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患者調査とは オープンデータの特徴や活用方法を解説

患者調査とは?

厚生労働省が行っている「患者調査」についてご紹介します。
「「医療施設」(病院・診療所)を利用する患者について、その傷病の状況等の実態を明らかにし、医療行政の基礎資料を得る」という目的で行われています。
3年に1回行われ、調査の年の10月中旬の3日間のうち医療施設ごとに定める1日の入院患者と外来患者、9月1日~30日までの1か月間の退院患者を報告することになっています。

医療施設は平成30年(2018年)の調査によれば、179000以上の施設があり、全部を調査するのは大変です。そのため、層化無作為抽出とすることにしています。ただし、500床以上の病院については、毎回全施設が対象となるのですが、患者踏査は以下のように二段抽出を行う事になっています。
500床未満の病院の入院・外来の患者のうち生年月日の末尾が奇数の患者については全調査事項を調査し、生年月日の末尾が偶数の患者については「入院・外来の別」、「性別」、「出生年月日」のみを調査します。また、500~599床の病院の入院・外来患者については生年月日の末尾が1,3,5,7日の患者について、600床以上の病院については生年月日の末尾が3,5,7日の患者については全調査事項を調査することとして、それ以外の患者については「入院・外来の別」、「性別」、「出生年月日」のみを調査します。

それ故、「患者数全体」の数ではないのですが、地域別(病院の入院については二次医療圏まで、病院の外来、一般診療所及び歯科診療所については都道府県まで)推計が可能な数を抽出することとなっていますので、ほぼ正確な患者推計が可能となります。
この調査の歴史は古く、昭和23年(1948年)に、「施設面からみた医療調査」として開始され、昭和28年(1953年)に「患者調査」として、指定されたある1日を調査するものが毎年実施されるようになりました。昭和59年(1984年)からは、調査項目を増やし、地域別の推計ができるよう医療施設の対象数も増やしました。多くの調査項目が必要となったので、調査を3年に1回、医療施設静態調査(「医療施設調査とは オープンデータの特徴や活用方法を解説」の項目を参照してください。)と同時期に実施することになりました。平成5年からはさらに拡充し、病院の入院患者及び病院の退院患者の状況を二次医療圏別に表すことが可能となっています。

令和4年(2022年)2月1日現在、結果が公表されているのは平成29年(2017年)のものです。3年ごとの調査なので最新調査データは令和2年(2020年)になるのですが、今、集計中のようです。2017年のデータの公開日が2019年3月1日になっているので、2020年のデータも2022年の3月には公開されているでしょう。
このデータも貴重なオープンデータという事になります。

オープンデータとしての「患者調査」の使い方 ―外来患者数―


前述のように、この統計で出される「患者数」は推計です。そのため、結果の報告には全て「推計患者数」となっていますが、ここでは「患者数」としてお話ししていきます。
参照のURLは下記です。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450022&tstat=000001031167

データを見ていくと、まず「上巻」で、外来患者数の年次推移を見ることができます。公開されているのは、全国での集計ですので、日本の外来患者数の増減です。このデータは、性・年齢階層別、傷病分類別に提示されているので、日本で外来診療を受ける人の数とその疾患が分かります。
製薬会社や、医療機器メーカー、サプリのメーカーなどは、これを分析することにより、どのような傷病が増えているのかが分かり、その疾患に対する医薬・機器に資源投資すればよいのかを検討することができます。また、受診数が増えている年齢層を解析することにより、周りの同年代の方々が疾病に罹患し受診行動が増えたのを心配する世代をターゲットに、サプリや健康機器やジムなど「健康関連製品・施設」を開発、広報を進めていくという戦略を立てやすくなります。

「下巻」を見ると、各都道府県の外来患者数の性・年齢階層別、傷病分類別のデータがあるのがわかります。これにより、より細かく都道府県別に受診の多い年齢階層、傷病を求めることができます。ただ、残念ながらこの都道府県別のデータの年次推移はこのページからダイレクトに得られることは出来ません。
このページには、2022年2月1日現在、平成8年(1996年)までのデータが公開されていますので、特定の都道府県のデータを連結することで年次推移を出すことができます。このデータは、診療所が新規開業しようとする際の参考となります。また、全国の年次で考えたような「健康関連製品」の売り込みや、「健康関連施設」の新規開業などの戦略を都道府県単位で細かく検討することができます。

また、各都道府県の在住者が県を超えて移動して受診行動を行っているかもわかり、流出が多い都道府県は、医療需要がまだ足りていないということを示唆しており、新規開業のチャンスもあるかもしれないと考察することができます。

オープンデータとしての「患者調査」の使い方 ―入院患者数―


次は、このオープンデータから得られる「入院患者数」の使い方を見てみましょう。
「入院患者数」は、さらに細かく二次医療圏別に集計されています。病院経営は、入院収益が大きく影響されますので、このデータは病院の経営戦略に非常に役に立ちます。

まず、傷病別の二次医療圏での入院患者数を利用して、各傷病別の二次医療圏での自院のシェアを求めることができます。それにより、更に資源投資すべき診療科や、縮小すべき診療科を検討します。これも、各年度のデータを連結することにより年次推移を求めることができるので、シェアと年次推移を同時に検討することにより、将来的な計画も立てることができます。

さらに、このデータには二次医療圏別に、「病院の入院患者数の圏内への流入患者割合-圏外への流出患者割合」があります。これは、まだまだ各二次医療圏で医療需要があるのかどうかの指標の一つになります。流入が多ければ、その二次医療圏の周りに入院患者を受け入れる医療施設が無いことを意味し、流出が多ければ、自院のある二次医療圏の受け入れのキャパシティーが少ないので、増床・新築のチャンスがあるという事になります。それを前述の傷病別のシェアと共に検討すると、増床・新築の目標とする医療施設の在り方を考えることができます。
また、このデータは、一般の人が居住地を選ぶときや、建築会社が住宅地やマンションなどの計画を立てるときなどの医療へのアクセスを検討する材料にすることができます。流出が多い地域は、入院施設までやや遠い地域であるという事を推定することができる訳です。

先に記したURLを見ていくと、「報告書非掲載表」という項目もあります。そこにはさらに様々なデータがあります。興味深いものの一つとして、「性・年齢階級別の傷病小分類別患者数」があります。大きな傷病分類別は前述したデータなのですが、このデータは、症病名が更に細かくなっています。
「感染症」でも、「ヘルペス」や「水痘」など細かくなっています。ちなみに、「インフルエンザ」は「呼吸器疾患」に分類されています。2020年のデータには「新型コロナウイルス感染症」がどのように載ってくるのか興味があるところです。

まとめ

「患者調査」は日本人がどのような傷病にかかり、どのような受診行動をしているかがつぶさにわかります。また、日本でどのような疾患が増え、または減ったのかも見ることができます。今回ご紹介した他にも数多くのデータが公開されています。

しかし、お話ししたように、数回分の「患者調査」のデータを連結しないと推移が分からないもの、「患者調査」と他のデータを連結することにより更に有用なデータとなるものなどあるのも事実です。データ戦略を有利に戦うには、データ専門の部門を整備したり、業者と提携したりすることが必要です。

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