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Power BIのフィルター設定とは CALCULATE関数の使い方と注意点を分かりやすく解説

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Power BIでDAXを活用する際、最もよく使われる関数のひとつがCALCULATEです。しかし、便利だからこそ「思った値が出ない」「スライサーが効かない」といったトラブルに悩む方も多いのではないでしょうか。

例えば、

  • 「CALCULATEを使ったらスライサーが無視されてしまった」
  • 「集計結果が合わない原因が分からない」

といったケースは典型的なつまずきポイントです。その理由は、CALCULATEが「コンテキスト(文脈)」を操作する特別な関数だからです。
コンテキストの理解が不足したまま使うと、外部フィルターを上書きしてしまったり、意図しない結果を返すことがあります。

本記事では、CALCULATEの仕組みと注意点を整理し、正しく使うための考え方を解説していきます。

読み終わるころには「なぜその値になるのか」を理解し、安心してCALCULATEを使えるようになるはずです。

CALCULATE関数の概要

基本構文

CALCULATE関数は、DAXの中でも特に重要な関数であり、「コンテキストを操作できる唯一の関数」といわれます。
基本構文は以下のとおりです。

  • :評価したい計算式(例:SUM、COUNTなど)
  • :適用するフィルター条件。1つ以上指定可能

役割はシンプルで、「計算式を評価し、指定したフィルターを適用する」 ことにあります。

典型的な利用例

  • 特定商品だけの売上を集計する
  • 特定期間だけの合計を算出する

例えば、Power BI公式サンプルデータ「Sales」を使って、商品が「A」の売上を計算する場合は以下のように記述できます。

このメジャーをテーブルビジュアルに配置すると、「Product=A」の売上だけを集計して表示することができます。

CALCULATEは、単に条件を追加するのではなく、既存のフィルターコンテキストを上書きするのが特徴です。
そのため、スライサーなどの外部フィルターが無視される場合があり、これが初心者や中級者にとって大きなつまずきとなります。

Power BIにおけるコンテキストとCALCULATE関数の関係

コンテキストの種類

Power BIにおける計算結果は、コンテキスト(文脈) によって変わります。
CALCULATEを正しく理解するためには、まずこのコンテキストの違いを押さえておく必要があります。

行コンテキスト

各行に対して評価される文脈です。
例えば、以下のように SUMX で1行ずつ計算する場合に適用されます。

このとき、Sales[Quantity] や Sales[UnitPrice] は「その行の値」として評価されます。

フィルターコンテキスト

ビジュアルのスライサーやページレベルフィルターなど、外部から与えられる条件の文脈です。
例えば「Product=Aだけを表示する」という条件は次のように書けます。

この場合、Product=A がフィルターコンテキストとして作用し、「Aの売上」だけが返ります。

CALCULATEがコンテキストに与える影響

CALCULATE関数は、指定したフィルターを既存のフィルターコンテキストに追加または上書きします。
この挙動により、以下のような現象が起こります。

  • 外部で指定したスライサーやフィルターが無視される
  • 新しいフィルターによって、元々のコンテキストが完全に置き換わる

その結果、「スライサーでBを選んでいるのに、CALCULATEでAを指定したためAの値が返る」といったケースが発生します。

コンテキスト変換の注意点

さらにCALCULATEの内部では「行コンテキストがフィルターコンテキストに変換される」という仕組みがあります。この仕組みは初心者・中級者が特につまずきやすい部分です。
例:CALCULATE(SUM(Sales[Sales]), Sales[Quantity] > 1)
このとき、Sales[Quantity] > 1 という「行ごとの条件」が フィルターコンテキスト として評価され直します。
この仕組みを理解していないと「思った通りのフィルターが効かない」と感じやすくなります。

まとめポイント

  • CALCULATEはフィルターコンテキストを操作する特殊な関数
  • 行コンテキストはCALCULATE内でフィルターコンテキストに変換される
  • 仕様を知らないと「外部フィルターが無視された」と誤解しやすい

CALCULATEでよくあるつまずき

パターン1:外部フィルターが無視される

CALCULATEを使うと、外部のスライサーやビジュアルで指定した条件が無視されることがあります。
例として、以下のように「Product=A」の売上を計算するメジャーを作成します。

このメジャーをテーブルに配置すると、スライサーで「Product=B」を選んでも「Product=A」の売上が返されます。

これはCALCULATEが「外部コンテキストを上書きし、Product=Aで固定」しているためです。

パターン2:FILTER関数との組み合わせで混乱

次に、FILTER 関数を使った例です。

この式は「数量が1より大きい売上」を返しますが、動作の仕組みは直感的ではありません。

FILTER 内の Sales[Quantity] > 1 は「行コンテキスト」で評価され、
それが「フィルターコンテキスト」に変換されてからCALCULATEに渡されます。
このコンテキスト変換を理解していないと、なぜその結果になるのか混乱してしまいます。

よくある誤解まとめ

  • CALCULATEはフィルターを「追加」するのではなく「上書き」することがある
  • FILTERを組み合わせると「行コンテキスト→フィルターコンテキスト変換」が発生する
  • この仕組みを理解していないと「スライサーが効かない」「意図しない値が出る」と感じやすい

CALCULATEを正しく使うための注意点

CALCULATEは非常に強力ですが、仕組みを理解せずに使うと「値が合わない」「フィルターが効かない」といった誤解につながります。
ここでは正しく活用するための注意点を整理します。

「上書き」と「追加」の違いを理解する

CALCULATEで条件を指定した場合、その条件は外部のフィルターを 上書き するのか、追加 されるのかを理解しておく必要があります。

上書きの例

外部で「Product=B」を選んでいても、Product=Aで固定されます。

追加の例

複数条件を組み合わせる場合は追加的に作用することもあります。

KEEPFILTERSを活用する

外部フィルターを残したまま条件を指定したい場合には、KEEPFILTERS を利用します。

この場合、「スライサーでProduct=Bを選んでいる」かつ「Product=A」
という条件が両方適用されるため、結果は空白(該当なし)になります。

これにより、「外部フィルターも尊重した形」で制御できます。

FILTERで柔軟な条件指定を行う

複雑な条件を指定する場合は、FILTER を明示的に使うのが有効です。

このようにすると「金額が1000を超える売上だけを集計」といった条件を自在に指定できます。

開発時のチェック方法

  • スライサーやフィルター条件を変えて値の動きを確認する
  • VARを使ってメジャーを段階的に分解し、途中の値を確認する
  • 意図通りに動かない場合は「フィルターが上書きされたのか/追加されたのか」を疑う

Power BI CALCULATE関数の使い方まとめと注意点


CALCULATE関数は、Power BIで集計や条件付き分析を行ううえで欠かせないDAX関数です。
最大の特徴は「フィルターコンテキストを操作できる唯一の関数」であり、商品別・期間別の分析や複雑な条件付けも柔軟に実現できます。しかし、仕組みを理解しないまま使うと「スライサーが効かない」「値が意図通りにならない」といったトラブルを招きがちです。これはCALCULATEが外部フィルターを上書きしてしまう仕様が原因です。
本記事で解説したポイントを振り返り、最後に チェックリスト形式 で注意点を整理します。

CALCULATE関数を使うときのチェックリスト

  • フィルター上書きの仕組みを理解しているか
  •   → 外部スライサーや条件が効かないときは、上書きの仕様によるものかを確認

  • 外部フィルターを残す場合はKEEPFILTERSを使っているか
  •   → 外部条件を消さずに追加条件を適用したいときに有効

  • FILTER関数を適切に活用できているか
  •   → 複雑な条件や範囲指定はFILTERを併用することで対応可能

  • メジャーを分解して検証しているか(VARを活用)
  •   → 中間値を確認しながら挙動を理解することができる

まとめポイント

  • CALCULATEは「コンテキストを操作する」特別な関数
  • 値が想定通りにならないのは仕様による場合が多い
  • KEEPFILTERSやFILTERを組み合わせれば、柔軟かつ意図通りの集計が可能
  • 「なぜこの結果になったのか」を説明できるようになることが、CALCULATEを使いこなす第一歩

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