NDBオープンデータとは?分析サイトの使い方や活用方法を分かりやすく解説
目次
- 1. NDBオープンデータとは
- 1.1 NDBとは
- 1.2 レセプト(診療報酬明細書)
- 1.3 特定健診・特定保健指導
- 1.4 NDBデータとNDBオープンデータの違い
- 2. NDBオープンデータで公表されている項目
- 3. NDBオープンデータのメリット・デメリット
- 4. NDBオープンデータを活用する際の注意点
- 5. NDBオープンデータの入手方法
- 6. NDBオープンデータ分析サイトとは
- 6.1 NDBオープンデータ分析サイトの活用例
- 7. NDBオープンデータの活用方法4選
- 7.1 医療機関におけるNDBオープンデータの活用方法
- 7.2 企業におけるNDBオープンデータの活用方法
- 8. NDBオープンデータを活用した論文の例
- 8.1 喫煙・禁煙に関連する項目を用いた都道府県比較
- 9. まとめ
皆さんは、NDBオープンデータについて、一度は耳にしたことがあるでしょうか?
NDBオープンデータとは、日本全国で診療や特定健診を受けた患者情報が集約された統計資料です。厚生労働省がホームページで公開しているので、誰でも二次利用できます。
NDBオープンデータを分析することで、国民の医療の実態を把握できるため、全国の研究機関や一般企業による利活用が進められています。
この記事では、NDBオープンデータの内容や活用事例を紹介します。
NDBオープンデータを経営戦略に生かしたいと検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
NDBオープンデータとは

厚生労働省は、2009年から「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」に国民の診療や特定検診に関する情報を蓄積してきました。NDBの有用性を更に生かすため、広く一般に利用可能な形に抽出・加工されたデータが、NDBオープンデータです。
NDBとは
NDBオープンデータの元になっているNDB(National Database)は、平成20年4月に施行された「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて、医療費適正化計画の作成・評価を目的に厚生労働省が構築・管理しているデータベースです。
平成23年以降は、医療サービスの質の向上や正確なエビデンスに基づいた施策の策定を目的に、行政機関や研究者、民間事業者に向けて、第三者提供が行われています。NDBに含まれるのは、レセプトの審査を行う審査支払機関に集められた「レセプト情報」と「特定健診・特定保健指導等の情報」です。
レセプト(診療報酬明細書)
レセプトとは、保険医療を行った医療機関が、患者負担分以外の診療報酬を請求するために作成する明細書を指します。一定以上の所得がある方が窓口で支払う医療費は、全体の3割なので、残りの7割は医療機関が保険者に対して請求しています。レセプトに含まれるのは、医科・歯科・DPC・調剤の外来・入院に関する以下のような情報です。
| 項目 | 内容 |
| 医療機関 | 都道府県、点数表、医療機関名称、電話番号など |
| 患者 | 氏名、生年月日、男女区分、給付割合、患者の状態など |
| 保険者 | 被保険者番号、被保険者記号、合計点数など |
| 傷病名 | 傷病名コード、傷病名称、診療開始日など |
| 診療行為 | 診療行為コード、回数、点数、コメント、診療日など |
| 医薬品 | 医薬品コード、使用量、点数、回数、コメントなど |
医療機関が作成したレセプトは、第三者機関である審査支払機関に送られ、審査支払機関がレセプトのチェックと医療機関への支払を代行しています。NDBには、審査支払機関が所有するレセプトが、月単位で格納されます。ただし、NDBに格納されるのは、電子化・匿名化されたレセプト情報のみであり、紙レセプトの情報は含まれません。
また、上記で解説した保健医療に基づくレセプトとは別に、公費負担医療制度で診療された患者に関する公費レセプトもあります。
NDBには、全体の90%以上(平成26年度末時点)のレセプトが格納されているため、国民の医療の実態を把握するのに有用な情報です。
特定健診・特定保健指導
特定健診とは、40歳から74歳までを対象に、生活習慣病のリスクを早期発見し、医療機関への受診や保健指導に繋げることを目的にしたメタボリックシンドローム健診です。特定保健指導とは、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣病の予防効果が多く期待できる方に対して専門スタッフが行う、生活習慣を見直すためのサポートを指します。
健診機関で実施された特定健診・特定保健指導の受診情報(問診結果、測定結果、検査結果等)は、審査支払機関へと送られ、審査・支払業務が行われます。
NDBには、審査支払機関が所有する特定健診・特定保健指導の情報が、年度単位で格納されます。NDBに格納される特定健診・特定保健指導の情報は、年間2千万件以上です。
NDBデータとNDBオープンデータの違い

圧倒的な網羅性を誇るNDBのうち、第三者に提供するためにNDBから抽出・加工されたデータが「NDBデータ」です。
NDBデータには個人を特定できる情報が多く含まれているため、申請を行い、審査を通過しなければ、データ提供が受けられません。
また、提供申出者の範囲は、行政機関や都道府県及び市区町村、研究機関、民間事業者等に限定されています。NDBデータの提供を受ける準備を始めてから、実際に提供されるまでに約1年ほど要する場合もあり、利活用するまでの道のりは決して容易ではありません。
その一方、NDBオープンデータは、国民が誰でも自由に利用できるよう、NDBから個人が特定される情報を省いた基礎的な集計表になっています。厚生労働省のホームページで無料公開されており、申請を行う必要もありません。
平成28年に公表された「第1回NDBオープンデータ」を皮切りに、概ね年に1回のペースで更新されています。
NDBオープンデータで公表されている項目

NDBオープンデータは、集計対象や留意事項などが解説された「第1部(解説編)」と、集計表が掲載された「第2部 (データ編)」に分かれています。
令和7年公開分の「第10回NDBオープンデータ」の集計項目は、以下の通りです。
| 分類 | 集計項目 | 内容 |
| レセプト | 医科診療行為 | 算定回数 |
| 歯科診療行為 | 算定回数 | |
| 歯科傷病 | レセプト件数 | |
| 調剤行為 | 算定回数 | |
| 処方薬 | 薬効分類別に処方数の上位100品目・上位300品目・上位500品目 | |
| 特定検診 | 特定保険医療材料 | 特定保険医療材料の数量 |
| 特定健診(検査値) | 検査値階層別件数 | |
| 特定健診(標準的な質問票) | 回答件数 |
これらのデータは「都道府県別」「性・年齢別」「二次医療圏別」「診療月別」などで集計されています。また、一部の項目については「都道府県別/性・年齢別」「二次医療圏別/性・年齢別」でクロス集計(※)されており、より詳細な分析が可能です。
※クロス集計:2つ以上の質問をかけ合わせて集計する方法
NDBオープンデータのメリット・デメリット

厚生労働省が無料で公開するNDBオープンデータには、保険請求事務に用いるレセプトデータが主に集約されており、企業や病院の戦略策定に大きく貢献します。NDBオープンデータのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
<NDBオープンデータのメリット>
- 約21億2,360万件に上る膨大なレセプトが集計されている(※1)
- データの種類が豊富に用意されている
- データ分析が容易な形式で集計されている
<NDBオープンデータのデメリット>
- 患者の臨床情報が含まれていない
Excelの表形式で集計されているため、データを可視化しやすく、素早く分析できるでしょう。一方で、NDBオープンデータには患者の臨床情報が含まれておらず、診療行為を算定した患者がどのような病気を患っていたかが特定できません。
NDBオープンデータは、日本全国から集まったレセプトの90%以上をカバーしているため、より精度の高い分析が可能です。診療行為や処方薬、検査等別に集計されたデータは、さらに都道府県別、性年齢階級別、二次医療圏別などの単位で細分化されています。
※1参考:厚生労働省「第10回 NDBオープンデータ【解説編】」
NDBオープンデータを活用する際の注意点

NDBオープンデータには、疾病別患者数や疾病別算定回数が示されていないため、診療行為を算定した患者の病名を交えた分析ができない点に注意が必要です。
NDBオープンデータに疾病の情報が含まれていない理由としては、1つのレセプトに「疑い病名」として複数の病名を記録できるために、集計・分析する際に妥当性の判断が難しくなる点が挙げられます。
例えば、入院基本料の患者数が都道府県別に分かったとしても、病名の内訳が分からないので、医療需要の正確な分析は難しいでしょう。また、診療行為を算定した患者がその後治癒したのか、それとも死亡したのかなどの分析も不可能です。
一方で、病名がある程度推測できる診療行為の患者数や、都道府県・二次医療圏別の単純な患者数などが知りたい場合には、NDBオープンデータの分析効果は大いに期待できます。
NDBオープンデータの入手方法

NDBオープンデータは、厚生労働省の公式サイトから無料で入手可能です。「第2部 (データ編)」として、下記の項目ごとに集計表がダウンロードできます。
- 医科診療行為(算定回数)
- 医科診療行為(患者数)
- 歯科診療行為(算定回数)
- 歯科診療行為(患者数)
- 歯科傷病 調剤行為(算定回数)
- 調剤行為(患者数)
- 処方薬
- 特定保険医療材料
- 特定健診 検査
- 特定健診 質問票
第10回からは、公費レセプトを含む集計表も追加されています。公費レセプトを含むデータと含まないデータの両方がダウンロード可能です。
NDBオープンデータ分析サイトとは

NDBオープンデータはExcelの形式で提供されているため、日頃からExcelに慣れていなければ、分析も容易ではありません。そこで厚生労働省は、利用者がNDBオープンデータを理解して正しく活用できるよう、データ分析環境「NDBオープンデータ分析サイト」を提供しています。
NDBオープンデータ分析サイトでは、診療行為の算定回数や薬剤の処方、治療法や健診結果の検査データなどを性年齢別、都道府県別、診療月別に集計したグラフが公開されています。
NDBオープンデータ分析サイトの活用例
NDBオープンデータ分析サイトに示された分析結果を活用し、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査、治療状況を都道府県別に分析した報告があります(※2)。
SASの診断(と治療に対する効果判定)に用いる検査の実施状況を都道府県別に比較すると、検査数はおおむね人口に比例していました。また、SASの軽症から中等症に対する治療にはマウスピースが使用されますが、SASの検査数とマウスピースの実施数の整合性がとれてました。したがって、軽症から中等症と診断された患者のほとんどが、適切な治療を受けていることが推察されます。
一方、中等症以上の患者に対する治療とされているCPAP療法の施行数を合計すると、予想される患者数よりはるかに少ないことも明らかとなりました。そのため、中等症以上の患者には、適切な治療を受けるよう呼びかける必要があります。
このように、NDBオープンデータ分析サイトの解析をもとに、さまざまな疾患に対する医療の現状を分析することができます。
NDBオープンデータを独自に分析するためのツールが知りたい方は、こちらの記事も併せてチェックしてみてください。
NDBオープンデータを独自に分析するためのツールが知りたい方は、こちらの記事も併せてチェックしてみてください。
◆医療オープンデータの分析に役立つツールをご紹介
※2参考:日本医療機器産業連合会『厚生労働省「NDB オープンデータ分析サイト」を用いた睡眠時無呼吸症候群に対する都道府県の検査・治療実施状況の分析』
NDBオープンデータの活用方法4選

NDBオープンデータは、数十億件規模のレセプト情報に基づく信頼性の高いデータであり、医療機関・企業双方にとって大きな価値を持ちます(※1)。医療機関では診療実績の客観的評価や地域連携の検討に、企業では医療市場分析や新規サービス創出に活用可能です。
NDBオープンデータの活用方法について、詳しく見ていきましょう。
医療機関におけるNDBオープンデータの活用方法
NDBオープンデータは、全国の患者数や算定数を把握できる公的データであり、医療機関にとって経営や診療体制を見直す重要な判断材料となります。
医療機関におけるNDBオープンデータの活用方法は、以下のとおりです。
自院の客観的評価
NDBオープンデータを用いることで、地域や全国平均と自院の診療実績を比較できます。診療行為別の患者数を把握することで、自院の強みや改善点を客観的に分析でき、診療体制の見直しや経営判断に活用できるでしょう。
例えば、自院が主に算定している診療行為の二次医療圏別患者数を調べます。自院で算定している患者数が、二次医療圏内にある1医療機関あたりの平均患者数(※)よりも少ない場合は、集客につながらない要因が潜在化している可能性があります。
また、全国で該当の診療行為に対する1医療機関あたりの平均患者数が最も多い二次医療圏を特定できれば、自院にない強みを見つけて、経営改善につなげられるでしょう。
※診療行為の二次医療圏別患者数を二次医療圏内の医療機関数で割った値(二次医療圏内の医療機関数は、医療施設調査の結果を参照する)
地域連携・医療提供体制の検討
NDBオープンデータから地域全体の受診動向や疾患構成を把握することで、他医療機関との役割分担や連携強化の検討が可能です。二次医療圏別患者数を見て、他の地域より患者数が極端に少ない診療行為があれば、診療内容に含めることで新たな強みにもなりえます。
また、地域で不足している診療行為を特定し、病院間でカバーし合えるよう他院との連携を強化すれば、地域における医療の提供体制が充実します。
その結果、他の地域からの患者流入も望めるでしょう。他院への紹介も取り入れて、傷病に対する一連の診療行為の導線が確立していれば、患者も安心して受診できます。
企業におけるNDBオープンデータの活用方法
NDBオープンデータは、全国の診療行為や医療費、処方状況を網羅した公的データであり、企業の意思決定を支える重要な情報源です。
企業におけるNDBオープンデータの活用方法を見ていきましょう。
医療市場・需要動向の分析
NDBオープンデータを活用すれば、診療行為や処方薬、医療費の地域差を把握できます。これにより、疾患別・年代別の医療需要を分析でき、新規サービスや製品の市場性評価に役立つでしょう。医療需要の高い地域に営業すれば、営業成績の向上が期待できます。
NDBオープンデータは、数十億単位のレセプトに基づく信頼性の高いエビデンスです。そのため、医療機器メーカーや製薬企業は、実現性の高い効果的な事業戦略を立案できます。
データ分析サービス・コンサル事業への展開
NDBオープンデータは、二次医療圏や全国比較といった分析が可能なため、医療機関向けの分析ツールやコンサルティングサービスの基礎データとしても活用できます。
独自の視点で加工・可視化することで付加価値を創出でき、新たなBtoBサービスやデータ活用ビジネスの展開につながるでしょう。例えば、医療に関する他のオープンデータとNDBオープンデータを紐づけた情報を提供できれば、より詳細な分析が可能です。
NDBオープンデータを活用した論文の例

NDBオープンデータは日本の医療に関するビッグデータとして有用な情報です。実際に、NDBオープンデータを活用した例として、以下のような論文が発表されています。
喫煙・禁煙に関連する項目を用いた都道府県比較
この論文では、NDBオープンデータに含まれる喫煙・禁煙に関連する項目を用いて、既存の公的統計と比較し、喫煙率等の都道府県比較を行っています(※4)。
喫煙者数の参照元は、NDBオープンデー タの特定健診の問診票のデータです。
例えば、喫煙者に対する「ニコチン依存症管理料(初回)」の件数の比を分析することで、禁煙指導のありかたについて分析しています。
その結果、全国合計では喫煙者1,000人あたりニコチン依存症管理料を10.4回しか算定していませんでした。つまり、実質1年あたり喫煙者100人に1人しか、禁煙外来を使って禁煙を始めていない計算です。
国民栄養調査によると、喫煙者のうち、たばこを辞めたいと思う人の割合は3割に上るとされているため、禁煙支援サービスのさらなる充実が求められる、と述べられています。
※4参考:厚生労働統計協会「第2回NDBオープンデータにおける喫煙・禁煙に関連する項目を用いた都道府県比較」
まとめ
NDBオープンデータは、日本の医療状況を網羅的に反映した貴重なデータです。国民の診療や特定検診に関する膨大な情報が集約されており、正しく分析すれば、企業や病院の戦略策定に大きく貢献することでしょう。
データは、厚生労働省のホームページから誰でも自由に取得できる上に、分析例が示されたNDBオープンデータ分析サイトも存在します。NDBオープンデータを活用し、ぜひビジネスの発展や医療体制の検討に役立ててみてください。

<医療系オープンデータ>
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