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医療オープンデータの研究事例をご紹介

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医療オープンデータに関する研究は近年ますます増加しており、地域医療体制の充実や病気の効果的な治療法の発見など、医療分野に与える影響は大きいです。
この記事では、医療オープンデータを研究することの意義から研究事例まで、分かりやすくご紹介していきます。

医療オープンデータを研究することの意義


政府の取り組みにより様々な機関が医療オープンデータを公開し、誰でも二次利用が可能となっています。そんな医療オープンデータを研究することにどのような意義があるのか解説していきます。

地域医療の実態を可視化

医療オープンデータは都道府県別、性別、年齢別、診療行為別、などで分析することができ、研究に用いることにより地域医療の実態を明らかにすることができます。

医療改善の施策策定に貢献

医療オープンデータを研究することで、各都道府県や地域ごとの診療行為の傾向が分かり、医療の質や効率を改善するための施策を立てることができます。たとえば、患者の治療の効果を傷病の発生数や診療内容から評価したり、病気の流行や予防策の研究を行うことができます。

医療オープンデータの課題が明確化

医療オープンデータを用いて研究を行うことで、そのデータの課題が見つかります。その課題を解決することでさらに精度の高い医療オープンデータが公開され、より正確な研究が行われ、地域医療の充実へと繋がっていきます。

医療オープンデータの研究事例


日本では官民データ活用推進基本法によって、国及び地方公共団体がオープンデータの公開に取り組むことが義務付けられました。日本政府が義務付けたオープンデータの推進によって、諸課題の解決、経済の活性化、行政の高度化や効率化が期待されています。
それに伴い、医療オープンデータを用いた研究も多く行われてきました。この章では、実際に日本における研究事例をいくつかご紹介します。

精神神経領域の疾患に対する診療の適正化に関する研究

研究機関:千葉大学・医学部付属病院
使用データ:NDBオープンデータ
研究期間:2019年~2020年
URL:https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-19K19379/19K19379seika.pdf
目的

NDBオープンデータを用いて、精神神経領域の主要な疾患(統合失調症・不安症・認知症・ADHDなど)に関連する診療の実態、薬剤の費用や質、使用状況を網羅的に算出し、都道府県別の地域差と経年変化を分析することによって、NDBオープンデータの分析手法を明確化し、適切な診療や処方に向けた科学的知見の提供を目的としています。

研究内容

NDBオープンデータによって、精神神経領域の主要な疾患(統合失調症・不安症・認知症・ADHDなど)に関する診療行為や処方内容を可視化し、都道府県別の地域差と経年変化を分析しています。また、公表されている診療ガイドラインも参考にし、妊娠可能年齢女性や高齢者などの特定の患者層に対する診療内容が、ガイドラインに則したものになっているか、逸脱している内容がどの程度あるかも把握します。

研究結果

精神神経領域の診療行為別の実態を分析し、各診療ガイドラインの改定や2年に1度行われる診療報酬改定にどの程度影響を受けているかについて経年変化の傾向を明らかにしました。

地域医療の状況の推定手法に関する研究

研究機関:川崎医療福祉大学大学院 医療福祉マネジメント学研究科 医療情報学専攻
使用データ:NDBオープンデータ、病床機能報告データ
URL:https://kwmw.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=14711&item_no=1&attribute_id=20&file_no=2&page_id=13&block_id=17
目的

NDBオープンデータと病床機能報告データを用いることで、地域医療の実態をどの程度推定できるのか、さらにそれらの医療オープンデータを活用することに係る課題も明らかにすることです。

研究内容

この研究は、2015年国勢調査の性別・5歳階級別の人口データと、2015年4月から2016年3月までの入院医療に関するデータを用いて、岡山県全体を対象に行われました。国勢調査データから各市町村の人口比率を算出し、NDBオープンデータから各市町村の各診療行為の発生数を推計して地図上に可視化しました。また、二次医療圏別にも集計し、各二次医療圏の部位別手術発生数を可視化しました。集計値が10未満の場合は「-」で表示されるため、これを0として扱っています。

研究結果

岡山県の研究によると、手術の発生数は市町村によって異なり、「倉敷市」「北区」が特に多かったです。町村では手術の発生数が少なく、「新庄村」「西粟倉村」では10件未満の部位が多く存在しました。手術発生数が多い二次医療圏は県南部に集中しており、「県南東部」が最も多かったです。手術発生数の多寡は部位によって異なり、腹部、筋骨格系、四肢、体幹、心、脈管、性器、眼の手術発生数が多かったです。町村等の人口が少ない地域では医療需要が発生していても、その地域で診療を受けられていない可能性があるため、周辺の市町村も含めた広い範囲で評価する必要があります。
岡山県の入院医療における手術発生数の特徴は、県南部で多くの医療需要が発生しており、腹部、筋骨格系、四肢、体幹、心、脈管、性器、眼が一般的な手術部位であることが示唆されています。

構想区域における高度医療機器の配置の妥当性の分析

研究機関:医療データ分析ラボ 株式会社サンネット
使用データ:人口推計データ、病床機能報告データ
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jami/41/5/41_237/_pdf/-char/ja
目的

2025年には団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、地域医療構想が策定されています。地域医療構想では、入院機能を中心とした調整が進められており、地域に見合った医療提供体制を確保するための準備が進められています。医療資源の一つである高度医療機器の構想区域内における配置状況の妥当性について、オープンデータと人口重心を使用して分析することを目的としています。

研究内容

DPC 対象病院での 1 台当たりの高度医療機器(CT・MRI)の撮影数を広島県内の全医療機関の 1 台当たり撮影数の平均値と比較し、各重心指標の位置の変化を観察しました。

研究成果

広島県内のDPC対象病院において、CTとMRIの撮影数を全医療機関の平均値以上に設定するシミュレーションが行われました。撮影数の変化により、台数撮影、1台撮影の各重心が移動し、重心間の距離の増減などの変化が生じることが分かりました。構想区域ごとに、CTおよびMRIの台数重心位置と受療人口重心の位置の一致や距離も大きく異なることが明らかになった。広島構想区域では被撮影機会が多く、広島中央構想区域ではCTの撮影効率が良いことが分かりました。

NDBオープンデータからみた抗 HIV 薬の処方実態

研究機関:東邦大学薬学部実践医療薬学研究室
使用データ:NDBオープンデータ
URL:https://jaids.jp/pdf/2019/20192103/20192103173180.pdf
目的

レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)オープンデータを使用して、日本における抗 HIV 薬の処方の実態を明らかにすることです。

研究内容

第 2 回 NDB オープンデータから抗 HIV 薬に関するデータを抽出し、年齢別(20歳~49 歳、50 歳以上)、薬剤の作用機序別、性別、地域別、処方区分別(入院、外来)に集計し、分析を行いました。

研究成果

薬剤の処方状況を分析し、2015 年度に抗 HIV 療法の診療を受けた患者数は 18,000~19,000 人程度であると推定された。50 歳以上では、それ以下の年齢群と比較してTDF が処方された患者数の割合が低かったです。また、20~49歳の女性は、それ以外と比較してPIが処方された患者数の割合が高く、その中でも特にロピナビルが処方された患者数の割合が高いという特徴がみられました。
さらに、HIV 診療体制のブロック別に処方薬剤を分析したところ、地域差が確認されました。また、抗HIV 薬の院外処方金額の割合は 55.6% となり、各都道府県ごとにその割合にばらつきがみられました。

医療オープンデータの研究事例に関するまとめ


これまで、医療オープンデータの研究の意義を説明し、実際の研究事例をご紹介してきました。研究に使われている医療オープンデータは、調査した中ではNDBオープンデータが最も多くを占めていました。
NDBオープンデータをはじめとする医療オープンデータの活用の場は、年々広がってきています。

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