衛生行政報告例とは オープンデータの特徴や活用方法を解説
国民の健康を保護・増進するために政府や自治体が行う「衛生行政」。各都道府県の衛生行政の実態は、毎年実施される衛生行政報告例によって把握できます。衛生行政報告例によって明らかになった情報は、国民が見やすい情報サイトの運営や、課題解決のための施策立案に役立てることが可能です。
今回は「衛生行政報告例」におけるオープンデータの特徴や活用方法を、令和2年度のデータを基に解説します。
衛生行政報告例が提供する11個の行政分野の中から、自社サービスに活用できる分野を選定できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
衛生行政報告例とは
衛生行政報告例とは、全国の衛生行政の実態を調べ、行政運営のための基礎資料を得ることを目的とした報告資料のことです。以下の3つの機関が毎年、厚生労働省に調査結果を提出しています。
活用例としては、すべてのこどもが健やかに育つ社会の実現を目的とした情報サイト「健やか親子21」の運営などが挙げられます。
衛生行政報告例におけるオープンデータの内容
衛生行政報告例の報告内容は、11個の行政分野に分けられます。心身の健康に関わる項目を網羅的に細分化することで、国民全体の健康管理を実現しています。それぞれの概要は次のとおりです。
分類 |
概要 |
精神保健福祉 |
精神障害者の届出数や都道府県・指定都市に設置された精神保健福祉センターに訪れた人数の集計結果 |
栄養 |
給食施設に関する統計情報 |
衛生検 |
地方衛生研究所における衛生検査に関する統計情報 |
生活衛生 |
生活衛生関係施設に関する統計情報 |
食品衛生 |
食品関係営業施設に関する統計情報 |
乳肉衛生 |
乳肉その他動物性食品に関する統計情報 |
医療 |
就業医療関係者に関する統計情報 |
薬事 |
各都道府県別の薬局数 |
母体保護 |
人工妊娠中絶に関する統計情報 |
難病・小児慢性特定疾病 |
特定疾患医療受給者証に関する統計情報 |
狂犬病予防 |
狂犬病の発生を予防するための施策に関する情報 |
各分野における実際の報告内容を紹介します。
衛生行政報告例の詳細
精神障害者申請通報届出数、措置入院患者数及び医療保護入院届出数
精神障害者申請通報届出数、措置入院患者数及び医療保護入院届出数の年次推移について、主に以下の項目ごとに結果がまとめてあります。
①申請通報届出数
②申請通報届出のあった者のうち 診察を受けた者数
③措置入院患者数
④医療保護入院届出数
申請通報届出数や申請通報届出のあった者のうち診察を受けた者数、医療保護入院届出数は、前年に比べ1%〜1.7%減少しています。同様に、措置入院患者数は前年に比べ0.6%減少していることが分かります。
精神障害者保健福祉手帳交付台帳登載数
精神障害者保健福祉手帳交付台帳登載数の年次推移(過去5年分)の結果がまとめてあります。精神障害者保健福祉手帳交付台帳登載数は前年度に比べ3.9%増加していることが分かります。
精神保健福祉センターにおける相談延人員
精神保健福祉センターにおける相談延人員において以下の項目ごとの人数を明らかにしたデータです。「社会復帰」が最も多く、次いで「心の健康づくり」、「思春期」となっています。
加えて精神保健福祉センターにおける相談(要因)別延人員において以下の項目ごとの人数を明らかにしたデータが記載されています。「ひきこもり」が最も多く、次いで「発達障害」となっています。
給食施設数の年次推移
給食施設数の年次推移において、以下の項目別の推移がデータ化されています。「給食施設」の中でも「特定給食施設」の「学校」が最も多く、「児童福祉施設」が後に続きました。
生活衛生関係施設数の年次推移
生活衛生関係施設数の年次推移における以下の項目ごとの推移をデータ化しています。
主な許可を要する食品関係営業施設数の年次推移
主な許可を要する食品関係営業施設数の年次推移における以下の項目ごとの推移をデータ化しています。
都道府県別にみた薬局数
都道府県別にみた薬局数が明らかにされています。佐賀県が最も多く、次いで山口県、高知県と続いています。一方で、沖縄県が最も少なく、次いで福井県、千葉県の順で少ない施設数となっています。
人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移
人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移において、年齢別に明らかになっています。人口中絶件数は前年度に比べて10%弱程度減少しています。
衛生行政報告例の活用方法
衛生行政報告例で調査される行政分野は、年度によって異なります。近年のデータでは、以下5つの分野に関する統計情報が公開されており、いずれも厚生労働省が重きを置いている情報と言えるでしょう。
上記のオープンデータをどのように活用できるか、詳しく解説します。
精神障害者受け入れ施設の拡充
精神障害者の数は前年度に比べ減少していますが、全体数はまだまだ多い状況です。であれば、精神障害者の受け入れ施設増加が課題となってくるでしょう。さらなる精神患者受け入れ施設数の増加のために社会福祉制度の増設が急務となります。
犯罪者の社会復帰環境整備
社会復帰を希望している相談者が相変わらず多く存在しています。つまり、社会復帰できていない人数が多く存在し、かつ相談できないで苦しんでいることを指してるのです。であれば、そういった社会復帰に悩む人々を救済する措置を作っていくことが課題となるでしょう。
人口妊娠の確率向上を目指した医療の質向上
人口妊娠の確率がまだまだ低いことで、中絶件数がまだ一定数存在しています。懸命に不妊治療を行っても報われない人々が一定数いるということを指しているのです。産婦人科領域の医師達がより情報共有を密に行い、医療技術を結集した実験の確立を推進していくことが求められるでしょう。
薬局数の増設すべき都道府県を見定める
都道府県ごとの薬局数を割り出すことによって、医療体制が十分でない都道府県を洗い出すことができます。具体的に沖縄県は最も薬局数が少ないですので、沖縄県における薬局数の増設を行い、医療体制の整備を行うことが急務と言えるでしょう。次いで薬局数の少なかった福井県や千葉県も同様の措置が必要と考えることができます。薬局数増設対象における優先順位を付ける上でも非常に有用なデータと言えるでしょう。
まとめ
衛生行政報告例のオープンデータは、厚労省が公開している信憑性の高いデータです。
精神福祉や栄養、衛生検査や生活衛生。これに限らず医療の分野における様々な社会問題を俯瞰で見ることができます。
衛生行政報告例のオープンデータを活用し、露見した社会課題の解決に向けたサービスをぜひ検討してみてください。
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