DPCデータとは?入手方法と活用方法を徹底解説!
医療オープンデータの1つである「DPCデータ」は企業の営業活動や、医療機関における戦略策定のための分析など、様々な用途で活用されています。
この記事では、以下のようなお悩みをお持ちの方に向けて、DPCデータの概要、活用方法、入手方法について分かりやすく解説します。
- DPCデータとは何?
- DPCデータはどうやって入手できる?
- DPCデータの活用方法が知りたい
この記事の結論はこちらです。
- DPCとは、傷病名に基づいて診断群分類し、その診断群分類ごとに厚生労働省が定めた1日当たりの定額で医療費を計算する方式
- DPC制度の参加病院から厚生労働省に提出された患者の診療情報などのデータ群を「DPCデータ」と呼び、厚生労働省が毎年1回、DPCデータをホームページで公開している
- DPCデータは、医療機関の戦略策定のための分析や、地域医療の課題特定、営業リスト作成などに活用できる
- 厚生労働省が公開しているDPCデータは、データ数が膨大にあり、目的の情報を探し出し、整理するのが困難なため、直接使用するのには向いていない
- フロッグウェルが提供しているDPCデータは、活用しやすいように加工してあるため、即時に分析のために使用することができる
DPCについて
DPCの背景となる「医療費の算定方式」について解説した後、DPCについて詳しく解説していきます。
医療の算定方式
病院で診療を受けると、診療行為ごとの点数の合算値が医療費として請求されます。各診療行為には、1点10円として厚生労働大臣が定めた点数が決まっています。
上図の例でみると、「インフルエンザ疑い」という傷病名で診療を受けた場合、次の各診療行為の点数の合算値「512点=5120円」が総医療費となるわけです。この総医療費のうち、6歳〜70歳の方は3割を自己負担額として病院に支払い、差額の7割は健康保険証に記録されている保険者に病院が請求しています。
インフルエンザウイルス抗原定性:149点
処方せん料:75点
このように各診療行為の単純な合算で医療費を計算する方式を「出来高方式」といいます。医療費の計算(算定)方式は基本的には「出来高方式」ですが、「入院」の場合に限り「包括評価(DPC)方式」での計算方式を取る場合があります。
日本における医療費の算定方式には、先述した「出来高方式」と「包括評価(DPC)方式」の2種類があります。
DPCとは
DPCは、Diagnosis(診断) Procedure(手順) Combination(組み合わせ)の略であり、患者が診断された傷病名に基づいて分類(診断群分類)し、その診断群分類ごとに厚生労働省が定めた1日当たりの定額で医療費を計算する方式です。
簡単に言うと、傷病名に対応した
「診療行為の詰め合わせパック(定額)」 × 入院日数 × 医療機関別係数※」
を医療費とする方式です。また、詰め合わせパックに入っていない一部の診療行為のみは「出来高方式」として算定します。
※医療機関別係数:DPC制度参加病院の医療提供レベルによって変動する値
「出来高方式」と「包括評価(DPC)方式」をまとめた図はこちらです。
このDPC制度は、「医療の標準化による医療費適正化」を目的として平成15年に導入されました。DPC制度を導入する前は、入院患者も全て「出来高方式」での医療費計算であったため、病院や担当医によって診療内容や入院期間にばらつきがあり、医療費が均等化されていませんでした。
そこで、DPC制度を導入することによって、傷病名から標準的な診療行為のセット価格(包括点数)を定め、医療費のばらつきを改善しました。患者としては、高額請求されることがなくなり、病院としては、医療の標準化・効率化が可能になり、国としては、全国の医療費の抑制につながるというメリットがあります。
DPC方式には次の特徴があります。
- DPC制度を導入している医療機関で「入院」のみ、DPC方式での算定可能
- 手術や指導料、リハビリなどの一部は出来高方式で医療費が計算されます
- 自由診療や歯科・口腔外科、精神科の診療は、DPC方式の対象外です
DPCデータについて
DPCとは何かをご理解いただけたところで、DPCデータについて解説していきます。
DPCデータとは
DPCデータとは、DPC制度の参加病院から厚生労働省に提出された患者の診療情報などのデータ群を指し、厚生労働省が毎年1回、DPCデータをデータベース化し、ホームページで公開しています。
厚生労働省は、「DPC導入の影響評価」と「今後のDPC制度の見直し」を目的として、DPCデータの提出を全国のDPC制度参加病院に求めています。
さらに、DPC方式の計算式である
「該当する診断群分類の1日当たりの定額」×「入院日数」×「医療機関別係数」
のうち、医療提供レベルによって医療機関ごとに値が異なる「医療機関別係数」を厚生労働省が決定するために、医療機関を評価する材料としてDPCデータは活用されます。詳しくは次の章で解説します。
DPCデータの内容
全国のDPC制度参加病院から厚生労働省に提出されるDPCデータは、次のようなファイル構成をしています。
- 様式1
- 様式3
- 様式4
- EF統合ファイル
- 外来EF統合ファイル
- Dファイル
- Hファイル
- Kファイル
「DPC版カルテ」「DPC版退院サマリ」という別名があり、患者の基本情報、病名、手術、重症度指標などが含まれます。
各医療機関の施設情報が含まれます。病床数や算定可能な入院基本料・加算等が月単位で記入されます。
保険診療以外の各入院の情報が記入されます。
入院における診療報酬の算定情報になります。
外来における診療報酬の算定情報になります。
DPCにおける診療報酬の算定情報になります。
重症度・看護医療必要度に基づいて作成された日毎の患者情報です。
生年月日、カナ氏名、性別から共通IDが払い出されて記載されます。
DPCデータを構成するファイル内で、DPC方式で算定された患者情報において、傷病名に基づいた診断群分類を一意に特定するコードを「診断群分類コード」といい、別名を「DPCコード」と呼びます。
DPCコードとは
DPCコードは、診断群分類ごとに14桁で構成されます。
DPC方式における診断群分類ごとの包括点数は、DPCコードごとに3段階の点数が設定されています。具体的には、入院期間Ⅰ、入院期間Ⅱ、入院期間Ⅲの各期間に対して1日当たりの点数が設定されています。
通常、入院期間の短縮を図るため、Ⅰ→Ⅱ→Ⅲの段階的に点数が下がっていくよう設定されており、平均在院日数より長期になると病院の収益が下がる仕組みになっています。
DPCデータで決まる医療機関別係数
DPC方式の計算要素である「医療機関別係数」は、DPCデータに基づき、厚生労働省が算出し、各医療機関の評価を行います。
医療機関係数は「基礎係数」「機能評価係数I」「機能評価係数II」「激変緩和係数」の和で計算されます。
- 基礎係数
- 機能評価係数I
- 機能評価係数II
- 激変緩和係数
診療機能で3つの医療機関群に分類し、医療機関群毎に評価する係数です。直近の診療実績に基づいて評価されます。
次のような医療機関の設備・体制・特性を評価する係数です。
・病院の体制の評価
・看護配置の評価
・地域特性の評価
DPC導入病院の医療機関が担うべき役割や機能を評価する係数です。
機能評価係数IIは、「保険診療係数」「効率性係数」「複雑性係数」「カバー率係数」「救急医療係数」「地域医療係数」の6つの係数から成り立っていて、次のような内容が評価されます。
・適切なDPCレセプトが作成できたか
・病院情報を公開する取り組みを行ったか
・保険診療の質的改善に取り組んでいるか
・在院日数短縮の努力をしているか
・地域医療に貢献しているか
医療費は2年に1度の診療報酬改定で見直しが行われ、診療報酬改定がある年度については、診療報酬改定等に伴う個別医療機関別係数の大幅な変動が起きないようにするための調整用の係数です。
DPCデータの入手方法
DPCデータの入手方法として2つご紹介します。
厚生労働省の公開データ
全国のDPC参加病院から提出されたDPCデータは、厚生労働省がデータベース化し、毎年1回こちらに公開しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049343.html
図1:令和2年度のDPCデータ一覧の一部
図1は実際に厚生労働省のHPで公開されている令和2年度のDPCデータの資料一覧の一部になりますが、データ数が膨大にあり、各データの説明が記載された文書も見当たらないため、目的の情報を探し出すのも一苦労です。
図2:令和2年度(8)疾患別手術別集計_MDC02(Excel:3,078KB)
さらに、実際にファイルの中身を見てみると、診断群分類のまとまりごとにファイルが分かれており、医療機関毎の指標もファイルを開かないと分からず、直接分析するには向いていません。
フロッグウェルの提供データ
フロッグウェル株式会社は、ユーザが使いやすいように加工したDPCデータを提供しています。そのため、DPCデータの中から実際に欲しい情報のみを抜粋したデータが取得でき、すぐに分析やリストとして活用することができます。
さらに、フロッグウェルが提供している医療機関マスタを使用すれば、医療機関に関する詳細な情報とDPCデータを紐付けることも可能になります。
フロッグウェルで提供しているDPCデータは次の2種類です。
- DPC詳細データ※
- 機能評価係数
ID、告示番号、連番、FRGコード、施設名、分類リレーションコード、分類コード、主要診断群コード、分類、手術等サブ分類コード、手術等サブ分類、年間件数、平均在院日数、年度、公開日、更新日、年度サブ、指数リレーションコード
ID、告示番号、コード、都道府県、医療機関名、年度、医療機関群、データ提出係数、保険診療係数、効率性係数、複雑性係数、カバー率係数、救急医療係数、地域医療係数、体制評価係数、定量評価係数(小児)、定量評価係数(小児以外)、後発医薬品係数、重症度係数、機能評価係数Ⅱ合計
※DPCデータ内で使用されているDPCコードのうち「主要診断群」「分類」「手術」のテーブルデータも提供しています
DPCデータをご希望の方は、こちらからお問い合わせください。
■DPCデータ(有料版)
データ分析や活用のアドバイスもこちらから受け付けています。
https://frogwell.co.jp/dpc-data/
■DPCデータ(無料サンプル)
まずは、どのようなデータか確認したいという方はこちらからサンプルを取得してみてください。
https://frogwell.co.jp/data-sample/
DPCデータの活用方法
最後に、DPCデータを用いてどのような活用ができるのか、解説します。
DPC参加病院をターゲットとした営業リスト作成
DPCデータの「医療圏別MDC患者数」から、自社サービスの需要がありそうな営業リストが作成でき、医療機関の経営改善のためにアプローチをかけることができます。
全国における病院の位置を知る
例として、DPCデータの「平均在院日数」を用いると、自院は全国的に平均在院日数が短いのか、長いのかが分析でき、それによって全国的にどのくらいの順位に位置しているのかが分かります。
また、「MDC別・医療機関別件数」を用いると、自院が得意とする疾患は、全国でどの程度の症例数を診療しているのかが分かります。
これらの分析は、地域における自院の戦略の策定や、地域医療の課題の特定に役立ちます。
近隣病院との比較を行う
「他院よりの紹介の有無」を用いると、各病院の紹介患者数が分かり、医療機関ごとの需要度を解析することができます。さらに、「医療圏別MDC患者数」を分母に、自院の患者数を分子にすることで、二次医療圏内において自院の疾病のシェアはどれくらいを占めているのかが分かります。
これによって、得意としている疾病のシェアが低い場合には、患者流入の対策を講じるなど、医療機関にとっての経営戦略を立てられます。
まとめ
DPCデータについて、背景となる医療費の算定方式からご説明し、その入手方法や活用方法を解説してきました。
最後にこの記事の内容をまとめます。
DPCとは、傷病名に基づいて診断群分類し、その診断群分類ごとに厚生労働省が定めた1日当たりの定額で医療費を計算する方式
DPC制度の参加病院から厚生労働省に提出された患者の診療情報などのデータ群を「DPCデータ」と呼び、厚生労働省が毎年1回、DPCデータをホームページで公開している
DPCデータは、医療機関の戦略策定のための分析や、地域医療の課題特定、営業リスト作成などに活用できる
厚生労働省が公開しているDPCデータは、データ数が膨大にあり、目的の情報を探し出し、整理するのが困難なため、直接使用するのには向いていない
フロッグウェルが提供しているDPCデータは、活用しやすいように加工してあるため、即時に分析のために使用することができる
DPCデータの活用をご検討されている方は、ぜひフロッグウェルからDPCデータを入手し、自社サービスや医療機関の分析に活用してみてください。
■DPCデータ(有料版)
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投稿者プロフィール

- 医療業界に特化した営業支援、顧客管理(SFA/CRM)のコンサルティングを提供するフロッグウェル株式会社のシニアコンサルタント。オープンデータに詳しく、弊社提供の病院マスタ等の作成に携わる。ほかにもデータ活用サポート、CRM Analyticsの導入など、多岐にわたるサポートを経験。
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