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標準化レセプト出現比(SCR)とは?オープンデータの特徴や活用方法を解説

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厚生労働省が公開するNDBを用いて算出された標準化レセプト出現比(SCR)は、診療行為や薬剤の算定回数の地域差を明らかにするデータです。その地域の医療機関がどの程度の水準の医療を提供しているかが判断できます。

SCRの元になるNDBは、全国から集まるレセプトの9割以上が集約されている、日本の医療分野屈指の母数を誇るビッグデータです。そのため、SCRに基づく分析は精度が高く、企業の利益向上に貢献してくれる有用な情報となるでしょう。

この記事では、標準化レセプト出現比(SCR)について解説します。標準化レセプト出現比(SCR)のデータの中身や企業における活用方法も掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。

標準化レセプト出現比(SCR)とは


内閣府が無料で公開している標準化レセプト出現比(SCR:standardized claim-data ratio)とは、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のレセプトに出現する診療行為や薬剤の件数を、年齢構成の違いを調整して指数化したスコアのことです。

SCRは、医療機関の所在地をベースに、こちらの式で算出されます。

SCR =(Σ 性・年齢階級別レセプト実数 / Σ 性・年齢階級別レセプト期待値)× 100
=(Σ 性・年齢階級別レセプト数 × 100)/ X
X = Σ 性・年齢階級別人口 × 全国の性・年齢階級別レセプト出現率

SCRの特徴は、以下のとおりです。

  • SCR=100が全国平均の医療提供状況を示す
  • 人口規模と年齢構成の差を除外して地域間で比較できる
  • 分母の人口データは、その地域の人口を表す
  • 分子のレセプト数は、その地域の医療機関で算定されたレセプト数を表す
  • SCRはレセプト数に基づいており、回数や数量ではない

東北大学藤森教授より内閣府に提供されたSCRデータが、内閣府の公式ホームページで年度単位で公表されています。

SCRの算出に用いられる「NDB」とは

NDBとは、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて厚生労働省が管理するデータベースです。NDBには、医療機関が保険者に対して診療報酬を請求する際に作成する「レセプト情報」と、検診機関が作成する「特定健診・特定保健指導情報」が含まれています。

SCRを算出する際にも使用されるレセプト情報は、全体の9割を超える約20億のデータがNDBに集約されています。レセプトは、診療を受けた患者の傷病名や診療行為、点数などの詳細な情報が記載されているため、日本の医療の実態を把握する上で有用な情報源と言えるでしょう。

SCRの集計対象

SCRの集計対象となるのは、NDBにおける下記条件に該当するレセプトデータです。

  • 点数表は、医科(外来/入院)、DPC、調剤
  • 紙レセプトの患者分は含まれない
  • 公費単独(生活保護等)の患者分は含まれない
  • 審査支払機関で査定されている
  • 再審査請求分は含まれない
  • DPCレセプト内のC Dレコードも含まれる
  • 傷病名「疑い」は含まれない
  • 未コード化病名は含まれない

実際に医療が提供されたレセプトの全量を対象にしているわけではなく、あくまでも保険者に診療報酬を請求し、審査に通過して支払が行われたレセプトを対象にしています。

標準化レセプト出現比の内容


SCRは、内閣府の公式ホームページにてEXCEL/CSV形式で提供されている他、tableau publicを用いてグラフや地図による可視化も行われています。実際にデータを取り込んで独自に分析する場合には、EXCEL/CSV形式が最適です。一方で、条件で絞り込んで、視覚的に判断したい場合には、グラフや地図を利用すると良いでしょう。

内閣府の公開データ

SCRは都道府県別、二次医療圏別、市区町村別に以下の15項目で構成され、内閣府の公式ホームページでEXCEL/CSV形式で公開されています。それぞれの項目の内容は、入外区分(入院/外来/入院・外来)別に集計されているのが特徴です。

項目名 内容
診療行為区分 診療行為の区分番号ごとのSCR
診療行為特別集計 外来受診、入院料の区分番号ごとのSCR
診療行為枝番 診療行為の区分番号・枝番ごとのSCR
診療行為項番 診療行為の区分番号・枝番・項番ごとのSCR
診療行為コード 診療行為の区分番号・枝番・項番・診療行為コードごとのSCR
薬剤薬効2桁 薬効分類コードの先頭2桁ごとのSCR
薬剤薬効3桁 薬効分類コード(3桁)ごとのSCR
薬剤薬効4桁 薬効分類番号(4桁)ごとのSCR
薬剤薬効7桁 薬効分類番号と投与経路および成分を合わせた7桁ごとのSCR
傷病分類(主病名) ・出来高レセプト:主傷病フラグのある傷病名ごとのSCR
・DPCレセプト:最も医療資源を投入した傷病名ごとのSCR
傷病分類(全病名) 重み付けを行わずに集計した全傷病名ごとのSCR
癌の化学療法 五大癌(※)の病名に使用されている化学療法剤ごとのSCR
癌の放射線治療 五大癌(※)の病名に適用されている放射線治療ごとのSCR
調剤管理料まとめ 調剤管理料の大分類ごとのSCR
調剤管理料コード 調剤管理料コードごとのSCR

※:乳癌、大腸癌、肝癌、肺癌、胃癌
 

BIツールによる可視化

SCRを提供している東北大学の藤森教授が、BIツールのtableau publicを用いて、SCRを可視化しています。図1を例に取ると、入外区分・章・診療行為でフィルターをかけた条件に合致するSCRが、棒グラフと日本地図上に色別に可視化されるようになっています。


図1: R03都道府県別診療行為

日本地図や棒グラフに表示されたSCRのうち、特に注目したい項目にカーソルを合わせることで、SCR値や属性をポップアップ表示させることも可能です。ただし、内閣府のホームページに掲載されているSCRの項目が全て可視化されているわけではありません。

年度によって可視化される対象の項目は異なるので、注意してください。

標準化レセプト出現比の2つの活用方法


SCRが優れているのは、地域間の年齢・人口構造の差を取っ払って比較できる点にあります。言い換えると、全ての地域で同じ年齢の方が、同じ人数住んでいると仮定した数値で、比較を行えるのです。

したがって、SCRは地域の医療提供の水準を評価するのに最適なデータと言えます。企業におけるSCRの主な活用方法は、以下のとおりです。

癌診療の提供体制が薄い地域の選定

日本人の死亡原因の第一位である癌は、全国のどこでも質の高い治療を提供できることが求められます。SCRから癌治療の体制が薄い地域を選定することで、癌治療の提供を検討している開業医に向けて、最適な開業先を提案することが可能です。

また、SCRでは主要な癌の種類別に、都道府県・二次医療圏・市区町村ごとの診療水準を評価できます。地域の中でも、診療の提供数が少ない癌の種類や診療行為、化学療法剤を細かく特定でき、それが地域の癌治療に求められている診療内容です。

在宅医療が浸透していない地域へのIT化促進

少子高齢化が進行し、医療資源の枯渇が危惧される日本において、在宅医療の浸透は国が推進している事業でもあります。在宅医療にかかる下記のような診療行為のSCRを抽出することで、在宅医療が浸透していない地域の特定が可能です。

● 訪問診療
● 訪問薬剤指導の実施
● 在宅自己注射
● 在宅経管栄養法
● 在宅リハビリテーションの提供
● 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理

在宅医療が浸透していない一因としては、ITの導入が遅れていることが考えられます。受付システムや画像診断にITを導入することで、診療業務を効率化でき、オンライン診療を導入できる余裕が生まれるのです。そのため、在宅医療が浸透していない地域に絞って、IT機器の導入を提案することで、高い営業利益が見込めるでしょう。

まとめ


標準化レセプト出現比(SCR)は、地域で提供されている医療の水準を把握するのに有用な情報です。内閣府が年度単位で無料公開しているため、誰でも二次利用できます。

開業や営業を行う地域を選定するために、SCRをぜひ活用してみてください。

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