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医療費の動向調査とは?オープンデータの特徴や活用方法を解説

#オープンデータ #医療費 #動向調査

日本国民が支払っている医療費は、高齢化に伴い、年々増加傾向にあります。特に令和元年度から令和4年度にかけてはCOVID-19の流行も相まって、医療費が急増しました。 少子高齢化のピークは2045年に来ると予測されているので、今後も更なる増加が予想されます。

厚生労働省は医療費の動向を迅速に把握し、医療保険行政に反映するために「医療費の動向調査」を毎月実施しています。審査支払機関に請求された全国民の医療保険・公費負担医療分の情報に基づいているので、国民が支払っている医療費の実態を把握するのに最適です。

この記事では、医療費の動向調査の特徴について解説します。企業担当者や病院担当者におけるオープンデータの活用方法も掲載するので、ぜひ参考にしてみてください。

医療費の動向調査とは


「医療費の動向調査」とは、医療費の動向を迅速に把握し、医療保険行政の基礎資料を得ることを目的として、厚生労働省が実施している調査です。調査は毎月実施及び公開され、一年度分の結果を再集計して年度版としても公開されています。

審査支払機関で処理される診療報酬明細書

医療費の動向調査で調査されるデータは、審査支払機関で毎月処理されている患者の診療情報が詰まった診療報酬明細書です。患者が医療保険又は公費負担医療を受けた情報は、医療機関(薬局)が診療報酬明細書(レセプト)にまとめて、診療月の翌月に審査支払機関に送付しています。

審査支払機関は、受け取った診療報酬明細書の正当性を審査し、保険者に対して患者負担分以外の残りの医療費を請求しています。厚生労働省は、審査支払機関から毎月の診療報酬明細書の提供を受け、集計・分析を行っているのです。

審査支払機関の種類は、以下の2つです。何れの機関も役割は診療報酬明細書の審査及び医療費の請求・支払ですが、対象となる被保険者・保険者が異なります。

審査支払機関の種類 対象の被保険者 対象の保険者
社会保険診療報酬支払基金 社会保険の加入者 ・健康保険組合
・全国健康保険協会
国民健康保険団体連合会 国民健康保険の加入者 ・都道府県
・市町村
・国民健康保険組合

 

集計対象である概算医療費

医療費の動向調査で調査されるデータは、概算医療費と定義されています。概算医療費には、医療保険・公費負担医療分の医療費を集計したものが含まれ、労災・全額自費等の費用は含みません。

概算医療費は、国民医療費の約98%に相当する ので、医療費の動向調査の精度の高さが伺えます。概算医療費の範囲を表した図は、以下のとおりです。

図:概算医療費の範囲

医療費の動向調査の公開内容


医療費の動向調査は、月次・年次で調査が行われます。それぞれの調査結果は厚生労働省のホームページで無料公開されています。年次調査の結果は、月次調査の集計結果に基づいており、公開されている主な項目は以下のとおりです。

項目 伸び率 推移 内容
医療費 区分ごとの医療費に関する集計
受診延日数 診療報酬明細書に記録される診療実日数に関する集計
医療費総額 以下の総額に関する集計
*医科入院・医科入院外・歯科・調剤の医療費
*入院時食事療養及び訪問看護療養の費用額

 

上記項目では、制度別・診療種類別・医療機関種類別・都道府県別に直近5年度分の概算医療費が集計されています。制度別・診療種類別・医療機関種類別の内訳は、以下のとおりです。

区分 内訳
制度別 医療保険適用(75歳未満/以上)、公費
診療種類別 医科(入院/入院外)、歯科、調剤、訪問看護療養
医療機関種類別 医科(病院/診療所)、歯科(病院/診療所)、保険薬局

 

さらに、年度単位で「トピックス」として、主に以下の2つの集計結果が掲載されています。トピックスで集計される内容は年度によって異なる場合があるので、注意してください。

トピックスの集計結果 内容
病院機能別制度別医療費等の状況 病院機能別・制度別の施設数、医療費、日数、件数、推計新規入院件数、推計平均在院日数、年度平均病床数、稼働率等に関する直近5年度分の情報
医科診療所の主たる診療科別の医療費等の状況 医科診療所における医療費、受診延日数、件数、日数、施設数等に関する直近6年度分の情報

 

医療費の動向調査のオープンデータの活用方法3選


医療関連のサービスを提供している事業者は、医療費の動向調査のオープンデータを活用することで、営業利益の増加が見込めます。病院の担当者は、開設するのに最適な診療科や地域が特定できるでしょう。医療費の動向調査のオープンデータの活用方法は、以下のとおりです。

開設する診療科・都道府県の特定

これから医科診療所の開業や診療科の増設を検討している方は、医療費の動向調査を活用することで、開設すべき診療科と開業地の特定が可能です。

主たる診療科別の医療費の伸び率を見ることで、直近5年度でどの診療科の医療費が伸びているのかが分かります。また、都道府県別の医科入院外の医療費総額を見ると、医療費が多く支払われている、すなわち医療需要の高い都道府県も分かります。

診療科ごとに診療行為の単価が異なるので、診療科間での単純な医療費の比較はあまり意味がありません。しかし、同一診療科内での年度間の伸び率を診療科間で比較することで需要が高まっている診療科が特定できるのです。

サービスの広告を張り出す診療科の特定

入院外の主たる診療科別の1施設当たり受診延日数の推移を見ることで、サービス(※)の広告を張り出す医科診療所の診療科の特定が可能です。受診延日数は、診療報酬明細書に記録される診療実日数を積算したものであり、入院外における診療実日数は診療を受けた日数を指します。

※診療所に広告を貼ると利益に繋がる患者向けサービスの例は、以下のとおりです。

  • 病院予約アプリ
  • お薬手帳アプリ
  • 線虫がん検査

入院外の受診延日数が他の診療科に比べて多いということは、患者が頻繁に診療所を訪れていることを意味するわけではありません。なぜなら、診療所の数は診療科によって異なるので、診療所の数に比例して受診延日数も増えている可能性が大いにあるのです。

そこで、「1施設当たり受診延日数」を診療科間で比較することによって、診療科間の診療所の数の差を比較条件から排除した上で、患者の来院頻度が高い診療科を特定できます。

受診延日数が多い診療科に広告を張り出すことで、患者の目に広告が触れる機会を増やせます。広告が見られる回数が増えることで、営業利益の増加が見込めるでしょう。

訪問看護の人材育成地の特定

都道府県別の訪問看護療養の医療費総額によって、訪問看護の看護職を育成するための場所を特定できます。2020年の訪問看護ステーションに従事する人数は、7万人弱である一方、2025年までに13万人の看護職が必要になると言われています。

訪問看護の需要が高まるスピードに対して、訪問看護に従事する看護職の人手不足が懸念されているのが現状です。都道府県別の訪問看護療養の医療費総額を見ることで、訪問看護の需要が高まっている都道府県を特定できます。

訪問看護の需要が高まっている場所では、看護職の人材が売り手市場となります。そのため、看護職を目指すメリットは大きいです。企業担当者は、特定した場所で訪問看護の看護職を育成するための教育機関を設立したり、専門教材の営業をかけたりすることで、利益の増加が見込めます。

まとめ

医療費の動向調査は、厚生労働省が毎月実施している、医療保険・公費負担医療の医療費に関する調査です。医療費の動向調査のオープンデータでは、制度別・診療種類別・医療機関種類別・都道府県別の医療費や受診延日数の情報が、厚生労働省のホームページで公開されています。

医療費の動向調査のオープンデータを活用し、営業利益の向上に役立ててみてください。

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