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介護保険事業状況報告調査とは オープンデータの特徴や活用方法を解説

介護保険事業状況報告調査とは?

介護保険事業状況報告調査について、厚生労働省のホームページには以下のように説明されています。
「介護保険制度の施行に伴い、介護保険事業の実施状況を把握し、今後の介護保険制度の円滑な運営に資するための基礎資料を得ることを目的としてこの調査は開始されました。」よく分かっているようで分かっていない、「介護保険事業」についてまず、お話ししましょう。

大きく分けて下記の4つになります。

  1. 居宅サービス
  2. 地域密着型サービス
  3. 施設サービス
  4. 特定入所者介護サービス

このうち、①、②、④は「介護予防」での事業もあります。
ここでは、ざっくり分けましたが、介護保険事業のサービスは、なんと、26種類54サービスもあるのです。高齢化社会に向かって日本が作り上げたシステムです。

本記事の中で全て紹介はしきれませんので、詳しく知りたい方は以下のURLをご覧ください。介護保険事業について十分理解されている方は、次のお話に進んでください。

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/

オープンデータとしての介護保険事業状況調査報告


介護保険事業状況調査報告は、第1号被保険者数、要介護(要支援)認定者数をはじめ、これらの事業の受給者や、かかった費用を毎年調査しています。
2022年2月現在、公開されている最新データは2019年度のものです。まず、2019年集計で公開されているポイントを見てください。

https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/19/dl/r01_point.pdf

次に、オープンデータとして公開されているこの調査のデータをどう利用するかをお話ししましょう。

介護保険事業状況調査報告はどう使う? ―まずはデータを見てみよう―

介護保険を利用してサービスを受けるためには、まず、介護保険を使用する資格を得なければなりません。
基本的に40歳以上の方は介護保険の被保険者になるのですが、そのうち65歳以上の方は第一号被保険者とされ、40~64歳までの医療保険に加入している人は第2号被保険者と呼ばれます。

そして、第一号被保険者は「寝たきりや認知症などにより、介護を必要とする状態(要介護状態)になったり、家事や身じたく等、日常生活に支援が必要な状態(要支援状態)になったりした場合」です。また、第二号被保険者は「初老期の認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる病気(16種類の特定疾病が定められています)により、要介護状態や要支援状態になった場合」の場合にサービスが受けられます。

介護保険事業調査報告ではこの第一号被保険者や、要介護(要支援)認定を受けている人数もデータとして有しています。「政府統計の総合窓口 e-Stat」を見てみましょう。

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450351&tstat=000001031648&cycle=8&tclass1=000001157291&tclass2val=0

これは、2019年度の調査報告のデータです。都道府県別のデータと、「保険者別」というデータがあるのがわかると思います。

「保険者別」って? ―「保険者別」のデータの使い方―

介護保険は、市区町村が制度を運営しています。この市町村を「保険者」と呼ぶことになっています。すなわち、「保険者別」というのは、「市町村別」という事になります。つまり、都道府県別はもちろんのこと、市町村レベルの数の把握ができます。
市町村ごとに要介護(要支援)認定を受けている人が分かれば、介護保険事業のニーズを検討することができます。これは、後程解説する様々なサービスに対する給付費のデータと組み合わせることにより、事業所の数がすでに飽和状態にあるのか、まだまだ開業する余地があるのかを見分けることができます。

また、第一号被保険者の数と、要介護(要支援)認定数の数を比較すると、その市町村のいわば「健康指数」を考えることができます。65歳以上が第一号被保険者ですから、要介護(要支援)の人の割合が少ないという事は、高齢者でも元気に暮らしている方が多い市町村ということがわかります。そのような市町村は、これから介護保険サービスが必要となるか、独自の健康作りのシステムがあるのかもしれないと考えることもできます。

また、年次報告を並べてみることによって、その地域の要介護者の増減も知ることができます。
このようなデータは、各自治体では介護サービスの充実をはかるために利用できます。また、介護サービス事業を展開しようとしている事業者には、新規施設開設や、既存の施設の増改築の時期や投資額の検討をするのに役立つでしょう。

データのさらなる使い方は? ―サービス利用者数と給付費―


前項では、被保険者数と、要介護(要支援)認定を受けた人の数をどう使うかをお話ししました。この介護保険事業状況調査報告は、実際に認定を受けた方々がそのようなサービスをどのくらいうけているかのデータも持っています。
認定を受けた人の数とサービスを受けた人の数を比べることで市場規模を検討することができるというのは既にお話ししました。前述のように、介護保険サービスは26種54サービスがあります。その各々をどのくらいの人が利用し、どのくらいの給付を受けているのかを知ることによって、さらに詳細な市場の解析ができます。


この表はその一部です。ちょっと小さいですが、拡大してみて下さい。このように市町村別(「保険者別」)に介護認定の分類と各サービスの受給者数がわかります。このようなデータが全ての介護保険サービスについてオープンデータとして提供されています。

これを利用すれば、自施設の地域での介護サービスのシェアを求めることができます。そうすることによって介護サービス提供事業者はシェアが低いサービスにはさらに資源を投入し、他施設から自施設への流れを作る余地があると判断できます。反対にシェアが十分あるサービスは、自施設が一人勝ちを狙えるサービスであると言えますが、年次推移を見ることで市場が縮小しているのか、他事業所が参入していないだけなのかを知ることもできるのです。それによって、シェアが多いサービスも更に資源投資をするかどうかを判断することができます。

まとめ

今回は、介護保険事業状況調査報告についてお話ししました。このデータは、少子高齢化社会に突き進んでいる日本を支える介護保険サービスを、適正にかつ効率的に提供することができるようにとの目的で作成されています。26種類54サービスもあるのは、それを必要としている人がいるという事です。そのため、介護保険事業は多くの市場を生み出していることも事実です。雇用も創出します。

これからも増え続けるであろう「要介護者」、「要支援者」を支えるこの事業は大切です。だからこそ、事業所は持続可能なサービス提供をして行かなければなりません。そのためにも経営戦略は大切です。必要とされるところに必要なサービスを効率的に提供できるように事業展開していかなければならないのです。
毎年更新されているこのデータを上手く利用して、各事業所が長く地域の方々に必要なサービスをより良い質で提供できるようにしてください。

オープンデータを有効利用するには

政府や行政が提供するオープンデータは、非常に有益なデータが満載されているのですが、いわゆる「生」のデータであることが多く、解析するには非常に手間がかかります。大きな企業にはCDO(Chief Data Officer)という情報管理専門の役員がいて、その下にデータ解析部門が存在することが多いのですが、利益率の低い介護事業ではなかなかそのような部門を置くことができないと思われます。
そのためにも、データを整理・解析してくれる事業者と連携することも検討しましょう。

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