医療マスタ(病院/医療材料/価格)の現状と今後の進展まとめ
医療業界の効率化を考える上で、大きな障壁になりそうなのが、病院情報や、医療材料等商品マスタ、価格のマスタ管理になります。
病院マスタの現状
まずは、病院マスタ(医療機関リスト)ですが、歯科、薬局を含めると20万件を超える病院、診療所、薬局に対するオフィシャルで利用可能な共通コードが存在しません。
国には保険請求の仕組みがあり、その区別番号はあるのですが、一般には利用できないようです。企業でも、アルトマーク社を筆頭に数社がマスタ情報を収集し販売していますが、価格が高いか、精度が低い等の問題があり、一般的な共通コードになっていません。
アルトマークは、公共で使われたり、MD-Netに提供したりして一番近い位置にいますが、価格が今の数分の一にならないと、なかなか業界としては広がらないようです。
そのため、現状は、多くのメーカー、ディーラーは個別の病院コードを持ち、MD-Net等EDIを利用のメーカーは社内システムで変換テーブルを持ち、個々の病院コードを紐づけています。
ですから、100社以上のディーラーと取引があるメーカーには、ディーラー毎に取引がある病院全てに対して変換テーブルが必要になります。
この作成とメンテナンスは、考えてみても膨大で大きな負担となっています。各社、同じような作業を日々行っている訳ですから、どうにかこの無駄を改善したいものです。
医療材料マスタの現状
医療材料等のマスタについては、メーカーよりもディーラーの方が大変です。
メーカーは自社製品の管理だけですから、数はそれほど多くはありませんが、ディーラーの立場では話が全く異なってきます。ディーラーでは、数十から数百のメーカーの各製品を管理します。一つの製品でも、箱の種類やレンタル等もあり、マスタはすぐに数万になってしまいます。
大手メーカーはさすがにJANコードの管理にはなっていますが、小さなメーカーではその紐づけもないところもあり、かつ、メーカーの理由により廃止、コード変更等、多々あります。
これを完全に管理するのは不可能に近いようです。最近、ビジネスとしてこのマスタを日々更新して販売している会社があり、少しずつ広がっているようです。
価格マスタの現状
価格のマスタとなれば、業界での価格構造に大きく依存します。
業界は、病院/ディーラー/商品の組み合わせで価格が決まることが多いです。MRT・CTのような大きな検査機器では、問題にはなりません。
ただ、医療機器の業界のサプライチェーンの中で大きく占める注射器やマスクのような使い捨てのディスポーザル製品では、これらは商品数が多く、病院毎、ディーラーの組み合わせ毎に必要となるため、すぐに何十、何百万レコードとなります。営業担当の人が病院と価格の交渉を行い、その後、本社も巻き込んでディーラーとも交渉し、メーカー内の申請処理を通して管理されます。莫大な時間をその決定にかけている状況です。
雑誌や新聞の紙面で、ビックデータとか、クラウドとか、最先端の耳心地良い言葉が飛び交っている中、業界では実際はこのようなところで止まっている状況です。 マスタの整備ができなければ、ビッグデータ・データ分析どころではありません。データ分析もないのに、マーケティング戦略もほぼないと言っても良いでしょう。
医療マスタの今後の進展
この10年、ITの中でも特にインフラに近いところの技術革新が進み、新たな可能性は見えて来ています。その中の大きな流れとしては、クラウド型のサービスがあります。私の理想は、各社がクラウド上のマスタを共有して更新・利用できる業界共通のプラットフォームができることです。
まだ、良い例としてご紹介できる業界はありませんが、世の中の流れはきっとこの方向に進むように思います。技術が進めば、課題を解決する手段が広がるものです。私達もその進歩に前向きに臨んでいきたいと思っています。