Journey Builderのループ設計とは 再エントリーと分岐活用の注意点を分かりやすく解説

2025.12.04

#注意点 #Marketing Cloud #Journey Builder #ループ設計

Journey Builderで複雑な配信シナリオを設計する際、「ループ処理」や「再エントリー」の考慮は欠かせません。便利な反面、設計ミスによって重複配信や無限ループ、配信ゴールからの逸脱が起きると、実務への影響も大きくなります。

とくに再配信を前提とした構成や、多チャネル・セグメントを組み合わせた設計では、わずかな設定の差が配信品質を左右します。

本記事では、自社施策に活かせる設計視点にフォーカスし、安定した配信運用のヒントをお伝えします。

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ループ設計で失敗しがちな3つの実務トラブル

Journey Builderで複雑な配信シナリオを組むとき、とくに注意したいのが「意図しないループ」です。設定ミスがあると、配信が終わらない・繰り返される・正しいセグメントに届かないといった問題が起こり、運用に支障をきたします。

ここでは、実務で起きやすい3つの失敗例をもとに、注意すべき設計ポイントを整理します。

再エントリーが意図せず発動し、同一顧客に繰り返し配信される

再エントリーモードを「複数エントリー可」に設定していると、同じ顧客が何度もジャーニーに入る可能性があります。そのまま配信を開始すると、数日おきに同じメールが届く事態も起こりかねません。

本来「条件を満たしたユーザーだけを再入場させたい」と考えていても、再エントリー条件の設定が曖昧だと、すべてのユーザーが対象になってしまうこともあります。とくに複数ジャーニーで似たようなエントリートリガーを使っていると、設定ミスに気づきにくく、意図しない重複エントリーが起こりやすくなります。

また、リスト抽出のロジックやデータ更新のタイミングによっては、システム上「新規」と判定され、再エントリーが発動するケースもあります。設計時には、条件の見直しを複数の観点から行うと安心です。

Decision Splitでループ構造が発生し、配信が終了しない

Decision Splitによる分岐は柔軟に設計できる反面、ミスも発生しやすい要素です。とくによくあるのが、「条件を満たさなかった場合にWait→再評価→分岐へ戻る」というループ構造です。

このような設計では、「いつまで条件を再評価し続けるか」という出口の基準が曖昧なままだと、ユーザーが何度も同じ箇所をループし、ジャーニーを抜けられなくなる恐れがあります。

検証時に見逃しやすいこの問題は、本番運用で数日〜数週間後に気づくケースも。あらかじめ「分岐回数が一定を超えたら強制終了する」「特定期間が経過したら終了する」などの制御条件を組み込んでおくと安全です。

Exit Criteriaを設定せず、ユーザーがジャーニー内に残り続ける

ジャーニー終了の条件として設定できる「Exit Criteria」は、ループ構造を用いる設計ではとくに見落とされがちなポイントです。これを設定し忘れると、「条件未達だったが、ジャーニーから外れていない」といった事態が起こります。

結果として、配信済みに見えても、ユーザーは本来のゴールに到達しておらず、フォローも未実施のまま滞留してしまいます。たとえば「7日以内にクリックがなければ離脱」「購入があれば終了」といった明確な基準を設けるだけで、こうした滞留を防ぐことが可能です。

また、再エントリーを許可しているジャーニーでは、Exit Criteriaを併用することで再入場との整合性も保ちやすくなります。

「再エントリー設計」に強くなるための2つの原則

再エントリーは、Journey Builderの中でも誤解されやすい機能のひとつです。便利ではありますが、意図と設定がずれていると、「配信されない」「思わぬタイミングで再入場する」といったトラブルを招きます。

ここでは、再エントリーを正しく扱うために押さえておきたい2つの視点を整理します。

再エントリーモードの違いと設計意図の合わせ方

再エントリーの設定には、「再エントリーなし」「完了後に再エントリー可」「いつでも再エントリー可」の3種類があります。それぞれ挙動が異なるため、ジャーニーの目的に応じて適切に選ぶ必要があります。

たとえば、一度限りのキャンペーンでは「再エントリーなし」、継続的なフォローアップには「いつでも再エントリー可」が適する場合があります。ただし、設定だけで判断するのではなく、「どの状態のユーザーを再入場させたいのか」という設計意図を明確にしておくことが重要です。

また、ジャーニー単体ではなく、全体の施策フローの中でどのタイミングで再参加させるかを決めることで、より整合性のある運用が実現できます。

バージョン更新と再エントリーの挙動の関係に注意する

Journey Builderでは、ジャーニーを更新すると新しいバージョンとして扱われ、再エントリーの挙動にも影響します。設定によっては、旧バージョンに参加していたユーザーが、新バージョンにも再入場してしまうことがあります。

このとき、再エントリーモードや分岐条件、Waitのタイミングが異なっていると、配信の重複やタイミングのずれが発生しやすくなります。

「なぜか一部のユーザーだけ再配信された」「ゴール未達でもジャーニーを抜けた」といった現象が起きた場合、バージョン間の整合性に問題があることも。ジャーニーの更新時には、再エントリー設定とエントリーロジックの整合を確認し、必要に応じてジャーニーを新設する判断も視野に入れておきましょう。

複雑な分岐とループ構造を整理する3つの視点

Journey Builderの自由度は高いものの、分岐やループを多用すると設計者自身が構造を見失うこともあります。とくに、複数のWaitやDecision Splitを組み合わせたジャーニーでは、「どこに戻るのか」「どう進むのか」が見えづらくなりがちです。

ここでは、構造を整理し、流れを見失わずに設計するための3つの視点を紹介します。

「フローチャート図」で全体構造を可視化する

キャンバス上だけで設計を進めると、分岐やループが増えるほど構造が把握しづらくなります。こうしたときは、一度フローチャートとして全体を図解すると効果的です。

LucidchartやMiro、draw.ioなどのツールを使えば、分岐やWait、ループの位置関係が可視化され、設計ミスにも気づきやすくなります。また、チーム内での共有やレビューにも活用でき、意図の伝達もスムーズです。

図解によって「出口がないループが存在していた」といった潜在的な問題にも気づけるため、複雑な設計を行う際にはとくに有効です。

「ゴールから逆算する」設計で分岐をシンプルに

配信内容の設計に入る前に、「このジャーニーで何を達成したいのか」というゴールを先に決めることが、分岐設計をシンプルに保つコツです。

ゴールが不明確なままでは、「あれも必要かも」「この条件も入れておこう」と枝分かれが増え、構造が複雑になりやすくなります。一方、「3日以内にクリックしたユーザーを優遇したい」と明確に目的を定めれば、そのために必要な分岐だけに絞れます。

現場では、最初の配信だけを決めて後から組み立てる進め方になりがちですが、そうした手法では構造の歪みが生じやすくなります。ゴールから逆算して分岐を設計することで、全体の整合性と運用のしやすさが向上します。

「属性による分岐とWaitの併用」でタイミング制御を最適化
ユーザーに最適なタイミングで配信するには、「属性による分岐」と「待機時間の設定」を組み合わせた設計が効果的です。

たとえば「購入回数」や「会員ランク」に応じて内容を変えるだけでなく、それぞれの属性に対して適切なWait時間を設定すれば、「リピーターには翌日、初回購入者には3日後」といった自然な流れの配信が実現します。

Wait by Attributeを活用すれば、柔軟なタイミング調整が可能になり、ループ構造や再エントリーが絡むジャーニーでも、ユーザー体験を損なわずに配信を進められます。設計に迷ったときは、「誰に・いつ・どう届けるか」という基本に立ち返ることが大切です。

ループ活用を成功させるための2つの運用設計ポイント

ループ構造を上手に活用できれば、ユーザーの反応に応じた柔軟なアクション設計が可能になります。ただし、制御が不十分なまま運用を始めると、同じ顧客に繰り返し配信されるなど、かえって悪影響が出ることもあります。

ここでは、ループを安心して活用するために意識しておきたい設計ポイントを2つ紹介します。

ループ再配信の「インターバル管理」と「条件クリア」の設計法

ループ設計では、「いつ再配信するか」「何を条件に再配信するか」が重要です。たとえば「購入がなかったユーザーに3日後リマインドメールを送る」といったシナリオでは、Wait設定だけでなく、再配信条件がリセットされているかの確認も欠かせません。

実際には、データ更新のタイミングがずれて、前回と同じ条件でループが繰り返されてしまうトラブルもあります。

これを防ぐには、ループの入り口と出口で条件を整理し、「何回までループさせるか」「今が何周目か」といったログを残す工夫も有効です。また、「最大3回まで」など明確な制限を設けておくと、運用時の判断もスムーズになります。

「非達成者フォロー」など、ループ外の設計もあらかじめ組み込む

ループ構造の設計に集中しすぎると、目的を達成できなかったユーザーに対する設計が抜けがちです。リマインドを繰り返しても反応がなかった場合、次のアクションをどう設計するかをあらかじめ用意しておくことが大切です。

たとえば、「クリックがなければLINEへ移動」「3回開封されなければ休眠フォローに切り替える」といった分岐を事前に組み込むことで、ユーザーごとの反応に応じた施策展開が可能になります。

また、こうした設計があることで、1つのジャーニーに過剰なロジックを詰め込まずに済み、全体の設計もシンプルで見通しやすくなります。ループに依存しすぎず、次のチャネルやステージへ自然につなぐ工夫が、安定した運用の鍵を握ります。

まとめ

Journey Builderの再エントリーやループ設計は、一見シンプルに見えても、わずかな設定ミスが大きな配信トラブルを引き起こす要因になり得ます。とくに複雑な分岐や長期的なフォロー設計を行う場合、意図しないループや重複配信といったリスクへの配慮が欠かせません。

一方で、「再エントリーモードを設計意図に合わせる」「ループの制御条件を明確にする」「分岐構造をゴールから逆算して整理する」など、基本に忠実な設計を行うことで、多くの問題は未然に防げます。

また、図解による構造の可視化や、非達成者への脱出口を設ける工夫によって、チーム内での設計共有や改善のしやすさも高まります。

Journey Builderは自由度が高い分、操作や設定だけに頼らず、「なぜこの構成にしたのか」という設計意図を常に持つことが成功のカギになります。もし現在の配信設計に不安がある場合は、本記事の視点をもとに、一度構成を見直してみてはいかがでしょうか。

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