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患者調査とは オープンデータの特徴や活用方法を解説

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医療先進国である日本は、多額の医療費という課題を抱えています。国民の医療費が財政を圧迫している一因として考えられるのが、入院期間の長さです。年々、入院期間は短縮傾向にあるとはいえ、他の先進国と比較するとその長さが際立ちます(※1)。

そこで、厚生労働省は、医療施設に入院・来院する患者を対象とした「患者調査」を実施しています。全国の平均在院日数や推計患者数、受療率などが把握でき、病院の経営やビジネスにも応用できる貴重な情報源と言えるでしょう。

本記事では、患者調査の特徴やオープンデータの活用方法について解説します。病院経営を改善したい方や、新たなビジネスモデルを構築したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

※1参考:厚生労働省 医療提供体制の国際比較

患者調査とは


患者調査とは、厚生労働省が実施している、全国の病院・診療所を利用する患者の入院・来院時の状況を明らかにする調査です。医療行政の基礎資料を得ることを目的としています。

平成5年調査にて、入院患者・退院患者の状況を地域別に集計できるようになってからは、患者調査の集計内容がさらに拡充しています。調査結果は、厚生労働省のホームページに無料で公開されており、誰でも二次利用が可能です。

まずは、患者調査の概要や頻出用語について、詳しく見ていきましょう。

患者調査の概要

患者調査は、全国の入院・外来患者約200万人、退院患者約100万人という膨大な客体を対象としています。患者調査の概要は、以下のとおりです。

調査対象 ・全国の医療施設(病院・診療所)を利用する患者
・病院(入院)は、二次医療圏別に層化無作為抽出
・病院(外来)・診療所は、都道府県別に層化無作為抽出
調査時期 入院・外来患者:10月の3日間のうち医療施設ごとに定める1日
退院患者:9月1日~30日までの1か月間
調査間隔 3年に1回
調査事項 性別、出生年月日、患者の住所、入院年月日、退院年月日、主傷病名、副傷病名、診療費等支払方法、病床の種別、紹介の状況、退院後の行き先等
調査方法 医療施設の管理者が調査票を記入し、保健所経由で厚生労働省に提出する

 

患者調査で頻出する用語

患者調査の結果を正しく分析するためには、以下の用語の定義を理解しておく必要があります。

用語 定義
推計患者数 調査日当日に、病院・一般診療所・歯科診療所で受療した患者の推計数
推計退院患者数 調査対象期間中に病院・一般診療所を退院した患者の推計数
退院患者の平均在院日数 調査対象期間中に退院した患者の在院日数の平均
受療率 推計患者数を人口10万対で表した数
 受療率 =(推計患者数/国勢調査人口)×100,000
総患者数(傷病別推計)※ 調査日において、継続的に医療を受けている者の数
(計算式は後述)
精神病床 精神疾患を有する者を入院させるための病床
感染症病床 一類感染症、二類感染症(結核除く)、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症の患者を入院させるための病床
結核病床 結核の患者を入院させるための病床
療養病床 病院・一般診療所の病床のうち、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床
一般病床 精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床以外の病床

 
※傷病は、世界保健機関(WHO)が定める「疾病、傷害及び死因の統計分類(ICD-10(2013 年版)準拠)」に基づく

患者調査のオープンデータの内容


患者調査の調査結果は、オープンデータとして厚生労働省のホームページで公開されています。オープンデータの項目は、以下のとおりです。

  • 推計患者数
  • 受療率
  • 退院患者の平均在院日数等
  • 入院前の場所・退院後の行き先
  • 傷病分類別の総患者数

性・年齢階級といった属性や傷病分類、都道府県別に集計されているため、多角的に入院・来院患者の実態を把握できます。各項目の内容について、詳しく見ていきましょう。

1.推計患者数

調査日に全国の医療施設を受療した推計患者数が、施設の種類や性・年齢階級、傷病分類別に集計されています。施設の種類は、入院(病院・診療所)と外来(病院・診療所・歯科診療所)の5分類です。

医療施設に入院している患者のうち、重症度別に占める構成割合も示されています。生命の危険がある患者や条件が整えば退院可能な患者が、全体の何割を占めているのかが、年齢階級別に集計されているのが特徴です。

また、入院・外来だけではなく、在宅医療の推計患者数も集計されています。年次推移が棒グラフで表されており、高齢化に伴う在宅医療のニーズの高まりが把握できるでしょう。

2.受療率

全国の受療率が、性・年齢階級別、傷病分類別、都道府県別に集計されています。年齢階級別の受療率は、年次推移が折れ線グラフで示されているのが特徴です。都道府県別の受療率は棒グラフで示されており、全国平均よりも多いのか少ないのかが一目で分かるように、棒グラフに基準となる線が引かれています。

3.退院患者の平均在院日数等

施設の種類・年齢階級別に退院患者の平均在院日数が、年次推移で集計されています。傷病分類別の平均在院日数からは、入院期間の長期化を招いている傷病分類が特定可能です。

また、病床の種類別に在院期間別の推計退院患者数の構成割合も集計されています。

4.入院前の場所・退院後の行き先

推計退院患者は、入院する前にどこにいたのかが帯グラフで集計されています。家庭や病院・診療所、介護医療院、介護老人保健施設など、入院予備軍が最も多い場所を特定可能です。

続いて、入院前の場所別に退院後の行き先の構成割合が示されています。

5.傷病分類別の総患者数

傷病分類別の総患者数が男女別に集計されています。日本において、最も患者数が多い傷病分類が特定できます。総患者数の算式は、以下のとおりです。

総患者数=推計入院患者数+推計初診外来患者数+
     (推計再来外来患者数×平均診療間隔×調整係数(6/7))

ある傷病における外来患者が一定期間ごとに再来すること、また医療施設の稼働日も考慮に入れた算出方法になっています。

患者調査のオープンデータの活用方法2選


患者調査のオープンデータを分析することによって、多くの患者が治療を受けている都道府県や性別・年齢などの属性、傷病分類が特定できます。現代の医療ニーズにマッチした戦略を立案できれば、企業のビジネスや病院経営において利益向上が見込めるでしょう。

患者調査のオープンデータの主な活用方法は、以下のとおりです。

【企業】売上の増加が見込める商品と営業先を特定する

医薬品・医療機器メーカーは、患者調査の結果を用いて、売上の増加が見込める商品と営業先を特定できます。傷病分類別にみた受療率や推計患者数、平均在院日数において、数値が高い傷病分類の治療に関わる医薬品や医療機器は、需要が高いと判断できるでしょう。

また、入院(病院・診療所)・外来(病院・診療所・歯科診療所)といった施設の種類別にも集計されているため、営業効果が期待できる営業先も特定できます。

都道府県(患者住所地)別にみた受療率において、需要の高い医薬品・医療機器が主に使われている施設の種類で上位を占める地域では、高い営業利益が見込めます。
※2参考:令和2年(2020)患者調査の概況

【病院】施設が所在する地域の医療需要を分析する

病院の経営者や担当者は、自院が所在する地域にはどのくらいの受療患者がいるのかを把握することで、的確な経営戦略が立てられるでしょう。患者調査の詳細な統計を見ると、推計入院患者数や圏内外への流入患者の割合が二次医療圏別に集計されています。

推計入院患者数が多い地域であっても、圏外への流入患者の割合が高ければ、提供している医療や設備に課題がある可能性が高いです。反対に、推計入院患者数は少なかったとしても、圏内への流入患者の割合が高ければ、その地域固有の価値があると言えるでしょう。

まとめ


厚生労働省が3年に1回実施する患者調査では、全国の医療施設(病院・診療所)を利用する患者の入院・来院時の状況が把握できます。受療者300万人という膨大なサンプル数を誇るので、精度の高い分析が可能です。

患者調査のオープンデータを、企業や病院の戦略策定にぜひ活用してみてください。

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