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医療オープンデータの課題と今後の展望について

国や地方公共団体、事業者が公開したデータの中でも、製薬・医療業界にフォーカスした医療オープンデータ。その活用の場は政府、地方自治体、民間企業にまで広がっています。

この記事では、以下のような悩みをお持ちの方に向けて、分かりやすく解説していきます。

  • 医療オープンデータにはどのようなものがある?
  • 医療オープンデータの活用の幅を広げたい
  • 医療オープンデータの課題は?
  • 医療オープンデータは今後どのような展望が期待される?

医療オープンデータの種類

医療系のオープンデータとは、医療分野で収集された様々なデータを、一般的に誰でも自由にアクセスできる形式で公開されたデータのことを指します。
これらのデータは、医療従事者、一般企業、研究者、学生などが医療に関する研究や分析を行うために活用されています。

2023年3月時点において、医療オープンデータにはどのようなデータがあるのか解説していきます。

NDBオープンデータ

医療機関が診療を行った際に作成されるレセプト情報ならびに中高年層を対象に、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病などの主要な生活習慣病を早期発見し、健康的な生活習慣を指導するために、国が実施している「特定健診」と「特定保健指導」に関する情報を収集した「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」から基礎的な項目を抜粋し集計表を作成したのが NDB オープンデータです。

年間の都道府県別の各診療行為別の発生数や、医療費の傾向やその要因、地域差、年齢差、性差などを分析することができます。

NDBオープンデータは厚生労働省HPから取得できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html

さらに厚生労働省はNDBオープンデータの分析サイトを用意しており、一部の情報を用いて分析し、グラフ化しています。
https://www.mhlw.go.jp/ndb/opendatasite/

下の画像は第7回NDBオープンデータの医科診療行為の算定回数を診療月別に集計した結果です。10月、12月、3月に診療行為が増えていることが分かります。

病床機能報告データ

平成26年10月1日に施行された病床機能報告制度により、病院又は診療所が担っている医療機能を病棟ごとに4つの病床機能区分から一つを選択し、各都道府県に報告し、それを都道府県が公表したデータのことを指します。

こちらから各都道府県別に報告データを見ることができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html#h2_3

令和3年度の病床機能報告からは4月から3月までの通年の入院診療実績を「月別」、「病棟別」に報告することが義務付けられました。

近隣医療機関の病床機能を把握することができ、地域における医療のバランスを取ることに役立てられています。

医師・歯科医師・薬剤師統計

医師、歯科医師及び薬剤師について、性、年齢、業務の種別、従事場所及び診療科名等による分布に関するデータです。

こちらからCSV形式でデータを参照することができます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/33-20.html

下の画像のように年ごとの医師数を医療機関の形態や役職別に見ることができます。

その他

東京都では独自に様々なオープンデータを公開しており、下記のサイトから使用したいオープンデータを検索することができます。
https://portal.data.metro.tokyo.lg.jp/

医療オープンデータとしては、新型コロナウイルスに関する年代別の陽性者数や検査数などを参照することができます。

新型コロナウイルスに関しては厚生労働省もこちらのサイトでオープンデータを公開していますので、合わせてご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00023.html

医療オープンデータの活用事例


企業や研究者によって数多く利用されている医療オープンデータですが、実際にどのように活用されているのか、いくつか事例をご紹介していきます。

病院情報局 – 急性期病院の診療実績比較サイト

サイト名 病院情報局
URL https://hospia.jp/wp/archives/category/topics/
提供 株式会社ケアレビュー
使用しているオープンデータ 厚生労働省公表の「退院患者数」「平均在院日数」
概要 全国の急性期病院の診療実績を比較できる

このように病院の診療実績をランキング形式で比較することができるため、患者が病院を選ぶ際や地域医療の需要を見る際に役立ちます。

新型コロナウイルス対策ダッシュボード

サイト名 新型コロナウイルス対策ダッシュボード
URL https://www.stopcovid19.jp/
提供 株式会社jig
使用しているオープンデータ 厚生労働省公表の「新型コロナウイルス対策病床数オープンデータ」「新型コロナウイルス患者数オープンデータ」
概要 新型コロナウイルスの地域ごとの現在患者数と感染病床数のリアルタイムな把握が可能

全国の患者数、累計退院数、死亡者数が一目で分かるように可視化されています。全国の対策された病床数と患者数が比率で分かるため、地域ごとに医療体制が医療需要とマッチしているか見ることができます。

公表データを活用した医療提供体制の分析(圏域別)

サイト名 公表データを活用した医療提供体制の分析(圏域別)
URL https://www.pref.ehime.jp/h20150/keikaku/keikaku/documents/02r0409iryoteikyotaiseibunseki_niihamasaijo.pdf
提供 株式会社日本経営
使用しているオープンデータ NDBオープンデータ、将来推計人口、病床機能報告データ、厚生労働省人口動態統計
概要 医療の需要と供給のバランスが取れているかどうかを複数のオープンデータから分析

厚生労働省が公開している数々のオープンデータを棒グラフ、折れ線グラフやポジショニングマップで表現し、それらの特徴が言語化されています。分析しているオープンデータの数、分析結果がとても洗練されていて、視覚的に分かりやすく活用例としてとても優れています。

医療オープンデータの課題

これまで2023年3月現在における医療オープンデータの実態とその活用事例をご紹介してきました。この章では、医療オープンデータに残っている課題点を最もメジャーなNDBオープンデータと病床機能報告データについてご紹介し、さらに医療オープンデータ全般に関する課題点も解説します。

NDBオープンデータ

  • 全国の各診療行為の発生数を都道府県別または性別に集計したデータであるため、各市町村ごとの各診療行為の発生数が分からない
  • 労災や自費負担部分などの自由診療に関するデータが収集されていない
  • 未コード化傷病名は削除されているため、重要な傷病名が集計されない

病床機能報告データ

  • 医療機関が未報告のデータは把握できない
  • 個人情報保護の観点から、10未満の数値は公開されないようになっている
  • 患者の移住地の情報を含んでいないため、その診療が地域の移住者に対してのものか判断がつかない

筆者が携わっているシステムにおいても未コード化傷病名は実際に存在している傷病名であることが大半なので、それが集計対象外となるということはNDBオープンデータは実態と乖離している部分が少なからずあることは否めません。

医療オープンデータ全般

  • 独占的なフォーマットが用いられていることがある
  • 他のデータへのリンクがされていないため、相互運用性が低い

医療オープンデータの今後の展望


前の章で解説したような課題点を解決することで見えてくる医療オープンデータの今後の展望をご紹介していきます。

  • 二次医療圏単位などのさらに細かい粒度の分類分けが行われる
  • 集計対象外となっているデータが集計対象に追加されていく
  • 医療機関のレセコンとリアルタイムでデータ連携されることで、未報告データが削減される
  • 共通のフォーマットとなることでデータ間の連携が取りやすくなる
  • URLを用いてデータリンクされることで他の医療オープンデータとの関連付けが取れるようになる

上記の改善によって、医療オープンデータの公開を行う機関が増え、二次利用の拡大が見込まれます。それによって、各データを連携させたより精度の高い活用が行われ、需要と供給がマッチした適切な医療体制の整備に向けた分析と対策が施行されていくことでしょう。

医療オープンデータに関するまとめ

医療オープンデータには様々な種類があり、活用例も豊富に存在する一方、各オープンデータごとの課題点や全般的な課題点も残っており、それらを解決することで相乗的に医療オープンデータの有用性が向上することが分かりました。

最後にこの記事で解説した内容をまとめます。

  • 医療オープンデータには、NDBオープンデータ、将来推計人口、病床機能報告データ、厚生労働省人口動態統計、医師・歯科医師・薬剤師統計などがある
  • 医療オープンデータ全般の課題として独占的なフォーマットが用いられていることがあり、他のデータへのリンクがされていないため、相互運用性が低い
  • 今後の展望として、さらに細かい粒度の分類分けが行われ、集計対象が拡大することで、医療オープンデータの精度が向上する
    さらに共通のフォーマットとなり、URLを用いてデータリンクされることで他の医療オープンデータとの連携が取れるようになる

医療オープンデータの活用の幅をさらに広げたいとお考えの方は、この記事でご紹介した活用事例を参考にしていただき、複数のデータ間の連携を取り、既存データに情報を付加することで、さらなる需要が期待できます。

<医療系オープンデータ>
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