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海外における医療オープンデータの活用事例をご紹介

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日本において、政府はオープンデータの二次利用を通じた諸課題の解決、経済活性化、行政の高度化・効率化を期待し、2016年に国や地方自治体のオープンデータ公開への取り組みを義務付けました。その中でも、医療オープンデータは各都道府県による地域医療体制の充実や企業の新規事業などに活用されています。

この記事では、海外における医療オープンデータの活用事例をご紹介していきます。

海外における医療オープンデータについて


海外において、医療オープンデータへの取り組みが進んでおり、国際的にも高く評価されているのが「アメリカ」と「イギリス」です。この章では、アメリカとイギリスを例にどのような医療オープンデータが存在するのか、ご紹介します。

アメリカのオープンデータ

アメリカにおける医療オープンデータには次のようなものがあります。

データ名 提供機関 概要
CMS data CMS(Centers for Medicare&Medicaid Services) 米国保険業界に関する包括的なデータベースです。CMSは、米国で医療および医療保険に関連する情報の主要な提供元となっています。CMSデータは、医療費や医療サービスの利用、保険プランの比較、医療サプライヤーの評価、医療政策の策定など、さまざまな目的で使用されます。
HealthData.gov 保健福祉省 公衆衛生に関する多数のデータセットを含むオンラインデータベースです。連邦、州、地方自治体ならびに民間機関がデータセットを提供しています
CDC WONDER CDC(米国疾病予防管理センター) 疾病、死亡、出生、病院入院、人口統計など、様々な公衆衛生テーマに関するデータが含まれています。
ClinicalTrials.gov NIH(米国国立衛生研究所) 人間の健康と疾患に関するデータベースです。
All of Us 米国国立がん研究所(NCI) オバマ前⼤統領が2015 年にス タートしたPrecision Medicine Initiative を引き継ぎ、 米国国立衛生研究所(NIH) により運営されています。がんゲノムデータに関するオンラインデータベースです。

オバマ前大統領は、2009年1月の就任直後に「透明性とオープンガバメント」と題した覚書を発出しました。

この覚書では「開かれた政府」を築くことが表明されており、政府の透明性を高める取り組みとして、政府の保持する大量のデータを公開するサイト「DATA.GOV」が開設されました。以降、医療系のオープンデータはこちらのサイトで着実に数を増やして公開されています。

イギリスのオープンデータ

イギリスにおける医療オープンデータには次のようなものがあります。

データ名 提供機関 概要
CPRD MHRA(Medicines & Healthcareproducts Regulatory Agency)

NIHR(NationalInstitute for Health Research)
CPRDは、英国国立医療サービス(NHS)の一部であり、イギリス国内の一般診療所、特殊診療所、および医療センターから収集された医療情報を含みます。CPRDは、患者の診療履歴、処方箋、診断、治療、検査結果、病歴、人口統計学的情報など、さまざまな種類のデータを収集しています。
NHS Digital 英国国立医療サービス(NHS) 国内の医療データを収集し、一元化されたデータセットとして提供しています。これにより、健康管理、医療研究、政策立案などに役立てられています。
UK Biobank UK Biobank Limited 約50万人以上のイギリス国民を対象に、健康情報、遺伝情報、ライフスタイル情報、生物学的サンプルなど、さまざまな種類のデータを収集しています。

キャメロン前首相は、2010年に「透明性アジェンダ」を発表し、透明性と経済効果を目的としてオープンデータを推進する意向を表明しました。

英国は、この透明性アジェンダを実現するために、オープンデータは単一の使いやすいアクセスポイントとして「DATA.GOV.UK」で簡単に入手可能であることを定めた「透明性原則」を発表しました。

2010年から運用されている政府のポータルサイト「DATA.GOV.UK」では、医療オープンデータを含む9,000を超えるデータセットが提供されています。

海外における医療オープンデータの活用事例3選

それでは、前章で挙げた医療オープンデータの活用事例を紹介していきます。

アメリカやイギリス含むEU諸国では、地方自治体のみならず民間企業においても、医療オープンデータの活用の幅が広がっています。さらに、アメリカ政府はオープンデータを活用するスタートアップ企業を支援する仕組みを構築したり、イギリス政府は民間団体がオープンデータを活用して作成した200以上のアプリを公式で紹介するなど、国を挙げてオープンデータの二次利用をバックアップする体制も充実しています。

アメリカでの活用事例

アメリカにおける医療オープンデータの活用事例は次のとおりです。

CMSデータを再利用する研究者向けサービス

機関 University of California, San Francisco
(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)
使用データ CMS data
参照 https://pophealth.ucsf.edu/content/cms-data-reuse

CMS の公式サイトから直接 CMS データを取得するという、労力と時間のかかるプロセスを行わずに効率的にCMSデータにアクセスできるアプリケーションが開発されました。

このアプリケーションでは主に次のような機能が実装されています。

コンサルティング サービス
研究の目的、資金調達の機会、研究のための適切なデータの選択、静的分析をサポートします。

データの準備と管理
データの準備と管理を行うサービスです。

統計プログラミング
必要な複雑さと専門知識のレベルに応じた統計プログラミングサービスです。

臨床研究コミュニティのコロナパンデミックへの対応

機関 Oxford University Press
(オックスフォード大学の大学出版局)
使用データ ClinicalTrials.gov
参照 https://www.fiercebiotech.com/medtech/propeller-health-study-shows-digital-data-can-help-update-clinical-asthma-guidelines

COVID-19 臨床研究の状況を理解し、募集の困難さを引き起こしたり、研究の一般化可能性を低下させたりする可能性のある問題を特定する研究が行われました。

最大の公開レジストリである ClinicalTrials.gov に登録された 3,765 件の COVID-19 研究を分析し、自然言語処理 (NLP) を活用し、記述的、関連性、およびクラスタリング分析を使用されました。

結果として、COVID-19 臨床研究には、性別と高齢者の両方が含まれていました。ただし、糖尿病、高血圧、妊娠などの危険因子は過小評価されており、サンプリングされた母集団をゆがめている可能性があることが分かっています。

イギリスでの活用事例

イギリスにおける医療オープンデータの活用事例は次のとおりです。

NHS処方データを用いた処方薬費用の分析

機関 Mastodon C
使用データ NHS Digital
参照 https://www.theodi.org/article/prescription-savings-worth-millions-identified-by-odi-incubated-company/

2012年にビッグデータ分析の企業事例として創業されました。

オープンデータであるNHSの処方データを活用して、NHSが負担した処方薬の費用を分析しました。その結果、安価であるジェネリック医薬品に変更することにより、1種類の薬だけで1年間で約4億ドルの経費削減が可能であると推計されました。

さらに、NHSを基にイギリスの病院ごとの院内感染率を公表したところ、院内感染率は85%減少しました。

まとめ

この記事では、海外における医療オープンデータの内容をご説明し、実際の活用事例3選をご紹介しました。
アメリカやイギリス政府は、オープンデータを公開する専用サイトとして「DATA.GOV」を開設するなど、地方自治体、民間企業がオープンデータを二次利用しやすい仕組み作りを積極的に実施しています。

この記事でご紹介した医療オープンデータについて、さらに調べてみると様々な活用事例が出てきます。
ご紹介した3つの活用事例についても、医療オープンデータの活用に生かせるか、ぜひ参考にしてみてください!

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