介護給付費等実態統計とは オープンデータの特徴や活用方法を解説
今回は「介護給付費等実態統計」を活用したオープンデータの特徴や活用方法を解説します。
介護給付費等実態統計とは
介護給付費等実態統計(旧:介護給付費等実態調査)とは、厚生労働省が実施している医療統計の1つです。
介護サービスに関連する給付費等の状況を把握し、介護報酬の改定など、介護保険制度のスムーズな運営及び政策の立案に必要な基礎資料を得ることを目的とするものです。
介護給付費等実態統計の主な内容
介護給付費等実態統計の主な内容は以下の通りです。
要介護について
要介護1〜5レベルについて
要介護は1~5の5段階に分類されます。要介護になると、運動能力だけでなく思考力や理解力の低下も見られ、日常生活を単独で行うのが困難な状態になります。
要介護1:思考力や理解力の低下が見られます。
要介護2:要介護1よりも運動機能、思考力、理解力のさらなる低下がみられます。
要介護3:基本動作だけでなく全面的な介助が必要となります。思考力や理解力も低下し、問題行動がみられます。
要介護4:要介護3よりも思考力や理解力の低下がみられ、それに伴う問題行動が顕著に表れます。
要介護5:運動機能だけではなく、思考力や理解力が要介護4と比較して著しく低下するため、意思の疎通が非常に困難になります。
介護給付費等実態統計の詳細
受給者の状況
過去4年分の受給者数の年次推移をデータ化しています。それぞれの年度ごとの年間累計受給者数、年間実受給者数が記載されたデータとなります。
対前年度増減数、対前年度増減率まで記載されており、比較資料として優れた資料です。
サービス種類別受給者数
受給者数をサービス種類別にみたデータがあります。訪問通所や短期入所など、カテゴリごとの受給者数が割り出されています。
データには2種類あり、介護予防サービスと介護サービスで分けたデータとなっています。
要介護(要支援)状態区分の変化
要介護(要支援)状態区分にみた年間継続受給者数の変化別割合をデータ化しています。要支援1〜5の区分ごとのデータとなっています。
また介護を維持しているか、軽度化したか、重度化したかが分かる図によって視覚的に変化が確認しやすくなっています。
性・年齢階級別にみた受給者の状況
性別にみた認定者数・受給者数及び認定者数に占める受給者数の割合をデータ化しています。
男女でどれくらいの認定者数・受給者数に違いが出ているのかが一目で分かる様になっています。また65 歳以上における性・年齢階級別にみた受給者数及び人口に占める受給者数の割合が棒グラフで示されています。
受給者1人当たり費用額
受給者 1 人当たり費用額の年次推移並びにサービス種類別にみた受給者1人当たり費用額及び費用額累計データが介護予防サービスと介護サービスごとで分けられています。
都道府県別にみた受給者 1 人当たり費用額
都道府県別にみたサービス体系別受給者 1 人当たり費用額が介護予防サービスと介護サービスごとで分けられています。
居宅サービスの状況
要介護状態区分別にみた訪問介護内容類型別受給者数の利用割合や通所介護-通所リハビリテーションの要介護状態区分別受給者数及び割合、通所介護-通所リハビリテーションの要介護状態区分別受給者数の割合がデータ化されています。
地域密着型サービスの状況
地域密着型(介護予防)サービス別にみた要介護(要支援)状態区分別受給者数の割合がデータ化されています。
施設サービスの状況
施設サービス別にみた要介護状態区分別受給者数の割合や施設サービス別にみた要介護状態区分別受給者1人当たり費用額がデータ化されています。
介護給付費等実態統計の活用方法
ターゲットとなる都道府県を選定する
例えば、令和2年度 介護給付費等実態統計の概況【厚労省ホームページより】によると、令和2年における都道府県別にみた受給者1人当たり費用額(介護予防サービス)が最も多いのは佐賀県です。ついで長崎県、鹿児島の順で費用額が大きくなっています。
1人当たりの費用額が多いということは、一定の購買力を持っていることに繋がります。購買力があるということは、介護予防サービスに関連した製品に設備投資しやすい傾向があるため、佐賀県はターゲットにすべき都道府県であるという判断が可能です。
また長崎、鹿児島も費用額が高いことから九州圏内は介護予防サービスの需要が高いと思われますので、上手くサービスを提供することで需要と供給がマッチし、ビジネスとして成立しやすいということが言えるでしょう。
注力すべき商材選定に活用する
例えば、令和2年度 介護給付費等実態統計の概況【厚労省ホームページより】によると、地域密着型(介護予防)サービス別にみた要介護(要支援)状態区分別受給者数の割合では、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護において「要介護4」並びに「要介護5」の割合が多くなっていることが分かります。
要介護4並びに5の状態は、介護なくして生活ができない状態であり、介護に膨大な時間を要します。
それ以外にも、例えば要介護状態区分別にみた訪問介護内容類型別受給者数の利用割合を見ると、特に身体介護においては介護スタッフの負荷がかなり掛かっていることが分かります。
つまりその膨大な介護時間・介護負荷を削減できる介護ソフトの需要が必然的に生まれるわけです。働き方改革の重要性が叫ばれる昨今、業務効率化が見込まれる商材の需要は今後途絶えることはありません。
まとめ
介護給付費等実態統計のオープンデータは、厚労省が公開している信憑性の高いデータです。
上手く活用することによって、ターゲットとすべき都道府県や、提案に注力すべき商材が見えてきます。介護業界では受給者数が年々増加している一方で、人手が足りておらず、対応に苦慮している施設が多く存在します。介護スタッフの業務負荷は増える一方であり、なかなか労務環境を改善できていない施設もあります。
いかに負荷軽減を実現させるかを課題として捉えている経営層が多いのです。そういった施設に対し、業務効率化できる商材が提案できればビジネスチャンスが多く生まれることでしょう。なによりスタッフの皆様のお困りごとを解決できれば、スタッフ様から信頼され、継続的なお付き合いがしやすくなります。
介護給付費等実態統計のオープンデータで介護業界のトレンドを把握しながら、介護スタッフがどういったことに困っているのか、介護スタッフは何を求めているのかを正確に見極め、介護情勢に適した営業を行っていきましょう。
投稿者プロフィール

- 医療業界に特化した営業支援、顧客管理(SFA/CRM)のコンサルティングを提供するフロッグウェル株式会社のシニアコンサルタント。オープンデータに詳しく、弊社提供の病院マスタ等の作成に携わる。ほかにもデータ活用サポート、CRM Analyticsの導入など、多岐にわたるサポートを経験。
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