感染症発生動向調査とは?オープンデータの特徴や活用方法を解説
目次
2019年12月初旬から感染の猛威をふるったCOVID-19は、世界的に大流行し、数多くの死者を出しました。その他にもインフルエンザや風しん、はしかなど、私たちの身近には感染症のリスクが常に潜んでおり、流行に備えた対策が欠かせません。
日本では、感染症の発生情報を迅速に把握し、対策へと繋げるために「感染症発生動向調査」を実施しています。調査結果はオープンデータとして、厚生労働省が管轄する国立感染症研究所のホームページに公開されているので、誰でも二次利用が可能です。
本記事では、感染症発生動向調査について解説します。オープンデータの活用方法も掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
感染症発生動向調査とは
多様な感染症の発生・蔓延を防止することを目的に実施されている調査が、感染症発生動向調査です。感染症の発生情報を正確に把握・分析し、国民や医療機関に公開することで、感染症に対する予防・診断・治療に係る対策を迅速かつ的確に行います。
1981年から開始された当調査は、1999年に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法(感染症法)」が施行されたことによって、法令に位置づけられました。調査の実施主体は、国・都道府県・保健所を設置する市の三者です。
調査対象となる感染症分類
感染症発生動向調査は、全数把握と定点把握に分かれており、それぞれ対象となる感染症分類や届出を行う機関が異なります。感染症法によって定められた感染症分類とは、感染症を危険度別に1類から5類までに分類したものです。
危険度が最も高い感染症は1類に、危険度はさほど高くないものの、感染拡大を防止すべき感染症は5類に分類されています。全数把握と定点把握のそれぞれの調査対象について、詳しく見ていきましょう。
全数把握|全医療機関の届出
対象となる感染症を診断した全ての医師が保健所に届出を行う必要があるのが、全数把握です。以下の何れかに該当する感染症が、全数把握の対象となっています。
- 周囲への感染拡大防止を図る必要がある
- 発生数が僅少のため、定点方式での正確な傾向把握が不可能である
全数把握の対象となる主な感染症は、以下のとおりです。
感染症分類 | 感染症 |
1類感染症 | エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱など |
2類感染症 | 急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、鳥インフルエンザなど |
3類感染症 | コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフスなど |
4類感染症 | E型肝炎、ウエストナイル熱、A型肝炎、エキノコックス症など |
5類感染症 | アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症、急性弛緩性麻痺など |
その他 | 新型インフルエンザ等感染症 |
定点把握|指定医療機関のみの届出
都道府県が指定した医療機関で、対象となる感染症を診断した医師が、保健所に届出を行う必要があるのが、定点把握です。発生動向の把握が必要な感染症のうち、患者数が多数で、全数を把握する必要がないものが、定点把握の対象となっています。
定点把握の対象となる主な感染症は、以下のとおりです。
感染症分類 | 感染症 |
5類感染症 | RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、新型コロナウイルス感染症など |
2~5類感染症 | 厚生労働省令で定める疑似症 |
感染症発生動向調査の仕組み
全数把握や定点把握の対象となる感染症を診断した医師は、保健所に患者情報と病原体情報の届出を行います。届出のあった情報は、都道府県を通じて厚生労働省の元へと報告されます。感染症発生動向調査の報告経路は、以下のとおりです。
図1:感染症発生動向調査の仕組み(情報還元は省略)
感染症発生動向調査の内容
感染症発生動向調査の結果は、国立感染症研究所のホームページにて、患者情報(感染症発生動向調査 週報)と病原体情報(病原微生物検出情報)が公開されています。
それぞれの公開内容について、詳しく見ていきましょう。
患者情報
感染症法に規定された感染症を患った患者が、全国でどの程度発生しているのかが集計され、週1回のペースで週報として報告されています。
「感染症発生動向調査 週報」の主な内容は、以下のとおりです。
項目名 | 内容 |
全数把握疾患、報告数、累積報告数、都道府県別 | 一~五類感染症の全数把握疾患 ・各週の報告数 ・当年第1週からの累積報告数 |
定点把握疾患(週報告)、報告数、定点当たり報告数、都道府県別 | 五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患 ・当年第1週からの累積報告数 ・定点当たり報告数 |
定点把握疾患(週報告)、累積報告数、定点当たり累積報告数、都道府県別 | 五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患 ・当年第1週からの累積報告数 ・定点当たり報告数 |
疾病毎定点当たり報告数 ~過去10年間との比較~ |
五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患 ・過去10年間の定点当たり報告数 |
定点把握疾患(週報告)、(1週から当該週まで)報告数・定点当り報告数 | 五類感染症のうち週単位で報告される定点把握疾患 ・当年1週から当該週までの各週の報告数 ・定点当たり報告数 |
動物疾患、報告数、累積報告数、都道府県別 | 獣医師が届出を行う感染症と対象動物 ・各週の報告数 ・当年第1週からの累積報告数 |
調査結果はCSV形式で提供されているので、余計な情報が入っていません。データの容量が軽く、様々なソフトで開くことが可能なので、スムーズに活用できます。
病原体情報
患者発生及び病原体検出の情報が、月1回のペースで月報として報告されています。「病原微生物検出情報」は、毎回トピックが異なるのが特徴です。毎月、特定の感染症に焦点を当てて、報告数や年齢分布などの表・図と共に解説がされています。
毎月固定された内容が掲載されているわけではないので、気になるトピックが解説されているかどうかは、国立感染症研究所のホームページの月報ごとの目次で確認しましょう。
感染症発生動向調査の活用方法2選
感染症の蔓延を防ぐには、最初の迅速な情報収集が肝心です。感染症発生動向調査の結果は、週に1回のペースで公開されているため、感染症の実態を迅速に把握し、対策へと繋げられます。感染症発生動向調査の主な活用方法は、以下のとおりです。
感染症対策グッズの営業先を選定する
シールド付きマスクやアルコール消毒液、CO2モニターといった感染症対策グッズを販売している企業であれば、感染症発生動向調査の結果を用いて、営業利益が見込める都道府県を特定できます。
1類〜5類の感染症ごとの患者数が都道府県別に集計されているので、感染者が増加傾向にある都道府県の住民に対して、感染症対策の重要性を訴えかけると共に、感染症対策グッズの購入を提案しましょう。
感染者数が伸びてきている感染症の注意喚起を行う
感染症発生動向調査では、5類感染症の過去10年間の患者数が集計されているため、昨今感染者数が伸びてきている感染症をピックアップし、アプリやサイトなどを通じてユーザーに注意喚起できます。
感染症の怖さと予防法も併せて掲載することで、ユーザーの関心を集めることができるでしょう。感染症発生動向調査の更新頻度(週に1回)に合わせてアプリやサイトも更新することで、ユーザーの継続的な流入が見込めます。
まとめ
国・都道府県・保健所を設置する市が主体となって行う感染症発生動向調査では、感染症の発生情報を迅速かつ正確に把握することが可能です。調査結果は、厚生労働省が管轄する国立感染症研究所のホームページにオープンデータとして公開されています。
感染症に関する事業を展開している又は展開を検討している企業担当者の方は、感染症発生動向調査のオープンデータを活用し、国民の感染症対策の促進に役立ててみてください。
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