なぜ今オープンデータが注目されているのか?その活用方法とは?
目次
ビッグデータの中でも、特に「オープンデータ」と呼ばれるものは国や地方公共団体、企業などが保有するデータを、営利・非営利を問わず誰もが無償で利用できるように公開したものです。
オープンデータは、行政サービスの透明性向上や地域活性化、さらには民間企業のマーケティング戦略にも役立つことから、近年その重要性がますます高まっています。
では、このオープンデータは医療経営にどのように活かせるのでしょうか?
次に、医療分野でのオープンデータの活用方法について具体的な事例を挙げて解説していきます。
オープンデータとは?
現在、情報処理技術の発達とともに様々なデータが各所で蓄積されています。「ビッグデータ」という言葉が話題になって数年経過し、データを収集されている事にもさして抵抗なくインターネットや日々の活動を行っています。
そして、そのような形で集められた様々なデータを利用することがビジネスの世界では普通の事になっています。
ビッグデータには、そのような形で集められたものもあれば、「オープンデータ」といって文字通り公開されていて誰でも利用できるデータもあります。
総務省のホームページを見ると、以下のようにオープンデータの定義を提示しております。
国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、次のいずれの項目にも該当する形で公開されたデータをオープンデータと定義する。
- 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
- 機械判読に適したもの
- 無償で利用できるもの
総務省は加えて各自治体にオープンデータの推奨を行っております。そのため、各自治体の細かい人口動態や経済活動の状況も入手できるようになっています。しかも、そのデータは常にアップデートされます。信頼できる情報元から最新のデータが得られるという非常に有益なデータです。
これも、ビッグデータの一つとして様々なところで利用されております。
これを医院経営や病院経営に生かすためにはどうしたらよいのでしょうか?まずは、実際にどのようにこのオープンデータが使われているのか、実例をご紹介することにします。
オープンデータの使い方
前述のように、この無償でしかも加工ができるデータを使わない手はありません。しかし、どうやって使われているのでしょう?
総務省のホームページでは、地域の観光情報のオープンデータを使い、アプリ上でその情報を検索できるアプリを作成したり、地域の交通事故情報のオープンデータを用いて過去の交通事故の発生を日めくりカレンダーのように日々知らせるアプリを作成したりという事例が出ています。
このように自治体などが地域の振興や住民のためにオープンデータを使用する事例もたくさんあります。そして、そのアプリを作る業者も利益を得るというwin-winの関係となります。
オープンデータはビジネスに役立つのか?
では、マーケティングや集客、企業の収益を増やすためにはどのように使っているのでしょうか?
これも、総務省のホームページに実例が出ています。
小中学校の校区、小学校の児童数、中学校の生徒数のオープンデータを利用して、不動産情報検索ができるサービスを提供する事例が出ております。このプロジェクトの利用者のメリットは
- 物件がどの校区に属しているのかを確認することができる
- 希望する校区内の物件に絞って探すことができる
そして事業者のメリットは、
- いつでも最新の校区データを利用できる
- 物件が属する校区について地図上で調べたり、自治体に確認したりする必要がない
ある学校に近くにある家を借りたり買ったりしたときに学区が異なっていたためにその近くの学校に通えないという事例が少なからずあります。この住所と学区データを組み合わせたこのサービスは子育て世代の方々に安心して不動産を選んでもらう事に役立ち、マーケティングにも役立つことになったのです。
このように、データを利用して自社の商品の宣伝を行ったり、自社の商品へ誘導したりということもできる訳です。
医療経営に使えるオープンデータとは?
オープンデータとは何かと、実際にどのようにオープンデータが医療界の他で使用されているかがお分かりになったと思います。それでは、医療経営に使えるオープンデータはどのようなものがあるでしょうか?
病院経営のためはどのようなデータが必要でしょうか?そして、それはどこにあるのでしょうか?
経営のためにはまず、「集患」です。患者さんが来ないと話になりません。地域の人口や、地域住民の年齢構成が必要でしょう。そこからその地域に必要な医療を検討します。医療に限らず事業の基本は「人・物・金」ですので、どの部門にそれを投入すればよいのかを考える基礎となります。
人口構成や年齢構成は、自治体のオープンデータとして公開されているはずですのでそれを参考にデータを収集、解析を行う事となります。
オープンデータの一つDPCデータ
次に必要なのは、どのようなその地域では病気が多いのか、その患者はどこの病院で診療を受けているのか、自分の病院にはどのくらい患者さんが来ているのか。という「現状把握」も大切です。
それはDPC(Diagnosis Procedure Combination)データとして公開されています。DPCの詳細は、このブログの他のコーナーで解説されていますのでここでは述べませんが、このデータも非常に有用です。
このデータには、地域の診断群分類の数、各病院における各疾患のシェアなどが示されており、自院と他病院の業績が一目でわかります。
オープンデータとしての「病床機能報告」
医療者の方々ならよくご存じのこととおもいますが、これも非常に役立つ情報が詰まっているオープンデータの一つです。
多くの医療者はこのデータを誤解しています。「病床機能報告」は、高度急性期・急性期・回復期・慢性期に各地域の病床を分け、それが何床あって、どの機能がどのくらい多いのか、不足しているのかを検討する事のみが目的と思っていることが多いのです。
しかし、この「病床機能報告」、全国の医療機関のさらに細かい情報が入力され提出されています。
このデータは、厚生労働省のホームページから手に入れることができます。見てみると病院の姿が手に取るようにわかる詳細なデータであることが分かります。
各病棟の人員配置、コメディカルの人員配置など、その病院の収支まで計算できてしまうのではなかと思うくらいのデータが入っています。
オープンデータの医療経営での使い方
今回は「DPC」と「病床機能報告」の二つのオープンデータをご紹介しました。これらを含む様々なオープンデータをどのように医療経営に役立てていくかは、次のブログでお話ししたいと思います。
データの扱い方
大きな企業では「Chief Data Officer」いわゆるCDOという役職があります。最近では「Chief Digital Officer」という役職も出現し、これもCDOと言われます。前者は最高データ責任者、後者は最高デジタル責任者と日本語訳されております。どちらかというとデータ責任者がデジタル責任者を包括して事業を推進しているという事が多いようです。データを蓄積、解析し、それをデジタル化して情報を共有して経営に役立てる。この二つの最高責任者は、データを経営に生かす業務を総括しているのです。
どちらにせよ企業にとってデータは重要な武器であり、宝であります。
しかし、データは集積も時間と人手がかかるし、それを必要な情報がすぐわかるように整理するのも大変です。CDOが在籍する企業は、データ部門を独立して持っているのが普通です。その部門がデータを収集、整理し、CDOの下で様々な経営指標を設定し、経営判断を下していきます。
そして、そのためにかかる人材・設備などの原価を価格に上乗せして商品価格を設定していきます。しかし、医療は「人材集約産業」でありながら、人件費のほとんどをいわゆる「保険点数のとれる」部門にかけています。他の人材・設備投資は医療界でいう商品価格(保険点数)には上乗せできません。そのため、そのような経費をかけられないところに病院経営の難しさがあります。
なるべくコストをかけず、有効なデータを手に入れ、病院経営者は経営判断のみすれば良いという事になるのが理想です。そのためにはどのような手段があるか?これもおいおいこのブログの中でお話ししていきます。
まとめ
オープンデータは、行政サービスの透明性向上や地域活性化、企業のマーケティングなど幅広い分野で役立っており、特にその重要性が増しています。
医療分野でもオープンデータは経営に役立つ可能性があり、どの医療サービスが必要かを検討することができ、DPC(Diagnosis Procedure Combination)データや病床機能報告などのオープンデータを使うことで、地域の病気の傾向や他病院との患者数の比較が可能になり、現状把握に役立ちます。
企業ではデータの収集や解析を行い、経営に役立てる役職(CDOなど)が存在しますが、医療機関ではコストを抑えながら有効なデータを活用する工夫が求められます。
今後、医療経営者がどのようにオープンデータを利用していくかについて、更に具体的な方法を紹介していく予定です。
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