Mobile Studioとは 使用方法やAPI連携・実装の流れを分かりやすく解説
#Marketing Cloud #API連携 #使用方法 #Mobile Studio
目次
- 1. Mobile Studioで実現できる3つのモバイル施策とは
- 1.1 SMS配信を担う「MobileConnect」の特徴
- 1.2 アプリ内通知に強い「MobilePush」の役割
- 1.3 LINE配信にも対応する「GroupConnect」の概要
- 2. Marketing Cloudとアプリを連携する3つのステップ
- 2.1 SDKの組み込みと通知設定
- 2.2 オーディエンス管理とデータ連携の基礎
- 2.3 Journey Builderでの通知自動化の流れ
- 3. 開発者が押さえておきたいAPIと連携仕様
- 3.1 各モジュールで使えるAPIの違い
- 3.2 メッセージ作成と配信に関わるデータ構造
- 3.3 オプトアウト・配信制御に関する注意点
- 4. Mobile Studioを選ぶメリットと注意点
- 4.1 自社実装との比較で見える利便性
- 4.2 Salesforce環境が前提となる制約
- 4.3 導入前にチェックすべきポイント
- 5. 実際に使われている3つのユースケース
- 5.1 BtoC通販アプリでのパーソナライズ施策
- 5.2 大規模イベントアプリでの即時通知
- 5.3 金融系アプリでのセキュアな配信管理
- 6. まとめ
モバイルアプリの運用には、機能開発だけでなくユーザーとの接点づくりも欠かせません。
この記事では、Salesforce Marketing CloudのMobile Studioを活用し、SMSやプッシュ通知などの施策をアプリ開発者の視点でどう実装・運用できるかを解説します。
Mobile Studioで実現できる3つのモバイル施策とは
通知やメッセージの重要性は理解していても、「実際どれをどう使えばいいのか」と迷う瞬間は多いものです。
ここでは、Mobile Studioで扱える3つの配信手段と、それぞれが持つ役割や強みを整理していきます。
SMS配信を担う「MobileConnect」の特徴
MobileConnectは、SMSやMMSを使ってユーザーにダイレクトなメッセージを届けられる機能です。短縮コードやキーワードを設定しておけば、ユーザーからの返信を受け取る双方向のやり取りにも対応できます。
とくに予約リマインダーやキャンペーン通知など、確実に届けたい場面では重宝されている印象です。アプリを入れていないユーザーにもリーチできる点は、他のチャネルにはない強みでしょう。
地味に見えても、SMSは“最後の手段”として頼りにされるケースが少なくありません。
アプリ内通知に強い「MobilePush」の役割
MobilePushは、スマートフォンアプリに対してプッシュ通知を送るためのモジュールです。SDKを組み込むことで、位置情報や利用状況に応じた通知の出し分けが可能になります。
「今、これを知らせたい」という場面で、ユーザーの行動に寄り添った配信ができるのは大きな利点でしょう。通知トリガーの柔軟性や、セグメントごとの条件設計も扱いやすく、開発の現場でも導入のハードルは低めです。
単なる情報提供ではなく、“体験としての通知”を設計したいときにこそ活躍してくれます。
LINE配信にも対応する「GroupConnect」の概要
GroupConnectでは、LINEやMessengerなどのチャットアプリを使った配信が可能です。特にLINEは、日本国内の生活インフラといっていいほど定着しており、マーケティングチャネルとしての相性も抜群といえます。
ユーザーが許可していれば、キャンペーン情報やリッチメッセージを定期的に届けることができ、運用の自動化も視野に入ります。加えて、自動応答やテンプレートも活用できるため、簡易的なチャットサポートのような使い方も見かけます。
生活の中に自然に溶け込む配信ができるのは、このモジュールならではの魅力かもしれません。
Marketing Cloudとアプリを連携する3つのステップ
Mobile Studioの魅力を活かすには、アプリ側とのスムーズな連携が欠かせません。ただし、いきなり実装に入るのではなく、全体の流れを把握しておくことがトラブル回避の第一歩になります。
このセクションでは、基本的な連携ステップを3つに分けて紹介します。
SDKの組み込みと通知設定
最初のステップは、MobilePush SDKをアプリに組み込む作業です。iOSとAndroidそれぞれに専用のSDKが用意されており、通知受信の設定やトークン取得などをアプリ内で行えるようになります。
Firebaseなどの通知基盤と併用する形になるため、既存の通知ロジックがある場合は調整が必要になるケースもあるでしょう。
実装そのものは複雑ではないものの、通知許可の取得タイミングやユーザー体験には気を配っておきたいところです。
オーディエンス管理とデータ連携の基礎
SDKと連携した後は、どのユーザーにどんなメッセージを送るのかを定義するステップに入ります。Marketing Cloudでは「Data Extension」と呼ばれるデータ構造を使って、ユーザー情報やセグメントを柔軟に管理できます。
たとえば「アプリを1週間起動していない人」や「特定のプランに加入している人」など、条件を自由に設定できるのが特徴です。データの整備が甘いと配信精度に響くため、ここは手を抜かず丁寧に設計しておくと安心です。
Journey Builderでの通知自動化の流れ
最後は、実際の配信フローを設計する段階です。Marketing Cloudにある「Journey Builder」を使えば、ユーザーの行動や属性に応じて通知を自動で送ることができます。
「初回ログインから3日後にリマインダーを送る」「購入後にお礼のメッセージを出す」といったフローを、視覚的に組み立てられるのが便利なポイントです。
コードを書かずに設計できるため、マーケチームと連携しながらワークフローを組むのにも向いています。
開発者が押さえておきたいAPIと連携仕様
Mobile Studioを実運用に乗せる際には、GUIだけでなくAPIを活用した自動化やシステム連携が必要になる場面も出てきます。
このセクションでは、開発者視点で知っておきたいAPIの扱い方や、各モジュールとの連携仕様について触れていきます。
各モジュールで使えるAPIの違い
Mobile Studioでは、各配信モジュールごとに対応するAPIが異なります。たとえばMobilePushでは、デバイストークンの登録や通知送信を行うためのREST APIが中心です。
一方、MobileConnectはSMS配信やキーワード設定などにSOAP APIが使われることもあり、実装前に対象機能のAPI種別を確認しておく必要があります。
APIの構造そのものは比較的シンプルですが、利用にはOAuthトークンの取得やリクエスト制限への対応も求められます。
メッセージ作成と配信に関わるデータ構造
配信処理をAPIで行う場合、メッセージのテンプレートや送信先リストの指定など、細かな設定をデータ構造として扱うことになります。
ここで使われるのが「Data Extension」や「Send Definition」といったMarketing Cloud特有の概念です。たとえば、MobilePushでは「Send Definition」を使って通知の設定を事前に定義し、APIから呼び出すことで再利用性の高い運用が可能になります。
こうした構造を理解しておくと、実装だけでなく運用面でも効率がぐっと上がってきます。
オプトアウト・配信制御に関する注意点
開発者として意外と見落としがちなのが、配信停止(オプトアウト)処理への対応です。たとえばMobileConnectでは、「STOP」といったキーワードに自動対応させる仕組みがあり、無視するとコンプライアンス違反になるリスクもあります。
また、MobilePushでもユーザーの通知許可状態やトークンの有効性を定期的にチェックし、不要な配信を避ける設計が求められます。トラブルを未然に防ぐためにも、制御系の仕様には早めに目を通しておきたいところです。
Mobile Studioを選ぶメリットと注意点
Mobile Studioは機能面での充実度が高い一方で、Salesforce特有の構造や前提条件が多く、導入判断に迷う方も少なくありません。
このセクションでは、使ってみて初めてわかるメリットと、検討段階で押さえておくべき注意点をバランスよく紹介します。
自社実装との比較で見える利便性
SMSやプッシュ通知の配信は、自社で実装することも不可能ではありません。しかし、Mobile Studioのようにオーディエンス管理から配信設計、効果測定までを一気通貫で扱えるツールはそう多くありません。
開発工数や保守の手間を考慮すると、長期的にはプラットフォームを活用したほうが効率的になるケースがほとんどです。とくに複数のチャネルをまたいで一貫したメッセージングをしたい場合、Mobile Studioの柔軟性は大きな武器になります。
Salesforce環境が前提となる制約
注意点としては、Mobile Studio単体では利用できず、Salesforce Marketing Cloudのアカウントと連携が必須になる点が挙げられます。
また、データ連携には「Data Extension」や「Contact Builder」といったSalesforce固有の概念を理解する必要があり、初学者にはややハードルを感じるかもしれません。
さらに、他のSalesforce製品と連携させることで真価を発揮する構造になっているため、導入にあたっては“点”ではなく“面”での設計が求められます。
導入前にチェックすべきポイント
導入前に確認しておくべきなのは、技術的な要件だけではありません。たとえば「SMSをどの国で配信するのか」「オプトイン/アウトの管理は誰が担当するのか」など、運用上の設計も含めて全体像を整理しておくことが重要です。
また、社内にSalesforceの知見があるかどうかによって、立ち上げの難易度も変わってきます。後から慌てないためにも、導入に関わる部門が連携して初期設計を進めるのが理想です。
実際に使われている3つのユースケース
「Mobile Studioって本当に現場で使われてるの?」と感じる方もいるかもしれません。
この章では、業界や目的の異なる3つのユースケースを紹介し、実際にどのような課題に対してどう活用されているのかを具体的に見ていきます。
BtoC通販アプリでのパーソナライズ施策
ある地方のアパレル系EC企業では、アプリを通じたリピート購入の促進に課題を抱えていました。
そこでMobilePushを導入し、「お気に入り登録後3日間、未購入ならリマインド通知を送る」といったパーソナライズ施策を設計。結果として、通知からのCV率が平均1.8倍に向上しました。
セグメントの粒度を細かく設定できることで、ユーザーの行動に合わせた声かけができるようになり、アプリ離脱の抑制にもつながったといいます。
大規模イベントアプリでの即時通知
エンタメ系の大規模イベントアプリでは、スケジュール変更や会場混雑などの情報をタイムリーに伝える手段として、SMSとMobilePushの両方を併用しています。
特にMobileConnectによるSMS通知は、アプリ未インストールの参加者にも確実に情報を届けられるため、クレームの削減や誘導のスムーズ化に効果を発揮しています。
バックエンドからのAPI連携で運営用CMSとつなぎ、情報更新から数分以内に配信できる設計にしている点もポイントです。
金融系アプリでのセキュアな配信管理
金融サービス企業のアプリでは、ユーザーへの取引通知や重要なお知らせの配信にMobile Studioを活用しています。
MobilePushを使った通知には、ユーザーのログイン状態やデバイストークンの有効性を都度チェックする制御を入れ、誤送信や不達を防ぐ設計に。
さらに、オプトアウト処理を自動化してコンプライアンスリスクを軽減するなど、信頼性とセキュリティの両立に重きを置いた運用がされています。堅牢な配信基盤を整えたい業種では、こうした活用例が参考になるはずです。
まとめ
モバイルアプリの開発に携わる中で、「届け方」まで設計できる人はまだ多くありません。だからこそ、Mobile Studioのような仕組みを理解し、開発とマーケティングの橋渡しができる存在は重宝されます。
この記事で紹介したように、SMS・プッシュ通知・チャットアプリなど、多様なチャネルをひとつのプラットフォームで統合できるのは大きな強みです。さらに、SDK連携やAPI活用といった技術要素にも柔軟に対応できるため、開発者が手を動かしながら価値ある配信設計を組み立てることができます。
まずは「何をどう通知したいのか」を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。Mobile Studioは、その構想を現実に変えるための頼れる選択肢のひとつです。
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