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地方自治体における医療オープンデータの取り組み状況は?公開データも紹介

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国や地方自治体が保有するデータを、国民誰もが二次利用できるように加工し公開されたオープンデータ。その中でも医療に関するオープンデータは、患者が病院を選ぶ上での判断材料や医療の質向上のための施策策定など、様々な場面で活用されています。

政府を筆頭に医療オープンデータ公開への取り組みは、地方自治体にも着実に広がっています。令和5年3月時点で、地方自治体のオープンデータへの取組率は全国79%です。

この記事では、医療オープンデータの活用を考えている企業担当者や病院担当者に向けて、地方自治体の医療オープンデータ事業への取組状況を解説します。最後まで読むことで、各自治体の医療オープンデータの公開状況や実際のデータの中身を理解できます。

医療オープンデータとは


医療オープンデータとは、インターネットを通じて公開された医療分野に関する国民の膨大なデータのことです。医療オープンデータは、誰でも二次利用が可能なので、申請や審査を必要としません。厚生労働省がホームページで公開している医療オープンデータの代表例として、以下が挙げられます。

  • 患者調査
  • 人口動態統計
  • 国民生活基礎調査
  • 病床機能報告
  • NDB
  • DPCデータ
  • 診断群分類データ

その中でも、医療オープンデータとして最大規模を誇る「NDBオープンデータ」は、2021年時点で年間で約44万回のアクセスを記録し、数々の利活用事例が報告されています。医療オープンデータに含まれている情報の例は、以下のとおりです(図1)。

図1:医療オープンデータに含まれている情報

 

政府が地方自治体のオープンデータ公開を後押しする背景

政府は、2015年に「地方公共団体オープンデータ推進ガイドラインと手引書」を公開し、2016年に「官民データ活用推進基本法」を策定しすることで、国及び地方自治体がオープンデータの公開に取り組むことを義務付けました。オープンデータが公開されることによって、政府は次に示す効果を期待しています。

  • 現代社会の諸課題の解決
  • 経済の活性化
  • 行政の高度化や効率化

地域の諸問題を解決するためには、国民や民間企業とも連携を取り合い、地域の目標として掲げることが重要です。地方自治体が公開したオープンデータを積極的に民間企業が事業に活用することによって、新たな価値が創出され、経済の活性化も見込めます。

また、オープンデータ事業への取り組みは、必ずしも行政の負荷を増大させるものではありません。中長期の視点でみると、電子化が促進されることによって、行政業務の効率化にも繋がるのです。

自治体の取り組みを推奨する「自治体標準オープンデータセット」


 
地方自治体が独自に公開したオープンデータには、「欲しいデータが見つからない」「データの形式がバラバラでまとめられない」などの課題がありました。

政府はそれらを解決するべく、地方自治体に公開を推奨するデータや、そのデータを公開するにあたり参考にすべきルールやデータフォーマットを定めたのが「自治体標準オープンデータセット」です。

実際にニーズの高い分野から選定された、公開が推奨されている医療分野に関するオープンデータを2つご紹介します。

受診可能な病院検索「医療機関一覧」

病院や診療所の施設に関する情報を一覧化したオープンデータです。厚生労働省は、医療機能情報提供制度によって、医療機能に関する情報の提供を全国の医療機関に求めています。その医療機能の更新のタイミングで、「医療機関一覧」も更新するよう想定しています。

医療機関一覧をオープンデータとして公開し、診療科情報や位置情報、移動手段などを組み合わせることで、受診可能な医療機関がスムーズに検索可能です。

心肺停止時に活用「AED設置箇所一覧」

心肺停止した方と遭遇した場合、迅速にAEDによる電気的除細動を行う必要があります。AEDは学校や駅などの公共施設に設置されていますが、見つけるのが少しでも遅れてしまうと、命を落としてしまう事態になりかねません。

「AED設置箇所一覧」はAEDごとに設置場所を一覧化したオープンデータです。AEDの新規設置・撤去・場所の変更が発生したタイミングで更新することが求められます。

AEDの設置箇所をオープンデータとして公開し一元管理することで、アプリ上で近くにあるAEDをマップからすぐに検索することができます。

地方自治体の医療オープンデータ取組状況


 
令和5年3月時点で全国の地方自治体のオープンデータへの取組率は、1,415/1,788自治体の約79%です。地方自治体が公開した医療オープンデータを民間企業や医療機関で活用することにより、企業内部での成長戦略や、医療ニーズの分析などに活用できます。

それでは、地方自治体が医療オープンデータに関してどのような取り組みを行っているのか、オープンデータ事業が盛んな都市を抜粋してご紹介します。

【横浜市】医療施設に関する詳細情報を網羅


 
横浜市のオープンデータは「横浜市オープンデータポータル」で公開されています。横浜市が公開している医療オープンデータは次の通りです。

データセット名 内容
医療施設の病床数 横浜市内の各区における「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」ごとの病床数を集計している
横浜市内の病院・一般診療所・歯科診療所名簿 横浜市内の医療機関(病院・一般診療所・歯科診療所)に関する施設名称、所在地、電話番号、診療科目、精神、感染症、結核、療養、一般、開設者名、管理者名、開設年月日、備考
横浜市内の薬局、医薬品販売業者、高度管理医療機器等販売業・貸与業者、再生医療等製品販売業者 名簿 横浜市内の薬局や医療品の販売業者に関する業種、業種補足、名称、所在地、店舗電話番号、開設者、有効期間満了日

 

【京都市】ブラウザ上の見やすさも工夫された医療情報

京都市では、政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPI機能を活⽤し、ブラウザ上で各区町村のデータをグラフや表の形式で表⽰するアプリを公開しています。

さらに、京都市が保有する統計情報、観光関連情報などの公共データを、市民が二次利用しやすい形で公開することで、地域の活性化を目指します。
 

 
京都市のオープンデータは、京都市オープンデータポータルサイト「KYOTO OPEN DATA」で公開されています。京都市が公開している医療オープンデータは次の通りです。

データセット名 内容
医薬品医療機器等法に基づく許可施設の一覧 薬局や薬局製剤の製造業者に関する許可番号、名称、所在地、開設者氏名(法人にあっては、名称)、許可有効期間
病院・診療所・助産所・歯科技工所の一覧 病院、診療所、助産所を患者が選択するにあたって、必要な情報が容易に得られるよう、各医療機関の情報を掲載している。さらに、正式な開設の手続きを行った歯科技工所情報も一覧化している。

 

【大阪市】グラフやマップへ可視化された医療情報

最先端ICT都市を目指して積極的にオープンデータを公開している大阪市は、オープンデータだけでなく、民間企業の活用事例も掲載しています。公開されるオープンデータは、機械判読性の高いデータに限定されているので、二次利用のしやすさに重きを置いている自治体と言えるでしょう。
 

 
大阪市は、オープンデータ専用サイト「大阪市オープンデータポータルサイト」を開設しています。グラフやマップを用いることで、視覚情報から地域の実態を把握できます。大阪市が公開している医療オープンデータは次の通りです。

データセット名 内容
生活習慣病の状況 大阪市国民健康保険特定健康診査の受診者数、メタボリックシンドローム基準該当者・予備群該当者数、悪性新生物の部位別死亡者数、がん検診受診者数受診率、年代別有病者数(高血圧症・脂質異常症・糖尿病)
歯科技工所一覧 無資格者による歯科技工業務や無届による営業を防止するため、開設届等を行っている歯科技工所情報(施設名称、施設住所、施設電話番号)を掲載している
救急安心センター年報 大阪市の救急医療に関する着信件数、医療機関案内科目別案内数、年齢区分別救急医療相談件数、症候別プロトコル使用件数、プロトコル判定結果と平均相談時間

 

【大分市】BODIK ODCSへの参加でデータ数が急増化

大分市内のオープンデータ事業への取組率は、2023年2月の調査によって100%(18/18自治体)であることが分かりました。大分市では、次の3つの目的を持って、2018年に各種公共データをオープンデータとして公開しています。

  • 透明性・信頼性を向上させる
  • 市民協働を推進する
  • 経済を活性化する


 
そして大分市は、オープンデータ掲載等の専用サイト「BODIK ODCS」に参加し、「大分市オープンデータカタログサイト」の運用を開始しました。大分市オープンデータカタログサイトでは、全1,500件以上もの膨大なデータを公開しています。大分市が公開している医療オープンデータは次の通りです。

データセット名 内容
後期高齢者医療制度医療給付状況 後期高齢者医療制度による年度平均被保険者数、療養給付費、療養費、高額療養費の給付件数と給付額
在宅医療と介護に関する資源リスト 各医療機関(病院・診療所)が実施している在宅診療医、在宅歯科診療医、、在宅医療支援薬局、訪問看護ステーション、訪問リハビリテーション、栄養ケア・ステーション、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、訪問入浴看護事業所、地域包括支援センターの情報

 

【福岡市】起業家や民間企業の活用が期待されたデータ集

福岡県が運営しているオープンデータサイトのデータセット数は、1,886件にも上ります。参加自治体の中でも、アプリ開発・サイト構築を行う企業や起業家が活用しやすいデータ提供を目的に、オープンデータを公開しているのが、福岡市です。
 

 
福岡市は、独自のオープンデータ専用サイト「福岡市オープンデータ」を開設しています。医療機関が検索できるアプリや感染症の流行警告アプリなど、活用事例も掲載されているのが特徴です。福岡市が公開している医療オープンデータは次の通りです。

データセット名 内容
福岡市 医療機関数 日常生活圏域別、診療科別に医療関数が集計されている
福岡市 歯科技工所一覧 福岡市内で営業中の歯科技工所に関する施術所名称、施術所郵便番号、施術所所在地、施術所電話番号、開設年月日、開設者氏名、開設者住所、開設者電話番号
救急安心センター年報 地域包括ケアシステムの構築に向けた福岡市保険外サービス情報提供サイト「ケアインフォ」に登録された事業所の情報(団体等の名称、郵便番号、所在地、電話番号、HP、生活援助、身体介護、無料送迎、有償運送、商品配送、見守り、配食等)

 

【札幌市】札幌市ICT活用戦略に基づいた事業推進


 
さらに、2018年には札幌市民が気軽にデータに触れられるよう、プラットフォームを活用できる場として、「DATASMART CITY SAPPORO」を開設し、オープンデータを公開しています。札幌市が公開している医療オープンデータは次の通りです。

データセット名 内容
性感染症定点把握の感染症 各週各区の指定届出機関で性感染症を診断された患者の報告数
国民健康保険状況 加入世帯数、加入人員、医療給付件数(総数)、医療給付件数(療養給付費)、医療給付件数(療養費)、医療給付額(総額)、医療給付額(保険者負担金)、医療給付額(一部負担金)、医療給付額(他法負担分)、その他の支給額
札幌市内の医療機関一覧 札幌市の医療機関に関する名称、名称_カナ、医療機関の種類、住所、方書、緯度、経度、電話番号、法人の名称、診療科目、病床数、備考

 

まとめ|広がる地方自治体の医療オープンデータへの取り組み

全国の地方自治体における医療オープンデータの取組率は年々、上昇傾向にあります。さらに近年は、国と地方自治体が連携することにより、オープンデータの公開サイトを一元化するなどの取り組みが行われています。これによって、国民や民間企業は医療オープンデータの検索がしやすくなり、二次利用がより広がっていくことが期待されます。

この記事で紹介した地方自治体の取組状況や公開データを参考にし、ぜひ企業の施策策定や病院の経営改善のためのニーズ分析などに活用してみてください。

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