医療機能情報提供制度とは オープンデータの特徴や活用方法を解説
目次
「近くの医療機関を選ぶための情報を一覧で確認できたら便利なのに…」
「各医療機関のホームページの内容の粒度にばらつきがあり、分かりづらい」
このような悩みをお持ちの方のために、2006年に導入されたのが「医療機能情報提供制度」です。この制度により、各都道府県が医療機関の医療機能を公表することによって、バラツキのない情報提供の仕組みが構築されました。
この記事では、病院機能情報提供制度のオープンデータの活用を検討している方に向けて、医療機能情報提供制度の詳細やオープンデータの活用方法を解説します。
最後まで読むことで、病院機能情報提供制度により公表されたデータを、自社サービスにどう活用できるのかが理解できます。
医療機能情報提供制度とは
医療機能情報提供制度とは、医療を受ける患者が適切に病院を選択できるように支援するために平成18年に作られた制度です。制度によって義務付けられている内容は次の2点です。
- 各医療機関は、医療機能に関する情報を各都道府県知事へ報告する
- 各都道府県知事は報告を受けた情報を住民・患者に対して提供する
病院から都道府県へ情報を報告し、情報を得た都道府県が医療を受ける患者に対して情報を開示する流れとなります。
また、都道府県知事から医療機関に対し、報告のための催促や報告内容の是正を命ずることができます。万が一違反した場合は、医療機関開設の取り消しや医療機関閉鎖を罰則として課すことが可能です。
全国統一化|医療機能情報提供制度における報告・公表の移行
令和6年より、各医療機関から医療情報の報告を受け、公表を行う機関が、各都道府県から厚生労働省へと変更になります。これにより、都道府県によってバラツキがあった報告・公表方法が全国で統一され、さらに医療機関・国民が利用しやすくなります。
現行と変更後の報告・公表方法の違いは次の通りです。
項目 |
現行 |
令和6年以降 |
---|---|---|
報告・公表機関 | 各都道府県 | 厚生労働省 |
報告システム | 各都道府県の報告システム | 医療機関等情報支援システム(G-MIS) ※令和6年1月以降 |
公表システム | 各都道府県の医療情報ネット | 全国統一システム ※令和6年4月以降 |
医療機能情報提供制度における報告内容
全国の医療機関の管理者は、省令及び告示で定められた事項を、所在する都道府県に報告しています。また、医療機関名称や所在地などの基本情報に変更が生じた場合は、速やかに都道府県に報告する必要があります。
医療機能情報提供制度において報告されるオープンデータの内容は次の通りです。
基本情報
(1)医療機関名称
(2)医療機関の開設者
(3)医療機関の管理者
(4)医療機関の所在地
(5)床種別及び届出・許可病床数
(6)診療科目(標榜科目)
(7)併設している介護関係施設等
病院(診療所)へのアクセス
(8)医療機関への交通手段
(9)医療機関保有の駐車場
(10)住民案内用電話番号・FAX番号
(11)ホームページアドレス
(12)電子メールアドレス
(13)診療日
(14)診療時間
(15)外来受付時間
(16)予約診療
(17)時間外(休日夜間)対応
(18)面会時間
院内(診療所内)サービス・アメニティ
(19)医療相談に対する対応
(20)院内処方・院外処方
(21)入院食の情報
(22)外国語対応
(23)聴覚障害者に対する配慮
(24)視覚障害者に対する配慮
(25)車椅子利用者に対する配慮
(26)院内売店等の情報
(27)受動喫煙防止対策
費用負担
(28)医療保険・公費負担等の取り扱い
(29)選定療養
(30)治験の実施
(31)費用の支払いに関する事項
診療内容、提供保健・医療・介護サービス
(32)学会認定医・専門医
(33)保有する施設設備
(34)対応可能な疾患・治療内容
(35)対応可能な短期滞在手術
(36)専門外来
(37)健康診断、人間ドック、健康相談の実施
(38)対応可能な予防接種
(39)対応可能な在宅医療
(40)対応可能な介護保険サービス
(41)セカンド・オピニオン対応
(42)地域医療連携体制
(43)地域の保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携体制
(44)病院(診療所)の人員配置
(45)看護配置(入院基本料)
(46)法令に基づく義務以外の医療安全対策
(47)法令に基づく義務以外の院内感染対策
(48)クリティカル・パスの実施
(49)診療情報管理体制
(50)情報開示体制
(51)症例検討体制
(52)治療結果情報
(53)患者数
(54)平均在院日数
(55)患者満足度調査
(56)病院機能評価
(57)産科医療補償
医療機能情報提供制度の活用方法
令和6年より、病院機能情報提供制度の公表システムが全国で統一されることにより、さらにオープンデータの二次利用がしやすくなります。病院機能情報提供制度におけるオープンデータには、どのような活用方法があるのか解説します。
顧客囲い込みに繋げることができる
病院機能情報を収集することで新規開業クリニックや新規開設病院の情報を収集することに繋がります。医療機関と長く関係を構築するには開設当初から関わりを持つことが非常に大切です。なぜなら、顧客心理として開設当初から関わった業者担当者に対しては恩を感じ、ある種の絆が芽生えるケースがあるからです。
開設準備の際の苦難を共に乗り越えた間柄であれば、そこには連帯感が生まれ、信頼関係が生まれているケースがあります。そうなれば、その後の関係性を継続しやすいと言えるでしょう。つまり、顧客囲い込みに繋げることができるというわけです。
病床数・患者数把握からターゲット選定に繋げる
医療機器ないしは医薬関連の営業マンが医療機関をターゲットに自社の商材を提案する際にまず大事なことは、適切なターゲットを決めることです。その意味で病床数・患者数を把握することは、いわば当たりを付けることに繋がります。病床数が多く、かつ患者数が多い=購買力を持っている、と考えても差し支えありません。
数多ある医療機関の中から、病床数・患者数を根拠として購買力のある病院を絞り込むというわけです。当然、購買力がなければ医療機器投資や医薬投資に踏み込むことは到底できませんから、購買力のある医療機関を選定することは適切なターゲット選定に繋がるという意味で非常に有意義なのです。
開設者や管理者を把握することでキーマン把握へと繋げる
医療業界で商談を行う際に極めて大事なことは、キーマンを把握することです。たとえどんなに商談が優位に進み、顧客に対して魅力的な提案ができたとしても、対象者がキーマンでなければ次の展開に発展させることは難しいです。なぜなら、商談の決定権は、キーマンが持っている可能性があるからです。
特に医療機関であれば、院長や事務長、看護部長や理事長等がキーマンになっているケースが多くあります。病院機能情報提供制度を活用して医療機関のキーマンを調査することは非常に有意義です。一般的に医療機関の開設者や管理者が商談の決定権を持った決裁者であることが多いため、開設者や管理者を調べることは価値があるわけです。
いちはやく院長や事務長等の中からキーマンを探し出し、対象者に対して適切なアプローチを行うことができれば、他社より先手を打つことができ、商談で優位なポジションを確立することができるでしょう。
地域医療連携体制を把握し、連携施設へ効率的に営業展開する
地域医療連携体制を把握することで、連携施設が把握できます。これを把握することで、効率的な営業展開が可能となるのです。例えばA病院に入っている医療機器を、系列のB病院で導入検討する場合があります。これはグループ病院や地域医療連携体制を取っている病院の間で起こりうる事象です。
この事実を上手く活用し、地域医療連携体制を取っている病院をメインに医療機器等を提案していくと、上手くいけば数珠つなぎのように機器導入がスムーズにいくことがあります。その意味で地域医療連携体制を把握することは非常に有意義なのです。
まとめ
病院機能情報提供制度のオープンデータは、各都道府県が公開している信憑性の高いデータです。このオープンデータを活用し、営業活動を効率的に行うことは十分に可能といえます。
1人でも多くの人々がこのオープンデータを有効活用できれば、医療を受けるべき患者の生活がより豊かになっていき、同時に医療機関における医療の質の向上が期待されるでしょう。
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