DPCレセプトとは DPCデータとの違いや記載要領を分かりやすく解説
目次
私たちが診療を受けると、医療機関は診療内容や医療費の詳細を記録した「レセプト」を作成します。DPCレセプトとは、DPC制度に基づいて算定された入院患者のレセプトです。患者のさまざまな情報が含まれており、病院や企業の経営戦略にも活用できます。
そこで本記事では、DPCレセプトとは何かについて詳しく解説します。DPCデータとの違いや記載要領、活用方法も掲載しているので、DPCレセプトを企業・病院の利益向上に役立てたい方は、ぜひ参考にしてください。
DPCレセプトとは
医療機関が月・患者ごとに保険者(保険証の発行元)へと提出する診療報酬明細書(レセプト)のうち、急性期病院の入院医療のみを対象とし、1日あたりの定額で医療費が計算されたレセプトがDPCレセプトです。
診療報酬は、医療行為(診察・治療・処方など)の対価として医療機関に支払われる費用を指します。患者が保険証を提示して保険診療を受けた場合、診療報酬は患者負担分3割と保険者負担分7割に分かれます。
レセプトは、医療機関が保険者に7割の診療報酬を請求する際に必要になる資料です。DPC方式に基づいて医療費が算定された入院患者には、DPCレセプトが作成されます。
DPC方式とは、診断群分類(病名や治療内容に応じた分類)別に決められた1日あたりの定額で医療費を算定する方式です。算定方式について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
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◆DPC制度(DPC/PDPS)とは何かをわかりやすくご紹介します!
DPCレセプトとDPCデータの違い
保険者請求に精通している方は、DPCレセプトとDPCデータを混同されるかもしれません。DPCレセプトとDPCデータは、どちらもDPC方式で算定された患者の情報を含んでいますが、全く別物です。それぞれの主な定義について見ていきましょう。
DPCデータ | DPCレセプト | |
目的 | ・DPC導入の影響評価 ・今後のDPC制度の見直し ・医療機関別係数の評価 |
医療費における患者負担分以外の保険者負担分を保険者に請求する |
病院の提出先 | 厚生労働省 | 審査支払機関 ・社会保険診療報酬支払基金 ・国民健康保険団体連合会 |
提案期間 | 毎年 | 毎月 |
データ項目 | 「患者住所の郵便番号」「入退院の経路」等の詳細な情報 | 審査・支払に必要な最低限の情報 |
DPCレセプトは分析目的ではなく、審査・支払に特化しているデータのため、DPCデータよりも項目数は少ないのが特徴です。レセプトには、DPC以外に医科・歯科・調剤・訪問看護の計5種類がありますが、DPCデータには他の種類がありません。
DPCレセプトの記載要領
医療機関は、レセプトコンピューター(レセコン)に診療情報を打ち込み、電子レセプトを作成しています。レセプトの記載要領は、2年ごとに行われる診療報酬改定で見直されるのが特徴です。令和6年6月版におけるDPCレセプトの記載要領を紹介します(※1)。
レコードの種類 | 内容 | |
レセプト共通レコード | レセプト番号、レセプト種別、診療年月、氏名、男女区分、生年月日等 | |
レセプト情報 | 保険者レコード | 保険者番号、被保険者証(手帳)等の 記号、診療実日数、合計点数等 |
公費レコード | 負担者番号、受給者番号、任意給付区分等 | |
資格確認レコード | 負担者種別、確認区分、受給者番号等 | |
受診日等レコード | 負担者種別、1日~31日(受診日) | |
窓口負担額レコード | 窓口負担額区分 | |
診断群分類レコード | 診断群分類番号、今回入院年月日、今回退院年月日、DPC転帰区分等 | |
傷病レコード | 傷病名コード、修飾語コード、傷病名称等 | |
患者基礎レコード | 予定・緊急入院区分、入院時年齢、出生時体重、重症度等 | |
診療関連レコード | 診療行為コード、区分番号、診療名称等 | |
包括評価情報 | 外泊レコード | 請求調整区分、外泊等、医療機関別係数等 |
包括評価レコード | 請求調整区分、自他保険区分、負担区分等 | |
合計調整レコード | 自他保険区分、包括小計点数合算等 | |
出来高情報 | 診療行為レコード | 診療識別、診療行為コード、点数等 |
医薬品レコード | 医薬品コード、使用量、点数等 | |
特定器材レコード | 特定器材コード、使用量、点数等 | |
コメントレコード | コメントコード、文字データ等 | |
症状詳記レコード | 症状詳記区分、症状詳記データ等 | |
コーディングデータレコード | レセプト電算処理システム用コード等 |
※1参考:オンライン又は光ディスク等による請求に係る記録条件仕様(DPC用)
DPCレセプトの入手方法
DPCレセプトの実データには個人情報が含まれているため、一般的に公開されていません。しかし、レセプト情報の一部が集計されたNDBオープンデータは公開されているので、誰でも自由に入手できます。NDBオープンデータについて詳しく見ていきましょう。
DPCレセプトを含むNDBオープンデータ
図1:NDBオープンデータが作成されるまでの流れ
NDBオープンデータの元になっているのは、医療費適正化計画の作成・実施・評価のために構築されている、レセプトデータと特定健診・保健指導データを含んだデータベース(NDB)です。
NDBには機密性の高い情報も含まれているため、関係省庁や公益法人、研究機関等しか利用できません。そこで厚生労働省は、多くの国民がNDBを利用できるよう、NDBから抽出した基礎的な集計表「NDBオープンデータ」を公開しています(図1)。
第9回NDBオープンデータ(令和4年度診療分、令和6年公開)には、約1,380万件ものDPCレセプトが含まれています。NDBオープンデータの公開内容が知りたい方は、こちらの記事もチェックしてください。
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◆NDBオープンデータとは?考察・分析・改善策・戦略を考えたい方へ
DPCレセプトを活用する際の注意点
DPCレセプトが含まれるNDBオープンデータを活用する際には、患者の病名に関する情報が含まれていない点に注意してください。NDBオープンデータで集計されている算定回数や患者数は、性別・年齢・診療月・都道府県・二次医療圏などの単位です。
NDBオープンデータに病名情報が含まれない理由には、収集元であるDPCレセプトの記載要領が関係しています。DPCレセプトには、疑い病名として複数の病名が記録されているため、一つの病名に断定できないのです。
どうしても病名と統計表を紐づけたい場合は、診療行為から推測しましょう。
DPCレセプトを活用した経営戦略方法3選
NDBオープンデータは、企業や病院にとって経営戦略に役立つ有益な情報です。NDBオープンデータに含まれるDPCレセプトの活用方法について、詳しく見ていきましょう。
【企業】医療機器の営業先エリアを選定する
二次医療圏別患者数の情報を活用すれば、医療機器の営業先に最適なエリアを選定できます。例えば、DPC参加病院を対象とした医療機器メーカーの場合、入院基本料の二次医療圏別患者数を見れば、どのエリアに入院患者が多いのかを特定できます。入院患者を多く抱えている大病院は、医療機器の大口注文を成約できる可能性が高いと言えるでしょう。
【企業】病院検索アプリの抽出条件を充実させる
国民に向けて病院検索アプリを提供している企業の場合、抽出条件を充実させるためにNDBオープンデータが役立ちます。例えば、特定の入院料やリハビリ、手術を条件に指定して検索すると、該当の診療行為を受けた患者数の多いエリアだけを絞り込めます。患者一人ひとりのニーズに合った病院検索アプリの実現には、欠かせない機能と言えるでしょう。
【病院】自院と他院の医療需要を比較する
病院は、二次医療圏別の算定回数・患者数から他院との医療需要の差を把握し、経営改善へとつなげられます。例えば、自院が属するエリアにおいて、採用している写真診断の患者数が周辺のエリアよりも多い場合を想定します。
エリア間で写真診断を導入している病院数にほとんど差がない場合には、特定の写真診断が必要な患者の需要は、自院が属するエリアの方が高いと推測できるでしょう。自院だけの強みを取り入れたり、他の診療行為に焦点を絞ったりと、分析した結果から経営戦略を打ち出せます。
まとめ
DPCレセプトとは、急性期病院の入院医療のみを対象とし、1日あたりの定額で医療費が計算されたレセプトのことです。DPCレセプトは、NDBオープンデータの一部として厚生労働省のホームページで公開されています。
NDBオープンデータを入手し、ぜひ企業や病院の経営改善に役立ててみてください。
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・DPCデータ
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