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HER-SYSデータとは? オープンデータ化や加工方法について解説

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HER-SYSとは、国、地方自治体、保健所、医療機関などが新型コロナ感染症に関わる情報を共有するコンピュータ・システムのことです。
国などは国民の命を守るために新型コロナ対策を迅速かつ効果的に実施しなければならず、それには関係機関が情報を共有できるシステムが必要でした。

HER-SYSには膨大なデータや情報が蓄積されているので、オープンデータ化が期待されています。HER-SYSデータがオープンデータ化されて医療機関などが自由に利用できれば、エビデンスに基づく病院経営、クリニック経営ができるかもしれません。
この記事ではHER-SYSのオープンデータ化の状況や、HER-SYSのデータの加工方法や、活用に向けた課題について解説します。

HER-SYSの概要


HER-SYSは要するに医療系システムです。HER-SYSの正式名は新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(Health Center Real-time information-sharing System on COVID-19)といいます。

HER-SYSをつくったのは厚生労働省で、2020年5月末から運用しています。新型コロナに関するニュースが日本を駆け巡ったのは2020年1月ごろなので、国(厚生労働省)は半年もかからずに新型コロナ関連の大型システムを立ち上げたことになります。

保健所などの負担軽減と関係機関の情報共有の迅速化のために導入

国がHER-SYSの立ち上げを急いだのは、保健所や医療機関の事務作業などの負担軽減を図るためです。
新型コロナ対策を実効的なものにするには国、地方自治体、保健所、医療機関などが緊密に連係する必要があり、そうなると保健所や医療機関などの事務作業が増えます。システムがあれば事務作業を軽減できるだけでなく、正確かつ効率的に処理できます。
またHER-SYSという1つのシステムを国、地方自治体、保健所、医療機関で共有することで情報共有と情報把握を迅速化できます。

HER-SYSでできること1:感染者や医師が簡単に報告できる

HER-SYSをどのように使うのか、これで何ができるのかを解説します。
HER-SYSは感染者自身にも使ってもらいます。感染者や濃厚接触者は、自身のスマホにHER-SYSを立ち上げて、その画面で健康状態を報告します。
新型コロナ感染症の治療に携わった医療機関の医師や保健所の担当者は、パソコンやタブレットを使ってHER-SYSに報告内容を入力します。
これにより、国や地方自治体などは、簡単かつ確実かつ大量に感染者情報や治療情報を集めることができます。

HER-SYSでできること2:国や地方自治体などが簡単に集計できる

国や地方自治体などは、保健所や医療機関、感染者などから集めた新型コロナ関連情報を集計・分析して、新型コロナ対策に使わなければなりません。
コンピュータ・システム(ここではHER-SYSのこと)で情報を集めれば、集計・分析もコンピュータで行うことができます。
これにより国や地方自治体などは、例えば迅速に入院調整を行うことができたり、クラスター対策の短期間で実施できたりします(*3)。

HER-SYSで集める情報


HER-SYSで集めている新型コロナ関連情報は次のとおり。

● 基本情報
氏名、生年月日、住所、同居家族、福祉部門との連携の要否、担当する保健所など

● 検査、診断に関する情報
発病日、症状、基礎疾患の有無、検査記録、発生届など

● 措置に関する情報
初診日、入退院日、胸部X線やCTの所見、ICUや人工呼吸器やECMOの利用状況、死亡日、入院情報、健康観察情報、医療機関情報など

● 積極的疫学調査に関する情報
行動歴、接触者情報、感染リンク、感染経路など

HER-SYSのオープンデータ化とは


HER-SYSはオープンデータの推進にも役立っています。
オープンデータとは、国や地方自治体などが保有するデータのうち、誰もがインターネットなどを通じて容易に利用できるもののことです。
国や地方自治体のデータを企業などが使うことができれば、ビジネスや国民生活をよりよいものにすることができるので、国はオープンデータ化を進めています。

国はHER-SYSを導入したことにより莫大な量の新型コロナ関連情報を入手することができました。HER-SYS事業ではこれらの新型コロナ関連情報をオープンデータ化していき、医療機関などが使えるようにしています。

HER-SYSのオープンデータ化事例

HER-SYSデータが具体的にどのようなオープンデータになったのか紹介します。

例えば厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードという組織は、2022年3月に「新規陽性者数の推移等(HER-SYSデータ)」を公開しています。
ここには「年代別新規陽性者の割合」や「都道府県別新規陽性者の年齢階級別内訳」などが記載されています。
「年代別新規陽性者の割合」であれば例えば、直近の新規陽性者は10代以下の割合が30%、20代が14%、30代16、40代16%、50代10%であることが報告されています。
オープンデータ化されたことで、このような情報に簡単にアクセスできるようになりました。

また、これも同アドバイザリーボードが公表している情報ですが、「直近の感染状況等の分析と評価」や「感染状況等に関するデータ」などを、誰もが無料で厚生労働省の公式サイトから入手することができます。

HER-SYS情報のオープンデータ化はかなり進んでいるといってよさそうです。

医療機関はHER-SYSデータをどのように加工して使うのか


医療機関はオープンデータ化されたHER-SYSデータを加工して使うことができます。
公開されているHER-SYSデータにはPDFも含まれていますが、PDFに書かれてある数値をエクセルに移行すれば簡単にデータを加工できます。

ただしHER-SYSの大元になるデータ(1次データ)には個人情報が含まれているため、これを公開することはできません。つまり1次データはまだ、誰でも簡単に入手できる状態にあるわけではありません。

したがって現状は、民間の医療機関などがHER-SYSデータを使うときは、厚生労働省が公式サイトで公表しているデータを入手して加工することになるでしょう。

例えば、厚生労働省が公表している、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料「感染状況等に関するデータ」には「都道府県別の感染者数の推移」や「入院者数、受入確保病床数に占める入院者数の割合」などが記載されていて、これだけでも膨大な量のデータを入手することができます。
医療機関がこのデータを入手すれば、エクセルなどを使って解析・分析することができます。

HER-SYSデータの民間利用の課題

現段階ではまだHER-SYSデータは、民間の医療機関の担当者がHER-SYSに直接アクセスして好きなデータを好きなだけ入手するといった「完全オープンデータ化」はできていません。これは個人情報が多く含まれているHER-SYSデータの特性上やむを得ないことでしょう。

ただし、HER-SYSデータから個人情報を除去するといった加工を施せば、オープンデータ化は理論上は可能になります。
そのためには国などがHER-SYSデータに対して匿名加工処理を行い、匿名加工情報にする必要があると考えられますが、その類(たぐい)の方針などはまだアナウンスされていません。

またHER-SYSデータを感染症対策に使った大阪府健康医療部保健医療室感染症対策課は「HER-SYSに入力された情報は関係医療機関も閲覧可能なためクラスター情報等の配慮が必要な情報を自治体間でのみ共有できる手段が必要であった」と、HER-SYSデータの民間利用についての課題を挙げています。
同対策課はさらに「ダウンロードデータでは、性別、保健所名、現在のステータス等の情報がコード化されてしまい、そのままの状態では扱いにくかった」とも述べています。
これらの指摘からHER-SYSデータのオープンデータ化を進めるには、自由に利用できるデータを仕分けたり、データを利用可能な形に加工したりする必要があることがわかります。
課題はまだまだ多そうです。

まとめ~ますますのオープンデータ化に期待

この記事の内容を箇条書きでまとめます。

● HER-SYSとは厚生労働省がつくった医療系システムで、新型コロナ関連の情報を国、地方自治体、保健所、医療機関などで共有するためのもの
● HER-SYSを導入したことで膨大な量の新型コロナ情報を集めることができた
● 厚生労働省はHER-SYSデータの一部をオープンデータとして公開している
● 医療機関などは公開済のオープンデータ化されたHER-SYSデータを自由に入手して自由に加工することができる
● ただしまだ、医療機関がHER-SYSの大元のデータ(1次情報)を入手することはできない。つまり「HER-SYSデータの完全オープンデータ化」が完成しているわけではない

HER-SYS事業の内容を知ると、厚生労働省が医療データを可能な限り世の中に提供していこうとしていることがわかります。
オープンデータ化がさらに進展することを期待したいところです。

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