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全国がん登録罹患数・率報告とは?オープンデータの特徴や活用方法を解説

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日本人の死亡原因の第一位である「がん」。高齢化に伴って、がんによる死亡者も増加傾向にあります。がん医療がさらに発展すれば、がんに苦しむ国民を減らせるでしょう。

厚生労働省は、がん医療の質の向上や予防の推進のために、病院や診療所、市町村ががん患者の情報を報告する「全国がん登録」を実施しています。全国がん登録で集められた情報は、オープンデータ「全国がん登録 罹患数・率報告」として公開されており、誰でも二次利用が可能です。

この記事では、全国がん登録 罹患数・率報告について解説します。オープンデータの活用方法も掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。

全国がん登録罹患数・率報告とは


2016年から開始されている全国がん登録で集められた情報を集計した結果が、全国がん登録罹患数・率報告です。全国がん登録罹患数・率報告とは何かを理解する上で重要な「全国がん登録」について、まずは見ていきましょう。

全国がん登録とは

がんの罹患・治療・転帰等の実態を把握し、以下の4つの目的を満たすために実施されているのが、全国がん登録です。

  • がん医療の質を向上させる
  • がんの予防を推進させる
  • がんに関する情報提供を充実させる
  • その他のがん対策を科学的知見に基づき実施する

平成25(2013)年12月に成立された「がん登録等の推進に関する法律」によって、国内におけるがんの罹患、診療、転帰等に関する情報を、国がデータベースに記録・保存すること並びに病院が記録・保存することが定められました。

病院が保存している情報は、最終的には国が管轄する「国立がん研究センター」の元に渡り、一元的に管理されています。これにより、全国民のがんの正確な罹患率や生存率等を把握することが可能になっているのです。

全国がん登録の仕組み

全ての病院及び都道府県が指定した診療所は、各都道府県にがん患者の罹患情報を提出しています。各都道府県は、提出された情報を突合・整理した上で、国立がん研究センターに引き渡します。

国立がん研究センターは、市町村から提出された人口動態調査における死亡情報とがん患者の罹患情報を併せて、再度突合・整理を行い、データベースに登録するというのが、全国がん登録の仕組みです(図1)。

図1:全国がん登録の仕組み

全国がん登録罹患数・率報告の概要

全国がん登録によって集められた情報は、国立がん研究センターが集計を行い、全国がん登録罹患数・率報告として年単位で厚生労働省がホームページで公開しています。

報告対象は、集計年の1月1日から12月31日までに日本でがんの診療を受け、届出票によって都道府県を介して国に提出された者と、市区町から提出されたがんによる死亡者です。独立した 2種類以上のがんが1人から見つかった場合は、がんを独立して計上するため、延べ人数で集計されています。

全国がん登録罹患数・率報告で分かる9つの内容


全国がん登録罹患数・率報告では、以下の9つの項目が報告されています。

  • 罹患数及び罹患率(正表)
  • 年齢階級別罹患数及び罹患率
  • 発見経緯
  • 進展度
  • 初回治療の割合及び切除内容
  • 精度指標
  • 全国がん罹患数・罹患率詳細集計表(付表)
  • がん罹患数・率都道府県一覧基本集計表(正表)
  • がん罹患数・率都道府県一覧基本集計表(付表)

それぞれの項目でどのような内容が分かるのか、令和2年の結果を一例に、詳しく見ていきましょう。

罹患数及び罹患率(正表)

部位別の罹患数及び、人口10万対の年齢調整罹患率を男女別で示しています。上皮内がんを除く全ての部位が網羅されており、男女間で患うがんの種類の差が把握できます。

令和2年の結果によると、男性の罹患で多かったのは、前立腺・大腸・胃の順、女性の罹患で多かったのは、乳房・大腸・肺の順でした。

年齢階級別罹患数及び罹患率

0才から100歳まで、5歳ごとの年齢階級別に罹患数及び、人口10万対の年齢調整罹患率を男女別で示しています。罹患数の上位5部位ごとに罹患率の年齢推移が把握できます。

令和2年の結果によると、男女ともに大腸がんの罹患率が50代前半から増加傾向が見られ、女性は乳がんの罹患率が30代前半から急増していました。

発見経緯

主要部位別にがんの発見経緯の割合が示されています。主な発見経緯として、がん検診・健診・人間ドック、他疾患の経過観察中、剖検発見、その他、不明、のそれぞれが占める割合が把握できます。

令和2年の結果によると、がん検診・健診・人間ドックで発見された割合が最も多かったのが、前立腺がんでした。また、全体でみると検診よりも他疾患の経過観察中に発見されることの方が多いです。

進展度

がんと診断された時点の部位別の進展度が示されています。早期発見しやすいがんと、症状を自覚した頃には既に転移しているがんが把握できます。

令和2年の結果によると、悪性リンパ腫や膵臓癌は、初回診断時に遠隔転移まで進行している症例が多いことが分かりました。

初回治療の割合及び切除内容

主要部位の初回治療における治療法別の割合と、観血的治療を受けた症例における治療の範囲が示されています。割合が示されている治療法の内訳は、以下のとおりです。

  • 外科的治療
  • 鏡視下治療
  • 内視鏡的治療
  • 放射線療法
  • 化学療法
  • 内分泌療法
  • その他の治療

令和2年の結果によると、外科・体腔鏡・内視鏡的治療が施されている部位は膀胱、皮膚、卵巣が最も多いことが分かりました。

精度指標

年間がん罹患数を分母としたときの、下記を分子とした指標を部位別に示しています。

  • 人口動態統計に基づく年間がん死亡数
  • 死亡情報のみの症例及び遡り調査で「がん」が確認された症例
  • 死亡情報のみの症例
  • 病理学的裏付けのある症例
  • 組織学的裏付けのある症例

令和2年の結果によると、死亡/罹患比は男性が0.41と、女性の0.38を上回る結果となりました。

全国がん罹患数・罹患率詳細集計表(付表)

詳細な部位別(ICD10 コード 3 桁)の罹患数や部位割合、粗罹患率、年齢調整罹患率、累積罹患率が男女別に示されています。令和2年の結果によると、小腸や胸腺が主要部位に次いで、罹患率が高くなりました。

がん罹患数・率都道府県一覧基本集計表(正表)

集計部位ごとのがん罹患数・率を、都道府県別に示しています。地域ごとにがん罹患に影響を与える要因を分析するのに役立ちます。令和2年の結果によると、全国で罹患率が高かったのは、秋田県、島根県、鳥取県でした。

がん罹患数・率都道府県一覧基本集計表(付表)

詳細集計部位ごとのがん罹患数・率を、都道府県別に示しています。ICD-10のコード
3桁全てを対象としているので、より詳細な都道府県別の分析が可能です。令和2年の結果によると、白血病の初回治療内容として、手術(内視鏡)・放射線・薬物を併用した治療を行っているのは、全国で青森県、大阪府、兵庫県のみでした。

全国がん登録罹患数・率報告の活用方法2選


がんに関する統計資料として、日本で最大級の規模を誇る全国がん登録罹患数・率報告。無料でオープンデータとして公開されているため、誰でも二次利用が可能です。

全国がん登録罹患数・率報告の主な活用方法を紹介します。

がん検診事業の営業先を選定する

がん検診事業を展開している企業であれば、検診の普及率が低い地域を特定し、営業を行うことで、高い利益が見込めます。全国がん登録罹患数・率報告では、都道府県別に部位ごとのがんの罹患数・率が示されています。

がん検診・健診・人間ドックで発見される割合が高い部位にも関わらず、初回治療内容で進行したがんに対して行う外科手術の割合が高い都道府県は、検診の普及率が他の都道府県と比べて低いと推測できるでしょう。

検診の普及率が低い都道府県の住民に対しては、早期発見できるはずのがんが放置されている事実を、公的機関が示す裏付けを以て訴えかけることで、高い説得力を与えられます。

年代に応じたがんの予防法を提案する

全国がん登録罹患数・率報告では、年齢階級・主要部位別に罹患率が集計されているので、年代に応じたがんの予防法を提案するサービスを展開できます。

例えば、登録したユーザーが30代後半の女性だった場合、乳がんの罹患率が急増している年代なので、生活習慣の改善や乳房のセルフチェックといった乳がんに対する予防法を提案することが可能です(図2)。

図2:令和2年 年齢階級別罹患率 上位5部位 女

まとめ


全国がん登録罹患数・率報告は、全国のがん患者の罹患・死亡情報が集計された、厚生労働省が公開するオープンデータです。がんの進展度や発見経緯、罹患数・率、初回診療といった情報が、都道府県や年代、部位別に把握できます。

全国がん登録罹患数・率報告は商用利用ができるので、ぜひ活用してみてください。

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