ブログ

DPC制度とは?!早く退院させたい病院には理由があります。

#オープンデータ #DPC #DPC制度

皆さんは、病院がなぜ入院しても早く退院させたがるのかご存知でしょうか。

病院は国が定めたルール『医療制度』に従い運営を行っています。この医療制度は、年々増大する医療費を少しでも抑えたいという狙いがあり、入院期間の短縮を推奨しています。そのため、『だらだら』と入院を伸ばして必要のない検査や処置を行うといった医療費の無駄遣いをしないような仕組みが作られています。その仕組みの一つが「DPC制度」です。

DPCとは、入院中の医療費を包括で計算する算定方式のことを指します。2003年に導入されてから、現在では多くの中規模以上の急性期病院で採用されています。

この記事では、「DPC制度とは何か」を詳しく理解したい方に向けて、病院のDPC制度の概要をわかりやすく解説します。

 関連記事もぜひ参考にしてみてください
◆DPC制度(DPC/PDPS)とは何かをわかりやすくご紹介します!
◆DPCデータとは?入手方法と活用方法を徹底解説!

DPCとは?

医療費の支払い方法として「出来高払い方式」と「包括払い方式」の2種類あるのをご存知でしょうか?

従来の支払い方法である「出来高払い方式」は、検査や処置、手術料など、行った診療行為ごとに点数を積み上げて計算する方法です。
一方で「包括払い方式」は、一日当たりの定額の医療費を基本に計算する方法で、どんなに検査を実施しても、どんなに点滴を使っても病院が受け取る金額はすべて同じになります。この包括払い方式のことを「DPC」と呼びます。

DPC導入の背景とは


DPCとは、「Diagnosis(診断) Procedure(行為)Combination(組み合わせ)」の略で、本来は患者分類としての診断群分類の意味で作られた呼称です。
ただ、実際はその診断群分類に基づく1日当たりの定額報酬算定(支払い)制度の意味で用いられることがほとんどです。DPC制度は、2003年に導入された急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度で、厚生労働省が推進し、大学病院や国公立病院を中心に導入されました。

DPC制度導入の背景には、「出来高払い方式」が不必要な検査や治療など過剰診療を助長していたこと、医療の質や効率性、医療技術や運営コストが適切に反映されていないことが問題視されたことにあります。そのため「医療の質を高め、かつ医療費を標準化し、医療費を抑える」こと、つまり医療データの標準化,透明化、医療費の削減を目的として導入されました。

DPC制度の仕組み


DPC制度では、入院期間中に最も医療資源が投下された「傷病名」と、入院期間中に提供される「診療行為」の組み合わせを分類分けした「診断群分類」を使用して、医療費を計算します。その詳しい計算方法について解説していきます。

DPC方式は包括と出来高の組み合わせ

DPC(診断群分類別包括評価)は、患者の疾患や症状、治療内容よって分類される1日当たりの定額の点数からなる包括評価部分と、従来の支払い方法である出来高評価部分を組み合わせた計算方式です。

例えば、投薬や注射、検査や画像診断などの費用は、1日当たりの包括点数に含まれますが、手術やリハビリなど専門的な医療技術を要する費用については出来高点数となっています。

DPC制度(DPC/PDPS)による診療報酬の計算式

DPC方式(包括払い方式)の計算式は以下の通りです。診療報酬額を左右させる要素である「医療機関別係数」は病院の評価によって前後する値です。

DPC総報酬額=
「診断群分類による包括評価」+「出来高評価」+「入院時食事療養費」
*「診断群分類による包括評価」=
「診断群分類番号ごとの1日当たり包括点数」×「入院日数」×「医療機関別係数」×10円

医科点数表でみるDPCの包括項目

医科点数表の診療識別のうち、診断群分類として包括されている点数は以下の通りです。
1)入院基本料
重症児(者)受入連携加算、救急・在宅等支援病床初期加算、看護必要度加算、 一般病棟看護必要度評価加算、ADL維持向上等体制加算は出来高 看護配置等の差は機能評価係数Ⅰとして評価
2)短期滞在手術等基本料 2・3のみ
3)医学管理等
手術前医学管理料、手術後医学管理料のみ
4)検査
一部の検査は出来高、検体検査判断料の検体検査管理加算及び国際標準検査管理加算は機能評価係数Ⅰとして評価
5)画像診断
画像診断管理加算1・2・3、造影剤注入手技の動脈造影カテーテル法で主要血管の分枝血管を選択的に造影撮影した場合(加算含む)は出来高
6)投薬・注射
一部の投薬・注射は出来高
7)リハビリテーション
薬剤料のみ
8)精神科専門療法
薬剤料のみ
9)処置
一部の処置は出来高
10)病理診断
標本作製料の術中迅速病理組織標本作製、病理診断・判断料は出来高

DPCにおける診断群分類とは


診断群分類とは、患者の臨床的類似性と医療資源の均一性に着目し、まず18の主要診断群(MDC:Major Diagnostic Category)に分類します(例えば、MDC04呼吸器系疾患、MDC16外傷・熱傷・中毒)。それらに属する505の基礎疾患をもとに重症度、年齢、手術・処置の有無、定義副傷病名などで振り分けし、4955の診断群に分類したものです。

18の主要診断群(MDC)は下記のとおりです。

MDC01:神経系疾患
MDC02:眼科系疾患
MDC03:耳鼻咽喉科系疾患
MDC04:呼吸器系疾患
MDC05:循環器系疾患
MDC06:消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患
MDC07:筋骨格系疾患
MDC08:皮膚・皮下組織の疾患
MDC09:乳房の疾患
MDC10:内分泌・栄養・代謝に関する疾患
MDC11:腎・尿路系疾患及び男性生殖器系疾患
MDC12:女性生殖器系疾患及び産褥期疾患・異常妊娠分娩
MDC13:血液・造血器・免疫臓器の疾患
MDC14:新生児疾患、先天性奇形
MDC15:小児疾患
MDC16:外傷・熱傷・中毒
MDC17:精神疾患
MDC18:その他

診断群分類(DPC)区分の決定

診断群分類はどのように決定されるのでしょう。重要となるのが『医療資源を最も投入した傷病』です。ひとりの入院患者が人的・物理的医療資源を最も投入した傷病名に基づき主治医が患者の退院時に一つだけ選択することとなっています。

そして、その傷病名に対応した処置・手術等、さらには併存疾患の有無を確認し、DPCコード14桁の診断群分類を決定します。このDPCコードは、包括診療点数に大きな影響があり、経営的な側面からも適切な傷病名の選択は非常に重要な作業となります。

診断群分類(DPC)1日当たり包括点数の設定

一人の患者それぞれに、医師が決定した傷病名に基づき、治療の有無等によってDPCコード14桁が割り振られ、平均在院日数が定められています。この平均在院日数は、3段階(入院期間Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)あり、入院初期の点数が高くなる仕組みになっています。

発症4日目以降脳梗塞で意識障害なし、手術等なし、重症度中等度から重度の患者の場合(診断群分類番号:010060x0990000)

入院期間Ⅰ 1日目~3日目 点数:3,532点/日
入院期間Ⅱ 4日目~6日目 点数:2,611点/日
入院期間Ⅲ 7日目~30日目 点数:2,219点/日

発症3日以内の脳梗塞で意識障害なし、手術なし、リハビリテーションを実施、てんかんの併存症ありの場合(010060x2990210)

入院期間Ⅰ 1日目~8日目 点数:2,807点/日
入院期間Ⅱ 9日目~16日目 点数:2,075点/日
入院期間Ⅲ 17日目~60日目 点数:1,747点/日

DPC方式の医療費に関わる「医療機関別係数」とは


診断群分類による包括評価点数は、1日当たりの包括点数に入院日数と医療機関別係数を乗じて計算します。この医療機関別係数は病院ごとに異なるため、同様の診断群分類であっても、病院間で医療費に差が生まれます。

DPC総報酬額=
「診断群分類による包括評価」+「出来高評価」+「入院時食事療養費」
*「診断群分類による包括評価」=
「診断群分類番号ごとの1日当たり包括点数」×「入院日数」×「医療機関別係数」×10円

医療機関別係数は、下記の4種類あり、全て合算したものになります。

基礎係数:医療機関の基本的な診療機能を評価した係数
機能評価係数Ⅰ:病院の人員配置や施設全体として有する体制などを評価した係数
機能評価係数Ⅱ:医療機関が担うべき役割や機能を評価した係数
激変緩和係数:診療報酬改定年度1年間のみ設定される係数

厚生労働省から高い評価を受けた病院は、医療機関別係数も高くなるため、それに伴い高い診療報酬を得られるという仕組みになっています。これにより、DPC制度を導入している医療機関は院内の体制を見直し、改善していくため、日本全体の入院医療の質が向上するというメリットがあります。

DPC(包括評価制度)のQ&A

Q.DPC導入のメリットや目的はなんですか?

A. 膨大な医療費の増大を抑えるために、急性期医療の標準化や効率化を図ることができます。標準的な医療を受けることができ、医療の標準的価格も明らかになります。

Q.以前の診療内容と変わったことは何ですか?

A. 診療内容に変更はありません。しかし、入院治療の標準化を図っているため、入院中でなくても実施できる検査や治療は、外来で行われます。また、病状の変化によって、診断群分類が入院中に変更される可能性があります。

Q.入院したら皆がDPCの対象なるのでしょうか?

A. 全ての病院がDPCを導入しているわけではありません。一定の基準を満たした病院が「DPC対象病院」として認定され、DPCによる入院費の算定を行います。またDPC対象病院であっても、入院期間が一定時期を超えた部分の入院費用は従来通り「出来高払い方式」で計算します。

DPC制度に関するまとめ

今回は、多くの中規模以上の急性期病院で採用されているDPC制度の概要を解説しました。
財政的な側面から国は膨大な医療費の削減を推進するため、医療制度を笠に着て、様々な施策を展開しています。

DPCは、どんなに検査を実施しても、どんなに点滴を使っても病院が受け取る金額はすべて同じであり、過剰診療の抑制に効果的です。さらに、早い段階で診断をつけて、効率的に治療を行い、入院期間を短縮させていくことが可能な仕組みで作られています。
DPC対象病院や準備病院では、DPC調査に適切に参加し、入院診療及び外来診療データを提出する必要があります。

このDPCデータは、厚生労働省のホームページで無料公開されており、医療機関の様々な情報を入手することが可能です。
弊社では活用しやすいよう加工した【DPCデータ】や【病床機能報告データ】を提供しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
>>DPCデータ提供サービスについてはこちら
>>病床機能報告データ提供サービスについてはこちら

<医療系オープンデータ>
全国の医療機関(医科・歯科・薬局)マスタを無料または有料で提供いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
>>医療機関マスタの詳細こちら!
>>医療機関マスタ提供に関するQ&Aはこちら

CONTACT
お問い合わせ

ご相談やご依頼、病院マスタなどについてのお問い合わせはこちらのお問い合わせフォームから。

サービスなどについてのお問い合わせ 病院マスタについてのお問い合わせ

メールお問い合わせ