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地域保健・健康増進事業報告とは オープンデータの特徴や活用方法を解説

今回は「地域保健・保健増進事業報告」を活用したオープンデータの特徴や活用方法を解説します。

地域保健・保健増進事業報告とは

地域保健・保健増進事業報告とは、国や地方公共団体が地域保健施策を効率的かつ効果的に展開するために必要な基礎資料を得ることを目的としています。基礎資料を得るために、保健所及び市町村ごとで展開される、地域住民の健康維持や増進を目的とした保健施策を把握します。本データは、厚労省の公式ホームページから簡単に閲覧することができます。

地域保健・保健増進事業報告の主な内容

地域保健・保健増進事業報告の主な内容は以下の通りです。内容は大きく分けて2つです。

【地域保健編】
①母子保健
②健康増進
③歯科保健
④精神保健福祉
⑤エイズ
⑥予防接種
⑦職員の配置状況

【健康増進編】
①健康診査
②歯周疾患検診・骨粗鬆症検診
③健康教育
④健康相談
⑤訪問指導
⑥がん検診
⑦肝炎ウイルス検診

地域保健・保健増進事業報告の詳細【地域保健編】

母子保健

母子保健では、以下の内容が確認できます。

・妊娠届けの状況
・妊産婦の健康調査の実施状況
・乳幼児の健康診査の実施状況
・妊産婦・乳幼児の保健指導・訪問指導の実施状況

健康増進

健康増進では、以下の内容が確認できます。

・健康増進関係事業の指導内容の年次推移
・健康増進関係事業の市道対象区分別の指導内容

歯科保健

歯科保健では、以下の内容が確認できます。

・歯科検診・保健指導等の年次推移

精神保健福祉

精神保健福祉では、以下の内容が確認できます。

・精神保健福祉の相談等の年次推移
・精神保健福祉の相談内容の年次推移

エイズ

エイズでは、以下の内容が確認できます。

・エイズに関する相談・検査の年次推移

予防接種

予防接種では、以下の内容が確認できます。

・定期の予防接種の接種者数の年次推移

職員の配置状況

職員の配置状況では、以下の内容が確認できます。

・職種別にみた常勤職員数の年次推移
・都道府県別にみた常勤保健師数
・都道府県別にみた常勤保健師数

地域保健・保健増進事業報告の詳細【健康増進編】

健康診査

健康診査では、以下の内容が確認できます。

・性別にみた健康診査における受診者数の年次推移
・性別にみた健康診査における検査結果の状況

歯科疾患検診・骨粗鬆症検診

歯科疾患検診・骨粗鬆症検診では、以下の内容が確認できます。

・歯科疾患検診・骨粗鬆症検診の実施状況
・歯周疾患検診・骨粗鬆症検診の実施市区町村数及び検診実施立の年次推移

健康教育

健康教育では、以下の内容が確認できます。

・集団健康教育の実施状況

健康相談

健康相談では、以下の内容が確認できます。

・健康相談の年次推移

訪問指導

訪問指導では、以下の内容が確認できます。

・訪問指導の対象者別にみた被訪問指導実人員の年次推移
・訪問指導の対象者別にみた被訪問指導実人員

がん検診

がん検診では、以下の内容が確認できます。

・がん検診受診者数及び受診率の年次推移
・市区町村における がん検診受診率の分布状況
・がん検診受診者における要精密検査の受診状況

肺炎ウイルス検診

肺炎ウイルス検診では、以下の内容が確認できます。

・肺炎ウイルス検診の実施状況
・肺炎ウイルスに関する健康教育・健康相談の実施状況の年次推移

地域保健・健康増進事業報告の活用方法

新規ビジネスの立ち上げに活用できる

例えば、直近の令和2年度における健康増進関係事業の指導内容の年次推移に関するデータを参照すると、以下4つのデータが把握可能です。

・栄養指導数
・運動指導数
・休養指導数
・禁煙指導数

これらの総数は、平成28年度から令和1年度まででおおよそ720万人〜780万人で推移していましたが、新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めた令和2年度から大幅に数が減少。なんと約350万人にまで減少しています。このことから推察される問題点は以下2つです。

表7 健康増進関係事業の指導内容の年次推移(厚労省ホームページ 地域保健・健康増進事業報告より抜粋)

単位:人

被指導延人員

平成28年度
(2016)

29年度
(’17)

30年度
(’18)

令和元年度
(’19)

2年度
(’20)

総数

7,648,511

7,492,515

7,795,924

7,213,814

3,496,273

栄養指導

5,047,029

4,874,750

4,980,038

4,567,394

2,210,957

運動指導

1,616,759

1,659,883

1,665,490

1,459,420

662,394

休養指導

116,738

109,682

110,345

121,665

73,110

禁煙指導

350,786

341,901

355,768

373,004

203,983

そ の 他

517,199

506,299

684,283

692,331

345,829

・健康増進に関する指導を受けた国民が激減しているため、正しい健康増進方法が分からない国民が増えている。
・上記に伴い、生活習慣病患者が増加している。

これらを解決するためには、以下の仕組みづくり(例)が必要です。

・コロナ禍であっても、健康増進に関する指導が簡単に受けられるプラットフォームの開発
→医療機関の指導者と生活習慣病患者を繋ぐWEBアプリの開発など。

・オンライン診療の需要が高まってきているため、オンライン診療を啓蒙できるプラットフォームの開発
→オンライン診療の魅力や効果を分かりやすく啓蒙できるWEBアプリの開発など。

このように厚労省の公的なオープンデータから、現状の問題を把握。その上で解決できる仕組み作りを行うことが新規ビジネスを立ち上げるきっかけになり得るのです。

医薬・医療機器メーカーの営業戦略立案のヒントになる

例えば、直近の令和2年度における歯周疾患検診・骨粗鬆症検診の実施市区町村数及び検診実施率の年次推移に関するデータを参照すると、平成28年度〜令和2年度にかけて検診実施率はいずれも横ばい。このことから歯周病患者や骨粗鬆症患者は減っていないことが分かります。これをベースに考えると、各医薬・医療機器メーカーでは次の対策を取ることで、市場ニーズにマッチした企業活動ができる可能性があります。

表4 歯周疾患検診・骨粗鬆症検診の実施市区町村数及び検診実施率の年次推移 (厚労省ホームページ 地域保健・健康増進事業報告より抜粋)

歯周疾患検診

骨粗鬆症検診

平成28年度
(2016)
29年度
(’17)
30年度
(’18)
令和元年度
(’19)
2年度
(’20)
平成28年度
(2016)
29年度
(’17)
30年度
(’18)
令和元年度
(’19)
2年度
(’20)
実施市区町村数

1121

1181

1261

1337

1307

1082

1085

1087

1081

1033

検診実施率(%)

64.5

68.0

72.6

77.0

75.2

62.3

62.5

62.6

62.2

59.5

全国市区町村数

1737

1737

1737

1737

1737

1737

1737

1737

1737

1737

医薬メーカー:歯周病疾患患者のための治療薬の開発、販売加速
医療機器メーカー:骨粗鬆症がスクリーニングできる骨密度測定装置の開発、販売加速

市場動向を見定めることで、コロナ禍に適した営業戦略を立てることができ、ひいては効率的な営業活動の展開が見込めるのです。

まとめ

地域保健・保健増進事業報告のオープンデータは、厚労省が公開している信憑性の高いデータです。新型コロナウイルス感染症が蔓延している現代の本オープンデータでは、地域保健や健康増進に関する問題点が浮き彫りになっています。

「治療や指導を受けたいけれども、コロナの影響でなかなか外に出られない。」という方や「自宅で自身の病気のことを勉強したいが、情報がなかなか得られない。」といった方達の問題点が数多く存在しています。そういった問題点をどう解決していき、どのように医療機関や生活習慣病患者などのお役立ちができるのか。その視点に立つことで新たなビジネスチャンスが見えてくる可能性があるのです。

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