医師・歯科医師・薬剤師統計とは?オープンデータの特徴や活用方法を解説
目次
現在の日本は超高齢化社会であり、75歳以上の人口は2054年まで継続的に増加すると予想されています 。高齢になればなるほど医療機関の需要は高まるので、高齢化に伴い、医師や薬剤師の増員が必要になるでしょう。
日本における医師・歯科医師・薬剤師の数は年々増加傾向にあり、令和2年度においては全国で約77万人の医師・歯科医師・薬剤師が従事しています。 医療需要に見合った医師・薬剤師数が確保できているかを定期的に監視するために、厚生労働省が公表している「医師・歯科医師・薬剤師統計」は貴重な情報源となり得ます。
この記事では、医師・歯科医師・薬剤師統計のオープンデータの特徴について解説します。企業担当者や病院担当者がオープンデータを有効活用するための方法も掲載しますので、ぜひ参考にしてみてください。
医師・歯科医師・薬剤師統計とは
厚生労働省が2年に1度実施する「医師・歯科医師・薬剤師統計」とは、全国の医師、歯科医師及び薬剤師の性、年齢、業務の種別、従事場所及び診療科名等による分布を明らかにする調査です。厚生労働行政の基礎資料を得ることを目的としています。調査の概要として、以下の3つの項目について、見ていきましょう。
- 統計の背景
- 統計の集計対象
- 統計内で使用される用語
統計の背景
医師・歯科医師・薬剤師統計は、平成28年までは「医師・歯科医師・薬剤師調査」として実施されていました。昭和23年の医師法及び歯科医師法施行、昭和29年の薬事法改正、昭和35年の薬剤師法制定などにより、医師、歯科医師、薬剤師から提出された各届出票に基づいて、集計並びに公表しています。
また、昭和57年の行政事務簡素合理化法により、届出は2年に1回行うことが定められました。平成30年からは、一般統計調査である「医師・歯科医師・薬剤師調査」を中止し、公的統計である「医師・歯科医師・薬剤師統計」として改定されました。
統計の集計対象
医師・歯科医師・薬剤師統計で集計される対象者は、日本国内に住所がある以下の何れかに該当する者です。該当者は、届出票を保健所、都道府県等を経由して厚生労働大臣に提出します。
- 医師法第6条第3項により届け出た医師
- 歯科医師法第6条第3項により届け出た歯科医師
- 薬剤師法第9条により届け出た薬剤師
届出票の提出期限は、調査年の12月31日から翌年1月15日までです。届出票には集計対象項目として、住所、性別、生年月日などの基本情報から、主たる業務内容や従事する診療科名といった詳細な内容まで記載されています。
統計内で使用される用語
医師・歯科医師・薬剤師統計の公開内容を正確に理解するためには、統計内で使用されている用語の定義を理解する必要があります。統計内で使用されている主な用語は、以下のとおりです。
用語 | 定義 |
病院 | ・医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所 ・患者 20 人以上の入院施設を有するもの |
医育機関 | 学校教育法に基づく大学等において、医学や歯学の教育を行う機関 |
診療所 | ・医師又は歯科医師が医業又は歯科医業を行う場所 ・患者19 人以下の入院施設を有するもの(患者の入院施設を有しないものも含む) |
介護老人保健施設 | ・介護保険法による都道府県知事の開設許可を受けている ・入所する要介護者に対して、施設サービス計画に基づき、看護・医学的管理下における介護及び機能訓練やその他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設 |
介護医療院 | ・介護保険法による都道府県知事の開設許可を受けている ・主として長期にわたり療養が必要である要介護者に対して、施設サービス計画に基づき、療養上の管理・看護・医学的管理下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設 |
医師・歯科医師・薬剤師統計の公開内容
厚生労働省のHPで無料公開される「医師・歯科医師・薬剤師統計」のオープンデータの内容は、医師・歯科医師・薬剤師ごとに資料が分かれており、それぞれ以下の2つの項目で構成されています。
- 施設・業務の種別にみた人数
- 薬局・医療施設に従事する人数
それぞれ詳しく見ていきましょう。
施設・業務の種別にみた人数
主に従事している施設・業務の種別ごとの人数が集計されています。直近2回分の集計結果を比較し、増減数や増減率を割り出すことで、人数がどの程度増減したのかが可視化しやすくなっているのが特徴です。
集計単位である施設・業務の種別の主な例を紹介します。
施設 | 業務の種別 |
介護老人保健施設の従事者 | ・開設者又は法人の代表者 ・勤務者 |
医療施設・介護老人保健施設・介護医療院以外の従事者 | ・医育機関の臨床系以外の大学院生 ・医育機関の臨床系以外の勤務者 ・行政機関・産業医・保健衛生業務の従事者 |
医薬品関係企業の従事者 | ・店舗販売業に従事する者 ・配置販売業に従事する者 |
薬局・医療施設に従事する人数
「施設・業務の種別にみた人数」の集計対象施設の一つである「薬局・医療施設の従事者」に関するより詳細な集計内容です。集計項目は医師・歯科医師・薬剤師ごとに異なり、それぞれ下記の項目で構成されています。
集計項目 | 集計対象者 | 概要 |
性・年齢階級別にみた人数 | 医師 歯科医師 薬剤師 |
10歳ごとの年齢階級別の医師数・歯科医師数・薬剤師数 |
施設の種別にみた人数 | 医師 歯科医師 薬剤師 |
診療所・病院・医育機関附属の病院ごと又は薬局・医療施設ごとの医師数・歯科医師数・薬剤師数 |
都道府県(従業地)別にみた人口10万対人数 | 医師 歯科医師 薬剤師 |
47都道府県ごとの医師数・歯科医師数・薬剤師数 |
診療科別にみた人数 | 医師 歯科医師 |
主として従事している診療科ごとの医師数・歯科医師数 |
取得している広告可能な医師の専門性に関する資格名別にみた人数 | 医師 歯科医師 |
専門医資格や麻酔科の標榜資格ごとの医師・歯科医師数 |
医師・歯科医師・薬剤師統計のオープンデータの活用方法3選
OECD(経済協力開発機構)が公表している人口1000人あたりの医師数 では、2.49人という世界の中でも最下位に近い数値となっています。
医師・歯科医師・薬剤師統計のオープンデータを活用することで、企業や病院の利益を生むだけでなく、日本の課題である医師不足の解決に繋がり、高齢化による医療需要の高まりに備えた体制の整備にも寄与できることでしょう。
開設候補となる医師数不足の診療科選定
当オープンデータの「診療科別にみた人数」により、医師数が少ない診療科を特定できます。さらに、厚生労働省が公表している「必要医師数実態調査」の「診療科別現員、必要医師数」の内容 も踏まえると、医師数が少ない診療科において、将来どの程度の人数が必要になるのかが分かるのです。
したがって、既に開業している医療機関では増設する診療科、開業予定の医療機関では開設する診療科の選定に役立ちます。また、将来的に需要が高まる診療科に関する専門知識を養う教育機関の設立にも活用できるでしょう。
開業医における医療機関設立地域の特定
「都道府県(従業地)別にみた人口10万対人数」を用いることで、医師数が不足している都道府県を男女別に特定できます。産婦人科などの一部の診療科では、女性医師の診察を求める患者様も一定数存在するでしょう。
全体で見た医師数が不足している都道府県、さらには開業予定者の性別の医師数が不足している都道府県を特定することで、医療の供給が追いついていない地域に開業することが可能です。
医師数の多い施設・業務の種別に向けた商品開発
「施設・業務の種別にみた医師数」では、医療に関する施設・業務の種別ごとの医師数が分かります。医療に関する読み物や専門知識習得のための教材の販売を検討している企業担当者は、購買者のターゲットの設定に役立ちます。
例えば、令和2年度の集計結果 (※1)では、「病院の勤務者」「診療所の開設者又は法人の代表者」の医師数が多いことが分かりました。
※1 令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況/結果の概要/1医師
したがって、病院に勤務する医師に向けた医療雑誌の販売や、診療所の開設に向けたノウハウを紹介するWEBサイトの開設などによって、需要の高い医師の種別に的を絞った商品戦略が立てられるのです。
まとめ
医師・歯科医師・薬剤師統計は、全国の医師、歯科医師及び薬剤師の性、年齢、業務の種別、従事場所及び診療科名等による分布を明らかにする調査です。厚生労働省のHPでオープンデータが無料公開されており、どなたでも活用できます。
医師不足に陥っている地域・診療科や医師数が多い業務種別を特定し、医療機関・診療科の開設や自社サービスに役立ててみてください。
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