国民医療費とは?オープンデータの特徴や活用方法を解説
目次
国民の医療費は年々増加傾向にあり、国の財政を圧迫している大きな原因の一つです。国民の医療費が増えている一因として、高齢者の人口増加が挙げられます。その一方で、保険料を支払っている若者世代の人口は減少しているため、国の財政圧迫だけでなく若者一人当たりが負担する保険料も増加傾向にあります。
国民の医療費の状況を把握するために、厚生労働省は「国民医療費」という統計を行っています。年齢、傷病名、都道府県などの指標ごとの医療費が分かるので、企業や病院は医療需要が高まっている患者様や地域を特定し、経営改善に役立てることが可能です。
この記事では、国民医療費のオープンデータの特徴について解説します。企業や病院のサービスへの活用方法も掲載するので、ぜひ参考にしてみてください。
統計「国民医療費」とは
国民に必要な医療を確保していくための基礎資料を得るために、厚生労働省が毎年度実施している、国民が支払った医療費に関する統計が「国民医療費」です。当統計で明らかになった結果は、日本の医療保険制度・医療経済における重要な指標となります。
具体的には、2年に1度行われる医療費改定の検討資料や、生まれてから亡くなるまでの生涯医療費を算出するための資料に活用されています。
国民医療費に関する概要
当統計の内容を理解する上で、「国民医療費」に含まれる医療費の範囲を明確にすることが重要です。また、国民医療費は財源や診療種類などによって大別されます。国民医療費に関する概要を見ていきましょう。
国民医療費の定義
国民医療費とは、統計年度内の医療機関等における保険診療の傷病に関する治療に要した費用を推計したものを指します。医療保険制度・後期高齢者医療制度・公費負担医療制度による給付や、これに伴う患者の一部負担等によって支払われた医療費を合算しています。
集計対象となる機関
国民医療費の集計対象となる傷病に関する保険診療を提供しているのは、医療機関だけではありません。国民医療費の集計対象となる機関を表した図は、以下のとおりです。(※1)
※1 国民医療費の集計対象機関
国民医療費に含まれるものと含まれないものは、以下のように仕分けられます。
国民医療費に含まれるもの | 国民医療費に含まれないもの |
・医科診療にかかる診療費 ・歯科診療にかかる診療費 ・入院時食事・生活医療費 ・訪問看護医療費 ・訪問看護療養費 ・訪問看護事業所の基本利用料 ・薬局調剤医療費 ・柔道整復師・はり師等による治療費(健保等適用分) ・移送費 ・補装具の費用(健保等適用分) |
・評価療養(先進医療)の費用 ・選定療養(特別病室への入院、歯科の金属材料等)の費用 ・不妊治療における生殖補助医療の費用 ・美容整形費 ・正常な妊娠・分娩、産じょくの費用 ・集団健診・検診費 ・個別健診・検診費、 ・人間ドック等の費用 ・介護療養型医療施設における施設サービスの費用 など |
オープンデータの頻出用語
国民医療費で推計される単位として、財源別国民医療費と診療種類別国民医療費があります。
財源別国民医療費とは、財源負担すべき者ごとの国民医療費のことです。国庫負担金と地方公共団体の負担金は「公費」、事業主と被保険者が負担すべき額は「保険料」、患者負担及び原因者負担は「その他」として計上されます。
診療種類別国民医療費は、診療種類ごとの国民医療費のことで、以下の6つに分かれます。
診療種類別国民医療費 | 定義 |
医科診療医療費 | 医科診療にかかる診療費 |
歯科診療医療費 | 歯科診療にかかる診療費 |
薬局調剤医療費 | 保険薬局から支給される薬剤等の額 |
入院時食事・生活医療費 | 入院時食事療養費、食事療養標準負担額、入院時生活療養費及び生活療養標準負担額の合計額 |
訪問看護医療費 | 訪問看護療養費と基本利用料の合計額 |
療養費等 | 健康保険等の給付対象である柔道整復師・はり師等による治療費、移送費、補装具等の費用 |
国民医療費の統計結果内で、制度区分 として以下の区分けがされています。
制度区分 | |||
公費負担医療給付分 | |||
医療保険等給付分 | 医療保険 | 被用者保険 | 被保険者 |
被扶養者 | |||
高齢者 | |||
国民健康保険 | 高齢者以外 | ||
高齢者 | |||
その他 | |||
後期高齢者医療給付分 | |||
患者等負担分 |
同様に、統計結果内で集計されている傷病分類(上位5位)とは、ICD-10(2013年版)に準拠した傷病の分類のうち、各年度で医療費が多く投入された順位の上位5位までの傷病分類を指します。
国民医療費のオープンデータの内容
毎年度実施されている国民医療費の統計結果は、オープンデータとして厚生労働省のHPに無料公開されています。国民医療費のオープンデータの内容は、以下の7つです。
項目名 | 内容 |
国民医療費の状況 | 昭和29年度から調査統計年度までの国民医療費、人口一人当たり国民医療費、対国内総生産比、国内総生産の推移 |
制度区分別国民医療費 | 直近2年度分の制度区分ごとの国民医療費、構成割合、増減額、増減率 財源別国民医療費 直近2年度分の財源ごとの国民医療費、構成割合、増減額、増減率 |
財源別国民医療費 | 直近2年度分の財源ごとの国民医療費、構成割合、増減額、増減率 |
診療種類別国民医療費 | 直近2年度分の診療種類ごとの国民医療費、構成割合、増減額、増減率 |
年齢階級別国民医療費 | 直近2年度分の年齢階級ごとの国民医療費、構成割合、人口一人当たりの国民医療費、増減額、増減率 |
傷病分類別医科診療医療費 | 直近2年度分の傷病分類(上位5位)ごとの医科診療医療費、構成割合、増減額、増減率 |
都道府県別国民医療費 | 47都道府県ごとの国民医療費と人口一人当たり国民医療費 |
企業・病院担当者による国民医療費の活用方法3選
国民医療のオープンデータは、様々な分類別に医療費増減傾向が把握できます。企業・病院担当者による国民医療費の主な活用方法を紹介します。
医療需要が高い地域・診療種類・傷病名の分析
これから医療機関の開業を検討している開業医に向けて、国民医療費の以下の3項目を利用することで、医療需要が高まっている開設条件を提案することが可能です。
診療種類別国民医療費より、以下の診療種類のうち、最も多くの医療費が支払われている条件や、最も医療費の増加率が高い条件を提案できます。
- 医科、歯科、調剤、訪問看護
- 入院、外来
- 病院、診療所
傷病分類別医科診療医療費より、65歳未満と65歳以上のそれぞれで上位5位にランクインする傷病名のうち、最も多くの医療費が支払われている傷病名と、それに対応する診療科を提案できます。
都道府県別国民医療費より、国民一人当たりが全国平均よりも多くの医療費を支払っている、開設地域に相応しい都道府県を提案できます。
設備投資すべきターゲット層の選定
国民医療費の「年齢階級別国民医療費」を活用することで、医科、歯科、薬局ごとに医療費を多く支払っている年代が可視化されます。それにより、特定の年代に的を絞り、自院に流入させるための戦略を立てられます。
70歳以上の高齢者が支払う医療費が多いのであれば、手すりや車椅子用のトイレの設置などに設備投資することで、狙った年齢層の患者数の増加が見込めるでしょう。
健康診断サービス促進のためのエビデンス
国民医療費の「国民医療費の状況」では、昭和29年度から統計年度にかけて、医療費が右肩上がりで増加している様子が可視化されています。国民医療費には健康診断による医療費は含まれていないため、患者が傷病を患ったことで支払った医療費が増加傾向にあることが分かります。
健康診断や人間ドックのサービスを提供している事業者は、国民の医療費が増加傾向にあることを当資料によって示した上で、医療費を削減するためには健康診断による疾患の早期発見が重要であると訴えかけることができます。
まとめ
厚生労働省が毎年度実施している国民医療費は、国民が支払っている医療費を年齢・診療種類・傷病名・都道府県等別に明らかにする統計です。企業や病院の担当者は、統計結果を活用することで、医療需要が高まっている条件を特定でき、経営改善に繋げられます。
国民医療費の統計結果を、自社・自院のサービスへと活用してみてください。
<医療系オープンデータ>
弊社では、医療系オープンデータとして
・医療機関マスタ(医科、歯科、薬局)
・DPCデータ
・病床機能報告データ
をご用意しております。
【医療機関マスタ】
厚労省のオープンデータ「コード内容別医療機関一覧表」をもとに作成した医療機関マスタをご提供しています。ご興味のお持ちの方は、お気軽に下記フォームよりお問合せ下さい。
>>無料版の詳細はこちら!
無料版は医療機関(病院・クリニック等)、医薬・医療機器のメーカー・販売会社の方限定です。
>>有料版の詳細はこちら
有料版は、二次医療圏や経営体情報、緯度経度など詳細情報を付与したデータです。カスタマイズも可能です。
【DPCデータ提供サービス】
>>詳しくはこちら
【病床機能報告データ提供サービス】
>>詳しくはこちら
<無料オンラインセミナー開催中!>
弊社ではSalesforceやBIツール、MA、オープンデータなどの活用方法に関する無料オンラインセミナーを実施しています!
>>セミナー一覧はこちら