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レセコン(レセプトコンピューター)とは?データの分析方法・活用法を解説

レセプトコンピュータ(以下、レセコン)は医療機関が使うコンピュータ・システムのことで、主に診療報酬明細書(レセプト)を作成するために使います。医事コンピュータと呼ばれることもあります。

つまりレセコンは事務作業を効率化するツールなのですが、これを病院やクリニックの経営に使うことができます。
レセコンには、治療データ、病気データ、患者さんデータなどが入っていて、これが経営判断やマーケティングに使えるのです。

この記事では、レセコンのデータを経営に活かそうと考えている方に向けて、まずレセコンとは何かを簡単にご説明します。
そして、レセコンのデータを医療機関の経営に活用する方法を解説します。最後まで読むことで、レセコンが持つデータを分析する利点と活用方法が理解できるでしょう。

レセコンとは?簡単に解説

レセコンとは、医療機関から保険者に患者負担額以外の診療報酬を請求する際のレセプト(診療報酬明細書)を作成するためのコンピューターシステムを指します。正式名称は、「レセプトコンピューター」ですが、「レセコン」または「医事コンピューター」とも呼ばれます。

病院・診療所・調剤薬局におけるレセコンの普及率は96%にものぼり、レセコンを使用しない紙レセプトの使用率は、わずか6%です。請求データを活用し、経営分析のためのレポートを作成する機能なども有している場合があります。

レセコンデータにおいて、経営分析に活用できるのは、住所・年齢・性別・実患者数・延患者数・初診患者数・初来院患者数・診療行為別集計などです。

医療機関によるレセコンを用いたマーケティング戦略

医療機関がマーケティングに取り組むとき、レセコン・データの分析が有益になります。なぜならマーケティングには良質な情報が必要で、レセコン・データがそれに該当するからです。

医療機関がなぜ企業の手法を導入したほうがよいのか

マーケティングとは、企業が顧客や消費者のことを調べ、顧客や消費者が望むものをつくっていく取り組みのことです。

企業は、顧客や消費者についてのデータや、売上データ、商品データ、購買データ、販売データ、市場データなどを集め、何が売れるのか、どのようにすれば売れるのか、誰に売れるのか、どれくらい売れるのかを調べています。

医療機関が、企業のビジネス手法であるマーケティングを導入したほうがよい理由は、医療界がビジネス界と同じくらい、激しい競争にさらされているからです。
マーケティングは企業の成長戦略であり生き残り策です。したがって成長戦略も生き残り策も必要とする医療機関にマーケティングの導入が推奨されるわけです。

レセコンを使ったマーケティングの目的

マーケティングの本質は、顧客や消費者のことを深く知り、ニーズを把握して、そのニーズに応えるサービスや商品を提供することです。そして最終的なゴールは、顧客や消費者に喜んでもらうことにあります。売上増や利益増はその結果にすぎません。

ここでの「顧客や消費者」を「患者さん」に置き換えたのが、医療機関のマーケティングになります。
患者さんが求める医療を提供できる医療機関は患者さんに支持されるので受診者が増えます。その結果、売上高と利益の両方が増えて経営が安定します。

レセコン・データの分析・活用方法5選

レセコンから出力される医事データを利用して経営改善に活かすことが可能です。ここからは具体的に、医療機関が経営にレセコン・データを活用する使う方法を紹介します。

レセコン・データの活用方法

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  • 自院の現状把握に役立てる
  • 患者さんのニーズを特定する
  • 増患対策を打ち出す
  • 増収・増益対策を打ち出す
  • 適切な投資先を特定する

 
1つずつ確認解説していきます。

活用方法①自院の現状把握に役立てる

医療機関がレセコン・データを活用すると、自院の現状を把握することができます。レセコン・データを分析し、診療圏、初診率と再診率、売上構成を知ることで自院の現状がみえてきます。

レセコンデータから分かる「診療圏」

診療圏とは、患者さんの居住地の分布です。医療機関の経営基盤は地域になるので診療圏の把握が経営に欠かせません。

レセコン・データを使うと、自院の患者さんが多い地域と、自院の患者さんが少ない地域がわかります。自院の患者さんが多い地域を分析すると、交通の便がよいことや広告の効果が出ていること、競合する医療機関が少ないことなどがわかるでしょう。自院の患者さんが少ない地域を分析すると、通院の障害になっている要因やPRが弱いこと、同じ診療科のクリニックが多いことなどがわかるでしょう。

診療圏がわかれば、患者さんが多い地域に広告を出してさらに患者さんを増やすこともできますし、医師が患者さんが少ない地域で講演会を開いて集患することができます。

レセコンデータから分かる「初診率と再診率」

自院の初診率と再診率がわかると自院の強みと弱みがわかります。
初診率が高い医療機関は、地域の患者さんが「困ったらとりあえずあの医療機関に行けばなんとかしてくれる」と考えている、と推測できます。または、「敷居が低いクリニックだ」と思ってもらえているかもしれません。
もしくは、初診率の高さは再診率の低さを意味するので、「通院を継続したくない」と考えている患者さんが多いのではないか、と推測することもできます。

こうした推測や仮説を立てたら、患者さんにアンケートを取ってみるとよいでしょう。その結果、「困ったらとりあえずあの医療機関に行けばなんとかしてくれる」と頼りにされているものの、「通院を継続したくない」と考えている患者さんが多いことがわかるかもしれません。
これがわかれば通院を継続してもらえるような施策を打ち出すことができます。

レセコンデータから分かる「売上構成」

レセコン・データを使うと、自院の売上構成がわかります。売上構成がわかると、どの医療サービスが売上に貢献しているかがわかります。

売上構成はさまざまな角度から調べることができます。例えば、内科クリニックであれば、治療対象となる病気が多いので、病名と売上高を比較することができるでしょう。風邪の治療の売上高、花粉症の治療の売上高、心臓関連の治療の売上高などをレセコン・データから抜き出すだけでも、自院が得意とする医療や、患者さんが自院に期待する医療などがわかります。
また病院であれば、外来の売上高と入院の売上高を比較すれば、経営課題がみえてくるはずです。

活用方法②患者さんのニーズを特定する

レセコン・データを使えば、例えば患者さんの男女比がわかります。それだけでも自院が男性患者さんに必要とされている医療機関なのか、女性患者さんに支持されている医療機関なのかがわかります。

例えば耳鼻咽喉科クリニックが患者さんの男女比を調べたところ、女性患者さんの割合が異様に高いことがわかったとします。
この場合、女性に支持されている理由と男性に敬遠されている理由の2つを調べることで、自院の強みをさらに強くして弱みを補強することができます。

また、医療機関が患者さんの属性を調べたところ、会社員男性の患者さんが少ないことがわかったとします。するとこの医療機関は、会社員男性のニーズに応えられていないことがわかります。
その対策として夜間診療を導入し、それで会社員男性が増えたら「会社員男性患者さんのニーズは夜間診療だった」ことが証明されたことになります。
レセコン・データで患者さんのニーズを推測してから対策を講じると、成功する確率が高くなります。

活用方法③増患対策を打ち出す


患者さんを増やしたいと考え、増患対策に取り組んでいる医療機関は少なくないと思います。しかし闇雲に患者さんのためになることを実施しても、患者さんに受け入れられるのは難しいでしょう。

増患対策では「この患者さんを増やしたい」とターゲットを決めて、その患者さんが求めるものを探り、それに応える策を検討していく、という過程が重要になります。
例えば、医療機関の院長が糖尿病の治療を得意にしているのに、思うように糖尿病患者さんが増えない状況にあったとします。
このときレセコン・データから糖尿病患者さんを抜き出し、そのデータを徹底的に調べます。その結果、継続した治療が必要なのに来院が止まってしまう糖尿病患者さんが意外に多いことがわかったとします。
その場合、通院を継続してもらうためのアプローチを増やせば、糖尿病患者さんを増やすことにつながるでしょう。

活用方法④増収・増益対策を打ち出す

増収・増益対策と聞くと、それこそ「儲け主義なのではないか」と感じるかもしれませんが、経営を安定させ、医師や看護師、スタッフの給与を増額し、人員を増やし、機器や設備を更新するには、増収増益が不可欠です。

増収とは売上高を増やすことであり、増益とは最終利益を増やすことです。
そのため、増収が達成できてもコストも増えていれば最終利益は増えません。
また利益率が高い医療サービスを提供していれば、売上高が少なくても最終利益を増やすことができます。

したがって増収を狙うのか、増益を狙うのか、または増収・増益の両方を狙うのかは、医療機関の経営者の考え方次第となります。

増収を狙うのであれば、レセコン・データで1件の単価が高い医療サービスを探し、その患者さんを増やすようにします。
増益を狙うのであれば、レセコン・データで1件の単価と、その治療にかかった費用を割り出して利益率を算出し、利益率が高い医療サービスを使う患者さんを増やすことを目指します。

活用方法⑤適切な投資先を特定する


提供している医療の内容が変わったわけでも、医療事故を起こしたわけでも、地域の人口が急減したわけでもないのに、売上高が長期にわたって少しずつ減ることがあります。
売上が減少する原因は、みえにくくなっていることはありますが、必ず存在します。レセコン・データを分析するとその原因がわかることがあります。

例えば、長年地域に愛されてきたクリニックがレセコン・データを分析したところ、若い患者さんが減っていることがわかったとします。その場合、建物の古さが若い人に敬遠されているのかもしれません。

また、1人の医師が退職したところ、その医師が受け持っていた患者さんの多くが来院しなくなっていたら、その医師が提供していた医療を提供できなくなっている可能性があります。医師が担当する患者さん名もレセコン・データでわかります。

こうしたことがわかれば、建物のリフォームや建て替え、評判のよい医師の採用といった新たな投資戦略を考えることができます。

まとめ|レセコンとは経営に活用できる重要な情報源

この記事の内容を箇条書きでまとめます。

  • 医療機関も経営の安定化にはマーケティングが必要になる
  • マーケティングに取り組むには精度の高いデータが必要で、医療機関ではそれがレセコン・データになる
  • レセコン・データには、1)自院の現状を把握する、2)患者のニーズを特定する、3)増患対策を打ち出す、4)増収・増益対策を打ち出す、5)投資先を特定する、といった活用方法がある

 
レセコン・データは、費用もかからず、自院の経営改善に活用することができます。ぜひ、この記事で紹介した活用方法を参考にしてみてください。

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