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国民健康・栄養調査とは オープンデータの特徴や活用方法を解説

国民健康・栄養調査とは?

国は「国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的」として、「国民健康・栄養調査」を毎年行っています。なんと昭和20年(1945年)から「国民栄養調査」の名前で行われており、現在データを見ることができるのは昭和22年(1947年)からとなっています。
平成15年(2003年)から「国民健康・栄養調査」に名前を変えています。もともと戦後の食糧難の時代に海外から食糧援助をもらう目的で「連合国軍司令部(GHQ)」から指令されたものでした。最初は東京都民だけの調査で始まりましたが、昭和25年(1950年)からは全国調査に拡大されました。GHQの指令書の日本語訳が下記のURLで見ることができます。しっかり「~スベシ」と命令されています。

https://www.nibiohn.go.jp/eiken/chosa/kokumin_eiyou/GHQ_japanese.pdf

さて、はじめは食糧難の中で行われたので、「栄養がどれだけ足りているか?」が主眼になっています。
しかし、その後は皆さんもご存知のように日本は見事に経済復興を成し遂げました。そして食糧事情は改善し、高度経済成長を経て、飽食の時代となったのは周知のことと思います。
この時代の変化に伴って調査項目も様々に変化してきました。
現在、公開されているデータは令和元年のものです。令和2年と令和3年の調査は残念ながらコロナ禍のため中止とされています。

「国民健康・栄養調査」ではオープンデータとして何が分かる?


まず、令和元年(2019年)の調査結果を見てみましょう。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html

このページには、令和元年の調査結果のポイントが書いてあります。以下の3つです。

  1. 食習慣・運動習慣を「改善するつもりはない」者が4人に1人
  2. 喫煙及び受動喫煙の状況については改善傾向
  3. 非常食の用意の状況には地域差がある

今回の調査で厚生労働省が注目した3項目のようです。これだけでも、マーケティングに使える要素があるのですが、後述するとして、さらに詳しいデータを見てみましょう

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf

PDFで41ページに及ぶ、資料ですが、これが、ポイントにまとめられる前の「概要」です。さらに大きなデータがあるのですが膨大過ぎるので、ここからわかる「調査項目」を見てみましょう。

  1. 食習慣や運動習慣に関するデータ。これには外食や持ち帰り弁当総菜の利用頻度も含まれます。また、食習慣や運動習慣を改善する際の妨げとなる項目も調査されています。
  2. 身体状況のデータ。これには肥満・やせ、糖尿病の状況、血圧や血中コレステロールの値の調査があります。
  3. 食事摂取の状態のデータ。食塩摂取量や野菜の摂取量の調査です。
  4. 運動状況のデータ。運動習慣の状態や1日の歩数、睡眠の状態の調査です
  5. 飲酒・喫煙のデータ。飲酒・喫煙量や禁煙の意思の有無、受動喫煙の機会の状況が調査されます。
  6. 歯・口腔のデータ。現在の歯の本数や、咀嚼がしっかりできるかどうかが調査されています。
  7. 「地域とのつながり」のデータ。一見、「健康・栄養」とは関係なさそうではありますが、地域で「町内会」やスポーツやボランティアなどの活動に参加しているかどうかの調査で、いわゆる「健康的な社会生活」の指標です。

かなり、「日常的」な生活に関する項目が並んでいます。次に、これらのデータが実際どのように使われているのかをお話しします。

「国民健康・栄養調査」はどのように使われているか?


厚労省のHPなどで公開されているのは、残念ながら、地域別になっているのはごく少数です。しかし、各自治体は各々のデータを持っていて、それぞれの地域でのデータをまとめたものをオープンデータとして公開していることがあります。
そして、その自治体の健康管理行政に役立てたり、健康維持・向上のための施策を作るのに利用したりしています。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/kenkozukuri/21/naiyo/document.files/0004_20180719.pdf

また、平成28年(2016年)には、いくつかの結果が都道府県別で公開されており、その時点での都道府県の違いを知ることが出来ます。
このように国のみならず各自治体も、この調査を施策に利用しているのです。

オープンデータ「国民健康・栄養調査」を企業や医療機関で利用をするには?


さて、日常の生活が浮き彫りにされているこの調査をどのように利用したらよいのでしょうか?

まず、非常食なども扱っている食料品会社にとっての利用価値を考察してみましょう。
一番新しい調査結果の令和元年(2019年)でピックアップされている結果の一つである「非常食の用意の状況の地域差」を見てみましょう。
災害時に備えて非常用食料を用意している世帯の割合は、最も高い地域は関東Ⅰブロック(埼玉・千葉・東京都・神奈川県)で72.3%、最も低い地域は南九州ブロック(熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)で33.1%であったとのことです。
これだけでも、非常食を用意していない地域へのマーケティングに利用できます。南九州地方の方には、関東との違いを認識していただいて、備蓄用の「非常食セット」の購入の意識づけを行うことができます。

次に、コロナ禍でかなり厳しい経営を強いられた「スポーツジム」などを運営する会社にとっての利用価値を考えてみましょう。
前述のように、「運動習慣の改善の意識と改善を妨げる因子」の調査も行われています。そのデータをもとに運動習慣改善を妨げる因子を排除した試みをすることによって「スポーツジム」に入会しようとするモティベーションを向上させることができます。

2019年の調査結果では運動習慣の改善を妨げる要因として「仕事(家事・育児等)」が忙しくて時間がないことが最も多くあげられていました。「24時間営業フィットネスクラブ」がコロナ前まで増加していましたが、その経営方針を後押ししたものは、このデータだったかもしれません。また、コロナ後の経営方針もこの調査結果をもとに展開することができます。

医療機関での利用の仕方は?

病院では主に管理栄養士が栄養管理を行っています。管理栄養士によって行われる「栄養指導」は診療報酬も得られるので、盛んに行われております。そこで必要なのが患者さんを納得させるためのデータです。この件について、これから更に増加していくと考えられているわれている「心不全患者」を例に考えてみましょう。

「心不全患者」の健康維持には食塩制限が必須です。しかし、患者さんはなかなか食塩摂取を控えるのが難しいのが現実です。この調査では、食塩摂取量は地域ブロック別にまとめられ、複数年のデータを連結させることでどのような経過になっているかを患者さんに示すことができます。
そして、自分がどの位置にいるのかも認識させることができます。オープンデータの情報だけでも患者さんに有用な情報を与えることが可能で、効率的な栄養指導ができるのです。
その他、高脂血症の状態、糖尿病の状態など様々な健康データと、食生活の状態も公開されています。それらを組み合わせて更に効率的な栄養指導を行うことができるようなります。

まとめ

「国民健康・栄養調査」は、日本国民の健康状態と生活が浮き彫りにされるようなオープンデータで、一般の方々が見ても興味深いデータが満載です。
その経時変化や、他のデータと統合することにより、さまざまに分析することが可能です。ぜひ、皆様もこのデータに触れてみてください。

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