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今さら聞けない病床機能報告制度 意義や目的/データ活用を紹介

今さら聞けない病床機能報告制度 意義や目的/データ活用を紹介

2014年10月から始まった病床機能報告制度。医療機関の報告担当者であればおなじみのキーワードだと思います。すでに導入から5年以上が経過し、各都道府県は病院や有床診療所がもっている病床の機能や人員、設備、レセプト情報のデータを蓄え、2025年に打ち出す「地域医療構想(ビジョン)」の取りまとめ準備を粛々と進めています。各医療機関が毎年報告する内容は多岐にわたり有益な情報になりえるため、これまでも国の政策の参考データとして多く活用されてきました。報告データは、各都道府県や厚生労働省のサイトからも一般公開されており、だれでも見ることができます。

今回、病床機能報告制度について、導入の背景や目的、報告項目と集計データの活用方法などについて解説します。病床機能報告制度の集計データを用いて、自院が抱えている課題の考察や分析、改善策や戦略を考えたいという方は、是非参考にしてみて下さい。

 

病床機能報告制度開始の背景

団塊の世代が後期高齢者となる2025年を前に、今後の医療と介護のあるべき姿についての議論が行われ、2013年8月に社会保障制度改革国民会議の最終報告書が取りまとめられ医療介護一括法が2014年6月に国会で可決成立しました。迫りくる2025年に向けて、効率的かつ質の高い医療提供体制を実現するために、機能の異なる医療機関間の連携が不可欠で、医療の機能分化を進める必要がありました。しかし、現状の医療システムでは、その地域の医療ニーズにふさわしいバランスのとれた姿、つまりは、地域に合った医療の機能が整理されているかと言えばそうではありませんでした。そこで、医療機能の報告等を活用し、今後の目指すべき医療提供体制の構築とさらなる機能分化を推進するため「医療機能に係る情報の都道府県への報告制度(病床機能報告制度)」が導入されることとなりました。

 

病床機能報告制度の目的

病床機能報告制度は、病院や有床診療所の病床(ベッド)それぞれにおいて担っている医療機能を把握することで、その情報をもとにその地域にふさわしいバランスのとれた医療機能の分化や連携を進めていくことを目的としています。病床機能報告の結果については、医療機能や供給量を把握するための目安として、医療機関相互の合意形成の場においても活用されます。

 

病床機能報告制度・報告項目の概要

病床が担う医療機能

一般病床と療養病床という区分に加えて、病期別に以下の4つの機能に区分し、それぞれの病棟ごとで下記のうち一つを選択します。

〇高度急性期機能

・急性期の患者に対して、状態の早期安定化を目指して、診療密度が極めて高い医療を提供する機能

〇急性期機能

・急性期患者に対して、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能

〇回復期機能

・急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能

・特に急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頚部骨折等の患者に対して日常生活動作の向上や在宅復帰を目指したリハビリテーションを集中的に提供する機能

〇慢性期機能

・長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能

・長期にわたり療養が必要な重度の障害者、筋ジストロフィー患者又は難病患者等を入院させる機能

 

その他の具体的な項目

〇構造設備・人員配置に関する項目

・許可病床数、稼働病床数

・看護師数、准看護師数、看護補助者数、助産師数等

・主とする診療科

・算定する入院基本料・特定入院料

・高額医療機器の保有状況

・退院調整部門の設置・勤務人数

・新規入棟患者数、在棟患者延べ数、退棟患者等

 

〇具体的な医療の内容に関する項目

レセプト情報をもとにした医療内容

 

・幅広い手術の実施

手術件数(臓器別)、全身麻酔の手術件数、人工心肺を用いた手術、胸腔鏡下手術件数、腹腔鏡下手術件数

・がん・脳卒中・心筋梗塞等への治療状況

悪性腫瘍手術件数、病理組織標本作製、術中迅速病理組織標本作製、放射線治療件数、化学療法件数、がん患者指導管理料、抗悪性腫瘍剤局所持続注入、肝動脈塞栓を伴う抗悪性腫瘍剤、肝動脈内注入超急性期脳卒中加算、脳血管内手術、経皮的冠動脈形成術、分娩件数等

・重症患者への対応状況

ハイリスク分娩管理加算、ハイリスク妊産婦共同管理料、救急搬送診療料、観血的肺動脈圧測定、持続緩徐式血液濾過、大動脈バルーンパンピング法、経皮的心肺補助法、補助人工心臓・植込型補助人工心臓、頭蓋内圧持続測定、血漿交換療法、吸着式血液浄化法、血球成分除去療法、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を満たす患者割合

・救急医療の実施状況

院内トリアージ実施料、夜間休日救急搬送医学管理料、救急医療管理加算、在宅患者緊急入院診療加算、救命のための気管内挿管、体表面ペーシング法/食道ペーシング法、非開胸的心マッサージ、カウンターショック、心膜穿刺、食道圧迫止血チューブ挿入法、休日又は夜間に受診した患者延べ数(うち診察後、直ちに入院となった患者延べ数)、救急車の受入件数

・急性期後の支援・在宅復帰への支援の状況

退院支援加算、救急・在宅等支援(療養)病床初期加算/有床診療所一般病床初期加算、

地域連携診療計画加算、退院時共同指導料、介護支援連携指導料、退院時リハビリテーション指導料、退院前訪問指導料

・全身管理の状況

中心静脈注射、呼吸心拍監視、酸素吸入、観血的動脈圧測定、ドレーン法、胸腔若しくは腹腔洗浄、人工呼吸、人工腎臓、腹膜灌流、経管栄養カテーテル交換法

・疾患に応じたリハビリテーション・早期からのリハビリテーションの実施状況

疾患別リハビリテーション料、早期リハビリテーション加算、初期加算、摂食機能療法、リハビリテーション充実加算、休日リハビリテーション提供体制加算、入院時訪問指導加算、リハビリテーションを実施した患者の割合、平均リハ単位数/1患者1日当たり、1年間の総退院患者数

・長期療養患者の受入状況・重度の障害児等の受受入状況

療養病棟入院基本料、褥瘡評価実施加算、重度褥瘡処置、重傷皮膚潰瘍管理加算、難病等特別入院診療加算、特殊疾患入院施設管理加算、超重症児(者)入院診療加算・準超重症児(者)入院診療加算、強度行動障害入院医療管理加算

 

病床機能報告データ活用について

基本的に病床機能報告制度は、地域における医療の需給バランスを図る役割を果たすためのものです。しかし、データの活用においては「今現在の自院の素の姿を確認する」「将来にむけたビジョンを検討する」という2つの重要な目的があるように思います。各都道府県や厚生労働省のサイトに各病院の病棟別の算定入院料や患者数、具体的な診療実績、人員配置、構造設備が一般公開されており、これらは各医療機関の基礎データとなるため、各病院の動向を把握するために非常に有効なデータとして活用できます。つまり、自院の経営戦略を検討する際に、容易に他院の機能と比較でき、今後、付け加えていくべきこと、削ぎ落していくことがわかります。「主要な疾患に対して、専門の診療科等の医療提供体制の確保はされているのか」「同じ地域において他の病院や診療所で同様の機能を担い、かつ近接していないか」「医療圏における救急の受入、アクセスに問題はないか」「提供する医療体制に対し必要となる医療従事者は適切に確保できているか」等、病院のポジショニング、診療科や人員等、他にはない独自の経営資源、どんな疾患、どんな対象者で戦うのか、病床機能報告データは各病院の機能を相対的数値として示すことができます。

 

病床機能報告データ活用は手間がかかる?

病床機能報告データはそのままだとあまり使えません。ある程度の情報把握はできても、具体的な考察や分析、改善策や戦略を考えるためには、データのひも付けやグラフで表すなどの加工・見える化が必要になります。データを扱う際には、①蓄積データの確からしさが担保する必要があり、②データ活用の取り組み内容やスケジュール、目的を明確にする必要があります。データ抽出や加工に時間を要してしまうなどの課題はデータに基づいた迅速な意思決定とアクションを行うための大きな壁となります。費用は掛かりますが、データ管理や環境構築等、加工や見える化といったデータ活用を外部に委託するというのもお勧めです。

 

まとめ

今回、病床機能報告制度について、導入の背景や目的、報告項目と集計データの活用方法などについて解説しました。基本的に病床機能報告制度は、地域における医療の需給バランスを図る役割を果たすためのものではありますが、データを上手に活用することで、今現在の自院のポジションや将来あるべき姿を検討する非常に有用なデータとなっています。

膨大な量の医療機関データではありますが、今後の自院の戦略や方向性を考えるヒントになると思いますので興味のある方は是非使ってみて下さい。

 

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