学校保健統計調査とは オープンデータの特徴や活用方法を解説
目次
- 1. 学校保健統計調査とは
- 2. 学校保健統計調査のオープンデータの内容
- 2.1 主な疾病・異常等の被患率
- 2.2 年齢別 裸眼視力 1.0 未満の者、むし歯(う歯)の者の割合
- 2.3 年齢別 主な疾病・異常被患率の割合(裸眼視力,むし歯(う歯)以外)
- 2.4 主な疾病・異常等の推移総括表(令和元年度まで)
- 2.5 身長・体重の平均値及び肥満傾向児及び痩身傾向児の割合
- 2.6 身長の推移
- 2.7 体重の推移
- 2.8 肥満傾向児の割合の推移
- 2.9 痩身傾向児の割合の推移
- 3. 学校保健統計調査の活用方法
- 3.1 市場ニーズのある医療製品を選別する
- 3.2 ターゲットとなる年齢層を設定する
- 3.3 日本の医療問題を把握する
- 4. まとめ
全国の子どもの発育及び健康状態を把握できる統計調査の中では、唯一の公的調査である学校保健統計調査。身長・体重や栄養状態を把握することで、子どもの健康を管理し、必要に応じて施策の立案にも役立てています。
今回は「学校保健統計調査」におけるオープンデータの特徴や活用方法を、令和2年度のデータを基に解説します。
企業の担当者が着目すべきポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
学校保健統計調査とは
学校保健統計調査とは、学校に通う児童・生徒の健康状態や発育状態を明確にすることを目的とした調査のことを指します。
幼稚園から高校生までを対象に毎年実施されるもので、本調査で得られたデータは学校保健行政の施策を検討する際に活用されています。また学校保健の資料として多方面で活用されています。
学校保健統計調査についての概要はこちらです。
調査対象 | 満5歳~17歳の児童・生徒約400万人 |
調査期間 | 毎年4月1日~6月30日 |
活用例 | ・学校保健安全法の改定 ・学校給食法の改定 ・学校保健行政の施策立案 |
学校保健統計調査のオープンデータの内容
学校保健統計調査の内容は、大きく「健康状態」と「発育状態」に分けられます。健康状態では、子どもの発症率が高い疾患の割合、発育状態では身長や体重といった尺度の推移を調査しています。主な調査な内容は以下の通りです。
【健康状態調査】
- 主な疾病・異常等の被患率
- 年齢別 裸眼視力 1.0 未満の者,むし歯(う歯)の者の割合
- 年齢別 主な疾病・異常被患率の割合(裸眼視力,むし歯(う歯)以外)
- 主な疾病・異常等の推移総括表(令和元年度まで)
【発育状態調査】
- 身長・体重の平均値及び肥満傾向児及び痩身傾向児の割合
- 身長の推移
- 体重の推移
- 肥満傾向児の割合の推移
- 痩身傾向児の割合の推移
主な疾病・異常等の被患率
疾病区分として以下の項目に分け、幼稚園・小学校・中学校・高等学校ごとの罹患率を示したものになります。年齢区分としては、5歳から17歳の間の子供を対象としています。
①裸眼視力1.0未満の者
②眼の疾病・異常
③耳疾患
④鼻・副鼻腔疾患
⑤むし歯(う歯)
⑥せき柱・郭・四肢の状態
⑦アトピー性皮膚炎
⑧ぜん息
⑨心電図異常
⑩蛋白検出の者
データを見ると①・④・⑤の項目において、いずれも年齢が上がるに連れ、疾患率が高くなる傾向が見られます。年齢にして、8歳から12歳の間で増加していることが分かります。
年齢別 裸眼視力 1.0 未満の者、むし歯(う歯)の者の割合
年齢別裸眼視力 1.0 未満の者、むし歯(う歯)の者の割合をグラフ化しています。裸眼視力 1.0 未満の者は年齢が上がるに連れ、うなぎのぼりで上昇しています。一方、むし歯(う歯)の者は8歳まで上昇傾向となり、その後12歳まで下降。13歳から17歳までゆるやかに上昇傾向となっています。
※1参考:【R2保健】確報値の公表について/年齢別 裸眼視力 1.0 未満の者、むし歯(う歯)の者の割合
年齢別 主な疾病・異常被患率の割合(裸眼視力,むし歯(う歯)以外)
年齢別 主な疾病・異常被患率の割合(裸眼視力、むし歯(う歯)以外)をグラフ化しています(※2)。いずれも6歳までは上昇傾向ですが、7歳から17歳まで下降傾向が見られます。
※2参考:【R2保健】確報値の公表について/年齢別 主な疾病・異常被患率の割合
主な疾病・異常等の推移総括表(令和元年度まで)
上記のデータを総括したデータです。平成22年度から令和元年度までのデータが非常に見やすく示されています。過
去最低(ピンク色)と過去最高(青色)の罹患率が色付けされていますのでひと目で推移が分かるようになっています(※3)。
※3参考:【R2保健】確報値の公表について/主な疾病・異常等の推移総括表
身長・体重の平均値及び肥満傾向児及び痩身傾向児の割合
身長・体重の平均値及び肥満傾向児及び痩身傾向児の割合をグラフ化しています(※4)。幼稚園生5歳から高校生17歳までの男女を対象に、以下の項目についてのデータを割り出しています。
- 身長
- 体重
- 肥満傾向児
- 痩身傾向児
※4参考:【R2保健】確報値の公表について/身長・体重の平均値及び肥満傾向児及び痩身傾向児の割合
身長の推移
身長の推移に関して、昭和23年度から令和2年度までの男女のデータを割り出しています。
同じ年齢の子どもの身長を年度ごとに比較した場合、年々僅かな増加傾向にありましたが、平成6年度を境に横ばいになっています。
体重の推移
体重の推移に関して、昭和23年度から令和2年度までの男女のデータを割り出しています。
同じ年齢の子どもの体重を年度ごとに比較した場合、年々僅かな増加傾向にありましたが、平成13年度を境に減少傾向を辿っています。身長は平成6年度以降に大きな変化が見られないことから、平成13年度以降は痩せていっている傾向にあると言えるでしょう。
肥満傾向児の割合の推移
肥満傾向児の割合の推移に関して、昭和52年度から令和2年度までの男女のデータを割り出しています。算出方法を変更した平成18年度から令和2年度までのデータを見ると、肥満傾向児は減少しています。
痩身傾向児の割合の推移
痩身傾向児の割合の推移に関して、昭和52年度から令和2年度までの男女のデータを割り出しています。痩身傾向児の割合は上がり下がりを繰り返していますが、全体で見ると増加傾向にあります。
学校保健統計調査の活用方法
学校保健統計調査におけるオープンデータを分析することで、現在の日本に住む子どもが抱える課題が年齢ごとに分かります。また、過去のデータと比較することで、日本の技術や文化の変化による影響が垣間見れるかもしれません。
学校保健統計調査の活用方法は次のとおりです。
市場ニーズのある医療製品を選別する
例えば、主な疾病・異常等の被患率のデータを見ると、裸眼視力1.0未満の者に関しては年齢が上がるに連れどんどん上昇していることが分かります。
このことから、視力計や眼圧計などの医療機器の市場ニーズが高くなっていることが浮き彫りになります。であるとすれば、眼科を標榜しているクリニックや病院を中心に眼科向けの医療機器、医薬品を販売展開すれば一定の効果が得られるでしょう。疾患内容を把握することで時流に沿った営業展開が可能となるのです。
ターゲットとなる年齢層を設定する
どの年齢層をターゲットにするかを設定するために有用です。データを見ると高校生の罹患率が圧倒的に多いので、高等学校をターゲットに営業展開することが望ましいと分かるわけです。高等学校をターゲットに据えた上で、あとは事務長や校長先生などといった責任者を中心にお困りごとをヒアリングすれば様々な事柄が見えてくるでしょうし、医療現場の最先端にいる方々の生の声は本データの裏付けをする意味でも貴重な財産となるでしょう。また、本データを持って教育機関関係者に面会することで、会話のネタにもなり得ますので関係構築のためのツールとしても活用可能です。
日本の医療問題を把握する
日本の医療問題を把握しておくことで、時流に沿った営業展開がしやすくなります。
例えば、身長・体重の平均値及び肥満傾向児及び痩身傾向児の割合を見ると、肥満傾向児の割合及び痩身傾向児の割合は直近10年間で増加傾向にあることが分かります。
このことから、生活習慣病患者が増加していることが推察されます。であるとすれば、生活習慣病対策に力を入れている医療機関に対し、肥満か否かを判別するための指標であるHbA1Cが測定できる機器を提案したり、医薬品を提案したりといった戦略が立案できます。あるいは身長計や体重計などの製品も一定の需要があるでしょうから、これらの製品を提案するのも効果が期待できるでしょう。
働き方、生活様式が多種多様になった現代において生活習慣病は根深い問題です。今後も生活習慣病患者は増加の一途を辿るでしょう。従って、生活習慣病患者のお困りを解決できる医療製品のニーズが今後も高まっていくはずです。このように、医療問題を把握することで営業時の切り口が何通りも生まれていくのです。
まとめ
学校保健統計調査のオープンデータは、市場ニーズのある製品の選別やターゲットとなる年齢層を設定するために非常に有意義なデータです。そして、日本の根深い医療問題を正確に捉えるための指標にもなり得るのです。
現代の子供達がどのような病に苦しみ、どのような過程で治療を行っているのか。また、どのような医療体制を組むべきかを俯瞰で捉えるためにも非常に有益なデータといえるでしょう。
いかに自社製品が教育機関に寄与できるか、いかに医療に貢献できるかという視点でぜひ学校保健統計調査のオープンデータを活用し、営業活動の糧としてください。
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