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NDBオープンデータを使った論文のご紹介

#NDBオープンデータ

「NDBオープンデータを活用したいけれど、どのようにしたらいいかわからない」
「NDBオープンデータを分析のために利用した論文を知りたい」
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

NDBオープンデータは、日本のレセプト情報と特定健診の医療データベースから抽出された日本の医療に関する網羅的なデータです。
本記事ではこれを活用した論文について紹介します。
ぜひ本記事を最後まで読んで、NDBオープンデータの活用例として参考にしてください。

NDBオープンデータとは


NDBオープンデータをご存じでしょうか?
レセプト情報と特定健診の医療データベースであるNDBのうち、一般向けに活用しやすい形で公開されているオープンデータです。
NDBは日本の医療情報が凝縮している貴重なデータであり、研究やビジネスに利活用している例が多くあります。
ぜひNDBオープンデータを理解して活用を検討してはいかがでしょうか。

NDBとは

NDB(National Database)とは、2009年から厚生労働省が公表する医療データベースで、「レセプト情報・特定健診等データベース」とも呼ばれます。
レセプトとは診療報酬明細書のことで、医療機関が保険請求のために発行する、診療や処置の内容、使用した薬剤や医療器具の内容を記載した明細書のことです。
入院・外来・歯科・調剤の4種類があり、NDBには日本の保険請求情報の95%以上が集められています。
また、特定健診とは、40歳から74歳までの生活習慣病の早期発見を目的にした健診です。

NDBの内容はレセプト情報と特定健診等であり、国民皆保険制度の日本においては日本の医療の実態や生活習慣病の診断内容についての重要な情報です。
主に医療費適正化計画の作成、実施及び評価のための調査や分析などに用いることを目的に構築されたものですが、国民の共有財産として利活用がすすめられています。

NDBの収集経路としては、医療機関からのレセプト情報を審査支払機関から、特定健診などの実施機関からの情報を保険者から取得し、匿名処理して国の保有するデータベースに構築しています。
このように網羅的にデータベースが作られているため、保健医療を対象としたビジネスの立案や研究を行う際、非常に貴重なデータと位置付けられているのです。

NDBデータ(第三者提供)とNDBオープンデータ

貴重な医療データであるNDBは、次の二つの形で研究者や一般市民に提供されています。

  1. NDBデータ(第三者提供)
  2. NDBオープンデータ

NDBデータには機密性の高い情報が含まれています。
したがって、第三者提供のNDBは、国の行政機関、都道府県、市区町村、研究開発独立行政法人等、大学、医療保険者等の中央団体等に限られ、審査を通過しなければ取得できません。
事前に、限定された目的に対する完成度の高い研究プロトコルの準備がなければ審査を通過できない仕組みになっています。

このような制度では、民間企業の研究やビジネス目的でのデータ使用ができません。
一方NDBオープンデータは、網羅的なデータを、基礎的で汎用性の高い集計表の形で提供しています。
オープンデータの性質をもち、一般に広く公開されたデータと言えます。

NDBオープンデータで公表されている項目

公表データは次のような項目で、膨大なデータです。

  1. 医科診療報酬点数表項目(入院、外来、在宅診療、手術などに関する項目)
  2. 歯科診療報酬点数表項目(入院、外来、在宅診療、手術などに関する項目)
  3. 調剤報酬点数表項目
  4. 歯科傷病(う蝕、歯周病、喪失歯)
  5. 薬剤データ(内服、 外用、 注射)
  6. 特定保険医療材料
  7. 特定健診検査項目(BMI、腹囲、血圧や採血項目など)
  8. 特定健診質問票項目

これらのデータを「都道府県別」、「性・年齢別」、「二次医療圏別」、「診療月別」などで集計して公表されています。
また、一部の項目については「都道府県別/性・年齢別」「二次医療圏別/性・年齢別」でクロス集計されており、詳細な分析に利用しやすくなっています。
※クロス集計とは、2つ以上の質問をかけ合わせて集計する方法です。

NDBオープンデータ分析サイトとは


NDBオープンデータはExcelの形で提供されています。
これをどのように分析し、利活用することができるかを紹介し、利用者がNDBオープンデータの情報について理解を深めるため、厚生労働省はオープンデータの分析結果を公開しています。
それが、NDBオープンデータ分析サイトです。

NDBオープンデータ分析サイトでは、診療行為の算定回数や薬剤の処方、治療法や健診結果の検査データを性年齢別、都道府県別、診療月別にグラフで構築したデータが公開されています。
このようなデータをさらに活用し、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査、治療状況を都道府県別に分析した報告があります。

SASに関するNDBオープンデータを用いた分析

SASの診断(と治療に対する効果判定)に用いる検査の実施状況を都道府県別に比較すると、検査数はおおむね人口に比例しすることがわかります。
また、軽症から中等症の治療にはマウスピースが使用されますが、検査数とマウスピースの実施数に矛盾はありませんでした。
医科と歯科の連携が取られていることが推察されます。

一方、中等症以上の患者に対する治療とされているCPAP療法の施行数を合計すると、予想される患者数よりはるかに少ないことも明らかとなりました。
潜在的な患者がまだ治療されていない可能性があり、受診喚起が求められると結論付けられています。

このように、NDBオープンデータ分析サイトの解析をもとに、さまざまな疾患に対する治療や医療の現状を分析することができます。

NDBオープンデータを活用した論文の例


NDBオープンデータは日本の医療に関するビッグデータとして貴重なデータです。
これを活用した論文が多数発表されています。
その例を紹介しますので、NDBオープンデータを活用した分析の参考にしてください。

日本におけるCT利用のパターン 全国横断的研究

日本のCTスキャナーの保有率は世界有数の高さです。
そのような中、NDBオープンデータにより、CTの利用状況を横断的に記述した論文があります。
それによれば、日本の年間CT検査率はCTスキャナーの保有率と同様高いのですが、CT検査率は年齢、性別、および地域によって異なり、地域差は最大1.7倍です。
また、CT検査率は老化率に関連していることが述べられています。
さらに、地域差も老人の割合の高さに依存している可能性がある、と考察されています。

NDBを活用した日本の骨粗鬆症治療の現状についての論文

骨粗しょう症は骨折するまで自覚症状がなく、適切な時期に治療を開始しているかどうかが重要です。
そのため、ビッグデータであるNDBオープンデータから日本の骨粗しょう症治療の現状を検討した論文があります。
論文の目的は、骨粗しょう症の治療薬の使用のパターンと傾向を、性別と年齢層別に分析することです。

薬剤の処方数と処方日数を患者数と治療数を計算し、年齢と性別で層別化して分析した結果、女性の有病率は男性の3倍と言われているにもかかわらず、治療の男女比は男性が女性の10分の1でした。
したがって、男性の骨粗しょう症治療が不十分である可能性があると述べられています。

第2回NDBオープンデータにおける 喫煙・禁煙に関連する項目を用いた都道府県比較

この論文では、NDBオープンデータに含まれる喫煙・禁煙に関連する項目を用い、既存の公的統計と比較し、喫煙率等の都道府県比較を行っています。
喫煙者数として、NDBオープンデー タの特定健診の問診票のデータを利用しています。

例えば、喫煙者に対する「ニコチン依存症管理料(初回)」の 件数の比を分析することで、禁煙指導のありかたについて分析しています。
その結果、全国合計では喫煙者1,000人 あたり10.4回のニコチン依存症管理料の算定でした。
つまり、実質1 年に喫煙者100人に 1 人しか禁煙外来を使って禁煙開始していないことを示しています。
国民栄養調査によると、喫煙者のうち、たばこを辞めたいと思う人の割合は3割に上るとされているため、禁煙支援サービスのさらなる充実が求められる、と述べられています。

NDBオープンデータを利用した論文を参考に、データ活用しよう

NDBオープンデータを利用した論文は多数あり、オープンデータとほかの既存のデータや調査結果を組み合わせることで、より多角的な分析ができます。
日本の医療状況を網羅的に反映した貴重なデータのため、有意義な分析が可能です。

本記事ではNDBオープンデータを活用した論文をご紹介しました。
医療や公衆衛生、人々の生活にかかわる多様なデータとして、現状の問題点の把握やニーズの掘り出しをすることができます。
したがって、分析した情報をビジネスに応用することも可能です。
さまざまに活用されているNDBオープンデータ、ぜひビジネスにも活用を検討してみませんか。

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