名情報の制約と分析への影響
NDBオープンデータに患者の病名に関する情報は含まれていません。
NDBの元データであるレセプトには「疑い病名」が複数記録されるケースが多く、一つの病名に断定して集計することが困難なためです。
しかし、その代替として「DPCコード別(診断群分類別)の算定件数」や「特定の診療行為(手術、検査など)の算定回数」が詳細に公開されています。
分析を行う際は、これら一般公開されているDPCコードや診療行為のデータを活用し、特定の病態を間接的に推測するアプローチが求められます。
データ更新の遅延と意思決定への影響
NDBオープンデータは、集計対象となる「データ年度」と、実際に一般公開される「公開年月」との間に、原則として2年度分の遅延(ラグ)が生じる点に注意が必要です。
例えば、2025年(令和7年)5月公開の「第10回」NDBオープンデータは、2年前の「2023年度(令和5年度)診療分」の集計結果です。組織が意思決定に用いる際は、公開されている情報が常に「2年度前の動向」を示していることを前提とし、現在の動向を補完するためのリアルタイムな情報源(例:独自の顧客データや市場調査)と組み合わせて多角的に分析することが重要です。
専門的な分析スキルとマスタ整備の必要性
NDBオープンデータは非常に大規模かつ複雑な構造を持っており、高度な分析にはBIツール(Tableau、Power BIなど)の活用が不可欠です。
さらに、NDBオープンデータの地域情報や医療機関情報を、組織が持つ独自の医療機関マスタと正確に紐づける作業(マスタ整備)が必須です。
医療ビッグデータの活用事例

NDBオープンデータは、企業や医療機関にとって経営戦略に役立つ有益な情報です。具体的な活用事例は、分析に取り組む組織の担当者にとって大きなヒントになるでしょう。
企業における医療ビッグデータの活用事例
企業では、製品の市場投入計画や営業リソースの最適化など、データに基づいた意思決定を行うためにNDBオープンデータが利用されています。
医療機器の営業先エリアの選定
二次医療圏別患者数の情報を活用すれば、医療機器の営業先に最適なエリアを選定できます。
リサーチの際、単に入院患者の総数(ボリューム)を見るだけでは不十分です。「特定の診療科」と、それに対応する「疾患群(DPCの分類に基づいた具体的な医療行為)」ごとの実施件数に着目することが重要です。
ターゲットを精密に絞り込める理由
なぜ診療科や医療行為の件数に着目すると、ターゲットが明確になるのでしょうか。それは以下の相関関係があるためです。
- 診療行為の件数 = 特定の病態を持つ患者の存在: 例えば「人工関節置換術」の件数が多いエリアは、それだけ重症の変形性関節症患者が集まっていることを意味します。
- 診療科との掛け合わせ: 「整形外科」かつ「特定の処置件数」を絞り込むことで、自社製品が必要とされるの需要が高い「具体的な治療現場」をピンポイントで特定できます。
このように、自社製品と関連性の高い医療需要を数値で把握することで、根拠に基づいた市場規模の推定や、効率的な営業エリアの選定が可能になります。
医療機関検索アプリケーションの検索軸拡充
国民に向けて医療機関検索アプリケーションの開発や、抽出条件を充実させるためにNDBオープンデータが役立ちます。患者一人ひとりのニーズに合った医療機関検索アプリケーションの実現には、欠かせない機能と言えるでしょう。
データからユーザーが求める診療行為を把握し、「提供可能」なサービスではなく、実際に多くの患者が受けている「診療の実態」に基づいた、信頼性の高い検索軸を提供できるようになります。
例えば、以下のような検索条件の設計が考えられます。
- 診療科別・疾患群別の診療実績
- 特定の医療行為・処置の実施件数
二次医療圏ごとのDPC分類別件数を活用することで、「整形外科」「循環器内科」などの診療科に加え、どの疾患・治療が実際に多く行われている医療機関か を検索条件として設定できます。
人工関節置換術、心臓カテーテル治療など、具体的な医療行為の実施件数に基づき、「その治療を数多く行っている医療機関」を可視化できます。
これにより患者は、単に「診療科を標榜している医療機関」ではなく、自分の病状や治療内容に近い医療を、実際により多く提供している医療機関を選択できるようになります。
このように、NDBオープンデータを用いて「提供可能な診療内容」ではなく「実際に行われている診療の実態」に基づいた検索軸を実装することは、患者の医療機関選択を支援するうえで欠かせない機能と言えるでしょう。
医療機関における医療ビッグデータの活用事例
医療機関では、診療圏調査や病床機能の再編など、地域医療の中での自院の立ち位置を明確にするためにデータ分析が不可欠です。
自院と競合医療機関の医療需要の比較分析
医療機関は、二次医療圏別の算定回数・患者数から他院との医療需要の差を把握し、経営改善に活用できます。
例えば、エリア間で特定の画像診断を導入している医療機関数に大きな差がない場合でも、NDBオープンデータ上の算定回数や患者数に差が認められれば、1医療機関あたりが担っている患者数(需要密度)に違いがあると考えられます。
仮に、自院が属するエリアの方が算定回数や患者数が多い場合には、同程度の導入施設数でより多くの患者が診療を受けていることになり、当該医療行為に対する地域の医療需要が相対的に高いと推測できます。
さらに、NDBデータによる地域全体の患者数推移と、自院のDPCデータを組み合わせて分析することで、以下の情報を把握できます。
- 地域全体では患者数が増加しているにもかかわらず、自院の実績が伸びていない領域
- 特定の領域で競合医療機関の患者数が集中している場合
→ 自院が取りこぼしている医療需要
→ 競合が強みとする診療分野
これらの分析結果は、病床機能の見直しや、診療体制の強化、新規診療科開設の判断など、自院の機能を地域医療の中で最適化するための意思決定に活用できます。
まとめ
本記事では、DPCレセプトの基礎知識から、DPCデータとの違い、そして集計結果としてのNDBオープンデータとの関係性や活用法について解説しました。
DPCレセプトは、診療内容を反映した詳細な医療情報であり、これを適切に理解することは、DPCデータやNDBオープンデータを正しく読み解くための前提となります。
また、DPCレセプトの集計結果であるNDBオープンデータは、日本の医療の実態を把握する貴重なビッグデータですが、病名情報の制約やデータ更新の遅延といった特性を理解したうえで活用することが重要です。
DPCレセプトの構造や特性を踏まえてデータを活用することで、医療機関経営の改善や、製品開発・マーケティング戦略の検討において、より精度の高い意思決定が可能になります。
このように、DPCレセプトやDPCデータ、NDBオープンデータは、それぞれ目的や特性が異なり、正しく理解した上で扱う必要があります。一方で、これらのデータを実務に活用するには、データの整理や分析環境の構築といったハードルも存在します。
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