Power BIのセマンティックモデルとは 概要や使い方、設計方法を分かりやすく解説
目次
- 1. セマンティックモデルとは?
- 1.1 意味と背景(“意味的に整理されたデータモデル”)
- 1.2 Power BIにおけるセマンティックモデルの位置づけ
- 1.3 旧称「データセット」との関係
- 2. セマンティックモデルの構造を理解する
- 2.1 データソース/テーブル/メジャーの関係
- 2.2 リレーションとコンテキストの概念
- 2.3 Power BI Service上での構成(Fabric連携を含む)
- 3. セマンティックモデルの作成・共有手順
- 3.1 Power BI Desktopでモデルを構築する
- 3.2 Power BI Serviceへ発行(=セマンティックモデル化)
- 3.3 別レポートから再利用する手順
- 4. セマンティックモデルを使うメリット
- 4.1 モデルの再利用による開発効率向上
- 4.2 データ定義の一貫性確保
- 4.3 セキュリティ・アクセス権の集中管理
- 5. 設計時のベストプラクティス
- 5.1 モデル名・テーブル名の命名規則を統一する
- 5.2 カラム・メジャーの命名とコメント設定
- 5.3 データ更新スケジュールと依存関係の管理
- 6. セマンティックモデルと他機能との違い
- 6.1 データフローとの違い
- 6.2 データセット共有との違い
- 6.3 Fabricとの連携ポイント
- 7. まとめ:Power BIの“共通言語”としてのセマンティックモデル
Power BIでレポートが増えてくると、「レポートごとに売上定義が違う」「部署ごとに似たレポートが乱立する」「どの数字が正なのか分からない」といった問題が起きやすくなります。
こうした混乱を防ぐ土台となるのが「セマンティックモデル(Semantic Model)」です。セマンティック(semantic)は「意味的な」という意味で、セマンティックモデルは「業務上の意味を整理したデータモデル」と捉えるとイメージしやすいです。
この記事では、Power BIにおけるセマンティックモデルの概要、構造、作成・共有手順、メリット、設計のポイントをコンパクトに整理します。複数レポートを一元管理したい担当者向けに、専門用語もできるだけかみ砕いて解説します。
セマンティックモデルとは?

意味と背景(“意味的に整理されたデータモデル”)
セマンティックモデルは、単にデータを格納するだけでなく、ビジネス上の意味やルールをまとめて定義したモデルです。個々のレポートが好き勝手に計算式や関係を持つのではなく、「このモデルの定義に合わせる」ことで全体の整合性を保ちます。
たとえば、次のような情報をひとまとめに管理します。
- テーブル同士の関係(どのテーブルがどの軸でつながるか)
- 売上や利益などのメジャー定義
- フィルターやロール(役割)による見せ方の違い
「数字の定義書」と「データ構造」をセットで持っているイメージだと理解しやすいです。
Power BIにおけるセマンティックモデルの位置づけ
Power BIでは、レポートやダッシュボードの一段下にセマンティックモデルが存在します。レポートはこのモデルに接続し、そこで定義されたテーブルやメジャーを使って可視化を行います。
構造を簡単に整理すると、次の三層構造です。

レポートは「UI」、セマンティックモデルは「頭脳」、データソースは「素材」と考えるとイメージしやすいです。
旧称「データセット」との関係
Power BI Serviceでは、以前は「データセット(Dataset)」という名称で表示されていました。現在は同じ概念が「セマンティックモデル」として扱われています。
名称が変わったことで、「単なるデータの塊」ではなく「意味とルールを持つモデル」であることが意識しやすくなりました。過去の資料や画面で「データセット」と書かれている場合も、基本的には同じ層を指すと考えて問題ありません。
セマンティックモデルの構造を理解する

データソース/テーブル/メジャーの関係
セマンティックモデルは、次のような要素の組み合わせで成り立っています。
- データソース:SQL Database、Data Warehouse、ファイルなど、元データの置き場所
- テーブル:ファクトテーブル(売上明細など)、ディメンションテーブル(顧客・商品・店舗など)
- カラム:キー、属性、数値項目など、テーブルの列
- メジャー:売上合計、利益率など、集計ロジックを定義した指標
これらを「業務でそのまま使える形」に整理し直したものがセマンティックモデルです。レポート作成者は、テーブルやメジャーを選ぶだけでビジネスの数字を扱えるようになります。
リレーションとコンテキストの概念
テーブル間のリレーション(関係)は、集計結果やフィルターの効き方を決める重要な要素です。どのテーブル同士をどのキーで結ぶか、どちら向きのフィルターを許可するかによって、スライサー操作時の“コンテキスト”が変わります。
よくある構成は次のようなものです。
- 日付テーブル→売上テーブル
- 顧客テーブル → 売上テーブル
- 店舗テーブル → 売上テーブル
「日付スライサーを動かすと売上明細がどう絞られるか」といった挙動は、すべてリレーション設計に依存します。セマンティックモデルの段階で正しく設計しておくことで、レポート側では余計な調整をせずに済みます。
Power BI Service上での構成(Fabric連携を含む)
Power BI Service や Microsoft Fabric 環境では、セマンティックモデルはワークスペース内の1つのリソースとして管理されます。1つのワークスペースに共通モデルを置き、複数レポートやExcelから参照する構成が一般的です。
Fabric を利用している場合は、OneLake 上の Lakehouse/Warehouse とセマンティックモデルを組み合わせて、下記のような三層構造で設計します。
- 下層:OneLake+Lakehouse/Warehouse(ストレージ・計算基盤)
- 中層:セマンティックモデル(意味とロジックの層)
- 上層:レポートやExcel、外部ツール(可視化・利用の層)
このように層を分けることで、データ基盤とBIを一体として運用しやすくなります。
セマンティックモデルの作成・共有手順
Power BI Desktopでモデルを構築する
セマンティックモデルは、まず Power BI Desktop 上で作成します。基本的な流れは次のとおりです。
- データソースに接続する
- Power Query で不要な列の削除や型変換などの整形を行う
- モデルビューでテーブルのリレーションを定義する
- DAXでメジャー(売上合計、利益率など)を定義する
※上記は通常のPowerBI desktopの作業手順と変わりません。
この段階で「どのテーブルが軸か」「どのメジャーを共通指標にするか」を整理しておくと、後からの運用がぐっと楽になります。
Power BI Serviceへ発行(=セマンティックモデル化)
Desktopで作成したレポートを Power BI Service に発行すると、ワークスペース内に
- レポート
- セマンティックモデル
の2つが作成されます。Service側では、セマンティックモデル単体を選択して更新スケジュールや行レベルセキュリティ(RLS)、権限設定などを行います。
「レポートを発行すると同時に、セマンティックモデルもクラウド上に配置される」と認識しておくと分かりやすいです。
別レポートから再利用する手順
既存のセマンティックモデルは、別レポートから再利用できます。
手順は以下の通りです。
- Power BI Desktop から「Power BI のセマンティックモデル」を選ぶ。
- 対象のセマンティックモデルを指定すると、そのモデルをベースに新しいレポートを作成できます。

構成イメージを簡単な表にすると次のようになります。

共通モデルを軸に、目的別のレポートをいくつも増やしていく、という考え方です。
セマンティックモデルを使うメリット

モデルの再利用による開発効率向上
1つのセマンティックモデルを複数レポートで共有できるため、毎回同じモデルを作り直す必要がなくなります。新しいレポートを作る際も「既存モデルに接続してグラフを作る」だけで済むため、初期設計の手間を大きく減らせます。
また、共通メジャーを修正すれば、それを参照しているすべてのレポートに自動的に反映されます。修正漏れを防ぎやすくなる点も、再利用の大きなメリットです。
データ定義の一貫性確保
売上、利益、利益率、会員数などの指標定義がレポートごとに異なると、「どの数字が正しいのか」という議論が増えてしまいます。セマンティックモデル側でメジャー定義を一元管理することで、全レポートで同じ定義を使い回せるようになります。
数字合わせではなく、中身の議論に集中しやすくなる点が大きな価値です。
セキュリティ・アクセス権の集中管理
行レベルセキュリティ(RLS)などのアクセス制御も、セマンティックモデル側で設定できます。店舗ごと・エリアごとの閲覧範囲をモデル側で定義しておけば、レポートはそのルールを自動的に継承します。
権限設定をレポート単位で重複管理しなくてよくなるため、統制と運用の両面で負荷を下げることができます。
設計時のベストプラクティス

モデル名・テーブル名の命名規則を統一する
セマンティックモデルは長期運用が前提なので、命名を整えるだけでも後々の混乱を防げます。モデル名は「目的+対象」(例:売上分析セマンティックモデル_国内)のようにし、テーブル名も業務用語に寄せておくと、利用者が意味を把握しやすくなります。
カラム・メジャーの命名とコメント設定
カラム名やメジャー名も、利用者目線で分かりやすくすることが大切です。「~合計」「~率」など接尾辞を揃え、日本語/業務用語で統一し、重要なメジャーには簡単な説明コメントを付けておくと、現場での迷いを減らせます。
データ更新スケジュールと依存関係の管理
セマンティックモデルは複数レポートに影響するため、どのデータソースやデータフローに依存しているか、いつリフレッシュが走るかを整理しておくことが重要です。上流のデータフローやDWHの一覧と、各モデルのリフレッシュ時間帯だけでも簡単にまとめておくと、障害時の原因特定がしやすくなります。
セマンティックモデルと他機能との違い

データフローとの違い
Power BI の「データフロー」と「セマンティックモデル」は混同されがちですが、
実際には、データ処理のどの段階を担当するかが大きく異なります。

全体の流れ
外部データ
↓
データフロー(前処理・整形)
↓
セマンティックモデル(意味づけ・統一ロジック)
↓
レポート/ダッシュボード
このように、「データフローで共通の整形ロジックを作り、その結果をセマンティックモデルが参照する」という分担で設計するのが一般的です。
データセット共有との違い
従来の Power BI では「データセット共有」が一般的な運用でしたが、
現在は Fabric の登場もあり、これらは “セマンティックモデル”として整理される方向 に統合されています。
本質的な違いは名称よりも 運用思想 にあります。
セマンティックモデル運用で重要なポイント
- レポートごとにDAXやロジックをばらばらに書かない
- KPI・指標定義を“モデル側”に寄せて統一する
- すべてのレポートが同じモデル=同じ定義を参照する状態を作る
つまり、「どこにロジックを置くか」という問題であり、セマンティックモデルを中心に据えることで 分析の整合性・再利用性・保守性が飛躍的に向上します。
Fabricとの連携ポイント
Microsoft Fabric を導入している場合、セマンティックモデルは OneLake 上のデータ基盤と密接に統合される存在 になります。
Fabricと組み合わせるメリット

連携設計の基本スタンス
- 下層のデータ基盤(Fabric)にデータ管理・更新処理を集約
- 上層(セマンティックモデル)で指標定義・ロジック・アクセス制御を統一
- すべてのレポートはセマンティックモデルを参照する構造にする
このことで、「データ基盤 × BI」の一体運用 が可能になり、組織全体でのデータ活用レベルが大きく向上します。
まとめ:Power BIの“共通言語”としてのセマンティックモデル

セマンティックモデルは、Power BIにおける「共通の意味を持つデータモデル」です。1つのモデルを複数レポートで共有することで、定義の一貫性を保ちながら、開発と運用の効率を高められます。
- モデルを再利用して開発工数を削減できる
- 指標定義を一元管理し、数字の“ブレ”を防げる
- セキュリティや権限もモデル側で集中管理できる
といったメリットは、レポート数や利用者が増えるほど大きくなります。
Power BIやFabricを本格的に活用していくうえで、セマンティックモデルは欠かせない基盤です。
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