病院経営に使えるビッグデータ・オープンデータとは?
目次
「病院経営」の難しさ
このところ、医療費抑制のために診療報酬の上昇はほとんどなく、病院経営は非常に厳しいものとなっております。「医は仁術」と言われましても、「人材集約産業」である病院はその従事者の生活を守る義務もあります。
経営が赤字では医療従事者のお給料はおろか、医療機器を買い替えたり、最新の機器を導入したりする事さえできません。多くの企業は、この経常収支が黒字になることを目指し、活動しています。原価が上がればそれを製品やサービスに転嫁することもできます。
2020年から吹き荒れているコロナ禍の中では事業継続が困難となり、大規模なリストラが行われたのも皆さんご存知の通りです。不採算の店舗は閉店してコストカットを行います。「いきなり!ステーキ」の急速な店舗展開とその後の業績不振による多数の店舗の閉店はそのいい例です。このようにして事業を見直しながら、事業規模を拡大し市場を拡大してさらに利益を追求します。
しかし医療は、ある程度市場規模が規定されます。医療費は上昇すぎないようにコントロールされるからです。それに、サービス・商品を買う人の数をマーケティングでは増やすことは出来ません。人為的に病気の人を増やすことは出来ないのですから。そう考えると限られた「顧客数」を奪い合う業界の図式が見えてきます。そのため、奪い合いに負けた病院はどんどん経営的に厳しくなってきます。
奪い合いに負けたからといって、不採算の事業所を「明日から閉院です。」と切ることも容易ではありません。2019年に「公立・公的病院の再編統合リスト」が発表された時、明らかに経営効率が悪いとわかるような病院も再編統合に大きな反対の声が上がったことは皆さんもご存知でしょう。
「病院経営」は非常に難しいことが、皆さんも理解できるでしょう。
「病院経営」の考え方
「黒字を出す」のが経営の目標であることは皆さん確認できたと思います。さて、病院を黒字にするにはどのようなことを考えたらいいでしょうか?
病院経営にも、一般企業と同じような問題があります。それは経営層と一般職員の考え方の差です。職員は「ある程度余裕のある状態」を好みます。すなわち「ほどほどの患者数」を望みます。
これは医師も看護師も同じ考えでしょう。しかし、病院の人材は「ほぼ満床」の状態を想定して数が計算されます。そうでないと様々な保険点数を取るための施設基準を取得することができません。ですからまずは患者さんがたくさんいることが第一条件です。病院は「医師」が患者を診療する事ことで殆どの収入を得ます。ですから各々の医師が、患者さんを集めることをしっかりプランニングすることが必要です。
各診療科の責任者でさえ経営を考えない人も多いのが医師の「あるある」です。まずは診療科の責任者から研修医まで、「病院経営とは何か?」をしっかり考えていただく事が必要です。
「経営は二の次」という考え方は「お給料はいらない」と言っているのと同じです。という事もしっかり認識していただく事がひつようです。そこで初めて「集患」に病院全体で動くことができるのです。
「集患」のためのデータの集め方―オープンデータを利用するには?―
「集患」のためにはどのようなデータが必要でしょうか?まずは現状把握です。自院の各医師が診療している患者さんの数、疾患分類などのデータを分析します。
それらの患者さんはその医師の専門領域に合っているか?
また、専門の関連領域の診療も行っているのか?それを踏まえて医師一人当たりの収益のデータを見ます。診療科によっては高額な診療材料を使用するところもあるため、「粗利」を比較するほうが良いです。
「粗利」通常、「売上高から仕入れにかかった原価を差し引いたもの」ですが、病院経営では、得られた診療報酬全体から診療材料費・医薬品費を引いたものと考えます。医師一人あたりの診療報酬を出して比較している所は多いと思いますが、これだけでは高額な医薬品・診療材料を使っている診療科が見かけ「稼いでいる」ように見えてしまいます。そのために「粗利」を検討することが必要なのです。
さて、自院の「粗利」は把握できますが、他のライバル病院がどのくらい医薬品や医療材料を買っているのかはどのようにすることができるでしょうか?
多くの公立病院は年間の損益計算書を(P/L)を公開しています。そこから診療材料費や医薬品費を見ればわかります。そこから他の病院がどのくらいの粗利を得ているかが分かり、自院と比較できることとなります。病院経営をしていくには財務諸表をしっかり読めるようになることが求められます。医学部では教えないことですので新たに勉強することが必要です。
ここまでに出てきたオープンデータ
さて、公開された財務諸表も、「公立・公的病院再編統合」で発表された病院リストもオープンデータの一つです。財務諸表は各病院のお財布の中身がはっきりわかりますし、「悪評」高かった再編統合病院データも各病院の強み弱みがはっきりわかるデータとなります。
財務諸表はその他に人件費や一般財源からの繰り入れ、医業収入の他の収入もわかるので、自院のデータとどう違うのかを読み取り、自院の人事計画にも役立てることができます。
また、再編統合病院データは各病院の機能、地域での役割などが含まれておりたとえ自院がそのリストに含まれていなくても、どのような事に注目されてその病院が選択されたか、今後自院が生き残るにはどうしたら良いのかという事を読み取ることができます。また、やはりオープンデータであるDPCデータと病床機能報告と組み合わせれば更に地域での自院の立ち位置、強み弱みを検討することができます。
オープンデータの病院経営での使い方-現状把握に利用する-
先述した、財務諸表、再編統合病院リスト、DPCデータ、病床機能報告データ、これらのオープンデータは、さまざまな活用方法があるので今後さらにお話ししていきます。
経営のPDCAサイクルを回すにはまず、プランを立てなければなりません。その前には現状把握して、今何が問題かを明確にする必要があります。今回再編統合リストに上がってしまった病院もそれを逆手に取り、このオープンデータを元に病院の運営を見直すチャンスだと思えばよいのです。
今回は2019年にそのリストが発表されてすぐにコロナ禍となり、リストに上がった多くの病院が新型コロナ感染症患者を受け入れたため、「やっぱり必要じゃないか」という議論が出ています。しかし、これは一種の「バブル」で、すぐに前のような状態に戻ります。すでに、世の中はコロナ後に向かって動き始めています。
何回も言っていますが、病院でも「赤字」は許されません。一般財源から繰り入れを行ってきた自治体も財源が無くなってきています。病院も経済的に自立しなければなりません。
これらのオープンデータを用いて自院の現状把握をして、生き残りをかけたプランを作っていくことが必要です。
データの収集と整理の方法
オープンデータと言っても、必要なデータはある程度時間と労力をかけて収集しなければなりません。
以前お話しした Chief Data Officer (CDO)を配置してデータ管理部門を設立するのが最もいい方法ですが、なかなかいい人材が見つかるとも限りません。
データ収集・分析を当社にお任せいただくのも一つの手です。
まとめ
病院経営は、診療報酬の抑制により非常に厳しい状況です。医療従事者の生活を守り、質の高い医療を提供するためには、経営の黒字化が不可欠です。
医師や職員が経営について理解し、病院全体で「集患」を目指すことが重要です。経営層と職員の考え方の差を埋め、患者数を増やし、医師の診療による収益を最大化することが求められます。
病院経営にはデータ分析も重要です。自院の診療報酬や「粗利」(診療報酬から医薬品費や診療材料費を差し引いた額)を把握し、他院と比較することで、経営改善の手がかりを得ることができます。財務諸表や再編統合病院リストなどのオープンデータを活用し、現状を把握しつつ、病院経営の見直しと改善を図る必要があります。
最終的に、病院も経済的に自立することが求められます。オープンデータを活用し、現状把握を行い、生き残りをかけた経営プランを立て、PDCAサイクルを回しながら経営改善に取り組むことが不可欠です。
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