病院のデジタル化 未来のホスピタル
目次
少子高齢化はもちろん、社会保障費の高騰、働き方改革の影響・・・。
日本の医療が抱える課題は多くあります。
さらに、新型コロナウィルス感染拡大で、その対応の過程において行政はもちろん、医療現場のICT化の遅れが浮き彫りになりました。
国は「医療とテクノロジーの利活用」を総合的かつ戦略的に推進する狙いから、AI、IoT、ビッグデータの技術を用いた『AIホスピタルシステム』の構築及び速やかな導入を推進しており、2022年の実用を目指しています。
今後、デジタル化の波は医療現場に押し寄せ、さらに進みそうです。
これからの医療機関の形、病院のデジタル化はどのように進められていくのでしょうか。
病院管理者や医師、看護師等はもちろん、医療関係者は、様変わりしていく医療現場の動向を注視していく必要があります。
今回、病院のデジタル化を主な内容として、デジタル技術とヘルスケアサービスの融合が未来の医療の提供にどのように役立てられるのか病院の将来像や患者サービスの変化についてお伝えします。
病院のデジタル化の目的とは
高度で先進的な医療サービスの提供と、業務の効率化、医師や看護師等の負担の軽減を実現するというのが主な目的です。
デジタル技術が病院の医療サービスを改善し、業務を効率化し、患者や職員の満足度を向上させることで、医療サービスの質向上、運用効率の改善、患者満足度の向上がもたらされることになります。
ペイシェント・エクスペリエンスとは
ペイシェント・エクスペリエンス(PX)とは、「患者経験価値」と訳され、患者が医療サービスを体験し得られる価値を示します。
例えば、診察や治療、受付対応はもちろん、院内の動線やデザイン、トイレや洗面所の使用勝手について、いつ、どこで、どのような経験をし、それは患者にとって最適なのか、患者が経験した「こと」や「もの」に価値が置かれます。
患者ニーズが多様化する昨今、一人ひとりの患者が持つ価値が重要視され、それに応えるため、患者の経験価値に合わせた医療サービスの提供が求められています。
AIが病院にもたらすこと
近年、患者の多くは、健康情報や医療情報、治療に関する情報を簡単に得ることができるようになり、情報の正確性や迅速性が求められ、その要求は高まりつつあります。
最新のデジタル技術によって、近い将来、様々な医療情報が解析され、ペイシェント・エクスペリエンスは劇的に改善することになるでしょう。
AIの活用によって、疾患の治療方針や疾病予防に関する情報は、簡単かつ効率的に得ることができるようになります。
また、AIが、医療従事者の意思決定に役立つことができます。例えば、診断の選択や治療方針と治療管理はもちろん、最適な人員配置、病室の選択、薬剤管理、患者の状態、既往歴、病態を正確に把握し、一人ひとりの患者に適したケアを実践することが可能になります。
同様に、AI を活用した分析により、医療現場の複雑な業務プロセスの効率化に役立ちます。
例えば、病院の入退院の事務手続きは課題が山積みです。
類似した複数の書類に何度も記入を求められたり、複雑な入院手続きの説明を受けることに患者やその家族は不満を抱えています。
事務処理手続きがデジタル化され、スタッフが AI を活用し業務を自動化することができれば、入退院諸手続きが簡易化され、病院の運営効率と患者満足感の向上につながります。
病院に変革を持たすデジタルイノベーション
今後、デジタル技術は、病院にどのような変化をもたらすのでしょうか
病院に新しい変革をもたらすデジタルイノベーション。医師や看護師はもちろん医療に携わる全員に影響を与え、これまでの患者ケアは様変わりします。
最近は、患者の診療予約や請求と支払いの簡素化、最適な診断と治療方針支援等の新たなテクノロジーの開発が進められています。
未来の病院はテクノロジーを活用して患者のアウトカム(臨床成果)を改善し、コストの削減を果たすことが求められます。
治療や患者ケアに影響を及ぼすデジタルヘルスや未来のデジタルホスピタルにおける人材採用等の主な活用事例を紹介します。
電子健康記録(EHR)
未来の医療を支援する上で重要な役割を担うのが「電子健康記録(EHR)」です。
個人のこれまでのあらゆる医療データがまとめられ、電子媒体に記録され、その情報を各医療機関間で共有・活用される仕組みです。
患者の情報を把握しやすいという事は、医療現場での効率アップが期待できます。
例えば、救急医療の現場において、生年月日や年齢、服用中の薬の銘柄や慢性疾患の治療歴の確認はしばしば困難なことがあります。
事前にデータを確認できればスムーズな治療にあたることができます。
さらに、診療時の医師の音声を文字に書き起こし、医師に代わってメモを取ったりEHRに書き込んだりするシステムも開発されています。
AIによる画像診断支援
AIがもっとも得意としている領域の一つが画像診断支援です。
これまで人間の視覚に頼っていた画像診断に、AIの画像解析を活用することで、病気の見落としを防ぎ、意思決定の強力なサポートが可能になります。
例えば、
早期大腸がんや前がん病変等の内視鏡画像をAIに学習させ、解析に用いることで典型例だけでなく非典型例を検出したり、インフルエンザの感染により咽頭で発生したインフルエンザ濾胞と呼ばれる腫れ物を撮影した写真をAIで解析することでインフルエンザの早期診断をサポートすることができるようになります。
デジタルホスピタルにおける人材採用と能力開発
医療従事者の不足は、患者サービスの低下につながり職員の採用と離職は多くの病院で長年の課題となっています。
働き方の多様化によって、常勤契約よりも短期的契約で複数の場所で働くようになる社会に向かうにつれて、職員のシフト管理はより複雑になる可能性があります。
未来のデジタルホスピタルでは人材採用と能力開発はどのように変化するのでしょうか。
採用については、候補者の選考過程にコグニティブ分析やRPA技術の利用によって自動化、効率化されます。
個々の患者の状態と、必要な治療技術を持った候補者をマッチングしたり、労働市場における候補者の経験や給与体系等多数項目を瞬時に比較することができるようになります。
つまり、クラウドベースで時間を掛けずに最良の候補者の選考に集中することができるようになります。
職員の能力開発は、仮想シミュレーションやオンラインを通じた継続的な学習に焦点があてられるようなります。また、コグニティブ分析やIoT、無線周波数識別技術は、職員のパフォーマンスを管理するうえで非常に役に立ちます。職員が何人の患者を診察、ケアをしたのか、患者の治療とケア業務、事務業務に費やす時間の割合を明らかにすることができます。
まとめ
今後10年、デジタル技術を活用したコスト削減や、サービスの質向上でその効果は病院運営、患者ケアに大きな影響を与えていくことでしょう。
つまり、デジタル技術はその活用で、大きな費用対効果を病院にもたらしてくれます。
今後は、病院長はじめ、病院管理者やリーダー達は、将来のデジタル化の重要性を理解する必要があり、すべての組織レベルにおいてデジタル化の実現を支援することが不可欠です。
病院は、働いているスタッフに対して、デジタル技術を活用するための十分な学習期間や機会を提供する必要があります。
また、導入する際には、多額の先行投資が必要となる可能性があるので、導入時の柔軟性は非常に需要です。
デジタルホスピタルにおける最大の脅威はサイバー攻撃です。
サイバーセキュリティーへの対応は非常に重要になります。
様変わりしていく医療現場の動向は今後も注視していく必要があります。
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