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DPC評価分科会「退院患者調査」データの活用方法|全国2700院のデータから見る全体像

#オープンデータ #退院患者調査 #DPC評価分科会

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医療を取り巻く環境は数年前と比べても大きく変化し、病院もまた年々変化していく医療情勢に対応していくことが常に求められています。

厳しい病院経営環境の中で、生き残りをかけた経営戦略を立てるために、価値ある病院データとはいったいどのようなものなのでしょうか。

今回は、全国の各医療機関から無料で公開されているオープンデータの一つであるDPC評価分科会「退院患者調査」についてご紹介します。後半では少しだけ、病院の戦略や方向性を考えるヒントとなる「退院患者調査」データの活用についても触れていますので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。

地域医療構想と医療機関の取り巻く環境の変化とは

近年、病院の再編・統合・ダウンサイジングが本格的に進み、地域医療のパワーバランスに大きな変化をもたらしています。

その背景には、実質的には国主導である「地域医療構想」の推進があげられ、国は、公立・公的医療機関の再検証要請対象医療機関440病院の実名公表に踏み出しました。これは大きく報道され、良くも悪くも、大きな話題となりました。
「あの基幹病院は大丈夫か(存続するのか)」と関係者や取引業者の関心事、さらには、医療機能の再編について、その影響が懸念されている地域の民間医療機関でも「明日は我が身」とばかりに心配事として広がりました。

このような中、自院の診療実績データの分析だけ行っていても、立ち行かなくなる時代がすぐ目の前に来ており、自院が将来あるべき姿を地域医療全体を通じて再考する必要性がでてきています。
現在は、高度急性期・急性期機能に注目が集まっていても、今後、回復期、慢性期とその影響はすそ野に広がってくるでしょう。

DPCとは?一定以上かからない医療費の定額支払い方法


DPCは、従来の診療行為ごとに計算する方法(出来高支払い)に対して、患者さんの病名や症状をもとに、1日当たり一定額の医療費を計算する会計方法のことを言います。
診療の標準化と透明化そして診療の質の向上を図るために全国の医療機関で導入されおり、患者さんにとっても全国の標準的な価格で診療を受けることができるというメリットがあります。

医療機関においては、DPC情報が細かな診療情報を対象としているため、自病院経年比較やベンチマーク分析、KPI設定として活用が可能です。

DPC評価分科会「退院患者情報調査」とは?


中医協DPC評価分科会で公表されている「退院患者調査」は、毎年2月から3月に前年度の各DPCデータをWeb上に公開しています(今年は令和2年3月25日)。

これは、DPC 導入の影響評価等を行うことを目的として、診断群分類の妥当性の検証及び診療内容の変化等を評価するため、各年度の退院患者について調査を行っているものです。

DPC分析ソフトでのベンチマークは参加病院のみとなりますが、このデータは厚生労働省にDPCデータを提出している全国すべての病院実名公開データとなっています。
1年前のデータとなるため多少のタイムラグはありますが、さまざまなベンチマークが可能です。

対象は、各年度におけるDPC包括払いの対象となる病棟の退院患者のうち、包括払いの対象とならない病棟への移動があった患者等を除外したデータです。

集計項目は、下記の「在院日数」、「病床利用率」、「入院経路」、「退院時転帰」、「退院先の状況」、「再入院種別」、「再転棟種別」とし、5か年分のデータを集計しており、経年的な推移を集計しているのが特徴です。

DPCデータ16項目の概要

  1. 在院日数の状況(医療機関別、施設類型別)
  2. 在院日数の状況について平均在院日数、変動係数、最小値、パーセンタイル値、最大値を集計。

  3. 在院日数の平均の差(医療機関別、施設類型別)
  4. 前年同月の在院日数の差を比較し理由を検討。

  5. 救急車による搬送の有無(医療機関別、施設類型別)
  6. 「救急車による搬送の有無」について、搬送ありの割合を集計。

  7. 救急医療入院(医療機関別、施設類型別)
  8. 「予定・救急医療入院」について、予定外入院および救急医療入院の割合を集計。また、1 カ月当たりの件数を集計。

  9. 他院よりの紹介の有無(医療機関別、施設類型別)
  10. 「他院よりの紹介の有無」について、紹介ありの割合を集計。また、1 カ月当たり紹介ありの件数を集計。

  11. 入院経路及び退院先の状況(医療機関別、施設類型別)
  12. 「退院先」「入院経路」について、各項目の割合を集計。

  13. 退院時転帰の状況(医療機関別、施設類型別)
  14. 「退院時転帰」について、各項目の割合を集計。

  15. 再入院の状況(医療機関別、施設類型別)
  16. 再入院率、同一疾患での 4 週間以内の再入院率、同一疾患での 4 週間を超えての再入院率、異なる疾患での 4 週間以内の再入院率および異なる疾患での 4 週間を超えての再入院率を集計。

  17. MDC 構成比(施設類型別)
  18. MDC 別患者構成を全診断群分類のうち出現した診断群分類の割合、包括評価診断群分類のうち出現した診断群分類の割合、包括評価診断群分類に該当した患者の割合および手術を受けた患者の割合を集計。

  19. 施設別MDC 比率(医療機関別、施設類型別) 
  20. 診断群分類別在院日数 (施設類型別)
  21. 診断群分類別の件数、平均在院日数および変動係数を集計。

  22. 在院日数の平均の差_MDC 別 (医療機関別、施設類型別)
  23. 全国の平均在院日数と平均在院日数の差の理由について、患者構成が異なることによる影響かDPC 毎の在院日数の差があることによる影響かを集計して指数化。また、当該年度においては MDC 別に集計。

  24. 手術・化学療法・放射線療法・全身麻酔について(医療機関別、施設類型別)
  25. 手術あり、化学療法あり、放射線療法あり、救急車搬送ありおよび全身麻酔ありを集計。

  26. 精神病棟の集計(医療機関別、施設類型別)
  27. 精神病棟のみに入院した症例を対象に在院日数の状況、分析対象該当率を集計。

  28. 様式 1 について (医療機関別、施設類型別)
  29. 子様式等の件数を転棟別に件数、平均在院日数等を集計。

  30. 医療圏別 MDC 別患者数 (二次医療圏別、三次医療圏別)
  31. 「患者住所地域の郵便番号」を使用 して MDC 別の件数を集計。

「退院患者調査」データは何に使える?活用方法とは

5ヵ年分のデータを活用し、基本となるデータベースを作成することができます。

元データには、「告示番号」、「通番」、「施設名」はありますが、各病院の所属都道府県、所属医療圏、病床数等のデータはありません。
そのため少し大変かもしれませんが、Web上で同時掲載されている「施設概況表」とひも付けすると便利です。慣れない間は手間がかかる作業かもしれませんが、複数のデータとひも付けることによって、分析しやすいデータが完成します。データベースが出来上がれば、都道府県別や医療圏別データへの2次加工が可能となり、自院の医療圏や地域のパワーバランスが見えてくるとともに、ここ数年での各病院の患者増減等を把握することができます。

中医協では、過去分も掲載しており、過去10年以上の経年分析も可能です。

「退院患者調査」データ活用具体例3選

「救急車入院」と「紹介入院」の患者数の動向をみれば退院患者数がわかる

「救急車による搬送の有無」と「他院より紹介の有無」により入院患者数を算出でき、経年分析することで動向を把握することができます。

例えば、昨今の全国的な傾向としては、救急車入院患者数は横ばいで推移しており、差が出ているのは紹介入院患者であることがデータから読み取ることができたりします。
つまり、病院全体の入院患者の増減は、紹介入院患者数の増減と連動している傾向にあるということから今後の戦略を考える参考資料として活用できます。

気になる医療機関(病院)別に入院患者数の傾向がわかる

最初に作成したデータベースを加工することで医療機関内の病院別入院患者数の推移を表す資料が作成できます。
気になる病院を抜きだしてグラフ化すれば細かい傾向を把握することができます。

MDC別医療機関別件数を把握!病院の強みと弱みがわかる

MDCデータを加工することで医療圏ごとの病院別にMDC別シェアを把握することができます。
二次医療機関内の各病院の強みや弱みを知るとともに、地域医療構想推進のための各病院の役割分担推進や戦略的に強化する領域を検討する際の参考資料となります。

まとめ

今回は、全国の各医療機関から無料で公開されているオープンデータの一つであるDPC評価分科会「退院患者調査」から病院の戦略や方向性を考えるヒントを紹介しました。

今回、紹介したデータ活用は、ほんの一部となります。オープンデータのような生データはそのままでは活用できないことが多々あります。
そのため、複数のデータをひも付けて、グラフや表等に見える化する一手間が必要となりますが、その後の考察や分析、改善策や戦略に役立てることができると思います。

病院業界が直面する厳しい時代の中においても、適正な経営判断につながるデータ活用。引き出しの数が増えることにもつながります。
ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

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