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受療行動調査とは?オープンデータの特徴や活用方法を解説

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厚生労働省が実施する医療に関する統計調査は、医療施設面から見た実態調査が大半です。
しかし、近年の疾病構造の変化や高齢化の進展を踏まえて、実際に医療を受けている患者目線に立った調査が求められます。

受療行動調査は、一般病院を利用する患者を対象にしたアンケート調査です。患者のリアルな声が聴けるので医療の利用者側である患者の情報が把握でき、現在の医療が抱える課題が明確になります。

この記事では、受療行動調査におけるオープンデータの特徴や活用方法について解説します。患者の想いを医療従事者へと繋げて、患者のニーズを満たした医療を実現できるよう、ぜひ参考にしてみてください。

患者視点の受療行動調査とは?


 
厚生労働省が実施する、全国の医療施設を利用している患者を対象とした、受療に関する状況や満足度に係る調査が「受療行動調査」です。患者の医療に対する認識や行動を明らかにし、医療行政の基礎資料を得ることを目的としています。

受療行動調査の概要

全国の一般病院を利用する外来・入院患者が対象です。病院において配布される調査票に、患者本人が記入することを原則としています。記入した調査票は、病院を介さず厚労省に郵送して提出します。
受療行動調査の概要は以下のとおりです。

調査開始年月 平成8年10月
調査対象 ・約15万人
・全国の一般病院を利用する外来・入院患者
・在宅患者は対象外
調査年 3年に1度
調査日 10月中旬の3日間のうち、厚生労働省が病院ごとに指定した1日
提出期限 11月末

 

調査票に記載される調査事項

受療行動調査の調査票は「外来患者票」「入院患者票」の2種類で、アンケート形式です。
主な質問事項は、以下のとおりです。

調査票 質問事項
外来患者票 ・診察までの待ち時間
・診察室で医師に診てもらった時間
・来院の目的
・初めて治療を受けた医療施設
・初めて受診した際の自覚症状
・症状を自覚してから受診するまでの時間
・病院から受けた説明は十分だったか
・病院を選んだ理由
・満足度
入院患者票 ・病院や診療所の情報の入手源
・入院が必要と判断されてから入院するまでの期間
・医師の説明に対する疑問や意見を伝えられたか
・今後の治療をどうしたいと思うか
・退院が許可された場合に自宅療養ができるか
・当病院における入院の感想
・満足度

 

調査対象となる病院の5つの種別

受療行動調査の調査対象となる「病院」は、医療法や病床数によって以下の5つに分類されます。
調査結果の中では、病院種別ごとに統計が集計され、各医療機能が抱える課題を特定しやすくなっているのが特徴です。

病院種類 定義
特定機能病院 医療法の規定する特定機能病院として厚生労働大臣の承認を得た病院
大病院 ・特定機能病院、療養病床を有する病院を除くいた一般病院
・病床数が500床以上の病院
中病院 ・特定機能病院、療養病床を有する病院を除くいた一般病院
・病床数が100床〜499床の病院
小病院 ・特定機能病院、療養病床を有する病院を除くいた一般病院
・病床数が20床〜99床の病院
療養病床を有する病院 長期療養が必要な患者を入院させるための病床を有する病院

 

受療行動調査で公開されるオープンデータの内容


厚生労働省に提出された調査票は集計され、翌年9月頃に「概数」、翌々年に「確定数」として結果が公表されます。
受療行動調査で集計される結果は、以下の11項目です。

統計項目 内容
病院を選んだ理由 外来・入院別の病院を選んだ理由
ふだん医療機関にかかる時の情報の入手先 外来・入院、年齢層別に医療機関を受診する際の情報の入手方法
予約の状況、診察等までの待ち時間、診察時間 ・病院の種類別の直近3年分の予約状況
・病院の種類別、初診再診別の診察、治療、検査までの待ち時間
最初の受診場所 病院の種類別、直近3年分で最初に受診した病院か否か
来院の目的 ・病院の種類別、来院の目的
・主な傷病分類別の診療内容
自覚症状 ・今日受診した病気や症状を最初に医師に診てもらった際に自覚症状があったか
・自覚症状がなく、受診した理由
・自覚症状の有無別の受診までの期間
・受診までに時間がかかった理由
・主な傷病分類別の自覚症状の有無
入院までの期間、入院までに時間がかかった理由 ・病院の種類別の入院までの期間
・入院までに時間がかかった理由
医師からの説明の有無、程度、説明に対する疑問や意見 ・外来・入院、病院の種類別の医師からの説明の有無と程度
・医師からの説明に対する疑問や意見を伝えられたか
今後の治療・療養の希望 ・病院の種類別の今後の治療に関する希望
・病床の種類別の今後の治療に関する希望
・性別・年齢別の今後の治療に関する希望
退院の許可が出た場合の自宅療養の見通し ・病院の種類別の自宅療養を可能にする条件
・自宅療養の見通しの年次推移
・病床の種類、同居の有無別の自宅療養を可能にする条件
・性別、年齢別の自宅療養を可能にする条件
満足度 ・病院の種類別の病院の満足度
・病院の満足度の年次推移
・項目別の満足度
・年齢別の満足度
・入院期間別の満足度

 

受療行動調査におけるオープンデータの3つの活用方法

患者のリアルな声が反映された受療行動調査のオープンデータは、医療機関の経営者にとって有益な情報源です。患者が医療機関を選ぶ基準や医療機関に関する情報の入手経路が分かるので、患者のニーズを満たした医療機関を構築するのに活用できます。

受療行動調査におけるオープンデータの主な活用方法は、次の3つです。

医療機関のホームページの拡充

医療機関に来院してもらうためには、患者が受診先の医療機関を選定する際の選択肢の中に、自院が含まれている必要があります。受療行動調査の結果を用いることで、患者が医療機関を選ぶ際に最も利用する入手元に的を絞ったマーケティングが可能です。

令和2年度の受療行動調査の結果によると、医療機関に関する情報の入手元は「家族・友人・知人による紹介」が約7割を占め、「医療機関のホームページ」が約2割を占めました。この結果から、初めにインターネットで医療機関の情報を入手した2割の人が、実際に診療を受けて、家族・友人・知人に広めていくという以下のような情報の入手経路が読み取れます。


したがって、情報の入手経路の大元となるインターネットで情報を得る人の数を増やすことができれば、口コミは数珠繋ぎで拡散していき、顧客の獲得に繋がるのです。インターネットで情報を得る人の数を増やすためには、医療機関のホームページの検索順位を上げるためのSEO対策や内容を充実させる工夫が欠かせません。

医療機関の経営者に向けて、受療行動調査の結果からホームページの重要性を訴え、多くの人の目に触れるためのサービスを提供できます。サービスの内容としては、SEO対策の代行や診療内容に関する記事執筆などが挙げられるでしょう。

インターネットを検索する患者からの流入数を増やしたとしても、患者からの評価が低ければ、良い口コミは広がっていきません。患者のニーズを満たした設備や診療内容に整備することで、さらなる患者の獲得に繋がるでしょう。

患者の需要を満たした医療体制の強化

受療行動調査では、患者が病院を選ぶ理由も調査しています。令和2年度の受療行動調査の結果によると、外来・入院ともに専門性の高さや医師や看護師の親切さ、建物の綺麗さ等を患者は重視していることが分かります。

したがって、医療機関に対して以下のようなサービスを提供することで、患者の需要を満たした医療の提供体制を整えるサポートが可能です。

  • 専門性の高い医療資格を取得するための講座
  • 医師や看護師のコミュニケーションスキルを向上させるための講座
  • 綺麗で清潔な建物へのリフォーム事業
  • 医療機関までの無料シャトルバスの運用

自宅療養を可能にするためのサービス考案

高齢化が進むにつれて在宅医療のニーズも急増しています。自宅療養ができる患者が増えれば、医療機関の病床数不足が解消され、適切な医療が受けられない患者を減らすことが可能になります。

受療行動調査では、自宅療養の可否や可能にするための条件を調査しています。在宅医療を希望する患者や病床数に空きがなくて困っている医療機関に対して、自宅療養を可能にする条件を満たすための下記のようなサービスを提供できます。

  • 入浴や食事などの介護サービス
  • 自宅と病院間の送迎
  • 緊急時に近隣の医療機関に連絡できる通信機器の販売
  • 自宅療養のための生活指導
  • 療養に必要なベッドや車椅子の販売

まとめ

受療行動調査は、厚生労働省が実施する医療機関を利用する患者に対するアンケート調査です。
患者が医療機関を選ぶ基準や医療機関の情報の入手経路、医療機関の満足度が集計されます。

受療行動調査のオープンデータから患者の医療に対する認識や行動を把握することで、潜在ニーズを特定し、医療機関の経営者や患者に対して的確にアプローチできるようになるでしょう。

高齢化社会においても国民が適切な医療を受けられる世の中にするために、この記事で紹介した活用方法を参考にしてみてください。

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